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米国統合医療ノート RSSフィード

 食事・微量栄養素・サプリの研究が世界中でどんどん進み、その効果も限界も、
 次第に明らかになっています。このブログではその最新情報をご紹介します。

2008年09月27日

mitochondria

CoQ10とスタチン剤(2)

スタチン系薬剤(以下スタチン剤)は全世界で何千万人もの人が飲んでいるコレステロール低下剤で、強いコレステロール低下作用を示します。しかしスタチン剤は、同時に体がコエンザイムQ10(CoQ10)を生合成するのも抑制してしまいます(前回の記事参照)。

CoQ10は今ではサプリメントとして知られていますが、実は大部分の動物、植物、菌類などの細胞の中に広く存在しています。ではCoQ10はそこで何をしているのでしょうか。

CoQ10の働きは大きく2つあります。1つはミトコンドリア(図)においてエネルギー産生を助けることです。ミトコンドリアは全身の細胞の中にある小器官ですが、食事から得た栄養素と、呼吸から得た酸素が出会うところです。分解された栄養素と酸素から、ここでATPという物質が作られます。

ATPはエネルギーのかたまりで、ここからエネルギーを引き出しながら私たちの体は動いています。CoQ10はミトコンドリアでATPができる一番大事な場面で、大活躍しているのです1

CoQ10の2つ目の働きは、酸化ストレスを減らすことです。私たちは生きるために酸素を必要としますが、酸素の一部は反応性の高い活性酸素に変わります。活性酸素も無くてはならないものですが、過剰な活性酸素は、ときには細胞膜や遺伝子を傷つけ、老化を進め、がんなどの疾患の原因にもなります。

CoQ10には強い抗酸化力があるので、体のいたるところで過剰な活性酸素を無害化してくれています。LDL(悪玉)コレステロールは酸化されて酸化LDLに変わりますが、これが本当の悪玉で、動脈硬化の真の原因です。動脈硬化を防ぐにはLDLコレステロールを減らすばかりでなく、体の抗酸化能を高く維持しなくてはなりません。

この大事なCoQ10の合成をスタチン剤は阻害し、スタチン剤を飲んでいると体内のCoQ10レベルが低下します。スタチン剤の副作用には横紋筋融解症(筋肉が溶ける)や肝障害などがありますが、筋障害、筋痛、疲労感、息切れ、認知機能の障害、情緒不安定なども報告されています。これらはCoQ10の欠乏が関係しているのかも知れません。

スタチン剤を服用するかどうかは、こういうリスクとのバランスも考えて決めなくてはいけません。深刻な冠動脈疾患の患者さんは、スタチン剤を服用する利益のほうがリスクを上回るでしょう。しかしまだスタチン剤の利益が少ないごく軽症の人や、CoQ10欠乏によるリスクが大きくなる高齢の人では、安易にスタチン剤に飛びつくのは考えものです2

ではスタチン剤を飲むときCoQ10も併用したらどうでしょう。実際、併用の効果を示唆する臨床研究も散見されます。しかし併用療法がどういう人にどれほどメリットがあるかを確立するには、まだまだ研究が必要なようです。

興味深いのは、1987年に世界で初めてスタチン剤を上市したメルクの動きです。メルクはスタチン剤にCoQ10を併用すると副作用(骨格筋障害や肝障害)が防げると、1989年に2つの特許を出願し1990年に成立させています(こちらこちら)。

メルクはこの特許を活用し、「スタチン剤とCoQ10の合剤」を独占的に製造販売することもできました。しかし歴史はそのようには進みませんでした。おそらくスタチン剤の副作用がそこまで大問題にはならず、したがって合剤開発が商業的に見合わないと判断されたのでしょう。

メルクはこの特許を振りかざしてスタチン剤とCoQ10の併用を妨害するようなことはしていません。しかしいかに休眠状態とはいえ特許があれば、メルク以外の人は「スタチン剤とCoQ10の併用」を公に広めることには慎重にならざるを得なかったでしょう。

(今日のまとめ)
スタチン剤を服用している何千万人もの患者さんは、スタチン剤がCoQ10を低下させることをどれほど知らされているでしょうか。予防的にCoQ10を服用することは、どれほど行われているでしょうか。
医師や製薬会社がこれを積極的に広めようとしない理由はいろいろ考えられますが、メルクの特許もいくらか影響しているのかも知れません。


1 エネルギーを大量に消費する心臓にはCoQ10が多く存在します。CoQ10(別名ユビデカレノン)はうっ血性心不全の薬としても使われていますが、心筋の酸素利用効率やATP産生を助け、心機能を改善するとされています。

2 代替療法でもスタチン剤と同等以上に効果があることはこちらに書きました。

(last updated 9/27/2008 H)

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