オフィスがなくなる日

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photo credit: hermitsmoores via photo pin cc


ITの仕事をしていると、技術革新が激しいので新しいことを常に体験することができます。
そんな中でITによって人々の働き方も変わっていくのではないかと最近感じるようになりました。
では、働き方はどのように変わっていくのでしょうか。
思いついたことを書いてみました。
キーワードは創造性です。


1 オフィスはクラウドの中へ
 いままでは企業は自分のオフィスにサーバールームを作ってそこにサーバーを構築して使っていました。しかし、安価なクラウドサービスやVPSサービスによって自前でサーバーを持たなくてもよくなってきました。
現在は重要なデータを扱うサーバーなどはまだ自前で持つことが多いですが、セキュリティ部分がクリアされればそれもクラウド環境に移っていくものと思われます。
その結果、例えばホワイトカラー的な仕事はITによる自動化やコラボレーションシステムなどによってかなりの部分をクラウド上へ移せるのではないでしょうか。
そうなれば、働く人はどこからでもクラウド上のシステムにアクセスして仕事ができるようになるでしょう。



2 通勤はなくなる
 クラウド上のシステムでオフィス機能をはたせるようになったら通勤する必要がなくなります。
そうはいっても実際に顔をあわせて話さないと仕事にならないと思われるかもしれませんが、それもビデオ会議などの技術によって解決されつつあります。
一番の問題は企業文化でしょう。特に日本では家族的経営の文化があるので、やはり同じ屋根の下で仕事をするべきだと思う会社も多いでしょう。
しかし、企業は利益を求める組織です。
社員を通勤させることによってどれだけ損失を生み出しているかがわかれば、自然と変わっていくのではないでしょうか。
例えば、通勤がなければどこにでも住めるので都市などの土地の値段が高いところで家を買ったり借りたりする必要もなくなります。
そうすれば高い給料を取らなくてもやっていけるようになるでしょう。
また、通勤に毎日1時間も2時間もかけて通うのは時間と労力の無駄です。
これを仕事や趣味に費やすことができればどれだけ生産的でしょう。



3 オフィスに変わって創造性を引き出すための場所が登場する
 では、全ての作業をクラウド上で行うことができれば、ネット上だけで完結することができるでしょうか?
私はそれは難しいと思っていて、やはりリアルに会える場があった方がいいと思います。
ただ、それは現在のオフィスのように毎日通って仕事をする場所ではなく、気が向いたときに一緒に働く人たちが集まって楽しむ場になるでしょう。
GoogleFacebookなどのオフィスはそれを先取りしたようなものになっていて、もはやオフィスとは思えない作りになっています。

独創的なGoogleオフィス
Facebookオフィス

これからの企業、特に先進国の企業の競争力は働く人たちの創造性が源泉となります。
なので、楽しく雑談したり、ゲームをして遊んだりして人々の創造性を刺激する場所となるのではないかと考えています。
そして、そんな環境から新しいアイデアが出てきて新しいビジネスへ発展するのではないかと思います。


4 仕事とプライベート活動の境目がなくなる
 通勤がなくなると土日に休むという習慣もなくなっていくと思われます。
創造的な仕事というのは工場労働のように反復作業ではありません。
いつ新しいアイデアが出てくるかわかりませんし、土日に調子がよくて作業効率があがることもあるでしょう。
したがって、自分のパフォーマンスがいい時に働いて、調子の悪いときは休むというのが自然な働き方だと思います。
また、家族で長期旅行に出ても、旅行中の合間に仕事をするということも可能になるでしょう。
 そして、創造的な仕事は仕事なのか遊びなのかわからなくなっていくでしょう。
私は本を読むのが趣味なのですが、ソーシャルネットの社会的分析について書かれた「みんな集まれ」という本を読んでそこから着想をして一つのサービスを作ってしまいました。
もし、私に読書という趣味がなければ、そういうことも起こらなかったでしょう。
創造的な仕事にとっていわゆる仕事的なスキルよりも趣味や好きなことが大事なのは過去の発明、発見を見てもわかるのではないでしょうか。
ただ、この働き方は自己規制がちゃんとできることが条件になりますが。


 オフィスがいらないというと最近はやりのコワーキングやノマドなどを想像されるかもしれませんが、それらが長期的に定着するためにはまだ何かがかけていると最近感じています。
私自身、コワーキングをよく利用しますが、まだかつてのレンタルオフィスの延長線でしかないという感じです。
ノマドも何もわざわざ外にでなくてもネットもPCもあれば家で作業すればいいし、たまに気晴らしで外に行く程度でしょう。
普通の会社でもそうですが、同じ部屋で働いているからといって人同士の交流がはじまるわけではありません。
何か一緒のプロジェクトに関わったり、相手の考え方に共感したりしてお互いの人となりを知るようになってコミュケーションが始まるものです。
まずは、そういうお互いを知る仕組みや機会があってコワーキングやノマド的なワークスタイルが生きてくるようになるのではないでしょうか。
私はこれからは企業の枠を超えた交流が重要になっていく時代になると思っていますが、そういった意味でもSNSをはじめとしてネット上で人々がコラボレーションできるサービスはこれからもっと重要になると思っています。


 もちろん接客や現場仕事など実際にその場所に行かないとできない仕事は変わらないと思いますが、いわゆるオフィスに通勤して仕事するというスタイルはだんだん少なくなっていくと思います。
結局、企業は利益をあげなければ存続できないのですから、時代の変化とともに変わって行かざるをえません。
日本のような先進国は今までのような製造業的なアプローチでは生き残れない時代になりました。
これからは世界のどこにもない創造的なビジネスを行わないとグローバル経済の価格競争の波に飲み込まれてしまうでしょう。
したがって、企業は人々の創造力を引き出せるように変わって行く必要があります。
そして個人も自分の創造力を発揮できる環境に身を置くことがこれから生きていく上で重要なのではないでしょうか。

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