ややこしい

厚労省元局長の関与の有無が争点の一つとなっている一連の郵便不正事件裁判で昨日(11日)「凜の会」発起人だった被告人への判決が出たのだが、asahi.com の見出しが「郵便不正事件、今度は村木・厚労元局長の共謀認める判決」、毎日jp のそれが「障害者郵便割引不正:「凜の会」発起人に有罪 元局長の関与触れず−−大阪地裁判決」となっていて、これだけ読めば同じ判決の報道とは思えない。毎日の報道に従えば事情は次の通り。

 虚偽有印公文書作成・同行使罪は作成権限を持つ公務員を処罰する「身分犯」で、権限があるのは当時課長だった村木被告。そのため判決で村木被告が無関係と判断されれば、河野被告には身分犯ではない公文書偽造罪が適用される可能性があった。しかし判決は村木被告の関与について具体的に言及しないまま、起訴内容を認める河野被告を「身分なき共犯」と判断した。
(http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100512ddm041040152000c.html)

つまり毎日は「村木被告の関与について具体的に言及しない」点をとらえて「元局長の関与触れず」と見出しを打ち、朝日は公文書偽造罪ではなく虚偽有印公文書作成・同行使罪が適用された点をとらえて「厚労元局長の共謀認める」としたのだろう。

 厚生労働省から自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会、東京)に偽の証明書が発行された事件で、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われた同会元幹部、河野克史(ただし)被告(69)の判決が11日、大阪地裁であった。横田信之裁判長は、共犯とされる同省元局長との共謀関係を認め、懲役1年6カ月執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。


 横田裁判長は、一連の事件でそれぞれ起訴された同省元局長の村木厚子被告(54)=公判中、無罪主張=と部下で元担当係長の上村勉被告(40)、凛の会元会長の倉沢邦夫被告(74)の公判も担当。偽の証明書発行について起訴内容を否認した倉沢被告の判決(4月27日)では、村木元局長との共謀を認めずに一部無罪を言い渡した。
(http://www.asahi.com/national/update/0511/OSK201005110068.html)

倉沢被告が無罪になったのはまさに虚偽有印公文書作成・同行使についてで、郵便法違反では有罪になっている。昨日判決が下った裁判では、弁護側が容疑事実を認め、かつ元局長の部下の捜査段階での供述調書の証拠採用にも同意したとのことで、となると形式的には元局長との「共謀」を認めたかたちになる判決も無理からぬところだが、元部下らの供述調書の信用性について実質的な検討を行ったうえでの認定ではなくあくまで弁護側が争わなかったことによる認定のようであるから、「厚労元局長の共謀認める」は(元局長の公判との関連では)ややミスリーディングかもしれない。