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Apes! Not Monkeys!  本館

2016-06-21

[]『もうひとつの「帝銀事件」』

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本書はそのサブタイトルが示す通り、2015年11月に行なわれた「帝銀事件」20回目の再審請求*1にあたって提出された鑑定書を再編集したものです。もう一つの「帝銀事件」とは、12人が毒物で殺害された「帝銀事件」とは別の、平沢貞通という人物が巻き込まれ逮捕から39年後に獄死することとなった事件、「平沢貞通事件」(13ページ)を指します。

内容的には(1)目撃証言の心理学的検討、(2)平沢元死刑囚が(虚偽)自白に陥るまでの過程の心理学的検討、そして(3)自白から否認に転じるプロセスの心理学的検討、が3本柱となっています。(3)が独立した論点として設定されているのは、周知の通り平沢元死刑囚にはコルサコフ症候群の発病歴があり、そのため否認に転じて以降に行った「なぜ自白したか?」に関する説明の理解が歪められてきたと筆者は主張しているからです(「見逃されてきた平沢の正常性」)。

特に印象的だったのは2点。まずこの事件では平沢以前に被疑者となり「自白」までしたのにその後容疑が晴れた人物がおり、平沢公判にも証人として出廷しています。この事件の捜査、裁判に関わった司法関係者はまごうかたなき虚偽自白の事例を前にしながら、平沢については虚偽自白の可能性を真剣に検討することなく法的手続きを進めていったことになります。

また変遷が甚だしい目撃証言に対する確定判決の証拠評価は恐ろしく杜撰で、現在であればそもそも有罪判決は下せないのではないか、と思わされました。筆者は刑訴法第317条をもじって「証拠は、事実の認定による」という反転が生じていた(76-77ページ)と指摘します*2。にもかかわらず一旦有罪が確定すると、「再審」という高い壁が立ちはだかることになるわけです。

*1:長らく再審請求人だった平沢元死刑囚の養子武彦氏が2013年に亡くなったあと、2015年に請求人を引き受ける直系遺族が現れた。

*2:ただしこの事件発生は刑事訴訟法の改定前。

2016-06-15

[]供述分析新刊

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浜田寿美男さんの供述分析に関する書籍が立て続けに刊行されました/ます。

もちろんどちらもすでに書店に注文しました。

2016-06-04

[]焼け太りにも程がある

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もともとは検察の不祥事(というより犯罪)に端を発したはずの刑事訴訟法改革なのに、結果として検察にとっては100点満点の刑訴法改悪となった。「ごく一部とはいえ取調べが可視化されたのだからそれなりの成果なのでは?」なんてとんでもない。検察にしてみれば裁判員裁判では録画を利用できるのだから。そのことは今市事件での無期懲役判決が証明したばかりだ。今後はまず任意の取調べのうちにギューギュー締めあげておいて逮捕状を執行したとたんに「さあ、事件についてうかがいましょうか(ニッコリ)」といった取調べが行われることになろう。

もちろん数のうえでは、虚偽自白の大半は裁判員裁判の対象とならないような事件(起訴猶予処分や略式起訴がありうる事件)でこそ生じているであろうことは言うまでもない。

2016-05-28

[]ヘイトスピーチ対策法成立にあたって

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私が民族差別や性差別を扇動、助長する表現の法的規制に反対しない理由については、当ブログで「表現の自由、キリッ」問題として述べてきた通りです。「恣意的な取り締まり」等を理由として反対する論者の主張があまりに具体性を欠いており、まじめに相手をするに値するものにほとんど出会わなかったからです。

勘違いしてもらっては困るのですが、私は警察が法律を恣意的に運用して市民運動等を弾圧する恐れがない、と言っているのではありません。当ブログの読者の方であればご承知いただいているかと思いますが、公安警察の別件逮捕、微罪逮捕に関しては度々批判的な記事を書いてきました。ではなぜか? それはヘイトスピーチへの法規制がなくてもすでに現に警察は恣意的な弾圧をしているから、です。ヘイトスピーチの違法化は、せいぜい使える手段をひとつ増やすに過ぎません。逆にいえば、ヘイトスピーチの違法化を阻止したとしても、たかだか「使える手段がひとつ増えるのを阻止できる」にすぎないのです。

警察による法の恣意的な運用を阻止するために必要なのは、裁判所が警察をきちんと監視するように市民が裁判所を監視することであり、議会が行政をきちんとコントロールするよう市民が国会を監視すること、です。マイノリティにしわ寄せをくらわせることではありません。

2016-05-03

[]食卓への影響? あるでしょ!

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絶滅したら食卓から消えますな。影響ありますな。規制なんかよりよっぽどでかい影響ですよ。なにしろとりかえしがつかないんだから。

しかし「ニホンウナギは乱獲などで養殖に必要な天然稚魚が激減」「太平洋クロマグロは、海を回遊する成魚が1995年から12年までに約7割減少」なんてことが書いてある記事に「食卓への大きな影響はひとまず避けられそうだ」なんてあるのはもはやホラーというべきでしょう。

[]ということで、いまさらながら録画を見た

上の記事で思い立って、録画したっきり見ていなかった(見てもどうせろくなもんじゃないのがわかっていたので)、1月26日放送の「ガイアの夜明」を見ましたよ。サブタイトルは【新たな“食材争奪戦”ニッポン式で挑む!】。ヴェトナム沿岸で穫れるキハダマグロを日本に持ってこよう、というはなし(他にレタス栽培の話題も)。日経新聞がスポンサーだから当然といえば当然なんだろうけど「日本人が求める品質」だの「鮮度」だののはなしばかりで、資源の持続可能性という視点は文字通り皆無。見たら腹が立つのがわかっていてみる方がバカなんでしょうよ、ええ。