黒看板キリスト教徒の謎

木走さんからご質問がありましたのでこれを取り上げます。

初詣の時期に、明治神宮とかで、「イエスを信じ、罪を悔い改めなさい。」とかいうプラカード持って何やらテープを流している人々がおられますが、彼らはナニモノなんでしょうか?

毎年、暮れになると何処からともなく現れ、怪しげな聖書の言葉を書きつけた手書き看板を掲げ、陰気な声で「世の終りが来る」「キリストを信じなさい」などと割れた音のスピーカーで巷の人々に語りかける不思議な人々。
思えば彼らの歴史は長い。私がまだ鼻たらしな子供の頃、初詣でに出掛けた川崎大師の名物は悲しげな音でアコーデオンを奏でる傷痍軍人さんと、リズミカルな包丁さばきでアメを切る飴屋さんと、川崎大師名物葛餅と、このキリスト看板さん達でした。当時のキリスト看板さんは痩せた金髪の白人でしたよ。人込みの中を「悔い改めよ、神の国は近づいた」などという怖い文句を書いた看板を高く掲げ、ずっと歩いておりました。正直、あまりに陰気くさいオーラを発していたので子供心に彼らにちかずくと不幸になりそうで怖い気がしたものの・・・当時、教会学校に通っていたためになんとなくゴルゴダに向かうイエス様ってあんな風だったのか?とも思ったりしておりました。
年の瀬ともなると、渋谷や銀座などでかの有名なる陰気くさい声が雑踏の上を響き渡り、同じ繁華街の風物詩、救世軍の社会鍋と並んで歳時記化しておりましたが。救世軍の友人は「同じ団体と思われて困るんだよ・・・」と、ぼやいておりました。
またど田舎などを旅すると、マルフクや金鳥、オロナミンCのホーロー看板に混じって「死後裁きにあう 聖書」などと黒字に白のシンプルだがやたらインパクトある看板を発見し、うへぇ。こんな処にまで・と驚いてしまいます。「世界平和がありますようになんちゃら」という縦長の細い看板?と同じく誰がいつ取り付けていったのか謎が謎を呼ぶ彼らの正体は一体ナニか?(水曜スペシャル的効果音)

実はごく最近、瑠璃子さんのブログで取り上げておられました。

黄色いキリスト看板衆の謎
http://blog.so-net.ne.jp/pussycat/2005-12-25

怪しげなこの人々に突撃インタビューを試みようとするも残念ながらタイミングが合わず、瑠璃子さんは挫折。いつかは彼らに突撃しようとしているとのことで、そのレポートを楽しみにしております。
で、この看板さんについてはこういう詳しいヲッチャーがおられます。↓

キリスト看板展示室
http://bluedragon.pos.to/kanban/

日本全国に散らばる黒看板コレクションです。かなりの種類があるのでお楽しみ下さい。

上記のサイトにも説明が載っておりますが、残念ながらリンク切れになってしまったサイトに更に詳しくこの団体についてレポートしたものがありました。それによるとこの団体さん宮城県丸森町を根城にする「聖書配布協力会」という団体で、もともとはアメリカのプロテスタントの伝道師さんがはじめたモノのようです。教義の内容から察するにかなり原理主義的な、ファンダメンタルな福音主義の人々でおそらく「単立」と呼ばれる独自の団体でしょうね。この教団の趣旨としてはひたすら「イエスの言葉を聞かせ、聖書のみ言葉を伝えること」であり、「伝える」以外の行為を何もしていないようです。強引な勧誘などは行っていないもよう。ただ、教義的にはかなり終末論に偏っていて、その為に暗い言葉が多いようですね。彼らが配っているという小冊子も上記サイトに出ていますが、かなり濃い。上手いんだか下手なんだか判らない劇画がすごいですよ。必見。
彼らは一生懸命看板を作成し、ひたすら日本のあちこちに貼り歩いているようです。また昨今はステッカーバージョンもあるらしいです。貼るときはちゃんと家主さんに許可を貰っている。また言葉も幾つかの中から選んでもらうという紳士的なやり方だそうです。あの黒地に白(一部黄色)という選択は「目立つから」という理由だそうで。まぁ目立つよね・・・。瑠璃子さんのブログの写真に記録されている黄色地に黒もおそらく同じ理由で選ばれていると思いますが、こりゃ阪神カラーだよなぁ。
随分前に鶴岡八幡宮の初詣客に混じって現れた彼らに突撃インタビューをした果敢な友人がおりまして、その話によると彼らはかなり真面目な人々で言ってるあの言葉のわりにはすごくナイーブでいい人ばかりなのだそうです。聞けば看板をわけてくれるということで(確かタダだったと記憶する)、彼は看板もらって私に引越祝いにくれましたですよ。
http://bluedragon.pos.to/kanban/kbhtmls/skms.html
・・・をわざわざリクエストしたそうで、。それが今、家にあります。
島の人はキリスト教は一つしかないと思っているのでこんなもの取り付けたら勘違いされそうで、貼っておけませんです。シスターや神父様に見せようかと思ったけどギャグが通じないと怖いので、まだ見せていません(^^;
友人は黒看板ステッカーも数枚手に入れほくほくしていましたが、結局それはどうしたんでしょうか?
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ところで文中に「救世軍」のことをかきましたが、これも日本の風景に昔からなじんできたキリスト教の一つですね。サザエさんにも登場している。キリスト看板さんがひたすら「聖書の言葉を人に伝える」のに対し、救世軍はひたすら「貧しい人困っている人のために献金を募り、彼らのために働く」という福祉活動に特化した団体でイギリス生まれの教団です。
彼らはそうした福祉活動のノウハウとネットワークの歴史があるので災害などにおいても迅速に動く。神戸の大震災の時にも地味に活動していました。その活動は高い信頼があり、彼らの「総督(一番偉い人)」は天皇皇后両陛下に謁見しておりますね。まぁ組織構造(軍隊の階級をそのまま用いている)といい、ミリタリーな制服といい、軍ヲタみたいな団体なのでやはり謎っぽいですが、老舗の伝統的な教団です。尚、軍隊構造なのはやはり福祉活動を迅速に行うには一番よいらしいです。特に災害時に威力を発揮すると思われます。