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2012-07-10

[]クロ現「“密室”は開かれるのか」

f:id:apesnotmonkeys:20081226100455j:image:right

NHK 総合、「クローズアップ現代」の7月4日放送回、「“密室”は開かれるのか

〜検証・取り調べの可視化〜」を録画しておいたのをみた。番組のフルテクストが読めるようになっているので、見逃された方はご参照ください。

これといって新しい知見はない。部分的な可視化では無意味であるということ、検察にある反対論にまるで説得力がないことを再確認した。検事総長の「この事件だったら、この被疑者だったらっていうことを、よく勘案したうえで、ベストと思われる録音・録画を、捜査側の裁量でやる」などというのはとんでもないはなしだ。録音・録画の開始に先立って供述を「リハーサル」されたという事例について、「たぶんそれは録音・録画の初期だった」「検事も録音・録画なんていうことを一回もやったことがない」「どうしたらいいんだろう、たぶん、検事も緊張して困ったんだと思う」などと稚拙な*1いいわけをする人間をトップに戴く機関の「裁量」なんぞに任せていたら、ろくなことにならないのは自明だ。被疑者が弁護士を通じて録音・録画の停止を申し立てたとき*2には停止できる、という制度にするのがスジだろう。

それにしても……09年の総選挙後に、新政権に期待した数少ない事柄の一つが「取調べの可視化」だったのだが、それも結局は政治的な決断によってではなく、検察の不祥事によって実現への道筋がついたに過ぎない。ほとぼりが冷めたら「やはり弊害の方が大きい」などと総括して旧態に復したりしないだろうな。

*1:どういう経緯で可視化が導入されたかを知らない検事はいないわけで、だとすると仮に「困った」のだとしても「リハーサル」というのはもっともやってはならないことだ、ということは理解できなきゃおかしい。

*2:厳格さを優先するなら申立先は裁判所になるだろうし、利便性を優先するなら検察庁ということになろうか。

TeruTeru 2012/07/10 23:28 >部分的な可視化では無意味であるということ、検察にある反対論にまるで説得力がない

この番組への検察組織の取材対応自体が、
検察ストーリーは、珍しい女性検事を複数出演許可出しても強調する、
逆に、「先立って供述を「リハーサル」された」などと弁護側に指摘された地方検察庁は、
「公判中につき、コメントできない」と事実上、取材拒否という「部分的な可視化」の実演となっていました。

なお、現検事総長がキャリアに挙げている「特捜部長」に関しまして、
「逮捕する立場の者が、逮捕される側に回り」
http://www.nakashimalaw.com/essay/miyamoto/1201.html
最大限の当事者主義を発揮しているであろう事案
(特捜部の捜査手法が語られる)に対する書評も、参考になるかと。

つうこうにんつうこうにん 2012/07/10 23:37 ずいぶん昔のものですが、ヤメ検弁護士の証言
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070606
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050221#1108916083

特に後者は、コメント欄でのやり取りも興味深いです。

余談ながらこのblog、ツイッターのログと化してから以後、読ませるエントリが激減なんですよねえ、残念。

つうこうにんつうこうにん 2012/07/11 00:15 連続ですみません。番組テクストを読むに検察しか扱ってないんですけど、私が紹介したblogエントリでも警察の取調べも問題だということがあからさまに書かれているのに、これじゃ問題の半分以上が無視された格好ですね。blog主弁護士が語る「検事の掌の上で踊っているだけじゃないか」という言葉が重いです。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2012/07/11 07:12 Teruさん

>珍しい女性検事を複数出演許可

これは私も勘ぐりたくなった部分ですね。確証はないですけど。

つうこうにんさん

>特に後者は、コメント欄でのやり取りも興味深いです。

前者の方のコメント欄で言及されている
http://anond.hatelabo.jp/20070605230519
も興味深いですよ。まあ増田のことですから真偽はわかりませんけど、「ああ、こいつら所謂『マスコミ発表語』に落とし込みたいんだ」というのは、特に動機に関する供述について私も何度か指摘してきた点です。

>余談ながらこのblog、ツイッターのログと化してから以後

ツイッター中心になってしまってほとんど更新されなくなったブログ、少なくないですよね。

警察で虚偽自白をさせられた被疑者でも場所が検察に移ると「検事さんならわかってくれるかもしれない」と考えて再度否認を試みることもあるので、検察の取調べだけでも全面可視化することにはそれなりに意味はあるでしょう。ただ、おっしゃる通り「問題の半分以上が無視された格好」ではありますね。エントリでも書いたように、結局は検察の不祥事が糸口になっただけなので、警察の方まで及ばないということなのでしょう。

TeruTeru 2012/07/12 07:07 >「検事の掌の上で踊っているだけじゃないか」

これは、どの物証を法廷に持ち込むかも「捜査側の裁量」次第という現状を暗喩したものかと。
事前の「慎重に吟味して判決を書いている」に対し、
そもそも、何を裁判官が吟味対象にするか、
物証も調書も「捜査側の裁量」で「部分的な可視化」されたものに限るという、掌の上に過ぎないのではないかと。

なお、建前上は弁護側から「証拠開示請求」できる事になっていますが、
>かなりの弁護人が、この類型証拠開示請求をしないまま、検察の提出証拠しかチェックしないのが現実
などという、現職の指摘もあったりします。
http://d.hatena.ne.jp/morikounin/20100328/

>これは私も勘ぐりたくなった部分
単なるTV映り対策というより、性格が反映される「青い」取調べ姿勢そのものを、
逆に「部分的な可視化」に検察上層部が活用したのではないかと。

つうこうにんつうこうにん 2012/07/13 02:18 Teruさん

件のblog主弁護士による掌発言は、もちろん表面的にはそれに先立つ(現職裁判官?)通りすがり法曹氏の投稿に対してのものでしょう。ですが、エントリ本文で、裁判所側が特信性認定を検察官ペースでしているということにblog主弁護士本人が「随分助けてもらった」と書いていますし、もっと幅広く読み取ってもいいのではないかと思います。通りすがり法曹氏が、裁判官の判断に寸分の疑いも持ってない、いうなれば”教科書的”な理解でその投稿文を書いているように見えるので、掌発言が出るのもある意味必然でしょう。

私が件のblog主弁護士の証言で注目したいのは、警察→検察の取調べで、警察がリハーサル検察が本番という実情を明らかにしているという点(紹介したエントリのうちの前者)です。クローズアップ現代の番組中では、まさにテレビ番組製作のようなリハーサルの証言があったわけですが、このblog主弁護士のエントリで、警察→検察の段階を通して、警察検察側・被疑者側にその意識がなくとも実情はリハーサルをやってたようなものだった、ということが証言されていたわけで、なおのこと、警察側の100パーセントの可視化がなくては可視化の意味が半減ないしはそれ以下ということの証明になっていると思います。

TeruTeru 2012/07/13 07:34 >裁判官の判断に寸分の疑いも持ってない、いうなれば”教科書的”な理解でその投稿文を書いている

こう評された
>それに先立つ(現職裁判官?)通りすがり法曹氏の投稿
は、
>合議事件なら3人が額を寄せ合って喧々諤々の議論を経たりするときもあります。
などとも書いている(裁判官の合議がされるならば、3人でという制度は、一般には意識されていない)ことから、
司法修習制度にて、(後の法曹最大多数である弁護士であれ)
裁判官の合議を「部分的な可視化」で体験する際、
個人的に受けた感情を、背景に書いているのかなと思いました。
仮に、現職裁判官だった場合は、
その限界(堂々と無罪判決というが、現に被告人に裁判で負荷を強いている)も意識せざるを得ないのではないかと。

なお、現大阪市長に限らず、司法修習後は、刑事弁護に関わらない弁護士も多い為、
裁判の合議の「部分的な可視化」の印象そのままで書いてしまっても、
直ちにおかしいとまでは言えないかなと。

>警察→検察の取調べで、警察がリハーサル検察が本番という実情
ここでしょうか。
>最終的に、そういった下書きを見ながら「清書」させる、ということが、かなり広く行われています。
>これは、ほとんど警察でのことですが(検察庁ではそこまで時間はかけられない)、
>検察庁では、そういった形で「刷り込まれた」状態において、被疑者が図面を書いてしまいます

Bill_McCrearyBill_McCreary 2012/07/18 06:16 取調べ可視化も、例の不祥事がなければ他と同様うやむやにされた可能性が高いとしかいえませんからね。死刑制度でもその廃止のプロセスは、ひどい冤罪があって深刻な疑問が生じるという例が少なくないから、そうすると村木さんは人柱だったんですかい、っていう気がします。ひどい話ですが。

ところで次の選挙で自民党が勝つとして、そうなると自民党は「保守回帰」とかを自称していますから、その一環としてこれが切り捨てられるという最悪の事態もありえますね。国民も、こういったことに意識が高いとはいえませんから、どうしたものかと。「保守回帰」と人権に関係はないですが。稲田朋美なんか、いまは意見がちがうかもしれませんが、09年総選挙の段階では取調べ可視化には反対の立場ですしね。右翼であったって賛成という立場もとうぜん可能ですが、たぶん彼女のイデオロギーとは不可分なのでしょう。困ったもんです。

さて過日最後の被告人の無期懲役が確定した名古屋闇サイト殺人事件で、被害者の母親の活動が新聞に紹介されていました。

http://mainichi.jp/select/news/20120624k0000m040094000c.html?inb=yt

>裁判所は判例に固執して殺害された被害者の数にこだわり、加害者の人権ばかりを重視してきた

裁判所が判例に固執するのは当たり前だし(固執しなかったら判例の意味がない)、「加害者の人権ばかりを重視してきた」というのは主観的かつ感情的な意見という以上のものでもないですが、これってご本人がHPとかで主張するのなら仕方ないかもしれませんが(私は根性が悪いので、批判しましたが)、新聞がこのような主張を伝えるのはどうよと思います。そもそも法科大学院で判例への固執を批判するというのもどうもなあですが(院生には、判例にとらわれない弁護士になってほしいとお望みなのですかね)。犯罪被害者・遺族を保護・尊重するという話と、実態にそぐわない話を注釈なし(注釈をつけるくらいならはじめから紹介しないか)に記事にするというのは話が違うんじゃないのと思いますが、読者が期待するのは「犯罪者の人権ばかり重視している」とか「無期懲役確定はひどい」といった話ですからね。私は馬鹿ですので近日中に無期懲役確定を支持する記事を書くつもりですが、そうとう私を非難するコメントが来ることは覚悟しています。

apesnotmonkeysapesnotmonkeys 2012/07/18 08:17 Bill_McCreary さん

>「保守回帰」と人権に関係はないですが。

しかし保守派は「治安」志向が強いですし、警察や軍隊といった国家の「力」を体現する組織に好意的ですからね。これに橋下を人気政治家にした「建前への無頓着さ」が加われば、人権擁護の後退など意に介さない選択は十分ありますね。

>裁判所が判例に固執するのは当たり前だし

それもそうですし、「被害者の数にこだわ」るのは被害者の命(人権、といってもよいですが)を意識すればこそ、でもありますよね。

>実態にそぐわない話を注釈なし(注釈をつけるくらいならはじめから紹介しないか)に記事にする

いわゆる日本的「客観報道」ってやつですね。

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