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  今宵、すべての劇場で。

2012-06-01

[]青☆組 vol.16「キツネの嫁入り

劇団自身の言葉を借りるならば、「ほろ苦いペーソスと透明感を持ち味に、市井の人々の営みを描き続ける」のがこれまでの彼ら。そこから一歩、いや大きく踏み出してみせる吉田小夏@青☆組の新作だ。

むかしむかしの、未来の昔。ある村に、おじいさんと、おじさんと、少年と・・男ばかりが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おじさんは川に水浴びに、少年は人間の住めなくなった森へお嫁さんを探しに行きました。(劇団サイトから、句読点・改行を加えて引用)

前ふりは、落語風。女の子供が生まれなくなってしまった近未来という断りもあるし、過去に滅びた文明があったことを匂わせたりもするが、「むかし、むかし」という同じ口調が何度も作中で繰り返され、終始民話調はくずれない。山へ分け入った登場人物たちが、天気雨に襲われるシーンもタイトルに繋がり、どことなく民話風だ。

中盤を過ぎて、ゴーストストーリーへの転調があるあたりに、衝撃の第一波がくる。ちょっと唸らされるが、でもまだこれは想定内。思わず息を呑むのは、キツネの嫁の正体が明らかにされるくだりだ。たっぷりと伏線が張られていたにもかかわらず、このショックは想定外のものと出会った驚きと感動がある。

先の震災を踏まえて、俄かに襲ってくる終末の物語が最近観た土田英生の「燕のいる駅」だとするなら、こちらは緩やかに忍び寄る終末の物語だ。劇団からの事前の情報の中に、本作がSFであるという旨が記されていたが、それを伏せていたら、テーマが観客に与える衝撃はもっと大きかったろう。ちょっと惜しい気がする。

物語の結びは、人々は日々の営みへと還っていきましたとさ、めでたし、めでたし、と言いたいところだが、この物語はそうは終わらない。ものには終わりがある、だからこそ尊い、とでもいいたいかのようだ。(こう結論するのはいささかの衒いをおぼえないではないが)終わりあるものを少しでも悔いなく生きようというメッセージをこめた、一種の人生賛歌として本作を捉えたいと思う。

わたしの中で青☆組の観劇優先順位が確実にワンランクあがった晩だった。(ソワレ、105分)

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■データ

5・25〜6・3@こまばアゴラ劇場

作・演出/吉田小夏

出演/荒井志郎、福寿奈央、林竜三、藤川修二、大西玲子(以上青☆組)、高橋智子(青年団)  石松太一(青年団)、田村元、東澤有香

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