真魚八重子 アヌトパンナ・アニルッダ このページをアンテナに追加 RSSフィード

09-01-12

[]『ミラーズ』他

だいぶ前ですが『ミラーズ』を観ました。今まで観たアレクサンドル・アジャの中では一番ダメだった。やたらこけおどしで入る大音響と、よくわからない内容。わたしは融通の効かない人間なので、オカルトホラーでも理路が通ってなければ受け入れづらいです。これは別に似非科学はダメという意味ではなく、悪魔でも幽霊でも、その作品内に設けられたオカルト規定ルールが明瞭であって、それに則っていればアリということですが、本作にはどういうルールが敷かれているのかがわからなかった。

他は、今パッと思い出せる中では、一応シネマヴェーラのロマンポルノ特集や、『WALL・E』『K-20 怪人二十面相・伝』『ヘルボーイ2』なども普通に観ています。

[]『厳重に監視された列車』

もう一ヶ月くらい前ですが、日比谷シャンテシネで、チェコの映画監督イジー・メンツェル特集で観た『厳重に監視された列車』('66)が面白かったです。

艶笑譚ながら、チェコ映画らしいシュールで、横滑りしていくような摩訶不思議なリズム感。内容は、ナチスドイツ侵略下の時期、鉄道員として働き始めた主人公が、ガールフレンドにベッドに誘われるも緊張のあまり機能不全となってしまい、絶望し自殺未遂。でも医者から年上の女性に教えてもらうといいとサジェスチョンを受け、ちょうど年上の綺麗めなレジスタンス女性が爆弾を持って駅に現れたので、導いてもらって自信回復みたいな話です(まだそのあとオチはありますが)。

童貞がガールフレンドとヤる前に、年上女性が練習台になってくれるというまさに夢のようなお話に、ナチスの影があくまでチェコ映画らしい軽やかさで、悪夢の気配として映画の隅に潜み空気として漂い出すような感触がたまりませんでした。また駅員仲間が頭の弱いカワイコちゃんにいたずらするときの、夜のしじまの美しさと本当にキュートでなまめかしいエロス。こういうチェコ映画は年に1回くらい、俗世にまみれ囚われた頭を浄化するためにも観たいです。とにかく闇の中壁の隙間から漏れた光に、半裸の娘が爪先立って小走りに横切っていく姿が一瞬浮かびあがる、あの夜のしじまですよ。

チェコ怪奇骨董幻想箱 vol.2 リプスキーBOX [DVD]

チェコ怪奇骨董幻想箱 vol.2 リプスキーBOX [DVD]

わたし、これのライナーノーツ書いてる!今思い出した。『レモネードジョー』という作品。

チェコ怪奇骨董幻想箱 vol.1 GOTH-BOX [DVD]

チェコ怪奇骨董幻想箱 vol.1 GOTH-BOX [DVD]

この三つのBOXはすべて傑作揃い。

[]労働が信じ難い/本屋にて

今何かと話題な派遣社員の身分バリバリなわたしですが、今の職場では秋から春にかけて繁忙期です。で、先日発売になった『市川崑大全』なども重なって、本当に秋は忙しかった。原稿書くのは当然ものすごく嬉しい作業なので、自分の無能さに悶絶したり日々絶え間なくあがきながらも、でも直感を的確に指す言葉や文章を見つけたりした瞬間は、何よりも歓喜と結びつくから苦ではないのです。しかし目先のお金を稼ぐ仕事もしなければいけないから、最近は心の余裕がなかった。

で、今週原稿仕事が終わって、急にヒマになったから仕事帰りに、普段行かない職場近くの本屋へ寄ったのですが、どこに何が置いてあるのか見当がつかなくて、ちょっとショッキングでした。学生時代なら、初めて入る本屋でも目ざとくお目当ての本の棚は見つけてた気がしたのに…。長らくamazonでしか本を買ってなかったので、新書や文庫が、どの出版社がどの装丁という流し見で自然と体得しているはずの感覚が失われていた。この土曜日は紀伊国屋で1時間ほど色々立ち読みして、アア、こういう時間の使い方をするのも本当に久々だなあと、しみじみしてしまいました。

お金を稼がなければ生きていけないという当たり前のことに、大変憎悪を感じます。そのうえ、無能ゆえ自分にできる限界ギリギリで働いても、糊口をしのぐ程度にしか稼げないという現実がウソみたい。バカみたいな話ですが、わたしはいまだに、そしてたぶん死ぬまで「好きなことだけをしていたいのに、それだと生きていけなくて、会社員として働かなければ暮らせない」という現実に腹を立てている。でも、こういういつまでも労働への信じがたさを抱えているという幼児性が、自分の生い立ちに培われたものであるし性根なのだと痛感もしています。

[]最近買った本

時代劇は死なず!―京都太秦の「職人」たち (集英社新書)

時代劇は死なず!―京都太秦の「職人」たち (集英社新書)

最近TV時代劇のことが調べたいなと思っていたので、取っ掛かりとして興味深かった。面白いし、薄い新書で出すには勿体ない本。でもテレビ番組って膨大な量があるから、その山を登ろうとするなんてこの人えっらいとこに手つけたなと他人事ながら恐ろしい思い。

長坂秀佳 術

長坂秀佳 術

いまさらようやく買いました…。それにしても、脚本家の方たちのエッセイに漲る怨念って、並々ならぬものがある。『特捜最前線』の傑作と言われる回を多く手がけている天才・長坂秀佳先生もこんな憎悪の方なんだと驚きました。掛札昌裕先生みたいに何を読んでもさっぱりした気性の方もいらっしゃるけど、ほかの脚本家の方はよく、名指しで呪詛を書き殴ってますよね。映画監督でそういう露骨なルサンチマンのテキストを残した人って、今は今村昌平くらいしかパッと浮かばない。大島渚監督の文章は抜き身の刀みたいで恐ろしいなと思うけれど、それは個人への私的な感情は感じなくて、完璧なものを目指しそこに到っていないという強固な主義によるもので、端的に言えば舌鋒鋭いってことなんだけど、脚本家の皆さんのエッセイには、主義とは関係ない私怨が立ち込めているので、読み終わったとき毒気に当たったように疲弊します。

兵隊やくざ―貴三郎一代 (光人社NF文庫)

兵隊やくざ―貴三郎一代 (光人社NF文庫)

続・兵隊やくざ―続・貴三郎一代 (光人社NF文庫)

続・兵隊やくざ―続・貴三郎一代 (光人社NF文庫)

DVD-BOX上下巻買ったら、原作も欲しくなりました。この正月は兵隊やくざ三昧だった。

あと古本は相変わらず、ネット古書店などで買っています。

市川崑大全

市川崑大全

これも引き続きよろしくお願いします!

[][]TRASH-UP!!2号発売中!

季刊 TRASH-UP!! vol.2(DVD付)

季刊 TRASH-UP!! vol.2(DVD付)

昨日、無事発売になりました。

岡本敦史さん(通称ナッツ)のところで目次がアップされてたから、コピペします。ナッツの労力横取りしちゃった、すいません。今気づいたけど、根本敬さんも寄稿してるのに、主なコンテンツ紹介に今までお名前お入れてしてなかったところが、また屑山さんらしい。アレックス・コックスは、吉祥寺バウスシアター等で新作の『サーチャーズ2.0』が公開中で、既に観た人がみんな面白いと言ってました。

《目次》

●グラビア:世界の剥製博物館(スイス編)、「月刊ヘア・スタイリスティックス」アートワーク・ギャラリー、DEVILPRESS×TRASH-UP!!×GENOCIDE presents「大悪魔祭」、ニンジャ映画アートワーク

●座談会「2008年ホラー映画総括!」(山崎圭司×伊東美和×真魚八重子×岡本敦史)

●史上最凶のホラー作家、ジャック・ケッチャムの映像化作品 by 岡本敦史

●Interview:アレックス・コックス by 山崎圭司

●All the Love You Troma!! ロイド・カウフマン物語〈その2〉 by ビデオマーケット店員ミヤヂ

●レトロスペクティヴ『13日の金曜日』キング・オブ・スラッシャー・フィルムの伝説【1】 by 山崎圭司

●Interview:ビル・モーズリィ by 山崎圭司

●お楽しみゾンビ映画二本立て・『ゾンビ2009』と『ゾンビ・ストリッパーズ』 by 伊東美和

●日陰者の軍団 よくわかる私的ニンジャ映画の歴史─前編─ by 餓鬼だらく

●世界一凶暴なしあわせさがし『ベルニー』 鬼才アルベール・デュポンテルの過激な原点 by 岡本敦史

ケヴィン・スミス入魂の続編『クラークス2』はファン号泣必至の秀作! by 岡本敦史

●わいせつ男獣・関良平 by 柳下毅一郎

●曽根中生 得体の知れない静寂 by 真魚八重子

カナザワ映画祭2008フィルマゲドン by 真魚八重子

クリスピン・グローヴァーのビッグ・スライドショウ by 真魚八重子

●R.I.P シリオ・H・サンチャゴ by 餓鬼だらく

●中野〜荻窪映画館紀行 阿佐ヶ谷オデヲン座とその周辺 by 中平一史(Viemo)

●シャクシャクパリパリほんのり甘〜い 蟲スイーツ

●Comic:山田緑

●Artworks:河村康輔 ZAIDE(特別寄稿:根本敬)

●Illustration:AxAxA、田房永子、Paranoid、373

●Photo:弓場井宜嗣

●TRASH HORROR COMICS 絶版上等! by 木下ヨリ太郎

●エロ・グロ・ナンセンス・センチメンタリズム 異色のSF作家・式貴士の世界 by 五所光太郎

●格闘アクション俳優列伝 奈落から還ってきた男 ドルフ・ラングレン by 餓鬼だらく

アカシックレコード2号店 by 出撃マホニー

●バウス日記 vol.2 by 武川寛幸(吉祥寺バウスシアター

●キング・ジョーの MY SWEET LITTLE DEVIL by キング・ジョー

●Poet:小笠原鳥類「いろいろな怪獣映画の思い出」

●Interview:小さいテレーズ by MCATM(pelepop/drawing4-5)

●Interview “A DATE WITH ROCK”:HELL-RACER

●Comic:うぐいす祥子「スピルバーグ宇宙戦争

●Interview:中原昌也「月刊ヘア・スタイリスティックス途中経過」 by 前田毅

●Interview:ナタリア・ラフォルカデ by そらみつ

●ハロプロ禅とヒップホップ禅と禅(TRASH-UP!! EDIT) by A.K.I

●おかしなおかしなワンマン・バンドの世界【2】 by Money Child(THE FLY AND HIS ONE MAN GARBAGE)

●Comic:baby arm

●ジョーのガレージ・デイズ「初期のマグニチュード3」 by キング・ジョー

●DVD REVIEWS by 103、ビデオマーケット店員ミヤヂ、岡本敦史、西海枝良、餓鬼だらく

●MUSIC REVIEWS by YO!マイキー(2 MUCH CREW)、DAI(BAIT ONES)、MCATM(pelepop/drawing4-5)、ぽえむ(2 MUCH CREW)、nari-chang(ex-Country Devils/ex-Guitar Wolf)

●Illustration:西村鮎