2010-06-05
■[出版] ベストセラーの系譜に見る本の弱体化 -iPad発売と、出版の今後-
| 順位/年 | 1990年 | 2001年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 愛される理由 | チーズはどこへ消えた | 女性の品格 | ハリーポッターと死の秘宝 | 1Q84(1・2) |
| 2 | 真夜中は別の顔(上・下) | ハリーポッターと賢者の石 | ホームレス中学生 | 夢をかなえるゾウ | 読めそうで読めない間違いやすい漢字 |
| 3 | 「NO」と言える日本 | 奇跡の法 | 鈍感力 | B型自分の説明書 | ドラクエ 星空の守り人 |
| 4 | ドラクエ ガイドブック(上・下) | 金持ち父さん貧乏父さん | 日本人のしきたり | 0型自分の説明書 | 新・人間革命(20) |
| 5 | 明日があるなら(上・下) | 新・人間革命(9・10) | 新・人間革命(17) | A型自分の説明書 | 日本人の知らない日本語 |
| 6 | 「1988年日本崩壊」エドガー・ケイシーの大予告 | 話を聞かない男、地図が読めない女 | 田中宥久子の造顔マッサージ | ホームレス中学生 | バンド1本でやせる!巻くだけダイエット |
| 7 | 文学部唯野教授 | 十二番目の天使 | ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説 | 女性の品格 装いから生き方まで | 私服だらけの中居正広増刊号 |
| 8 | 恋愛論 | プラトニック・セックス | ポケモン 公式全国大図鑑 | 親の品格 | 告白 |
| 9 | うたかた(上・下) | 仕事ができる人 できない人 | ポケモン 公式ぜんこく図鑑 | AB型自分の説明書 | 脳にいいことだけをやりなさい! |
| 10 | 41歳寿命説 | バトル・ロワイアル | 恋空 (上・下) | 脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」 | 体温を上げると健康になる! |
| 11 | それでも「NO」と言える日本 | 光に向かって100の花束 | 国家の品格 | 新・人間革命(18・19) | オバマ演説集 対訳生声CD付き |
| 12 | 日はまた沈む | 新しい歴史教科書 | 赤い糸 (上・下) | 流星の絆 | 世界一の美女になるダイエット |
| 13 | 国際情報JUSTNOW | 声に出して読みたい日本語 | 君空 | 悩む力 | 欲情の作法 |
| 14 | アメリカインディアンの教え | TheBlueDayBook | 一瞬の風になれ (1・2・3) | おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185 | 勇気の法 熱血火の如くあれ |
| 15 | 川の流れのように | 模倣犯(上・下) | もしもキミが。 | おひとりさまの老後 | ポケモン 公式完全クリアガイド |
| 16 | 孔子 | なぜか「仕事がうまくいく人」の習慣 | ポケモン パーフェクトクリアBook | 余命1ヶ月の花嫁 | しがみつかない行き方「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール |
| 17 | TVピープル | プロジェクトXリーダーたちの言葉 | いつまでもデブと思うなよ | 崖の上のポニョ | ポケモン 公式完全クリアガイド |
| 18 | 六十歳からの生き方 | 「みにくいあひるの子」だった私 | 生物と無生物のあいだ | 1分骨盤ダイエット | ポケモン 公式完全ガイドブック |
| 19 | さらば桑田真澄、さらばプロ野球 | 竹中教授のみんなの経済学 | 世界の日本人ジョーク集 | 生命の法 真実の人生を生き切るには | ポケモン ぼうけんマップ&ポケモンずかん |
| 20 | 自分をもっと深く掘れ! | なぜ生きる | 「1日30分」を続けなさい!人生勝利の勉強法55 | 上地雄輔物語 | ポケモン 公式完全ガイドブック |
TOHAN調べのベストセラートップ20を見てみることにした。どんな本が売れるのかという変遷を知ることができる。そして毎年の売れ筋に変化があるとすれば、それは本の世界が置かれている現実を最もはっきりと表していると思うからだ。
1990年と直近の4年間のランキングを見てみることにする。なぜ、1990年のランキングをあえて入れてみたのか。それは、本がテレビのように利用者から無料のコンテンツではなく、有料のコンテンツだからだ。90年と言えば、まだ日本経済は今ほど停滞していない。国の経済も、自分の給料も、自然に上がり続けるという右肩上がりの神話が生きていた時代だ。ところが90年代後半以降、もはや国も給料も上がることはないという希望なき時代には、おカネの使い方に極めてシビアになってしまう。つまり課金コンテンツをめぐる1990年と現在の大きな違いは、おカネを使うということの意味が大きく異なるということだ。
ランキングのなかで赤い字にした本を、勝手に「ご利益提供型コンテンツ」と名づけてみる。おカネを払う、その対価として「痩せる」、「儲かる」、「出世する」。おカネを払うことの「ご利益」が明確なものだ。実際に「ご利益」はないことがほとんどなのだが、買う際に「ご利益がありそう」と思わせることが大事。おカネを使わせることへの、最もわかりやすい動機付けになるもの、一言で言えば、自己啓発系と美容・健康系だ。1990年にはランキングのなかでひとつだった「ご利益型」が、直近の数年だと、常に4冊近くが占めている。
青い字で示したのは「他メディア補完型コンテンツ」。つまり、タレント本、ゲーム本、ケータイ小説のように、本以外の他のメディアで話題となったものの情報をさらに深く提供するというもの。本が他媒体の補完として機能している。きつい言い方をすれば、他メディアの小判鮫としての性格も持っている。青字にはしなかったが、広い意味では宗教本も含まれるだろう。
「ご利益提供型」と「他メディア補完型」の隆盛。露骨におカネを払うことの「ご利益」をうたうか、他メディアに寄り添わないと本が売れないというのであれば、それは本の世界そのものの弱体化をあらわしている。10年以上に渡って縮み続け、いまだに下げとまらない出版界。下がり続けているだけではなく、売り上げを構成している中身の劣化も、実はかなり進んでいる。
一方で、1Q84の村上春樹や東野圭吾のようなベストセラー作家も当然ランクインしている。だが、彼らは本当にトップに立つ、超一流。他メディアに寄りかからなくても、ご利益をうたわなくても、おカネを払ってもらえるのは半端な作家ではなく超一流だけという、厳しい現実だ。
ベストセラーを俯瞰することで見えてくるもの。それは、おカネを払ってもらうということのハードルがどんどん高くなっているという現実だ。そのハードルの高さを前に「ご利益」をうたうか、他の大きなメディアに寄り添うか。本の世界がもはや単独では生き残りづらくなっているという、売り上げという「量」だけではなく、「質」の劣化までを浮き彫りにしている。
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