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aotoao

December-01-2002 [ each organ ] - asuna

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ASUNA

"EACH ORGAN"

"organ"という言葉は、「組み立てられた道具・器具」としての意味を持ったギリシア語の"organon"を起原とする。その"organon"は、"ergon"という"energy"の語源でもある言葉と同系の意味を持つ。つまり、元来"organ"という言葉はより多義的なもので、"ergon"-"energy"としての意味も内包していた。

機械的力または運動によって仕事をする装置としてのorgan(機関)と、一定の独立した機能を有する集合体としてのorgan(器官)。それらの連結した作用によって達成される、楽器としてのorgan。それら各々のorganとしての運動を同時計測する。これにより、エネルギー体としてのorganの特性が顕在化された新たな側面が見えてくる。

これは語源として同じ意味を持つ"energy"の観点から"organ"の原義を再考察するための試みである。


case of yamaha L-2D organ

track 1. 機械的力によって仕事をする装置としてのorgan(機関)である送風機モーターの外壁の振動を計測する。と同時に、モーターでの内部の減圧により自由振動するリードの集合体としてのorgan(器官)である笛差室の外蓋の振動を計測して得られた記録。リード部は、振動を得やすいように、等間隔に12枚を選定して振動させた。

track 2. 計測1とほぼ同じ条件下によるが、自由振動リードの計測においては、リードの小さいものから順に振動を一枚ずつ加えてゆく。それらの振動の経過を計測して得られた記録。

□ ASUNA

(2002.12.01)






review

■ ASUNA  "EACH ORGAN"

以前より、カセットテープ録音による作品が一部で話題を呼んでいたasunaの、CD-Rによる2トラック入りの最新作品。ヤマハの電気オルガンL-2Dの内部2ケ所に取り付けられたピエゾ・マイクによって集音されたorgan(器官/機関)の起動音の記録。このCD-Rの本人による解説を引用させてもらうと、organ の語源には「エネルギー」の語源でもある ergon と同系の意味を含んでおり、元来のその多義性を踏まえた上で、語源として同じ意味を持つ"energy"の観点から"organ"の原義を再考察する試みの記録、ということである。

聴き始めた直後にはオルガンによるドローンの様であり、懐かしさすら覚える素朴な音の奥でミュージック・コンクレート的マシナリーなモーター起動音が微かに心地よく響く。しかし暫く聴いていると、これは冷静さと愛情に裏打ちされた求道者による、実はかなり激しい音の記録なのではないか、という思いがしてきた。今現在ライブの回数は少ない彼だが、今後の活動が楽しみである。

□ 伊東篤宏 (http://www.japanimprov.com/aito/aitoj/index.html)

『Improvised Music from Japan EXTRA 2003』誌上より転載。(2003.10.20)






■ ASUNA  "EACH ORGAN"

asuna の作品はどれも「緩やかな」という形容詞が相応しい。この作品では「オルガン」の語源(ギリシャ語"organon")から、楽器としての構造とそれらを統合した器官としてのオルガンの音を扱っている。どの要素も緩やかに瓦解し、混ざり合い、asuna の手によって奏でられる物語の一遍となる。モノとしての音と言葉の関係を追求しつつ、音楽の流れを自然に汲みとった美しい一品。そこにはサウンドアートと呼ばれる領域の緩やかな瓦解もあるのかもしれない。2000年以降このように横断的に音を扱うアーティストが増えてきた感がする。大変喜ばしい兆しだ。

□ 佐藤実 (http://www.ms-wrk.com/)

『2005年 ユリイカ 3月号「ポスト・ノイズ」』誌上より転載。(2005.03.01)