2012年01月22日
妊婦の貧血は胎児の発育を遅らす
妊娠可能な年齢の女性の40−50%に貧血が見られるそうです。妊娠中の母親が貧血だと、胎児の発育が心配になります。アメリカの研究者らが母体の貧血が新生児にどのような影響を及ぼすか、過去の論文を調べました(ソースはこちら)。
==要約==
研究者らは母親の貧血と、IUGR(子宮内発育遅延)の代理指標としてSGA(胎内発育遅延児)の関係について、文献を体系的にくまなく調べました。
研究者らは目的に合致した12の論文を見いだしました。そのうち7論文は母親のヘモグロビン値110g/L未満を貧血の判断基準としていました。また100g/Lを基準とした論文が他に7報、90または80g/Lを基準とした論文が5報ありました。
110g/L未満、および100g/L未満を貧血と定義した場合には、SGAとの有意な関係は見られませんでした。
しかし90g/Lまたは80g/L未満を貧血と定義した場合には、貧血の母から生まれた新生児はSGAであるリスクが53%高いことがわかりました(オッズ比=1.53, P<0.001)。
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妊娠すると胎児の成長のためにタンパクや鉄がどんどん使われます。一方で必要な血液量は増大しますので、自然に血液は薄くなり貧血気味になります。
胎児の成長もさることながら、妊婦の貧血は、出産時の母親の死亡リスクを高めるとも言われています。いまさら言うまでもないと思いますが、妊婦の方のお食事は大事ですね。
(last updated 1/23/2012)
2012年01月20日
過剰なナトリウムは心臓機能にも影響する
ナトリウムはカリウムとのバランスで、血液の量や血圧を調節します。高血圧の人が食塩(塩化ナトリウム)を制限すると血圧が下がることは良く知られています。
アメリカの研究者らが、ナトリウムはその他のしかたでも循環器系に影響を与えることを報告しました(こちら)。
==要約==
研究の対象になったのは、1964−1975年に兵役を務めた286人の中年男性で、全員が双子です(133組とペアのいなくなった双子20人)。
過去12ヶ月の食生活を調査票で詳しく調べ、2002−2006年のあいだにPETという計測機器を用いて、休息時とストレス負荷時の心臓の血流(冠血流予備能:CFR)を測定しました。
そして食事からのナトリウムの摂取と心臓血流の間の関係を調べました。
人口統計要因(年齢層、教育、性別、婚姻など)、生活習慣(喫煙、飲酒、運動など)、食習慣(カロリー、カリウム、カルシウム、脂肪酸など)、循環器病のリスク要因(肥満、血圧、コレステロールなど)、薬の使用など、結果に影響を与えそうな要因は、群間で公平になるように統計的に調節しました。
すると、食事からのナトリウム摂取が1000mg/日増えるごとに、CFRは10.0%低下するという結果が得られました(P=0.01)。
ナトリウムの摂取量により5段階に区分すると、ナトリウム摂取が多いほどCFRは有意に低くなり(P-trend=0.03)、摂取最大群(1456mg/日 超)は摂取最低群(732mg/日 未満)に比べてCFRは20%も低くなっていました。
この関係は双子の間で比較したときも見られ、さまざまな影響を与える要素を公平に調節したあとも、食事からのナトリウム摂取が1000mg/日増えるごとに、CFRは10.3%低下するという結果でした(P=0.02)。
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高血圧の人はナトリウム制限食をすると血圧が下がります。しかし最近になって、同時にレニン、アルドステロン、アドレナリン、コレステロール、中性脂肪なども高まる、と懸念する声も上がるようになってきました(こちら)。
高血圧の人は何より血圧を下げなければなりませんから、得られる利点がリスクを上回ると考えることもできます。
しかし正常血圧の人が高血圧予防のためにナトリウム制限をするのは、適切なのかどうか。アメリカではいまそれが議論されているところです(こちら)。
議論の行方は見守らなければなりませんが、過剰なナトリウムが血圧ばかりでなく心臓の機能にも影響を与えることは、覚えておいたらいいですね。
(last updated 1/20/2012)
2012年01月08日
フラボノイドは心血管疾患の死亡リスクを低減する
明けましておめでとうございます。アメリカの味気ないお正月はあっというまにすぎました。本年もよろしくお願い申し上げます。
さてフラボノイドは野菜や果物に含まれる成分で、さまざまな健康効果があると言われています。これまでもフラボノイドの摂取が多いとがんのリスクが低いことなど報告しました(こちら)。
今回はアメリカがん協会から、フラボノイドが心血管疾患による死亡リスクを低減することを示唆する報告がありましたのでご紹介します(ソースはこちら)。
==要約==
1999年にアメリカの38,180人の女性(平均年齢70歳)と60,289人の男性(同69歳)が試験に入りました。医療歴、生活習慣、食習慣などについて詳しいアンケートに答えました。
7年間追跡するうちに1182人の女性と1589人の男性が心血管疾患で亡くなりました。
研究者らは食習慣からフラボノイドの摂取量を推定し、5段階に区分しました。そして心血管疾患による死亡との関係を検討しました。
するとフラボノイド摂取が一番少ない群に比べ、一番多い群では心血管疾患による死亡リスクが18%低いことがわかりました(相対リスク0.82、P-trend=0.01)。
フラボノイドの中でもアントシアニジン、フラバン3-ol(カテキン類)、フラボン、フラボノール、プロアントシアニジンはそれぞれ、摂取が多いほど心血管疾患による死亡リスクが有意に低くなっていました(すべてP-trend<0.05)。
男性ではフラボノイドの総摂取量が多いほど、虚血性心疾患(心筋梗塞など)による死亡率(相対リスク0.90、P-trend有意差なし)よりも、脳卒中による死亡率の低下(相対リスク0.63、P-trend=0.04)と強い相関がありました。
フラボノイドの死亡率抑制効果の大部分は、摂取量が中央の区分よりも多くなると現れました。
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フラボノイドは濃色野菜や柑橘類、ベリー類などの果物やお茶などに含まれます。平均より多い程度の量を摂りさえすれば良い効果がみられるのですから、日頃からこれらの摂取を心がけたらいいですね。
ではフラボノイドをサプリで摂れば同じ効果が得られるか? そう考えるのはまだ早すぎます。フラボノイドのサプリメントでは、ここまでの効果はまだ報告されていません。
野菜や果物にはフラボノイド以外の良い成分が数多く含まれています。今回のデータもそれらの成分も含めた効果を示している可能性が否定できません。すなおに野菜や果物をたくさん食べましょう。
(last updated 1/8/2012)
2011年12月30日
葉酸は妊婦の喫煙の悪影響も軽減する
妊娠中の女性で葉酸の摂取が不足すると、生まれてくる子に神経管閉鎖障害という先天性異常のリスクが高まることが知られています。また、お母さんの血中の葉酸レベルが高いほど、子供が注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持ったり、仲間とのコミュニケーションに問題が生じたりするリスクが低い、ということを以前にご紹介しました(こちら)。
また妊娠中にお母さんが喫煙すると、流早産のリスクが高まり、小さい子供が生まれるリスクが高まります(こちら)。
では妊娠中の喫煙の害は、葉酸でいくらかでも防げるのでしょうか?オランダの研究者らが調べました(ソースはこちら)。
==要約==
オランダの6294人の妊婦さんが対象になりました。喫煙習慣と血漿ホモシステイン濃度、胎児成長の特徴、早産、低出生児体重、胎児発育遅延などの新生児合併症の関係を調べました。
すると妊娠中も喫煙を続けたお母さんでは、喫煙しなかったお母さんに比べ、妊娠初期の血液中のホモシステイン濃度が平均で0.52μmol/L高く*、妊娠後期の胎児重量が平均で44g小さく、出生児の体重が148g小さいという結果が得られました。
*ホモシステインが高いと循環器疾患のリスクが高まります。
喫煙を続けたお母さんだけに限ると、妊娠の前後に葉酸サプリメントを飲んだ人に比べ、葉酸サプリメントを飲まなかった人では、低体重児を出産するリスクが3.45倍も高いことがわかりました。
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特に妊娠初期の喫煙は悪いようです。そのリスクの一部でも葉酸で軽減できるわけですから、もっと葉酸サプリメントの摂取が一般化すればいいのにと思います。
今年は大変な一年でした。来年はぜひ明るい良い年にいたしましょう。
どうぞ良いお年をお迎えください。
(last updated 12/30/2011)
2011年12月22日
牛乳と前立腺がんリスク
牛乳をたくさん飲む人では大腸がんや卵巣がんのリスクが高いということを以前に報告しました。
ところでアイスランドには牛乳をよく飲むことで知られた地域があるそうです。そこに子供の頃に住んでいた人は、成人してからがんになるリスクが高いかも知れません。アイスランドの研究者らがそれを調査しました(ソースはこちら)。
==要約==
1907年から1935年の間に生まれた男性8894人が、1967年から1987年の間に試験に入りました。そのうち2268人には、2002年から2006年にかけて、牛乳の摂取状況を人生の初期・中期・現在に分けて報告してもらいました。そして2009年まで前立腺がんを発症したかどうかを追跡しました。
平均で24.3年追跡するうちに1123人が前立腺がんを発症しました。そのうちステージ3以上または前立腺がんにより死亡した371人を進行がんと区分しました。
そして住んでいた地域と前立腺がんの関係を解析しました。
すると都会に住んでいた人に比べ、牛乳をよく飲む地域に20歳まで住んでいた人は、前立腺がんになるリスクが高いことがわかりました(ハザード比1.29)。1920年より前に生まれた人では、リスク上昇が特に著しくなっていました(ハザード比1.64)。
また思春期に毎日牛乳を飲んでいた人では、毎日は飲んでいなかった人に比べ、進行前立腺がんのリスクが3.2倍も高いという結果が得られました。
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カルシウムを摂ろうとして牛乳を飲むことが多いですね。特に成長期の子供に飲ませることが多いように思いますが、こういうマイナス面はどれほど知られているでしょうか。
日本人はカルシウムが大きく不足しているのは事実です。小魚などをせっせと食べるか、サプリメントで摂取するのが賢明だと思います。
(last updated 12/22/2011)
2011年11月30日
大豆を食べる人は肺がんリスクが低い
大豆は大豆タンパク、大豆レシチン、大豆イソフラボン、大豆油など多くの有用成分を含み、とても健康的な食べ物です。コレステロールや血圧を下げるという報告もあり、米国FDAも「大豆タンパク25g/日は心臓病のリスクを低下させる」と表記することを認めているほどです(こちら)。
大豆はがんのリスクも下げるという報告もときどき上がってきます。今回は大豆と肺がんについて、上海の研究者らの報告です(ソースはこちら)。
==要約==
研究者らはPubMedなど3つの世界的な医学論文データベースを網羅的に検索し、大豆と肺がんのリスクに関する臨床研究の論文を収集しました。
解析の対象として適切な、8つの症例対象研究と3つの前向きコホート研究が見つかりました。そしてこれらの研究データをメタ解析という統計学的な手法でまとめました。
すると全体として、大豆を食べるほど肺がんのリスクは有意に低いという逆相関がありました(相対リスク0.77, 95%信頼区間0.65-0.92)。
質の高い5つの研究だけに絞っても結果はほぼ同じでした(相対リスク0.70, 95%CI 0.45-0.99)。
サブグループ解析を行なったところ、女性(相対リスク0.79, 95%CI 0.67-0.93)、喫煙したことの無い人(相対リスク0.66, 95%CI 0.51-0.76)、アジア人(相対リスク0.86, 95%CI 0.74-0.98)において、大豆は有意に肺がんリスクを低減しました。
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以前にも、大豆をたくさん食べる人は乳がんや子宮内膜がんのリスクが低いという研究をご紹介しました。大豆はえらいですね。
お時間のあるときに「大豆のおはなし」(グリコ)をどうぞ。
(last updated 11/30/2011)
2011年11月26日
飲みすぎは胃がんのリスク
少し前に、お酒はほどほどに、という記事を書きました(こちら)。今回もお酒の害を示唆する報告です。
ヨーロッパの10カ国52万人が参加する、栄養とがんの関係を調べるための「EPIC」と呼ばれる大きな共同臨床研究があります。そのデータベースから、研究者らは飲酒習慣と胃がんの関係を取り出して解析しました(ソースはこちら)。
==要約==
対象になったのはEPICの参加者で、だいたい1992年から98年の間に試験に入りました。最初に詳しいアンケートで過去の飲酒歴や飲酒習慣を調べました。
2002年から2004年の間にフォローアップを行ったところ、444例の胃原発腺癌が確認されました。
飲酒の量は純粋なエタノールのg数で表し、喫煙習慣、がんの部位(噴門部かどうか)、組織学的分類(びまん型か腸型か)、さらにピロリ菌の有無などを考慮に入れ、飲酒とがんの関係を解析しました。
すると、試験開始時に飲酒がとても少なかった人(エタノールとして0.1-4.9g/日)に比べ、とても多かった人(60g/日以上)では、胃がんのリスクが65%も有意に高まっていました(ハザード比1.65)。しかし60g/日以下では有意差はありませんでした。
お酒の種類について検討したところ、ビールを30g/日以上飲む人では胃がんのリスクが75%高まることがわかりました(ハザード比1.75)。しかしワインや蒸留酒では有意の関係は見られませんでした。
飲酒と胃がんの関係は主に、とても多く飲む男性で、噴門部以外の、腸型のがんに見られました。
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エタノール60gとはどのくらいか気になりますね。大まかにビールなら大瓶3本、ワインなら0.8本、日本酒なら3合、ウィスキーなら1/4ボトルくらいです。
この論文のデータを見ると、お酒をとても多く飲む人々には、他の人々と違ったいくつかの特徴があることに気がつきます。初等教育しか受けていない人が多く、ヘビースモーカーが多く、果物の摂取が少なく、肉の摂取が多いことが示されているのです。
健康や栄養について考えたり学んだりする機会が乏しかった人たちが、その後も不健康な生活習慣に気づいたり反省したりする機会も少なく、その結果胃がんのリスクが高くなってしまった、ということが考えられます。
世の中には貧富の格差と背中合わせに、健康知識の格差もあるのです。それはそのまま幸せの格差につながり、残念なことに子供の世代にまで持ち越される傾向があります。
(last updated 11/27/2011)
2011年11月22日
運動・食事制限とすい臓がん
すい臓はインスリンを分泌する臓器です。食事から摂取する炭水化物は直接にインスリン分泌を左右します。また運動は糖質の代謝を促進し、あるいは体細胞のインスリン感受性を高め、直接間接にインスリン分泌に影響を与えます。
では食事や運動はすい臓がんと関係があるかも知れません。オランダの研究者らが、食事や運動の状況とすい臓がんのリスクについて調べました(ソースはこちら)。
==要約==
研究対象になったのは1986年に55歳から69歳だったオランダ人の男性5万8千人と女性6万2千人、計12万人です。開始時に詳しい調査票を用い、情報を収集しました。
運動歴については自己申告してもらいました。また食事状況を推測するため、次の3つを代理指標として報告してもらいました:世界恐慌(1932-1940)のときの父親の雇用状況、第2次世界大戦(1940-1944)のとき住んでいたところ、オランダの「飢餓の冬」(1944-1945)のとき住んでいたところ(注)。
(注)これらはいずれも若いころに相当な期間にわたり深刻な飢えを体験したかどうかを調べる設問です。飢餓の冬はナチスドイツ占領下のオランダにおきた悲劇で、食糧供給が極めて困難になり、18,000人のオランダ人が飢餓のため亡くなったといわれています。
そして5000人のサブグループを無作為に選び、13.3年間追跡しました。するとそのうち408人がすい臓がんの診断を受けました。
研究者らはこのサブグループについて、過去の運動歴 および過去の食事状況と すい臓がんの関係を解析しました。
過去の運動歴については、よくスポーツした人ほどすい臓がんのリスクが有意に低いという関係が見られました(ハザード比0.80, P-trend=0.05)。
食事状況との関係では、関連はみられませんでした。しかし対象者を身長が高い群(性別ごとに中央値より高い)と低い群(中央値より低い)に分けると、身長が高くて世界恐慌のときに父親が失業していなかった群に比べ、身長が低くて父親が失業していた群では、すい臓がんのリスクが有意に低いことがわかりました(ハザード比0.31, P=0.002)
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運動するほどがんのリスクが低いとか、がんの予後がいいことを示唆するデータはいろいろあり、これまでも何度か記事に書きました(前立腺がん、大腸がん、乳がん)。今回の報告もそのライン上にあります。
この研究は若いころに飢えを経験した人ではすい臓がんのリスクが下がることを示唆しているようです。動物レベルでは、カロリー制限が発がんを抑制し、がん治療の効果を高め、予後を良くするという報告はいろいろありますので、ありえない話ではないですね。カロリー制限は本当に興味深いです。
(last updated 11/26/2011)
2011年11月05日
レスベラトロールはヒトでも効いた
以前に食事のカロリーを制限すると寿命が延びるという記事を書きました(こちら)。でも食事を減らすのは強い意志が必要です。そのため、カロリー制限に似た効果をもたらす物質はないか、というのが多くの研究者の関心でした。
最近とみに話題になったその候補物質が、レスベラトロールです。レスベラトロールはもともとワインの健康効果のもととして知られていましたが、長寿遺伝子サーチュインのスイッチを入れる作用があることがわかりました。最近日本のテレビでも何度か取り上げられ、人気急上昇のようです。
しかしレスベラトロールの作用は、これまで酵母、線虫、昆虫、マウス、ラットなどでは確かめられましたが、ヒトでの研究はまだほとんどありませんでした。今回オランダとスイスの研究者らが、ヒトでの効果を発表しました(ソースはこちら)。
==要約==
研究者らは11人の肥満の、それ以外は健康な男性に、レスベラトロール150mg/日またはプラセボ(偽薬)を、無作為化二重盲検クロスオーバーという試験デザインで30日間投与しました。
するとレスベラトロール投与時には、睡眠時代謝率と安静時代謝率が有意に低下しました(カロリー制限時と同様の反応です)。
筋肉では、レスベラトロールはAMPKを活性化し、SIRT1(サーチュイン長寿遺伝子)とPGC-1αタンパクレベルを高め、ミトコンドリア量を変えることなくクエン酸合成酵素活性を高め、脂肪酸由来の基質での筋肉ミトコンドリアの呼吸を改善しました(すべてミトコンドリアの機能が高まっていることを示します)。
さらにレスベラトロールは筋肉細胞内の脂質レベルを高め、肝臓の脂質含量、血中の糖、トリグリセリド、ALT(GPT)、炎症マーカーを低下させました(燃えやすい筋肉の脂肪が増え、肥満者の肝臓の脂肪が減るのは良いことです。また血中の糖や肝機能マーカー、炎症マーカーも良くなっています)。
またレスベラトロール投与で収縮期血圧は低下し、HOMA指数は改善しました(HOMAは糖尿病で高くなります)。
食後の脂肪細胞の脂肪分解、血中の脂肪酸、グリセリンは低下しました(脂肪の分解が進んでいることを示します)。
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なお体重は変わらなかったようです。「カロリー制限と同様」というと、飲むだけで体重が減るのかと勘違いする人がいるかも知れませんが、そうではないので誤解のありませんように。
飽食より30%ほどカロリー摂取を減らす飢餓状態をつくると、生物は生存し続けるために体の仕組みをがらりと変えます。その結果寿命が大幅に延びるということが、さまざまな生物で確認されています。レスベラトロールは、カロリー制限することなしに、体の仕組みをそれと同じように切り替えてくれるのではないか、というのがレスベラトロール研究者たちの狙いです。
この研究で、レスベラトロール150mgの30日投与は、カロリー制限と同様に、代謝率の低下、ミトコンドリア機能の向上、脂質代謝の改善、糖代謝改善、肝機能改善、炎症マーカーの改善などをもたらすことが示されました。
ミトコンドリアを元気にするというのはすごいですね。もしレスベラトロールがカロリー制限と同様に体の仕組みを切り替えてくれるとすれば、脂質代謝や糖代謝ばかりでなく、実にさまざまな健康効果が期待されます。これは楽しみになってきました。
(last updated 11/6/2011)
2011年10月30日
お酒はほどほどに
適度なお酒は健康にいい、とはときどき耳にします。アメリカの国立アルコール乱用・依存症研究所の研究者らが、飲酒とがんによる死亡リスクの関係を検討しました(ソースはこちら)
==要約==
もとになったのは1988年から2004年にかけて何度か行われた、323,354人の国民健康調査研究のデータです。これを用い、アルコール摂取の量および頻度とがんによる死亡率の関係を検討しました。
2006年までに、8362人ががんで亡くなりました。飲酒者における全がん死亡率を、まず量の面から解析しました。すると男性において、1日1杯の人に比べ、1日3杯以上の人ではリスク比が1.24倍に高まることがわかりました(P-trend=0.001)。
次に頻度の面から解析すると、女性において、週1日未満の人に比べ、週3日以上飲酒する人では、リスク比が1.32倍に高まることがわかりました(P-trend<0.001)。
さらに部位別に解析しました。肺がんによる死亡リスクの結果は上と同様でした。しかし一度も喫煙したことのない人に限ると、有意のリスク上昇は見られませんでした。
男性では、高頻度の飲酒は前立腺がんによる死亡リスクを1.55倍に高めました(P=0.03)。
女性では、多量の飲酒は大腸がんによる死亡リスクを1.93倍に高め(P-trend=0.03)、高頻度の飲酒は乳がんによる死亡リスクを高める傾向がありました(P-trend=0.06)。
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確かに飲みすぎはがんについては良くない、というデータです。控えめにしたほうが安心なのは間違いないようです。
すこし前ですが、ハーバードの人たちがこれとは多少趣きの違うデータを出していました(こちら)。
対象は看護師さんの女性13,894名で、がん死ではなく、健康に70歳まで年齢を重ねることができたかどうか、に着目しました。またヘビードリンカー(アルコール1日45g:3・4杯超)は除外しています。
すると中年のころの飲酒習慣で、まったく飲まなかった人に比べ、アルコール1日5g以下の人は健康に年をとる確率が1.11倍に高まり、5−15gの人は1.19倍、15−30gの人は1.28倍、30−45gの人は1.24倍と、ほどほどなら飲むほうが健康に年をとる可能性が高まる、という結果でした。
また飲む頻度も、週に1・2日飲む人では健康に年をとる確率が飲まない人の1.10倍なのに対し、3・4日飲む人では1.29倍になり、5−7日飲む人では1.47倍になる、という結果でした。
これはほどほどなら必ずしも悪くない、というデータです。問題は、なかなかほどほどで止められない、ということですね。
(last updated 10/30/2011)







