(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ひとさまにみせるもんじゃない」4×1h project Play#0

HPからの引用になるが、時間堂とelePHANTMoonが共催する4×1h projectは、出演者が4人くらい、場所を選ばず上演可能、質の高い1時間くらいの短編という三つの条件にかなう作品を上演する試みらしい。20代バリバリの若手作家の戯曲をとりあげ、クオリティ高い公演を目指してもいるようだ。この#0では、5月にすでに予選にあたるリーディング公演(Reading #0)を行っており、それを通過した2作が今回公演を迎えている。
ちなみに、5月のスタートラインに並んだ作品は、次のとおり。1「消えたおんなのお話」(作/上野友之:劇団競泳水着)、2「いそうろう」(作/篠田千明:快快)、3「群盲と象」(作/冨士原直也:劇団朋友)、4「喫茶店」(マキタカズオミ:elePHANTMoon)、5「ひとさまにみせるもんじゃない」(作/中屋敷法仁:柿喰う客)、6「ソヴァージュばあさん」(作/モーパッサン 脚本/谷賢一:DULL-COLORED POP)だった。いずれも書き下ろしで、観客投票によって選ばれたのは2と6の二作だが、6はDULL-COLORED POPの本公演(JANIS)と時期が重なるためか、年明けの公演とし、次点の5を繰り上げての公演となったようだ。
さて、その「ひとさまにみせるもんじゃない」は、いかにも中屋敷法仁らしい作品。マシンガンのような台詞に代表される柿喰う客テイストに溢れている。朝寝過ごししまったために、利用してはならないと言われている地下鉄に乗った女子高校生。しかし、そこで遭遇した伝説の痴漢は、何故か彼女の前を素通りしてしまう。彼は、幼い頃の記憶として刻まれた母親の乳房の感触を求めて、痴漢を重ねていたのだった。一方、女子高校生は、痴漢に無視されたショックがやがて恋心に変わって。
冒頭、朝の目覚ましとともに、役者たちがスーツ姿から黒のスエットに着替えるのは、闘いの準備だったのですね。お立ち台よろしく、小さな舞台を押し合いへし合い取り合いするのが、がちんこだったことを知り、びっくり。なるほど、前提として役者全員に台詞が入っていて、台詞を噛むとかの隙あれば、舞台上の役者を押しのけて次の役者がそれを引き継いでいくわけか。
ただ、演出のスマートさもあるのだろう、それがなぜか予定調和に見えてしまううらみもある。壮絶な台詞争奪戦も、それが段取りに見えてしまうのは、なんとももったいない。しのぎを削るセメントマッチであることをさりげなく観客に見せるあざとい演出があってもいいのではないか。
それにしても、リーディングをさらに一歩押し進めたようなこのユニークな上演形態は、ナイスなアイデア。中屋敷の脚本との相性も抜群で、黒澤世莉の演出は今回も冴えている。(45分)

■データ
飲食自由でドリンクの販売もあった最終日マチネ/渋谷Gallery LE DECO 4F
9・20〜9・28
作/中屋敷法仁 (柿喰う客) 演出/黒澤世莉(時間堂)
出演/石黒淳士、大竹悠子(ユニークポイント)、菊地奈緒(elePHANTMoon)、猿田モンキー、星野奈穂子、三嶋義信