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Apes! Not Monkeys!  本館

2017-08-11

[]これでも「少年法は未成年を甘やかしてる」?

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 警視庁高井戸署員が2015年、当時中学3年の少年2人の任意聴取中に「高校に行けなくしてやる」と脅したとして、2人の父親が10日、都内で会見し、少年1人が録音した聴取時のやりとりを公開した。聴取は同級生に万引きを強要したとして行われたが、警視庁は同日、不適切な聴取を認め、万引きの強要は確認できなかったと説明した。

(中略)

 署員らは2人に黙秘権を告げず、「逮捕状でも何でも取ってやる」「鑑別(所)でも少年院でもぶちこむしかない」「認めないと牢屋に入れる」などと発言。2人は当初、万引きの強要を否定したが、こうした聴取に強要を認め、1人は反省文を書いたという。

(後略)

絵に描いたような自白の強要ですが、警視庁の「署員らが責任感から行った」という弁明は見過ごすことができません。これが悪質な捜査員の暴走ではなく、日本の司法当局の体質に根ざすものであることを示唆しているからです。録音された捜査員の発言には「いまな、ごめんなさいって言えるチャンスをあげてるだけなんだぞ」「向こう(別の少年)は反省、ごめんなさい、反省がちゃんとできてる。てめえだけなんだよ」「お前、俺たちがお前をワナにはめようだとか、そういう風に思ってんのか知らねえけど、俺たちはお前にチャンスを与えているだけの話だから」「てめえはこれから全部書いて、親にもバンと言って、『もう二度としませんから許してください』って言わない限りは、高校行けねえから」など、取り調べを「反省」の場として位置づけていることを示すものが含まれています。このような姿勢が虚偽自白の温床であることは、当ブログにおいて浜田寿美男氏らの見解を引いて何度か指摘してきました。

2017-07-14

[]『読売新聞』連載「再審無罪」

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『読売新聞』(西部朝刊)の連載シリーズ[道あり]で、「再審無罪」と題して免田栄さんに関する全5回の連載が掲載されていました。6月6日から6月10日までです。

 1948年12月、熊本県人吉市で起きた強盗殺人事件「免田事件」。6度にわたる再審請求の末、免田栄さん(91)は83年、死刑囚として初めて無罪となった。以来、死刑制度の廃止を、国内外で訴え続けてきた。

このように始まる連載は、死刑廃止のための免田さんの取り組みにも焦点をあてています。

 死刑囚として日本で初めて再審無罪となった後は、社会復帰とともに、死刑制度の廃止などを積極的に世の中へ訴えてきた。1983年の釈放後は、「2か月ほど自宅に戻らなかったこともあった」というほど講演に奔走。北海道から沖縄まで、くまなく巡った。

 2007年10月には、国連本部(米ニューヨーク)で行われたパネル討論に出席した。「冤罪(えんざい)が生まれる可能性がある以上、死刑制度は廃止すべきだ」という訴えに、世界各国から集まった聴衆から大きな拍手をもらった。

(6月10日掲載、第5回)

 最近は、表立った活動はほとんどしない。ニュースで冤罪や再審が報じられても、街行く人の表情から「多くの国民にとっては人ごと」と感じている。それでも、「死刑反対の気持ちはずっと変わらん」。

(6月10日掲載、第5回)

昨日、再審請求中だった死刑囚の死刑執行が明らかとなりました。大崎事件でも検察は2度めの再審開始決定に対して即時抗告するという暴挙に出ています。冤罪の可能性にきちんと向き合おうとしない日本政府に、“執行引き延ばし目的の再審請求”などと主張する資格があるのでしょうか。

2017-06-28

[]大崎事件で再審開始の決定f:id:apesnotmonkeys:20081226100433j:image:right

再審請求人の原口アヤ子さんは一貫して否認してきましたが、「共犯」とされた親族が「自白」しているためこのタグを用います。

再審開始決定の要旨はこちら。供述分析の意義が認められているのが目を引きます。

当ブログでこれまで大崎事件に言及したのは以下の記事です。

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20161023/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20150707/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20150319/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20140717/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20131116/p1

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20130414/p1

2017-06-27

[]「母は死刑囚〜息子が語るもう一つの和歌山カレー事件」

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  • MBS「映像'17」 2017年6月25日(日) 深夜(26日未明)0時50分〜 「母は死刑囚〜息子が語るもう一つの和歌山カレー事件」

和歌山毒カレー事件も再審請求中(和歌山地裁が請求を棄却した後、弁護側が即時抗告)の事件ですが、なにぶん主たる争点であるヒ素の同一性の問題についての双方の主張を検討することは私の能力を超えるため、当ブログではほとんど取り扱ってきませんでした。自白もないため、「自白の研究」タグではなく[政治・社会]を用いることにしました。


当時のメディアスクラムや被疑者宅への落書きなどの映像が、あらためて当時の日本社会の異常な反応ぶり(その頂点が被告人の自宅への放火)を思い出させます。林死刑囚の息子が番組の最後に漏らした「振り返ると、けっこう散々な人生」という言葉を否定できる人間はいないでしょう。この社会が4人の子どもたちに対して犯した“罪”はいまだ検証を待っていると思わざるを得ません。

2017-06-25

[]供述分析に依って無罪判決が下ったケース

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自白の信用性が否定され、放火殺人事件について無罪判決が下った事例が弁護士ドットコムNEWS で紹介されています。

この無罪判決には、心理学者による供述分析が一定の役割を果たしたようです。

芥川「供述心理学者の村山満明教授(大阪経済大学)に自白を鑑定してもらったのが大きかったです。具体的には、取り調べの映像(DVD)や自白調書、取り調べメモ、それから弁護人が接見の際にとっていたメモを渡し、分析してもらいました」


那須「たとえば、彼女の自白内容の変遷について、検察官は『最初は罪を軽くすべく有利になるように嘘を言い、次第に真実を打ち明けたからだ』と主張しましたが、村山教授の分析によりそうではないとわかりました。


彼女の自白はむしろ不利な内容から有利な内容に変わっていたり、部屋の電気をつけたか否かやカーテンを閉めたか否かなど罪の重さに関係ない部分も変遷していたのです。村山教授は彼女の自白の変遷を『真犯人の自白の変わり方ではない』『迷走している』と評価しましたが、判決でもそう評価してもらえました」

浜田寿美男氏が言うところの“自白が無罪を証明する”ケースだったようです。なお、この村山満明をファースト・オーサーとし、浜田寿美男氏も共著者の一人となっている論文が公開されています。

[]『「自白」はつくられる』

  • 浜田寿美男、『「自白」はつくられる―冤罪事件に出会った心理学者』、ミネルヴァ書房、2017年2月

ミネルヴァ書房のPR誌『究』での連載がベースとなったもの。著者がこれまで関わった事件・裁判を振り返りつつ「供述分析」についての著者の最新の知見が語られている。最近「虚偽自白」に関心を持ったという方には、最初の一冊としてよいかもしれない。

個人的に興味深かった点を2つほどご紹介。

まず、再審(請求)においては、証拠が脆弱な事件ほど冤罪を晴らすのが難しい、という指摘(136ページ〜、204ページ〜)。足利事件の場合はDNA鑑定が決定的な証拠だと確定判決で評価されており、だからこそ鑑定の誤りを明らかにすることで再審無罪を勝ち取ることができた。しかし曖昧な証拠が多数積み上げられているケース(名張毒ぶどう酒事件など)では、一つの証拠に疑義を突きつけてもそれが決定的な反証とはみなされない、というのだ。原判決の事実認定が危うければ危ういほどかえって覆しにくい、というのはなんとも皮肉なことだ。

もう一つは“真犯人の虚偽自白”についての議論(第7章)。量刑に影響を与える犯行動機等の供述が、捜査当局の「犯行の事実をそのありのまま、できるだけ正確に聴取しようとするというより、むしろこの許されざる犯罪を厳しく罰するべく、犯行の事実をできるかぎり重く取ろうとする姿勢」によって歪められてしまう恐れが指摘されている。