建築夜学校2014 シンポジウムと展覧会で思ったこと

10月1日当日は、会場内の席が取れなかったので外のパブリックビューイングで、建築会館の地面に座っての参加でした。
研究室のほとんどのメンバーは、大学で鍋を囲みながらパブリックビューイングをしていたようですが…。


田町の中庭では、田中元子さん、森山高至さん、松島潤平さんが実況・解説として
いらっしゃいましたが、人もまばらで、シンポジウムの音声を集中して聞くため、
ほとんど中庭だけでの議論はしずらい状況で、事の成り行きをTwitterを追いながらついていくという
隣のシンポジウム会場とは物理的な距離感は近いけれど、なかなかその熱気が実感できないもどかしさがあった。

ただ、肌寒く地面の堅い中庭で、2時間半ほど30-40人ほどの人が熱心に耳を傾けており、
かなり注目されていることは確かで、twitter上での会場にいないUSTREAMを見ている人も700人程度いたので、
1000人以上がこのシンポジウムに注目していたとことになるのだろうか。



シンポジウムの内容については、何かに向かって一つの議論を深めるというよりは、
新国立競技場に関する問題を総攫いするという印象だった。
この貴重な場で、現状の他分野の専門家や市民と呼ばれる人たちが、それぞれのことを言っているということが、
そのまま露わになっていたとも言えるかもしれない。

ただ、この場で期待されていた(していた)、新国立競技場問題についての現状が明らかになりつつある今、
これからの東京にとって生産的な、現状を認めつつ前に進む方向を明らかにすること、については進展がなく
終わってしまった今残念な気持ちになっている。

浅子さんのPDや展示では、現状を受けた上での提案がなされており、新しい展開が期待されたが
それについては後半のディスカッションでも、このシンポジウムをレポートした記事でも取り上げられていなかった。



今回、私たちは新国立競技場関連記事データベースという形で様々なメディアを見ながらこの問題を把握するための
ピースを集めてきたわけだが、これらを受けて多くの人が議論をする際に一部分の情報をトリミングして揚げ足取りをしているように感じる。

槇文彦さんの展示パネルでも、3枚構成のパネルの1枚目に、
江戸時代の名所をプロットした地図と江戸の絵図、
2枚目に国立競技場周辺の写真とニューヨークのビル群の写真、
3枚目に代替案のポンチ絵となっていたが、
その情報をよくみてみると、江戸の名所の地図内には明治神宮外苑の範囲は含まれておらず、
更に明治神宮は大正期に造られていることと辻褄が合わない。
2枚目のパネルは東京は外苑の風景、ニューヨークはビル群と、比較対象が恣意的であるように思われた。
提案の根拠として挙げられた情報を繋ぐ但し書きは特に見当たらず、それぞれに関連があるのかもしれないが、
都合のいいように情報を寄せ集めたように見えてしまった。



どのメディアにおいても、情報のトリミングが行われ、自分の主張に沿うようにストーリーが組まれている。
これはまさに先生の言った政治の問題であり、これを統合する人、アーキテクトが必要とされる。

アーキテクトを務めるには、かなりしんどい思いをするだろうということが容易に予想できるが、
そのための土俵となるべきニュートラルなデータベースは責任を持って今後も更新していきたい。



M2 佐藤