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Apes! Not Monkeys!  本館

2018-05-21

[]「ご飯論法」といえば……

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“働かせ方改悪”法案をめぐる質疑における加藤加藤厚労省の答弁が「ご飯論法」だ……という批判が話題になってますね。それを受けて第二次安倍政権に「ご飯論法」が蔓延しているのではという指摘もあります。

私も一つ、類似の例を思い出しました。

 防衛庁防衛研究所図書館の永江太郎資料専門官の話 こういうたぐいの資料があるという認識はあった。しかし、昨年暮れに政府から調査するよう指示があったが、「朝鮮人の慰安婦関係の資料」と限定されていたため、報告はしていない。(後略)

1992年1月11日の『朝日新聞』朝刊より。そう、「慰安所」への軍の関与を否定してきた日本政府の嘘が明らかになった日です。要するに、「嘘ではない」という言い逃れの余地を残してごまかそうとする時の、定番のテクニックということなんでしょう。

2018-05-13

[]「ブレイブ 勇敢なる者“えん罪弁護士”完全版」(追記あり)

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もう一ヶ月前のことになってしまいましたが、2016年にNHK総合で放送された「ブレイブ 勇敢なる者「えん罪弁護士」の完全版(放送時間が50分から100分へ)がBS1で放送されておりました。

地上波版を見た際の記事と今村氏の著書に関する記事は以下のとおりです。

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20161127/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20130204/p1


以下追記

この「完全版」の方で詳細に取り上げられていたのが、2014年の7月に東京高裁で逆転無罪判決が出た、バス車内での痴漢事件。一審では、被害者が“左手でつり革を持っていた犯人が右手で触った”と供述していたところ、弁護側が右手で痴漢行為を行うことが不可能であることを立証すると、“左手で触ることが不可能とは言えない”というロジックで有罪判決を下していた事例。

……と紹介すると思い当たられた方もおられるかもしれないが、これは今年の3月にNHKのEテレの「ろんぶ〜ん」という番組で放送され多くの批判を浴びた「ロンブー淳と論文を楽しむ!「痴漢」のおもしろすぎる論文」でとりあげられた研究のきっかけになった事件だ(番組への批判については例えばこちらなどを参照)。今回の「完全版」にも、「ろんぶ〜ん」に出演していた認知心理学者の厳島行雄氏が登場する。管見の限りでは、「ろんぶ〜ん」批判のほとんどは厳島氏の研究にではなく番組のとりあげ方に向けられていたようだが。

自白していれば執行猶予がついたり、略式起訴ですんだり、さらに被害者と示談が成立すれば起訴猶予になることが多い……といった事件における“隠れ冤罪”はかなり多い、というのは冤罪事件に関心を持つ法律家やジャーナリストがしばしば指摘することではある。これを踏まえてコメントしておきたいのは、仮に痴漢事件で冤罪が少なからずあるとすれば、その背景の一つは痴漢がこの社会において“軽微な犯罪”だとされていることにあるのではないか、ということだ。警察も“軽微な犯罪”だと思うからこそ客観的な証拠についてはおざなりな捜査ですませて自白をとって片付けようとするし、検察や裁判所の判断も“軽微な犯罪”だという前提のものになるから「執行猶予」「略式起訴」「起訴猶予」といった利益が虚偽自白の動機になりうるわけだ。ミソジニー混じりで“痴漢冤罪”をとりあげるのは、冤罪防止にはまったく役立たないだろう。

2018-05-09

[]袴田事件即時抗告審、来月決定へ

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静岡地裁の再審決定からすでに4年以上がたっていますが、来月11日に東京高裁が検察の即時抗告に対する判断を下すことが決まったとのことです。

高裁が検察の即時抗告を斥けたとしても、大崎事件のことを考えるとさらに特別上告する可能性は否定できません。検察が上告を断念せざるを得ないほどの明確な決定が下ればよいのですが。

2018-04-17

[]『壊れる男たち』

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(ツイッターでこの本が話題になっているのを見かけたので、旧ブログの記事をサルベージ。初出は2006年4月7日。)



著者は東京都の「女性相談窓口」などで労働相談の仕事に携わっていた労働ジャーナリスト(43年生まれ)。セクシャル・ハラスメントに“加害者男性の実存”という観点から切り込んだ本。

もともとひどいはなしを集めた本だから、それを読んでいやな気分になるのは自業自得ともいえるが、まあ後味は悪いです(もちろん、それは著者のせいではない)。興味深いのは、とりあげられた事例の加害者男性がそろって、男性である著者に対してホモソーシャルな共感に訴える弁明をすること(「男だったらわかるでしょう、女というのは○○なもんですよ」)。それが通じないとわかったときの加害者のうろたえぶりは滑稽でもあり醜悪でもあり情けなくもある。

ところで問題は、タイトルが示唆している認識……セクシャル・ハラスメントが近年増加・悪質化しているという認識の妥当性。「セクシャル・ハラスメント」という概念が“輸入”される以前の実態についてはきちんとした調査もないだろうし、暗数の多いトラブル(というか犯罪なのだが)だからなかなか実態はわからない。“昔はもっとひどかったんじゃないか”とする根拠もいくつか思いつくし、反対に“実は昔はさほどひどくもなかったんじゃないか”と推定する根拠もいくつか思いつく。ただ、昨今の雇用の流動化で中年男性のストレスが高まっていることが、セクシャル・ハラスメントが(社会問題として認知されているにもかかわらず)後を絶たないことの背景ではないか…という著者の仮説にはそれなりの説得力を感じる(雇用の流動化は同時に、女性が簡単には離職できなくなることをも意味するので、これもまたセクハラの誘因となろう)。

ともあれ、非婚化・少子化の原因を若者(特に男性)のコミュニケーション能力にもとめる仮説がデタラメだという私の主張は、この本によっても裏付けられる。被害女性におのれの勝手な妄想を投影するだけでろくにコミュニケーションできない中高年男性(妻帯者)の実態(もちろん、全員というわけではない)がよくわかるから。

もうひとつ、本書の中心的な主題からは逸れるが、ひどいなぁと思ったエピソード。とある案件で加害者、被害者の勤める企業の人事部長と(被害者を交えて)面談した際のこと。多くの場合企業が加害者社員をかばうのに対して、このケースでは人事部長があっさりと加害者への厳しい処分(解雇)に同意したので著者もびっくりする。そこで明らかにされる事情とは…

 ―いや、彼にはいろいろ問題がありましてね。もうお気づきかもしれませんが、彼はラインをはずれた部長で、部長といっても部下なしなんですよ。定年待ちポストというヤツで、部下代わりに派遣社員をあてがっている……。

要するに、派遣社員は窓際族をあやすためのおもちゃだ、というのである。いっけんしたところセクシャル・ハラスメントに厳しい態度をとっているようにみえて、派遣社員への眼差しという点では加害者社員と五十歩百歩である。

2018-04-10

[][]『獄友』

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公式サイトの「上映スケジュール」は地域別に整理されていないので探しづらいのですが、関西では4月7日から、十三の第七藝術劇場で上映されています。週ごとに上映スケジュールが変わりますのでご注意ください。

その他関西では、神戸の元町映画館と京都の京都シネマで6月から上映予定です。


昨年4月に放送された ETV 特集「獄友たちの日々」の劇場版。ETV 特集でも使われていた素材がもちろん目につくが、上映時間はTV版の倍なのでいくつかのモチーフはTV版よりずっと丁寧に描かれている(例えば釈放後の袴田さんの生活ぶりなど)。その一方、ETV 特集では強調されていた桜井さんの「不運だったけど不幸ではなかった」という発言は使われておらず、ナレーションが代わっている(監督自身が担当)など、テレビとはまた違った印象を与える編集になっているので、テレビをご覧になった方でも出かける価値はあるかと。