真魚八重子 アヌトパンナ・アニルッダ このページをアンテナに追加 RSSフィード

07-06-17

anutpanna2007-06-17

[]「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE」vol.3

劇場で女性が安心してピンク映画を観られるのは、一般劇場でセレクトされた作品が上映される時。ただその際に選ばれる作品は、普段ピンク映画を観ない客層にもガツンと来るよう、アヴァンギャルドであったり、ドラマの部分が痛みを伴ったり、作家主義的な偏りが強い傾向があります。また、そういった主張の目立つ配給会社に集中し、気がつけば「新東宝」のロゴで始まるピンク作品ばかり観ている、ということにもなりがち。

一時期、自分もピンク映画はまさに作家主義的に観てはいたものの、切羽詰ったようなつらくてイタい話が多く、精神的にしんどいため、最近はCS放送のピンク映画を観る程度でちょっと遠のいていました。でも、その間にモダンな人情喜劇を撮る監督と脚本家が登場し、一躍脚光を浴びていたようです。

ここにきて、立て続けに監督:竹洞哲也&脚本:小松公典コンビの'06年度作品を拝見したのですが、3本とも非常に面白かった。たまたまわたしが観たバランスも、2本は人情喜劇、1本はホラーテイストで、コンビの手がける世界が手広いことを確認できたのも良かった。決してピンク映画の枠組みに反発するような作りじゃないし、破壊的でもないけれど、手堅いといった守りに入ってるわけじゃなくて、今も通用する人情喜劇に真っ向から勝負してる映画です。脚本家がアヴァンギャルドに逃げず、ウェルメイドにしっかり創り上げた構成の中で、監督は役者たちの魅力を引き出して作品に色や幅を持たせる自由さにも惹かれました。こういう作家を観てこなかったことは手落ちだなあと、焦燥感を感じます。

この竹洞監督の特集上映が、ポレポレ東中野であります。

『R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.3〜「竹洞組」の冴えたやり方。』

◎2007.7.7(土)〜7.13(金)連日21:10〜

詳細は公式ブログで→ http://r-18.cocolog-nifty.com/blog/

[]『短距離TOBI-UO』(成人映画館公開題:『ホテトル嬢 癒しの手ほどき』) 

監督:竹洞哲也&脚本:小松公典コンビ作品。まさに正統派人情喜劇。ヒロインの青山えりながカワイイです。おへちゃな顔なのですけど、大層魅力的に撮れてて、内容ともどもまさに癒し系。トビウオというのは、東京から熱海まで流れてきた、彼女のホテトル嬢としての源治名です。

わたしが個人的に好感を持ったのは、彼女は一応訳ありな風情ながら、途中でその謎はあえて明かされてしまうし、ラストも謎の解決に帰着するだけで、そしてその秘密も若い女性にとって大きいとはいえ、わりと些細な事態と思えることです。だから導入は秘密を覗いていくお話ではありつつ、映画自体は彼女がいかにためらいを払拭していくかという、心の過程を見つめる映画でした。その秘密も決して暗いものじゃなく、明るさに向かって進んでいくのが観終わって安心します。この設定で、辛辣さや苦味で人に印象を与えることより、ヒロインを祝福して終わらせたのは信頼できる作り手だと思いました。それも物語を無責任に捻じ曲げて「はいはい、ハッピーエンドねー」と持ってくわけじゃなくて、ちゃんと彼女が幸福を選択するにふさわしい道標が立てられていて、創り手が愛情を持って彼女に寄り添っている感じがする。

ヒロインはすこやかでとても愛嬌があり、癒し系なのでインポも治しちゃいます。そういう女性像にもしかしたら、男性の願望を見て萎える女性もいるかもしれませんが、一応作品内で彼女も自分の朗らか癒しっぷりが、取り繕った虚飾かもしれないことを語るので、折り合いはついてるかなーと。

ただ、如何せんピンク枠なので、説明不足なところは残るのですけれど・・・。あと中盤出てくる詐欺師の男が、地に足のついてないキャラだなとは思いました。じゃあ詐欺師以外どういう設定なら対峙できるかはわからないが・・・。実在感がなくて、ヒロインを何かしら導くための妖精のようだと思いました。

店長役のサーモン鮭山さんがイイ役です。わたしはこれまで、山内大輔監督作品のエロスプラッタVシネで、白ブリーフで血まみれになってる鮭山さんしか観たことなかったから、まともな役もやるんだなーと・・・。この店長キャラクターは人情喜劇のかなめを果たしてて、セリフも決まってました。

佐倉萌さんは貫禄が出ていましたね。熱海に似合っていました。熱海というロケーションも、東京からフッと逃れてくる程度の遠くは無い距離でありつつ、リゾートの鄙びた気配が非日常的を忍ばせて良いです。のんびりした物語やキャラと相俟って効果的。

[]『森鬼』 (成人映画館公開題:『乱姦調教 牝犬たちの肉宴』)

田舎ホラー!(※mixiにそういうコミュがある)。上と同じく監督:竹洞哲也&脚本:小松公典コンビ作品。自殺しに樹海へきた男女を監禁し陵辱する謎の男。しかし被害者たちは監禁を解かれた後も、次の地獄が待っているだけ・・・。この樹海を自由に駆け抜ける男は、伴幌男という名前らしいです。わたしも以前、『バーニング』のビデオを入れてたコンビニ袋を、泥酔した知人のゲロ袋に急遽使ってしまい、人間がお盛んに燃えてるジャケットを小脇に抱えて帰宅したことがありましたけど、みんなあの映画そんなに好きですか?

これは人里離れた場所での監禁陵辱モノ。後背位で女を犯しながら前進してきたり、ヘンな叫び声をあげる伴幌男のキャラが良かったです。この前進してきて追い詰めるところ、だからなんだという理屈はないのに、なんだか酷い事になっていると感じさせるのはスゴイと思います。日活ロマンポルノにも『暴行!』や『悪魔の人質』といった山奥モノがあって、結構イヤな感じなのですけど、昔、やはり熱海の林を歩いてて、ここに死体を放置したらしばらくみつからないだろうと感慨深かったのを思い出します。日本にテキサスはないけれど、樹海はうまく撮ればかなりクる。本作も樹海の冬の色合いがとても閉塞的で、雪の降る空の低さも、複雑に立ち枯れる木々の隙間を駆け巡るシーンの森閑とした気配も見事。音楽がフリージャズなのも若松プロみたいで。あー、でも途中の歌が入っちゃうのはマズイと思った。アレはない。緊張が解けて我に返る。

内容は、分類するならサイコホラーになるかと思います。途中映画のマジックでオカルトに少しいっちゃいますが、影を使った幻想的なカットが美しい。ラストもちゃんと辻褄合っているのが素晴らしいと思います。こんな当然のことで感心するのはアレなのですが、最近のオカルトは辻褄はまず合ってないままこけおどしに終始してしまうので、クライマックスできちんと状況背景と謎解きをして筋を通すのが偉い。最後のカットも(そういうことか)と納得できつつ、一瞬はエッ!と思う揺らぎが突き刺さってきて、余韻を持たせることに成功してると思いました。

木立の色は陰鬱なのに白く冷ややかに澄んでいる空など、冬の樹海の妖しさは観てるだけで魅力的でした。


あともう1本『恋味うどん』(成人映画館公開題:悩殺若女将 色っぽい腰つき)も観ました。吉沢明歩のぶち切れたアッパーぶりが可愛かった。

ポレポレ東中野では、この3作も含めて5作上映されます。

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