福山行きの各駅停車、あるいは凸関数の性質について

卒研の指導で大学から帰るのが遅くなってしまい、22:08岡山発の各駅停車に乗った。倉敷のあたりであろうか、隣に座られた若い先生(らしき方)が滋賀医科大学の入試問題を解き始めたので、あらきは思わず覗き込んで暗算を始めてしまった(実に品がないことするなあ>あらき)。問題文の細かいところは違うけど、こんな問題である。

  1. a,bを正の数とするとき、a<x<b ならば \log x \geq \log a+\frac{x-a}{b-a}(\log b - \log a)を示せ
  2. a1,a2,p1,p2を正の数とし、p1+p2=1 とする。このとき log (p1a1+p2a2)≧p1 log a1+p2 log a2 を示せ
  3. a1, ..., an, p1, ..., pnを正の数とし、p1+...+pn=1 とする。このとき log (p1a1 +...+ pnan) ≧ p1 log a1 +...+ pn log an を示せ*1
  4. a1, ..., an を正の数とするとき \frac{a_1+\cdots+a_n}{n}\geq (a_1\cdots a_n)^{\frac1n}を示せ
久々に見る相加平均、相乗平均の証明(これ学生時代にちゃんと解いたことあったかなー?)。出題者は「関数論」か何かが専門なのかなー?こんな問題をほとんど「生」で出して受験生解けたのかなー?
まず4番の概略は

3番の式に p1=...=pn=1/n を代入すれば、\log\frac{a_1+\cdots+a_n}{n}\geq\log(a_1\cdots a_n)^{\frac1n}となる。


だいたいこんなイメージ
1番の概略は

y=\log a+\frac{x-a}{b-a}(\log b - \log a) は2点 (a,log(a)), (b,log(b)) を結ぶ直線であり、y=log(x) は y''=-x-2<0, すなわち上に凸の関数なので、区間 [a,b] 上では y=log(x) のグラフはこの直線の「上の方」にある。*2

2番の概略は

y=log(x)上の2点 P (a1,log(a1)), Q (a2,log(a2)) を考えると、点 R ( p1a1+p2a2, p1 log a1+p2 log a2 ) は線分PQを p2:p1 に内分する点である。y=log(x)のグラフは区間 [a1,a2] 上では線分PQの「上の方」*3にあるので、log(p1a1+p2a2) は p1 log a1+p2 log a2 よりも大きい。

…で、3番も2番の計算の発想(というか凸関数の性質)を繰り返し使えば解けるよなー*4
…と考えたところでボクの降りる駅になったので、その先生に「3番は2番を繰り返し使えば解けますよ」と話しかけて列車を降りたのであった。


帰宅した後、すぐに電車の中で思いついたアイディアを3項のときに試して「繰り返せばよい」ことを確かめた。


3番の概略は

数学的帰納法を使う。n-1 までが証明済みと仮定する。
まず P=(p1 +...+ pn-1), A=(p1/P)a1 +...+ (pn-1/P)an-1 とおくと p1a1 +...+ pnan=P A + pnan となる。
ここで A, P は正の数で P + pn = 1 だから2番の不等式の条件を満たすので log( P A + pnan ) ≧ P log(A) + pn log(an) となる。
ここで log(A) = log((p1/P)a1 +...+ (pn-1/P)an-1) であるが、 pk/P, ak (k=1,...,n-1)は正の数で (p1/P) +...+ (pn-1/P) = 1 であるから、n-1 のときの

*1: [2010.2.5] log E(X) ≧ E( log(X) ) とも読めるなー。

*2:図を描くと自明なのだが、式で評価しようとするとちょっと面倒。 F(x) = log(x) - log(a) - (x-a)/(b-a)( log(b)-log(a) ), a < x < b とおくと、F(a)=F(b)=0 でその導関数が F'(a) > 0, F'(b) < 0 で連続だから 「増加→減少」のグラフになるので [a,b] 上で F(x) > 0 である。1/a > ( log(b)-log(a) )/(b-a) > 1/b の計算が受験生にはちょっと面倒かも。
[2010.8.9]いやいや、そんなに面倒ではないよ。というのも、y=1/xのグラフを描いて、そのa≦x≦bの面積を考察すると、\frac{b-a}{a}>\int_a^b\frac{dx}{x}=\log b-\log a>\frac{b-a}{b}が直観的に出るよ。

*3:この「上の方」で1番の結果を利用することになるのかな。図形的には自明なので、1番のような誘導が必要とはちょっと気付かなかったな。

*4:[2010.2.7] Jensen's inequality と言うのか。初めて知った…。 イェンセンの不等式 - Wikipedia