「火事は最初の五分間、選挙は最後の五分間という」

「火事は最初の五分間、選挙は最後の五分間という」

 この言葉は、渡辺美智雄副総理が原典だと記憶しています。私は、この言葉の真の重みを、友人の選挙の事務局を預かって落選させてしまった経験を通じて知りました。

 細かい経緯は、以前も記しましたので繰り返すことはしませんが、ウグイスを務めてくれた若いスタッフに投票箱が閉じてから、「電話をかけて投票を頼んでよかったんですね。知りませんでした」と言われたときのショックを忘れることはできません。

 あれから私は、選挙に関わるたびにやり残したことはないか、まだ、できることはあるのではないかと常に自問自答するようになりました。

 選挙に対する時の真剣さに関しては、自分自身、頭がおかしいのではないかと思うほどです。投開票日が近づくに従って気が狂いそうになるほど頭が回転し、眠れなくなりますが、まったく疲れを感じない状態になります。自分が立候補しているわけではないのにです。

 落選は、候補者の人生を変え、時に歪めることを見てきました。また、あまり意識されることはありませんが、応援した人の人生も確実に変えます。

 政治家ではない私がこのようなことを申し上げるのは、大変僭越ですが、立候補される方はもちろん、支援者として選挙に関わる方も「最後の五分間」の重みを忘れずに活動していただきたいと思います。

 自分は最善を尽くせなかったのではないかという想いほど、人生を蝕み、狂わせるものはありません。