西会津国際芸術村、 滞在記:中編


いざ、廊下を濡らします!


水をバケツに汲みモップで廊下を濡らし失敗しても掃除になります。その位極々普通の動作で、
その場にある道具を使って作品が出来るか試みます。
水に浸され
徐々にステインの浮き出る廊下の木目が楮紙に写るように何度も踏み均して様子を見ます。


翌朝、よく冷えた廊下は、けれど、水に濡れた廊下を作品ごと凍り付かせる程には冷えず、
インスタレーションとして見せられる程の見せ場は無かったけれど、
紙を剥がすと
ステインが写って水だけで確りと木目の版画のように出来ていました。
早々、思い通りには作品はできないものですが、この
ステインで出来る木目の版画を、
濡らす水の量や場所や向きを変えて色味や形の出方を調整しつつ、
手持ちの30枚の楮紙を慎重に大胆に使い試していく事にします。


残ることと、消え去る事を考える為に、その思考を形に表す手段として、


この場の木目を忠実に残す点では木目を木炭でなぞるよりも成功しているこの作品というか
作品に至るステップですが、
だから未だ作品と呼ぶにはもの足りず、その週も訪問される
この施設に興味を持たれてる方や、集会の話し合いに来られる町の方達と話す中でも
この木目の線の美しさ、色調の美しさを感じて、
それを見せたいと繰り返し廊下の木目を水を使って写し取り続けて居るのに関わらず100%誇示出来ない自分も居て、
その理由の一つとして、
滞在したこの季節ならでは冷え、凍るという要素をまだ表出させるに至っていないから、凍るという現象が無理ならば
何がそれにとって変われるか、雪の中にステイン染の楮紙を埋めたり、重ねて刷ったり、
色鉛筆で擦ったり、失敗を重ねて考えます。


施設の周辺に生える
槙の木の目立つ豊な自然環境や雪景色、管理人の矢部さん独自のランドスケープ的な
自然と人工の繋げ方の観点、アプローチにも影響されつつ、


思考も作品も地道にステップを続けます。


何故この行為(作品を作ること)を行って居るのか。



つづく