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Apes! Not Monkeys!  本館

2010-02-04

[]特捜の捜査について

f:id:apesnotmonkeys:20081226100523j:image:right

上記記事は特捜の捜査がとりわけ異常であるというニュアンスを滲み出させているが、志布志事件を思い起こすまでもなく、被疑者や参考人のこのような取り扱いは(頻度について具体的なデータがあるわけではないが)決して特異なこととは言えないのではないか。

上記エントリで紹介した記事によれば「本部長や署長の承認なしの午後10時以降や1日8時間超の取り調べ」が3件把握されたとある(2008年9月から翌3月まで、全国の警察で)。警察庁が禁止行為のすべての事例を把握しているとは限らないし、「本部長や署長の承認」があった場合にはそもそも「禁止行為」ではないということになる。しかも警察の認識では「取り調べを担当した警察官は、「それほど悪質ではない」として懲戒処分ではなく口頭で注意を受けた」というくらいだから、多少マシな事例ならどれくらいあるか知れたものではない。

むろん、事件に関する知識があるとも思えない関係者を10時間も事実上拘束し、外部との連絡すら許さないことをよしとするのではない。だが、事件が社会的関心を集め、かつ小沢一郎を筆頭に関係者が平凡な市民よりも自らの人権を守る手段を持っているからこそこういうことも表に出てくるのであって、誰にも知られずに違法な、あるいは違法すれすれな取り調べをうけている人間がいることも想起せねばならないだろう。

ロッキード事件の公判中、『諸君!』を中心とする右派論壇が田中擁護論、裁判(検察)批判を展開したが、田中の「別件逮捕」を問題にする論者が田中より遥かに厳しい取り調べをうけた*1丸紅側被告の人権についてなどなにも語らなかったことを思い出そう。

他方でこんなニュースもある。

この事件では事後に証拠隠滅や口裏合わせを目論んだと評しうるようなこともあったようだから、保釈が認められないとして(実際、認められないだろう)も正当と言えるだろう。だからこの保釈申請は「通る見込みのないことをわざわざやっている」という意味ではなるほど「非常識」ではあるだろうが、取り調べのための身柄拘束はあくまで犯罪に対する罰ではない。にもかかわらず刑法学者を引っ張り出して「非常識」「「世間には『まだ事件から逃げている』と映る」「担当弁護士は裁判にマイナスの請求だと分かっているはず」などと報じる意味があるのだろうか。仮に保釈申請をしたら「裁判にマイナス」なのだとしたら、拘置所と刑務所の違いなんてなくなってしまうのではないか。

*1:田中は外為法違反容疑で逮捕されたが、その後収賄容疑で再逮捕されることもなく、自白調書も取られずに保釈されている。

Bill_McCrearyBill_McCreary 2010/02/04 22:42 保釈の請求自体は、被告人の当然の権利なのですからそれを請求したからってマスコミその他第三者が非難するのは不当である…なんて程度のことがなんで認識されないんですかね。板倉さんが記事にあるようなコメントをするのはだいたい予想できますが、でもこれ刑法学者の発言としてはいただけませんよね(失笑)。

それにしても、裁判員制度が導入されてもこのような類の話がスポーツ新聞に堂々と掲載されるのではお話にもなりませんね。

>田中は外為法違反容疑で逮捕されたが、その後収賄容疑で再逮捕されることもなく、自白調書も取られずに保釈されている。

言われてみればそうですよね。確かに収賄容疑での田中の逮捕がなかったってことは、忘れてはなりませんね。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/04 22:52 Bill_McCrearyさん

>でもこれ刑法学者の発言としてはいただけませんよね

刑事訴訟法ではなく刑法の専門家にコメントを依頼するマスコミもマスコミだと思いますけどね。まあサンスポになにを期待しているのだ? と言われればそれまでですが。
今回民主党(およびその支持者)から出てきた検察批判はことごとくロッキード事件の時のそれとそっくりなので、「ああ、変わらないなぁ」という感慨がありますね。

あと、安田弁護士が弁護団に参加したことが話題になってますが、田中弁護団にも控訴審からはいわゆる「人権派弁護士」の大物が参加してます。

おいもおいも 2010/02/04 23:24 宮台真司がロッキード事件の時なみの陰謀論を「おもしろい見解」と紹介していて仰け反りました。

http://www.miyadai.com/index.php?itemid=837

流石小室直樹のお弟子さんだなと……(笑)。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/05 07:07 おいもさん

いやまったく、

>流石小室直樹のお弟子さんだなと……(笑)。

としか言いようがないですね。

>田中角栄時代から米国中枢部に目をつけられていた小沢幹事長の不起訴が、検察があれだけ動きながらも唐突に確定したことと、同時に郵貯資金の米国行きが決まったことは、関係ないと思えと言われても難しい。

そんなこと、あっさり信じろと言われても難しいw

cbcb 2010/02/06 01:48 扇動政治
自らを疑わない検察、口を開けば前ならえのマスコミと国民。
相も変らぬ美しい国の原風景ですね。

筑紫哲也さんは異口同音は専制の始まりだと言ってましたね。
みんな同じ事を主張し出したら思考放棄になる。
何も考えていないならもう誰も専制に反対しなくなる。
あとは人間を爆弾にして敵にぶつけてしまえばいい。
あれ、どこかで聞いたようなお話ですね。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/06 22:23 cbさん

新聞の報道がかなり画一的なのは確かですが、他のメディアまで含めて考えればとても「異口同音」とは言えない状態だと思います。なにより、政権与党から検察批判ないし小沢擁護論が出ていることは無視できない事実であり、主要メディアが与党べったりな報道をしている状態とははっきり区別されるべきでしょう。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/08 16:11 宮台真司が「おもしろい」と評した苫米地説を、これまた小室直樹の弟子を自称するソエジーが「一番、最新で優れている」と評してます。
http://www.snsi-j.jp/boards/bbs.cgi?room=sample1
さすが、というべきか。

一愚民一愚民 2010/02/10 04:02 南京大虐殺に関する論考と実証、その都度、学び、また納得しています。

その上で……今回の件ですが、新政権は権力の座にはつきましたが、
権力を掌握したとは思えません。無論、アメリカ云々といった陰謀論には
与しませんが、旧政権ファミリーの残党や既得権者たちの抵抗はさまざまな
形で現出してもおかしくないのではないでしょうか? たとえば(こうした
事件にならずとも)革新系首長はさまざまな形での抵抗を受けているのでは
ないでしょうか?

また政治的な捜査や検挙に関しては、共産党ビラ事件や、清和会関係者が多く
含まれているオリエント貿易迂回献金疑惑での捜査見送りなどを見ても、私は
その存在を疑っております。

私は一貫して非自民・公明を貫いてきただけで、民主党にも社民党にも、さら
には共産党にも投票歴がある人間ですから、いわゆる民主党信者ではありません
(要らぬ自己申告なのですが……)。

そんな私でも(だからこそといわれるかもしれませんが…)、ひとこと言いたく
なるようなキナ臭さを感じてしまうのです。

このような状況で、検察に疑義を呈することは、やはり禁じ手なのでしょうか?
(もちろん与党政治家が言うのは危険な行為だと思いますが)

もっとも今回気づきました。旧与党に関係する事件では、私は確実に「推定有罪」
思考だったことを。これはやはりフェアではなかったのかもしれません。

名無しさん名無しさん 2010/02/10 07:31 鈴木宗男議員が週刊朝日の報道に関して質問趣意書を提出したようです
http://www.muneo.gr.jp/html/diary201002.html
◎ 本日提出した質問主意書2件
・№32 外務省の報償費に対する鳩山由紀夫内閣の見解に関する再質問主意書
・№33 東京地方検察庁による事情聴取のあり方について報じた週刊誌記事に対する同庁の抗議に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/10 10:47 一愚民さん(というハンドルでは呼びかけにくいですね(^^;)

コメントありがとうございます。
もちろん政治家を対象とする捜査は、「何を検挙するか」も「何を検挙しないか」もすべて政治的な意味合いを帯びてしまうことになります。しかし今回の場合は昨年の衆院選の前からあった疑惑ですし、検察は自民党の側にも捜査の手を伸ばしてバランスをとろうとしていたように思います。したがって「新政権への妨害」といった見方は(現状で明らかになっている情報から判断する限り)あたっていないのではないか、と私は思っています。

>このような状況で、検察に疑義を呈することは、やはり禁じ手なのでしょうか?

というより、検察の捜査を是とするにせよ非とするにせよ公判が始まって検察・被告人の双方が自らの主張を(証拠とともに)表に出すまではあまり生産的な議論にはならないんじゃないか、ということです。例えば取り調べの手法に問題があるといったことであればリアルタイムで批判していくことも必要ですが、そもそも捜査に着手したこと自体が正当だったかどうかは結果(裁判)によってはかるしかないわけですから。
もちろん、これは捜査当局のリークを中心に報道合戦するマスコミについても言えることです。

名無しさん

「検察庁による事情聴取のあり方に関する質問主意書」の方はまだ質問が閲覧できないみたいですね。それから鈴木議員は「検察庁における裏金問題について指摘した元大阪高等検察庁公安部長の発言に対する千葉景子法務大臣の見解に関する質問主意書」も出してますね。こちらも要注目です。

vagabondvagabond 2010/02/11 21:50 久しぶりです。

ピンと外れかもしれませんが、今回の「小沢疑惑」で検察の「リーク」を問題にする人々がいます。
尤も「リーク」といっても、例えば記者会見で「(被告は)何々と供述した」などというものではなく、記者が(多分)取材の中で得た感触とかこっそり聞いた話ではないかと想像します。

それはともかく、仮に検察のリークだったとしても、被告や小沢さん側はなぜ反論しなかったのでしょうか。
単独の犯行で、その人が逮捕され代弁者がいないときには確かに‘反論’の機会はありませんが、石川被告などは逮捕されていても、小沢さん初め弁護士などがいるわけですから反論の機会はいくらでもあったはずです。

「サンプロ」で大谷某コメンテーターが「(小沢弁明のパソコンデータは)検察しか分からないことで明らかなリークだ」と息巻いていましたが、何が悪いの分かりません。
小沢さんや関係者は「それはでっち上げだ」などと反論できるわけです。

光市の「母子殺人」事件でも弁護側が‘とんでも’発言を繰り広げ顰蹙を買ったことは記憶に新しいところです。

リークして何が悪いのだろう、と思うのですが如何でしょうか。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2010/02/12 00:12 vagabond さん

>リークして何が悪いのだろう、と思うのですが如何でしょうか。

まず第一に、マスコミは警察や検察からのリーク情報と被疑者(被告人)の言い分とを決して等分に報道しないであろう、という問題があるのではないでしょうか。第二に、これと関連して、日本では逮捕された人間への石けんが非常に制限されていますから、被疑者やその関係者が「反論」しようにも逮捕された人間のおかれている状況について十分な情報を得られないことが多いわけです。
もっとも、小沢一郎に関して言えば、現在の日本で彼以上に検察と対抗する力を持つ人間はほとんどいないと言ってよいでしょうから、私自身も過剰な小沢擁護論に与するつもりはありません。起訴された事案の公判を粛々と見守ればよいのではないか、と思っています。

ただし、

>光市の「母子殺人」事件でも弁護側が‘とんでも’発言を繰り広げ顰蹙を買ったことは記憶に新しいところです。

については同意できません。「とんでも」であったかどうかは、日本の司法の実態を前提とすれば大いに議論の余地のあることだと思います。

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