あらきけいすけの雑記帳

2010-05-17 (Mon)

[]サイフォンの原理、あるいは「重力」も「大気圧」も同じくらいガサツ

自分用の覚書。補遺みたいなものを書いた:サイフォンについてのいくつかの蛇足 - あらきけいすけの雑記帳

[2010.6.15]数式を用いたハードバージョンを書いた:理系学部の学部生のためのサイフォンの原理 - あらきけいすけの雑記帳

[2011.1.8] Wikipedia のサイフォンの原理の説明が2010年12月25日付の改稿でそれまでのひどい説明から別のがさつな説明になっていた。ベルヌーイの定理を管内の流体の運動適用すると、現実整合性の無いデタラメ結論が出てしまう。

[2014.1.1]サイフォンの動作の誤った説明、とくに「ベルヌーイの定理」で説明できないことについて詳細に議論したエントリを書いた:サイフォンの原理とそれにまつわるいくつかの誤概念について - あらきけいすけの雑記帳


なんかはてぶで話題になってた

no title

はてなブックマーク - 誤った「サイホン」の定義、世界の辞書に1世紀 豪の物理学者が指摘 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

これを読んで、小学校のときのなぞなぞを思い出してしまった。
  Q「雨が降るのはなぜでしょう?」
  A「重力があるから」

所詮新聞記事だから、記者インタビューか何かをした内容のほんのかけらしか伝わっていないはずだ。「重力」ってのもウソじゃないけど何が言いたいのか分からない。「ニセ科学」とまでは言えないけれど、十分に「非科学的な」まとめ方だ。言っちゃあ何だが、ブクマしているみなさんの書き方も分かっているんだかどうだか怪しいものが多い(ゴメンなさい)。わけが分からないままというのも癪に障るので、適当に補って考えてみようと思う。

結論を先に書くと

たしかにサイホンを駆動しているエネルギー源は重力の位置エネルギーだが、そのエネルギーの解放メカニズムをきちんと説明しない限り、大したことを言ったことにはならない。で、Wikipediaで説明されているサイフォンのメカニズムのイメージは間違っている。というのも、サイホン内の流体には「流体が大気圧で押し上げられる」方向の力がかかっているからだ。[追記]ついでに言うと「ベルヌーイの定理」で説明はできない。

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最初の状態最後の状態移動した水

「重力」によるの部分をもうすこしだけ高校の物理っぽく説明をしてみよう。まず最初の状態と、最後の状態を見比べて見ると、図の赤い部分にあった液体が、青い部分まで「落ちて」いるから、液体全体の位置エネルギーは低くなっている。そう、エネルギーの低い「より落ち着いた状態」になったんだ。そして、その液体の移動のエネルギー源はというと、最初の状態の重力の位置エネルギーだ。そういう意味では、「重力」という説明もあながち間違いとも言えない…ような気がする。

でもこの説明では「エネルギー源が何か?」という問題には答えているけれど、「その位置エネルギーを解放するメカニズムは何か?」という問題には答えてはいない。

位置エネルギーの解放の簡単な例として「手に持ったボールを手放すと、落ちる」ことを考えよう。これだと「ボールにかかる重力とボールを支える手の力が釣り合って動かなかったものを、その釣り合いを崩して、重力だけにする」ことでエネルギーを解放している。

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背の高いサイフォン

ではサイフォンの場合、この「釣り合いを崩して、エネルギーを解放するメカニズム」は一体、何だろうか。

それには、わざと「釣り合っている」ときのことを考えて、そこからバランスを崩すことを考えてみるのもいいかもしれない。

もしも、サイフォンの高さが10mを越えていたら*1、サイフォンの上部に「真空*2」ができてしまい、右と左とで液体のやり取りは起きないだろう。(環境の気圧が1000hPa程度だと10mの水柱が必要だけど、真空ポンプを使って低圧の環境を作れば、そんなにノッポのサイフォンは要らない*3。)

[2013.6.16追記]NHK番組『大科学実験』の『実験33:水のハイジャンプ』(初回放送 2012.11.17)でこの10m超サイフォンを実際に実験し、水柱が10mで途切れることを実証している。今回の実験「水のハイジャンプ」|大科学実験 -大科学支援- NHK Educational Corp.」|大科学実験 -大科学支援- NHK Educational Corp.

じゃあここで思考実験を一つしよう。

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背の高いサイフォンの低い位置にパイプをつける

この各々の水柱が大気圧と釣り合った状態で、この二つの柱の間をパイプで繋いだらどうなるだろう?

もちろん、サイフォンができる。

じゃあ、どれくらいの勢いで液体は流れるんだろう?

水の流れる勢いは、水にかかる圧力で決まる。水圧が高いほど流れる勢いは強くなるはずだ。

その圧力を測る方法はないものだろうか?

実は、この「10m超サイフォン」の思考実験には2個の「圧力計」が備わっている。

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この高さが圧力計の役目を果たす。というのも…
水に水圧がかかっているから、これだけの水柱を下から支えられているのだ

パイプ部分の上にある水柱の高さが、パイプ部分の水にかかっている水圧を表しているのだ*4。これを言い換えると、「パイプ部分にかかっている圧力は、その上にある水柱を支えられるだけの「力」を持っている」ということになる。

この図の場合、パイプの左側の水圧は図の赤い部分の高さの分だけあり、パイプの右側の水圧は図の青い部分の水柱の分だけである。つまり「左側の方が、より水圧が高い」。だから「左から右へと水が流れる」のである。

それではいつまで流れ続けるのかというと、「パイプの両端の圧力が同じになるまで」、すなわち「赤い水柱と青い水柱の高さが同じになるまで」である。

ここで水柱のてっぺんの高さはどれくらいかというと、それぞれの容器の水面から10m上の位置に必ずなっているから、「赤い水柱と青い水柱の高さが同じになる」ときは「両端の容器の水面の高さが同じになるとき」である。つまりサイフォンの両端の容器の水面が同じになったときに、流れは止まる。



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[2015.6.15追記]両側の容器の液面の高さを圧力の基準にとって、各部の圧力を書き込んでみた。まず容器の水面ではおよそ1気圧≒1000hPa(本当は流入側で圧力が下がるけど、流速を数m/sくらいで圧力を見積もると、数10hPa程度なので大差が無い)。その一方で水柱のてっぺんでは真空なので0気圧。その途中の圧力は、容器の水面からの高さに比例して決まる。すると真ん中のパイプの両端に圧力差が出来ていることと、圧力が水柱を支えているので、左側の赤い方が高くなることが分かる。[2015.6.15追記おわり]

ここでいくつかの注意しておきたい。

まず、サイフォンに出てくる圧力はすべて「押す力」であり、「押す力同士のせめぎあいで、強いほうから弱いほうに、水が流れる」ということである。(「押す力」の意味については下に詳しく説明した。)だから Wikipedia のサイフォンの項目にある

サイフォンの仕組みを理解するためには、長く、摩擦のない列車が平原から丘を越えて平原より標高の低い谷へと伸びている姿を想像すればよい。丘から見て、平原より低い部分に列車がさしかかっていれば、丘から谷へと滑り込んでいく部分が残りの部分を丘へと引っ張り上げ、谷へと導くことが感覚的に理解できるはずである。

サイフォン - Wikipedia

という説明はイメージが正反対で間違っている注射器やピペットで液体を引くようなイメージ、すなわち流体にかかる圧力が負となるイメージだが、(←この部分、取り下げ。説明をやりなおしてみた。)むしろ注射器を繋いで、両側から押すようなイメージの方が正しい。

それから「大気圧で押されているから」という説明も、言葉足らずである。というのも、容器の水面にかかる大気圧は、サイフォンの両端にある容器の双方で同じだからである。圧力の差を生み出している機構は、大気圧そのものではなく、左右の各容器の水面からサイホンのてっぺんまで(「10m超サイフォン」では、あとで繋いだパイプの方まで)の高度差の違いである。

だからブクマの中でまともな説明になっていたのは id:BUNTEN さんの

BUNTEN 雑記 大気圧と重力の合力の差(大気圧の差は無視できる程度)が動力になると思っていたが違うのか? とりあえず高さ10mを超えるサイホン作れば大気圧も不可欠なのかどうかはわかるだろう。 2010/05/15
くらいしかない。

まとめよう

サイフォンのエネルギー源は容器の水面の差で決まる重力による位置エネルギー。流体を流す力の供給源(ポンプ)は大気圧だが、これは「供給」「受容」の双方で同じなので、流体を動かす力の説明になっていない。動かす原因となる力は、容器の水面とサイフォンの高さの差で決まる正の(押す方向の)圧力であり、これが供給側と受容側で食い違うから流れる。
「真空が出来そうになってパイプ内の流体が引っ張られる」というイメージはサイフォン内の流体にかかる 圧力の値 圧力の向きからいって大間違い。(これについては下に詳しく説明した。)


…というわけで「重力」と言っても、「大気圧」と言っても、「何に」「どのように」かかり、何が流体の「釣り合い」を崩して水の移動を促すのかを言っているのかハッキリさせようとしない限り、科学者の嫌う一種の安直な「一問一答」クイズ的な「言葉遊び」に過ぎないように思われる。

追記 2010.5.21

ブクマ、トラバの中のいくつかにコメントをします。

id:ROYGB さんからブクマ、トラバで丁寧にご指摘いただいたように「押す力」に関連して、「注射器やピペットで液体を引くようなイメージ」と書いた部分は説明の例として良くなかったと思います。ROYGBさんが図示なさった状況で、確かにこれも「押す力」になります。(この部分については別ルートで別の方からもご指摘をいただきました。)

………

「押す力」という言葉がとても舌足らずだったので、補足説明したい。「真空を基準とした圧力の大小(圧力の絶対値)」ではなく、「流体の各部にかかる圧力の向き」の話のつもりだったのだ。ボクがサイフォンの説明の「押す力」で表現したかったことは、流体にかかる力を細かく見ていったときに

流体には流体を押し縮めようとする方向に圧力が加わっている
ということだ。逆にボクが「ピペット」を出してずっこけたときに言いたかったことは、流体にかかる力を細かく見ていったときに「引く力」、ここでは
流体を引き伸ばそうとする方向に圧力が加わっている
ことであり、このようなイメージになる説明は、サイフォンの説明としては、良くないだろうということだ。Wikipedia (日本語版*5)の説明は明らかに後者である。

f:id:arakik10:20100521130832p:image
注射内の各小部分には外向きに圧力がかかる。

「引く力」のサンプルには次のようなものがある。海のように大きな容器に注射器 (断面積 S, 水面からの高さ h)を入れてゆっくりと一定の速度 u で引く*6。注射器の液面からの高さを h とすると注射器のピストン部の壁面の圧力は ρgh [Pa]*7,液体には「ピストンに引かれる向きに」力がかかる。いま液体の速度は一定なので、流体にかかる力は釣り合っている。力の向きはピストン側の面でピストンを向く向き、パイプ側の面でパイプを向く向き。



で、肝心のサイフォンの方だけど、

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サイフォンにおいて図のように上の方を取り払って、両サイドの管に仮想的にふたをすることを考えてみよう。管内の流体ふた上向きの力を及ぼしている。(もっともふたの外では大気圧がもっと強い力でふたを押し下げようとしてるけどね。)この「ふた」に液体の詰まったパイプを繋ぐのだから、中身の流体は「左側が高圧」「右側が低圧」の圧力がかかって、差し引き「押し縮める方向」の力がかかる。

これが「サイフォンに出てくる圧力はすべて「押す力」」で言いたかったことです。

■ふにゃふにゃの素材でサイフォンは作れない

同じく ROYGB さんのご指摘:

ふにゃふにゃしたチューブだと潰れてしまってサイホンが成り立たないことから考えると、“注射器を繋いで、両側から押すようなイメージ”も適切ではないかも。サイズによる程度の差はあるけど、サイホンのチューブ内部の圧力は大気圧よりも低くなり、大気圧との差で潰される力が働くので、それに抗して形を保つだけの強度が必要。

2010-05-19

「注射器つなぎ」は流体にかかる圧力の向きの話をしたかったのでご寛恕願いたいが、確かにサイフォン内の流体の圧力はどこをとっても大気圧より低いので、ふにゃふにゃした素材だと潰されてしまう。

[2013.6.16追記]NHK『大科学実験』の『実験33』では、最初に実験に利用していたパイプが最上部の高度を上げるにつれて内側に潰れてしまい、より径が大きく頑丈なパイプで実験をやり直すところが紹介されている。

■「ベルヌーイの定理」を言い出す奴は勉強不足

(2010.6.1 追記:水理学業界でベルヌーイの定理と全く同じ形の式を用いて粘性流体の運動を概算する方法があるようだ。)

流体力学のプロなら、ベルヌーイの定理が使えそうにもないことはすぐに分かる。というのも、ベルヌーイの定理は

  1. 流体が縮まない*8
  2. 流体に粘性がない
  3. 流れに渦がない(curlU=0)*9
  4. 流れに時間変化がない
という「4ない条件」の下でしか成り立たないからだ。いまの問題では「粘性がある」、おそらくパイプ内はポワズイユ流れっぽくなっているから「渦がある(curlU≠0)」、乱流になってれば「流れに時間変化がある」ので、「流体が縮まない」くらいしか条件が満たされていない。

前提条件を吟味せずに公式を振り回すのは、「出来の悪い学部学生」の特徴である。

ベルヌーイの定理は摩擦による損失が無視できるような条件、言い換えると「エネルギー保存」がそこそこ成り立っている場合にしか使えない。

■もし「ベルヌーイの定理」が成り立つような条件だったら?

もしいまのサイフォンの問題でパイプに摩擦がなかったり、流体に粘性が無かったらどうなるだろう?

答えは「単振動」が起こる。だって「重力による位置エネルギー」が「物質の速度エネルギー」に変わるだけのシステムになるからだ。

だから「ベルヌーイの定理」を言い出せる条件下では、「単振動が起こる」というのが正解でベルヌーイの定理の出番は無い。

■この場合「ベルヌーイの定理」は役に立つのか?

厳密には成り立たなくても大雑把な見積もりに使えるなら、まだいい。

ところが、ベルヌーイの定理の式 ρv2/2 + ρgz + p = (定数) を管の直径が一定のパイプ(要するに普通のホース)に当てはめると間違った結論を出してしまう。

というのも、管の直径が一定で流体が縮まないので、vが管のどの断面をとっても一定になってしまう。式でいうと

v = (一定) なので、ρv2/2 = (定数) かつ ρgz + p = (定数)
となってしまう。この2番目の結論がくせものなのだ。

この2番目の式をz-方向に微分すると ∂zp + ρg = 0 となる、これはパスカルの原理の式(パスカルの原理 - Wikipedia)に他ならない。そしてこれは静止している流体で成り立っている式である。運動している流体を議論しているはずなのに静止流体の式が導かれてしまうのは、考え方におかしい部分があるからである。

簡単な計算でわかることだが、ベルヌーイの定理を無思慮に振り回した結果の式 ρgz + p = (定数) を高液面側の液面の高さを z=0 の基準に、そこでの圧力を p=patm の条件で計算をすると、低液面側の圧力の値が p = patm + ρg H (Hはサイフォンの両液面の高さの差)となり、実際の値 p=patm と食い違ってしまう。現実と異なる答えを出す計算は役に立たない。

ただしい考え方はパスカルの原理から出発して

  1. サイフォン内の流体を静止させるために必要な力を求める
  2. 計算をすると、低液面側の出口のところで圧力 ρg H に相当する力で「ふた」をしないといけないと分かる
  3. しかし実際には、流体の力を支える「ふた」なんてないから、流体は ρg H の圧力で管から押し出される

と考えないといけない。

定理を安直に振り回すのは思考の欠如である。

(この項目は 2011.1.8 に追記した。)

■この場合「ベルヌーイの定理」は役に立つのか?(旧バージョン)

厳密には成り立たなくても大雑把な見積もりに使えるなら、まだいい。

ところが、ベルヌーイの定理の式 ρv2/2 + ρgz + p = (定数) を「10m超サイフォン」の思考実験に当てはめると矛盾が生じる。

「10m超サイフォン」の「後付けパイプ」の部分の流体を考えよう。まずパイプが水平なので*10「 ρgz の項はパイプの中で一定の値になる」、流体は縮まないのでパイプのどの断面をとっても流量は一定である。したがってパイプ内の平均の流速はどこの断面でも一定である。したがって「ρv2/2 の項はどこの断面をとっても一定の値になる」。だから「ベルヌーイの定理が成り立つと仮定すると、「パイプの中のどの断面をとっても圧力 p の値が一定の値になる」。

これは「パイプの両端で圧力に差がある(だから流れる)」という基本的事実と矛盾する。

現実には圧力差による力は、粘性による摩擦とつりあってしまい、いわゆる「ハーゲン・ポワズイユ流」と呼ばれる放物線型の速度分布を持つ流れになる(もしレイノルズ数が低ければね)。

そもそも「ベルヌーイの定理」のキモは流体の塊が、流れている最中に速度が速くなったり遅くなったりしたときの状態の比較に関するものなので、サイフォンのように管の太さが一定で流れの速度が変化しないような現象にあてはめても流体の状態に関する有意義な情報は出てこない。

公式を振り回して解決するくらいなら、誰もサイフォンの問題なんか間違えない。

もしベルヌーイの定理で説明してあるページがあれば、ぼくは

これは「ニセ科学」とまでは言えないけれど、十分に「非科学的な」まとめ方だ。
で始まるエントリを上げるだろう。[2010.5.23 追記]…あったよ。orz Wikipedia 日本語版の「関連項目」に
ベルヌーイの定理 - サイフォンの挙動定義する定理。
とある。記録を見れば(参照)サイフォンの項目の最初の書き換えで Gleam という著者が書き込んでいる。

*1:一応、液体は「水」(密度は 1000 kg/m3)、重力加速度は約 10 m/s2, 環境の温度は「常温」(300K程度)ということにしておくね。

*2真空というのは厳密にはウソで、環境温度での蒸気圧と釣り合う程度の薄い水蒸気が満ちているはずだ。

*3:このページ http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/siphon.htm示唆されている。

*4:液柱ゲージになっている。参考:圧力測定 - Wikipedia

*5英語版記述はボクの記述と同じ内容になっている。でも「列車の例え」が続いていてグダグダになっているけどwww

*6:「ゆっくりと」引く理由は計算で粘性の影響を極力小さくして、無視したいから。

*7:この計算はピストン内に水を引き上げることで、水は位置エネルギーを獲得しているから、その仕事率から壁面にかかる力を求めればよい。入る水が位置エネルギーを獲得する際の仕事率は ρghSu [Nm/s] である。この仕事をしているのがピストンを引く力 F [N] だから仕事率の方程式は Fu=ρghSu となる。だからピストンの面の平均の圧力は P=F/S=ρgh [Pa] となる。

*8:バロトロピック、すなわち ∇p/ρ=∇Q となる Q がある場合でも成り立つけどね。

*9:ベルトラミ流 curl U // U でも成り立つけどね。

*10:これは意図的に水平でまっすぐなパイプを繋ぐ話にした。U字に曲がった管だと理論の肝心な部分の理屈が見えづらいからだ。

.. 2010/05/20 19:28 実験してみれば良いのに…

arakik10arakik10 2010/05/22 06:09 こんなくだらないコメント書くヒマがあったら、自分で実験してみればいいのに…(積極性のないヤツだなあ(^^;)

neko3inu3neko3inu3 2010/05/22 14:24 「圧力」に「向き」というのがどうもなじみません。違う表現になりませんか? わたしには思いつかないので言いっぱなしで申しわけないのですけれど。

arakik10arakik10 2010/05/23 05:43 neko2inu3さま、コメントありがとうございます。

>「圧力」に「向き」というのがどうもなじみません。

圧力というのは流体を縮めたり、膨らましたりする力に対する反発力なので、「内向き」「外向き」という表現が一番しっくりくるかもしれません(これでも「向き」が出てしまいますが(^^;)。物理では「力」は「物の動き」に直接、関係しますから、どちらの向きに、どれだけの勢いで動かそうとしているのかをハッキリとさせる必要はあります。

okatakmokatakm 2010/05/26 18:25 >サイフォンのエネルギー源は容器の水面の差で決まる重力による位置エネルギー。
>流体を流す力の供給源(ポンプ)は大気圧だが、これは「供給」「受容」の双方で同じなので、流体を動かす力の説明になっていない。
>動かす原因となる力は、容器の水面とサイフォンの高さの差で決まる正の(押す方向の)圧力であり、これが供給側と受容側で食い違うから流れる
最後の文に置いて、その圧力の食い違いは、重力によるものですよね?
大気圧が動作に大きな影響を与えているのは事実ですが、「動かしている力」はやはり重力だと思います。
たとえばこのような状況を考えてください。
薄い小さな円盤が何枚も有ります。この円盤をまとめて運びたいです。
そこでそれらを並べて円柱状にし、まず左右から等しい力をかけます(万力で挟んだようなものです)。
つぎに右側からだけ、力をかけます(指で押す)。
すると全体が左側に移動します。
この時、各円盤には左右からの「押す力」がかかっており、
全体としても左右両方から力が加わっていて、その左右からの力の差により移動しています。
しかしこのような場合、普通は「動かしている力」は指の力と考えるのではないでしょうか。
サイフォンでは万力の力が大気圧で、指の力が重力(の差)に対応するでしょう。

arakik10arakik10 2010/05/27 05:27 okatakm さま、コメントありがとうございます。

> 最後の文に置いて、その圧力の食い違いは、重力によるものですよね?

はい、その通りです。でもこの文章を書くときに、かなり気をつかいました。

「流体」を「円盤」に、「大気圧」を「万力」に、流体を動かす力を「指の力」に例えているのはとてもわかりやすいので、機会があったら利用させて下さい。

さて、気をつかった、というか書くときに悩んだポイントを説明します。

> 普通は「動かしている力」は指の力と考えるのではないでしょうか。

はい、その通りだとおもいます。そしてここで「指の力」に対応するものは「流体にかかる圧力の勾配」です。パイプはさまざまな形状にできますから、「流体の移動の方向」と「重力の方向」は必ずしも一致しません。ですから「指の力」は「重力」には直接に対応ができません。

これと似ている状況として、ボクは「定滑車」を考えました(ただし書かなかった理由は「流体」を「列車」や「鎖」に例える変な考えとの混同を避けたかったからです)。これもサイフォン同様、重力のポテンシャルを解放して運動エネルギーに変えています。

滑車の問題では、重力下で滑車の左右にロープで質量の違う物体をぶら下げています。滑車は重い方に向けて回り始めます。さて、ここでそれぞれの物質にかかる力を考えると、「重力」と「張力」が働いていて、これらがバランスしていないので、物体は加速度をもって動き始めます。多分、高校の物理の演習で解いた経験がおありではないかと思います。

ここで「滑車が動くのは重力のためである」と言えるでしょうか?多分、言っても日常会話に差し支えはないと思います。

でも、運動方程式を解くのに役に立つでしょうか?方程式を解くためには、物質のひとつひとつにかかる力を丁寧に検討しなくてはいけません(高校物理で習いたての頃は苦戦しますよね)。ですから「滑車」の場合は軽い方が上がる理由は、運動方程式を解くことを前提にして説明するなら「張力が重力よりも大きいから」です。

サイフォンの場合、流体の各部分(okatakmさんの例えでは「各円盤」)にかかる力を検討した場合に、各部分にかかる力のうち、流体を動かすのに寄与する部分は「流体が上流側の面で受ける圧力」と「下流側の面で受ける圧力」です(これが滑車の運動方程式で「張力」と「重力」に対応するものです)。

ここまで考えた上で

 「動かす原因となる力は、容器の水面とサイフォンの高さの差で決まる正の(押す方向の)圧力」

という大変、歯切れの悪い表現になったのであり、『「重力」も「大気圧」も同じくらいガサツ』というタイトルになったのです。主要な説明に式は一つも書かなかったのですが、背後でそれなりにナヴィエ・ストークス方程式の計算はしたのです…大雑把な見積もり程度ですけど。

クロネカクロネカ 2011/04/17 03:19 あらきさん、はじめまして。

ベルヌーイの定理が全然使えないということはないと思いますよ。
パイプを繋ぐ場合で言えば、「パイプを繋いだ直後」では流れが定常でないから使えないでしょうが、定常になった後なら流れに時間変化もないし、流れが速すぎなければ乱流にもならないでしょう。

粘性に関しては、あくまで管内での損失がどれだけ影響しているかが重要です。
サイフォンが単振動しないというのは、受容側容器内での対流による損失が大きい気がします。
その分を差し引いて、純粋に管内での損失がどれくらいかという議論が必要でしょう。

ベルヌーイの定理を適用した結果というのは、系の流れが定常になったときの振る舞いを表します。
つまり「流れが生じる」という結論が出た時点で「初期状態」は定常ではなく(もし定常だったらベルヌーイの定理によって「流れない」という結論が出る)、放っておけばいずれ「こういう流れ」になるよ、と言っているわけです。

>ベルヌーイの定理を無思慮に振り回した結果の式 ρgz + p = (定数) を高液面側の液面の高さを z=0 の基準に、そこでの圧力を p=patm の条件で計算をすると
とありますが、その式は太さ一定の管の中という前提から導いた式ですから、「液面と同じ高さの管内」に適用しているのですよね?
ところが、「高液面と同じ高さの管内」の圧力はpatmではありません。圧力patm、速度ゼロのところから速度のあるところに水が流れたのですから、圧力は大気圧より小さくなっているはずです。
そうやって計算すれば合うはずです。

ただし、サイホンを扱っている流体力学の教科書では必ず低液面側での圧力を大気圧としているようですが、僕が上で書いたことを応用するとこれも間違いになってしまいますね。
う〜ん、難しい……

arakik10arakik10 2011/05/15 16:16 クロネカさま

コメントありがとうございます。反応が遅くなってすみません。

このエントリでは、水理関連の「ベルヌーイの式」と数理物理の「ベルヌーイの定理」は分けて考えています(見た目は同じものですけど)。

水理の「ベルヌーイの式」は(物理の目から見れば)「RANSをさらに管断面で平均化した式」です。「式」における p には粘性の効果も乱流の効果も含んでしまうので、それらを一切合財まとめて「流れと圧力損失の収支の式」として計算に使えます。実用的な概算にはとても便利です。

ここでは「(pが圧力だけでなく粘性や乱流による損失込みの値を表す)式」ではなく「(pが流体にかかる圧力を表す)定理」と考えると)粘性や乱流による圧力低下を説明できないというのが趣旨です。逆に「ベルヌーイの定理」を強調するご意見に多いのが、p が流体の圧力(これにも全圧、動圧、静水圧がありますが)だけを表すのか、損失まで考慮に入れた量なのか議論ではっきりしないことです。

さらには、p が圧力損失分も込みの量として扱いサイフォンの「流量計算」を「ベルヌーイの式」を使ってする分には簡便で良いのですが、サイフォンの「動作原理の説明」にこの式を使うのはまずいと思います。

というのも、サイフォン内の流体を動かす力は管の両端での圧力差であり、この圧力差を生み出すものは「サイフォンの外部の水位の差」であり、その圧力差があるという前提で「ベルヌーイの式」を使うのであって、圧力差が生まれる機構を「ベルヌーイ」で説明できるわけではないからです。


以下は細かいツッコミです

>流れが速すぎなければ乱流にもならない

これはそのとおりなのですが、パイプの中の流れなので粘性が必ず効いてしまい、「定理」の前提である完全流体の仮定は崩れます。

>サイフォンが単振動しないというのは、

このエントリの「単振動」の部分の趣旨は「完全流体という前提ならば、ベルヌーイの定理の適用以前に、(高校物理の単振子のような)運動エネルギーと位置エネルギーの保存の帰結を先に考えるべき」ということです。

>ところが、「高液面と同じ高さの管内」の圧力はpatmではありません。

ボクの「高液面側の液面の高さ」はサイフォン内ではなく外の「ビーカー」の液面のことです。

らんきちらんきち 2013/06/05 20:20 宮地祐司『サイフォンの科学史』(2012,仮説社)という本が出版されています。
サイフォンの原理を大気圧によるものとする誤りの歴史を書いた本です。
この本をみると前半では管の両端の圧力差の話も出てきますが、
後半に出てくる「授業書」なるものでは水分子の鎖モデルだけで
原理を説明しています。
鎖の長い方に引っ張られて水が流れ落ちるという説明です。
子供に原理を教えるのにこれでいいのかしらんと思うのですが、
いかがお考えでしょうか。
御一読の上、御感想をお聞かせ願えるとありがたいです。

arakik10arakik10 2013/06/06 05:28 らんきちさま
コメントありがとうございます。

『サイフォンの科学史』は未読ですが、その本で「水分子の鎖モデル」「鎖の長いほうに引っ張られて」という説明を「正しいもの」として扱っているとすれば、ウソを撒き散らしているので大変問題です。なぜならばサイフォンの場合、流体を「引っ張る」方向には圧力がかからないからです。
ウソを見抜く方法ですが、サイフォンで水が流れる原理を説明しているときに「管の中のいる流体にかかる力」で説明しようとしているものは「重力」を説明に取り入れていたとしても全部ダメです。説明の中に「管の外にある流体にかかる重力」「二つの流体の容器の液面の高度差による圧力差」が二つ揃って出ていなければ、デタラメを教えることになります。

arakik10arakik10 2013/06/14 06:15 らんきちさま
amazonで取り寄せて、パラパラと読んでみました。…教材として使うことはお勧めしません。予想通りの「鎖モデル」による間違った説明と、それを補強しようとするタチの悪い実験の連続でした。

らんきちらんきち 2013/06/20 00:23 御回答ありがとうございました。
前記の本は間違った説明とのことで、すっきりしました。

okeoke 2015/06/14 19:02 *4のあたりの赤から青に向かって水が移動するところの記述ですが
まず最初に赤の水が青の水面と同じ高さまで落下するほうが先で、
その後、それぞれの赤と青の部分が単なるパイプの壁と同じ役目になって高いほうから低いほうに流れるのだと思うのですが…

arakik10arakik10 2015/06/15 05:35 okeさま、コメントありがとうございます。

> まず最初に赤の水が青の水面と同じ高さまで落下するほうが先で、

 ボクの説明が分かりにくくてすみません。図を1枚描き加えましたのでご覧になって下さい。
 図の赤い部分、青い部分の水面の高さは、パイプがささっている容器中の水面から約10mの高さに必ずなります。これは大気が外の容器の水を約1000hPaの大気圧で押しているからです。
 図の「赤の水」「青の水」はそれぞれ自重で流れようとはしますが、パイプのささっている容器の水にかかる大気圧が、それぞれのパイプの水を支えて、落下を阻止しています。図では赤い水の側が0.8気圧で、これが赤い水にかかる重力と釣り合います。
 水が流れると入口側では少し圧力が下がりはしますが[1]、水道の蛇口から出る水や灯油缶から石油タンクにポンプで入れるときの流れの速度を数m/sと見積もって、圧力の低下分を概算すると数10hPa程度にしかなりませんから[2]、「最初に赤の水が青の水面と同じ高さまで落下する」ほどの圧力の低下は起きません。だから「赤の水」「青の水」の高さの差は、パイプの外の容器中の水面の差とほぼ同じ(数パーセント小さい)になります。

[1]http://d.hatena.ne.jp/arakik10/20140101/p1 サイフォンの原理とそれにまつわるいくつかの誤概念について
[2]http://d.hatena.ne.jp/arakik10/20100611/p1 理系学部の学部生のためのサイフォンの原理

okeoke 2015/06/15 14:35 なるほど、意味が分かりました
圧力差がそのまま水を移動する力(押す力)になるって説明だったんですね
私が考えたとおり先に赤の水面が下がってしまうと
圧力差が無い=水を流す力自体が存在しないので誤りなんですね

通りすがり通りすがり 2017/06/26 23:48 逆サイフォンの原理なる謎の語句を目にして検索を繰り返していたら偶然通りかかった者です。
かなり前のneko3inu3さんと同じ指摘にはなってしまいますが、やはり圧力に対して向きという表現はかなり無理があると感じます。本来スカラー量であるはずの圧力を、さもベクトル量の一種であるかのように表現するのですから、違和感があって当然です。
本文内ではわざわざ『圧力の値』とまで書いて打消し線で消し、『圧力の向き』に直してしまっていることが残念です。

arakik10arakik10 2017/06/27 14:29 通りすがりさま、コメントありがとうございます。
>圧力に対して向きという表現はかなり無理があると感じます。本来スカラー量であるはずの圧力を、さもベクトル量の一種であるかのように表現するのですから、違和感があって当然です。
圧力を「本来スカラー量である」とおっしゃるとき、流体という「ひとつのもの」に着目していると言えるのではないでしょうか?確かに「流体内部の圧力分布」はスカラー量です。
しかし、ここでは「流体」と「容器」という2個のものを考え、これらの境界面で働く力について考えています。流体の圧力の容器に対する作用としては「壁面に対して垂直外向き/垂直内向き」という向きを考えることができます。2個の物体に関する作用・反作用の法則の流体側の記述であることを汲み取っていただけなかったことが残念です。

そこらへんの人そこらへんの人 2017/08/11 21:07 友人からサイフォンの説明を受けて、そう言えばきちんと理解してなかったなと思ってたどり着きました。
私も通りすがりさんと同じところに引っかかったのでその関連になってしまうかもしれないですがご了承ください。

サイフォン内の流体にかかる力を「押す」力であるという根拠が今ひとつ理解できませんでした。(理解力不足でごめんなさい・・・)
本文中で説明されているピストンを引く例と通りすがりさんの質問への回答から考えると、管内に流体の壁があり、それに接する同じ流体があると考え、両者の力(圧力?)のやり取りを考えると、一方が押されている時もう一方は引かれているため(作用反作用)、結局は流体が押されているか引かれているかはぎろんできないのでは?と感じました。

ピストンを引く例でも大気圧が押していると言っても間違いではないわけですし・・・

あまり今までサイフォンに付いてよく調べたことが無かったので、鎖や列車の例がある事を初めて知った次第ですが、あながち間違っているようには思えませんでした(大気圧で云々は私もあり得ないと思いました!)

あらきさんの考えをお聞かせいただければ幸いです。
長文失礼いたしました。

arakik10arakik10 2017/08/17 06:18 そこらへんの人さま、コメントありがとうございます。

>本文中で説明されているピストンを引く例と通りすがりさんの質問への回答から考えると、管内に流体の壁があり、それに接する同じ流体があると考え、両者の力(圧力?)のやり取りを考えると、一方が押されている時もう一方は引かれているため(作用反作用)、結局は流体が押されているか引かれているかはぎろんできないのでは?と感じました。

「作用・反作用」を誤解されていますね。まず「作用・反作用の法則」は「2個のもの」に関する法則です。ここでは「流体」「容器」の2個のものの間で力がどう働くかを考えねばなりません。

ところが「一方が押されている時もう一方は引かれている」と書かれたとき、「流体」のみに着目されていますね。鎖や列車の例を「あながち間違っているようには思えません」という文面にも表れているように思われます。

申し上げにくいのですが、「ピストンを引く例でも大気圧が押していると言っても間違いではない」と書かれたときに、大気圧が「何を」押しているのかを書き落としていらっしゃることからも、考察の詰めが甘いように思われます。

おそらく「注射器の口を指で塞いで、ピストンを引く」ような状況を想像なさっているとお見受けしますが、このとき「流体は」「壁面(とピストンと指)を」「内向きに」「引っ張って」います。だから「ピストンを引く手は」「ピストンを」「ピストンが流体から受ける内向きの力に逆らって、外向きに引っ張って」いますし、「口を塞ぐ指は」「流体から」「内向きに引っ張られる」力を感じていますし、「注射器は」「流体から」「内向きに引っ張られる」ので、潰されないように踏ん張っています。

「注射器の口を指で塞いで、ピストンを引く」ような状況では、いずれも「流体は」「周囲のものを」「境界面に対して垂直で内向きの力で引っ張って」います。

研究者がこんなこと言うのもなんですが、サイフォンに限らず、流体力学の問題には丁寧にロジックを追跡するのが難しいものが多いと感じます。

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