春日武彦/平山夢明 「『狂い』の構造 〜人はいかにして狂っていくのか?〜」

平山 何か一時期、僕もちょっと精神的に辛かったときに、自分で条件づけを自分にしてるんじゃないか? みたいなことをチェックしたことがあって。結構ね、条件つけてたんです、なんか。
春日 それで自分をうまくコントロールしていってる。
平山 コントロールできればなあ、と思ったんですけど。いや、やっぱり一番効いたのはあれですよ。春日先生の「部屋掃除しろ」ってアドバイス。あれ。それまでは全然、書けなかったんです、俺。あの『メルキオールの惨劇』書いたあと、全然書けなくてね。
春日 低迷期が続いてたね。
平山 すごい低迷期でしたよね。家族5人で年収180万円とかってさ。バイトの年収だよ。ていうか、バイトのほうが稼ぐじゃん。どうしようもなくなったときに、春日先生のとこ行ってね。で、先生が「部屋を掃除しろ」って。てっきり、なんか、モリモリ元気のわく薬とかをくれるのかと思って喜んで行ったら、くんないの。
春日 うん。
平山 「汚いでしょう」とか言われて。「ええ、そう」とか。で、「それじゃあソージします」って。もうドン詰まりだからあがいても何も出てこない、身動きできないダルマ状態だったんで、「仕方ないけど、それやるか」って掃除したんです。すごく掃除した。全部キレイにして、床も30センチごとにマス切って、そこをクレンザーとタワシで磨いて。トイレなんて3年、掃除しなかったから。そこはもう、妖怪便所みたいになってて、『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくるような。ねずみ男が使ってたみたいな便所だったのを、ホテルのトイレみたいにピカピカにした。金属磨きまで持ってきて。そうしたらそのあとすぐにね、6冊書けたんです。いきなり6冊書いて、その次の年は12冊かなんか書いて、18冊ぐらいまでいったんです。で、今は書き過ぎていて気が狂いそう。

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

「面倒くさい」が「狂い」のはじまり
バルンガ病の人々
"雑"な狂人たち
"ハイ"になってしまった人々
殺す狂人たち

★★★★★★☆☆☆☆


鬼畜精神科医と鬼畜小説家の対談。「鬼畜精神科医」なんて作中では一言も書いていないけど、「イシャってこんな不謹慎なこと言う人もいるんだ!」って思いました。
面倒くさいということが多くのダメなことの元凶になっているというのは非常に納得できたしタメになった。僕も部屋がよく汚くなってしまうので、定期的に人を家に呼んで、必死で掃除するということを年に数回やりますが、掃除する前と後では部屋での過ごし方が変わる気がしますね。
僕は平山夢明という人の小説が大好きでたくさん読んでいるのですが、ラジオではアホみたいなことばっかり言っていても、この本を読むとすごく頭のいい人で、いろんなこと考えて、調べて、経験してああいう小説を書いているんだな、と思った。ただ単に「鬼畜」の一言で済ませられるような人ではないですね。
「面倒くさいがすべての元凶」の他には、「加害者は被害者意識を持っている」「詐病はその思考自体が本病」「『もったいない』は人を狂わす」「シリアルキラー」などの話題を扱っています。「シリアルキラー」の部分は平山夢明「異常快楽殺人」の内容を題材に対談してます。