あらきけいすけの雑記帳

2016-12-24 (Sat)

[][]3行で語るe:=¥lim_{N¥to¥infty}(1+¥frac{1}{N})^N(ここでNは自然数)の由来

授業のための覚書

no title

学習したことを内省して概念化して理解を深めていくプロセスってこんな感じだよなあ。てゆーか、ボク自身受験勉強最中(とそれ以降)は無自覚、無批判

指数法則a^{x+y}=a^xa^y, a^{xy}=(a^x)^y任意の実数 x, y で成り立つ
ことを受け入れて式変形にいそしんでいた。

それって社畜ならぬ数畜?

具体的に「0.5回の掛け算」って実行できる?「0.5回の掛け算」は「平方根」で平方根は「開平計算*1」や「バビロニアアルゴリズム*2」で値を求めることができて…という風に、「同じ値を与える(とせんせーがゆっていた)別の方法」に焼き直して計算していない?先生に言われるままに¥sqrt{2}=1.4142...を受け入れてなかった?

eの定義と万能の指数

ボクはここ数年の数学の授業では次の話を振ることにしている:

¥underbrace{(1.001)¥times(1.001)¥times¥cdots¥times(1.001)}_{694times}=2.001...¥approx2 だから  ¥underbrace{(1.001)¥times(1.001)¥times¥cdots¥times(1.001)}_{347times}=1.414...¥approx¥sqrt{2} じゃね?
この計算って1.1, 1.01, 1.001, 1.0001, ..., 1.00...001って細かくしたら、どんどん値が正確になるし、x=(1.00...01)^N で1より大きいどんな数でも作れるから、究極の「n乗根計算表」って作れね?*3
例えば¥sqrt{2}
¥sqrt{2}¥approx(1.1)^{3}¥approx(1.01)^{34}¥approx(1.001)^{346}¥approx(1.0001)^{3465}¥approx...
ただこれでは指数の桁が膨大になるので、指数に小数もOKという風に指数のかけ算ルールの定義a^{xy}=(a^x)^yを拡大して
¥sqrt{2}¥approx((1.1)^{10})^{0.3}¥approx((1.01)^{100})^{0.34}¥approx((1.001)^{1000})^{0.346}¥approx((1.0001)^{10000})^{0.3465}¥approx...
となる。ここで出てきたのがネイピア数 e
(1.1)^{10},(1.01)^{100}, (1.001)^{1000}, (1.0001)^{10000}, ..., e:=¥lim_{N¥to¥infty}(1+¥frac{1}{N})^N=2.718...
くそまじめな整数回の掛け算が考え方の基本になっているので、これは値を求める計算のアルゴリズムが明快。逆にいくつかの参考書で見かける定義 e:=¥lim_{x¥to0}(1+x)^{¥frac{1}{x}} は直接のアルゴリズムで書けない「実数回の掛け算」がコッソリと導入されているので、いただけない。

ついでにeの定義を使わずにロジックだけで対数関数、指数関数の導関数を求める

高校までの微分積分の知識(合成関数、逆関数の導関数、微分と積分が逆演算)が一通りあるなら、こんな導出もある;

  1. 対数関数は f(xy)=f(x)+f(y)…(1) を満たす。
  2. (1)に x=1 を代入すると f(1)=0 とわかる。
  3. (1)に x=0 を代入すると f(y)=0 になっちゃうのでf(0)は定義できない。
  4. (1)をyで微分すると、x¥,f’(xy)=f’(y) なので、これにy=1を代入すると f’(x)=f’(1)x^{-1}
  5. だから対数関数は ¥displaystyle f(x)=f’(1)¥int_1^x¥frac{dx}{x} である。つまり y=¥frac{1}{x} のグラフを描いて面積を求めれば対数の値が求まることがわかる。
  6. ついでに対数関数は f’(x)=f’(1)x^{-1} なので、対数関数の逆関数(gとする)の導関数は逆関数の導関数の公式より g’(x)=g(x)/f’(1) となる。というわけで指数関数(対数関数の逆関数)の導関数の公式が求められる。

*1開平法 - Wikipedia

*2Methods of computing square roots - Wikipedia 日本語のWikipediaには載っていない。

*3ネイピア数 - Wikipediaの「歴史」「定義」の項のベルヌーイの利子計算の話を参照。

2014-02-26 (Wed)

[][]実3次元ベクトルの2×2元書き換え

自分用の覚書。とある計算をしていて、¥mathbb{R}^3のベクトル¥vec{p}=(p_x,p_y,p_z)を「長さ」が1の2個の2次元のベクトル

¥vec{p}_{¥perp}:=¥left(¥frac{p_x}{p¥sin¥theta},¥frac{p_y}{p¥sin¥theta}¥right), ¥vec{p}_{¥parallel}:=¥left(¥frac{|¥vec{p}|}{p¥sin¥theta},¥frac{i¥sigma p_z}{p¥sin¥theta}¥right),  ¥theta¥mathbb{R}^3でz軸と¥vec{p}のなす角、¥sigma=¥pm1
に書き換えるとすっきりとした式になった。3元の実ベクトルを複素2×2元のベクトルに書き換えたときにどんな関係式が成り立つのかはまだ調べてない。

2013-12-14 (Sat)

[]数学って何のために学ぶんだろう?

100文字超えたのでここに

大学数学の試験はいかにあるべきか、もしくはある方法論 - Togetterを見てちょっと考えた。

A4一枚程度のリファレンスを持ち込ませてみたという話。ボクの近所では結構、以前からやっている。数学や物理のような事項の暗記よりも、論理的思考、数式の運用能力が大事な科目ならば、いくらでもパラメーターや設定を変えられるので、期末試験の実施条件として実行可能だろう。大学数学程度なら「リファレンスを適切に参照しながら応用問題を正確に短時間で解く」能力の達成度を評価するというのもありかもしれない。

ぼくは以前から3年生対象の複素関数の基礎的事項を教える授業で、第15回の演習課題としてノート・教科書・参考書・コピーを何でも持ち込み可で解かせて、第16回(期末試験期間中の回)の最終授業でその答案を返却、解説をし、解けている水準の能力評価値を提示している。

数学の授業の目的は、計算の運用能力を高めることであって、「期末試験で落とすこと」でないことはあきらかだ。だが、演習課題を採点していてはっきりしていることがひとつある。事前に数式運用の手書き出力の練習を全くしていないと時間内に計算が終わらないということだ。数学でレファレンスありなら、レファレンスのコピペでは対応がつかない問題が出ることが想像できない学生もそれなりにいるし、まじめに出席していても事前の出力練習不足がもろに答案に出ている学生もいる。

数学って、現実の問題を解くためのものだよね。現実の問題って(たとえばGoogle先生の)コピペ、すなわち1次入力のデータをパイプラインで出力することで対応つかないんだけどなあ。

2011-05-30 (Mon)

[][]自分の板書中心の授業をビデオに撮ってみる

自分の授業の板書のノート起こしをしてみて、ノートテイクの時間を自在にコントロールできるので、例えば板書の量がある程度たまったところで一気に整理するように書いたりとかできるので便利だということに気が付いた。例えば授業をLMSにあげておいて、ノートテイクを予習として課して、授業時間の本体は演習にあててしまうとか。先生やアシスタントはノートテイクや演習のチェックや不明な個所の指導をするとか。ノートテイクが出来ていない人は欠席扱いするとか。

2010-10-13 (Wed)

[]有効数字の決め方にもやもやとしたものを感じる人のための説明

教育用の覚書。今後も加筆、修正する予定。

有効数字とは、有効数字を求める趣旨

有効数字を求める趣旨はその測定で知り得たことと知り得ないこと(知り得ない数を書くことは、読者をミスリードするという悪事だ)をはっきり区別し、エビデンス(はっきりと知り得たこと、証拠、根拠)を蓄積することである。知り得たことと知り得ないことの境目を「測定の不確かさ」といい、客観的な数値で表すことができる。

有効数字 significant figures (有効桁数 significant digit)とは測定で得られた値のうち、0でない数の最上位の桁から測定の不確かさ uncertainty*1 の桁までのこと。

参考文献:テイラー, 『誤差解析入門』. 原著:Introduction To Error Analysis: The Study of Uncertainties in Physical ... - John R. Taylor - Google ブックス p.13〜p.16 を参照せよ

したがって中等教育とくに大学受験でやらされるような「有効数字の計算法」は、不確かさとその取扱い方についての説明が無いので原理的にはニセ科学*2であり、大学受験が済んだら早急に忘れるべきである。

有効数字の桁数の決め方

量 X の有効数字は、原則として次の手順で決める

  1. 量 X の測定の不確かさ ΔX を確かめ、上位1桁(場合によっては2桁)に丸める
  2. 量 X の数値を不確かさ ΔX と同じ桁に丸める
  3. 測定結果を「 X±ΔX [単位] 」の形に記述する

したがって計測結果の一番小さい桁には測定の不確かさに伴う曖昧さがある。

桁の丸め方、揃え方の例題

例えば速度を測定してデータ処理をした結果、v = 8.14256 ± 0.00312 m/s という値を得た場合、不確かさは上位1桁に丸めて 0.003, 測定値はこれと同じ桁に丸めて 8.143 にし、v = 8.143 ± 0.003 m/s とする。

不確かさの記述がない測定値の扱い

そんなデータは原則的に無意味なデータで価値はない。

よくあるタイプの記述として「 X=2.34 は 2.335≦X≦2.345 の範囲にあると考えられる」に類する説明があるが、

データが 2.335≦X≦2.345 の範囲にあるならば、原則として X=2.340±0.005と記述すべきである。

測定機器の表示と不確かさ(いわゆる直接測定)

アナログ機器の場合:測定値 X は最小目盛の 1/10 まで読み取る(これを内挿法という)。不確かさ ΔX の値は最小目盛の 1/10 の大きさが妥当であろう。

デジタル機器の場合(1):デジタルテスターで電圧を計測するような測定機器の応答が悪く、測定値が時間的に一定であると期待される場合は、デジタル機器内部のD/A変換のタイムラグ等を考えて、表示のすべての桁ではなく、表示が安定しなくなる1〜2桁までを読み取り、その値の範囲から測定値と不確かさを決める。

デジタル機器の場合(2):測定機器が精密で内部で処理が行われている場合、時間変動をする対象の場合は、表示をそのまま測定値として採用し、機器の精度について別途、考察して不確かさを決める。

計算式と不確かさ(いわゆる間接測定)

測定結果 X±ΔX, Y±ΔY, ... を計算式 f(X,Y,...) に代入して求める場合の不確かさの計算の原則は、

x, y を測定量 X, Y の誤差とするとき、不等式 −ΔX≦x≦ΔX, −ΔY≦y≦ΔY, ... の下で、誤差の式 Δf(x,y,...) := f(X+x,Y+y,...) - f(X,Y,...) の最大値、最小値を求め*3、最上位1桁を求める。
実際の計算はスプレッドシート(Microsoft Excel とか OpenOffice.org calc とか Google Drive のスプレッドシートとか)で力任せに代入しまくって計算すればいいので、中学や高校でも授業ができる(「紙と鉛筆」にこだわり過ぎる学校の先生はIT音痴のバカ)*4。理論的には f(X+x,Y+y,...) をテイラー展開し、展開の1次の項を評価する(これは大学教養くらいの知識)。
f(X+x,Y+y,...)-f(X,Y,...)=(f,x)(X,Y,...) x + (f,y)(X,Y,...) y + ...
(ここで (f,x):=∂f/∂x, ...) より、不確かさは
Δf(x,y,...) = |(f,x)(X,Y,...)| |x| + |(f,y)(X,Y,...)| |y| + ...
と見積もられる。*5不確かさで必要な値は最上位1〜2桁なので、テイラー展開の2次以降の項は、多分、計算するだけ時間の無駄である。

Google検索で上位にくるページの計算を検証する

2010年10月16日午前4時頃の「有効数字」の Google 検索結果の上位10件の積、商の絡む有効数字の計算をテイラー『誤差解析入門』の方法に従って再計算してみた。不確かさの計算は「提示された数値のもっとも小さい桁の値に±1の不確かさを含む」として、テイラー展開の1次の各項の絶対値の和を用いた(これは不確かさの評価としては過大評価ぎみになる計算である)。大学のサイトだった場合、大学名のみを記したが、もちろん「その大学全体が悪い」という意味ではない。

結果は「たいていの記述で有効数字が一桁足りない」ようである。不確かさを過大評価してもなお、有効な桁を無駄に1つ削ってしまっている。しかも大半が大学の理系学部の教育用資料である。

  1. Wikipedia 有効数字
    積、商の絡む計算の記載なし
  2. 神奈川歯科大学 http://www.kdcnet.ac.jp/college/buturi/kougi/buturiji/appendix/signif.htm
    例題:1.3m×2.12m=2.8m2
    f(X,Y)=XY なので Δf=|Y||ΔX|+|X||ΔY|, ΔX=0.1, ΔY=0.01 で計算すると
    測定結果=2.756±0.225=2.8±0.2
    …結果を小数第1位まで取るのは妥当
  3. 東京学芸大学 http://topicmaps.u-gakugei.ac.jp/phys/exp/titles/sigfig.asp
    例題:4.23×0.38=1.6 [単位なし]
    f(X,Y)=XY なので Δf=|Y||ΔX|+|X||ΔY|, ΔX=0.01, ΔY=0.1 で計算すると
    測定結果=1.6074±0.0461=1.61±0.05
    …結果を小数第2位まで取るべき
  4. 高校物理講義ノート http://www15.wind.ne.jp/~Glauben_leben/Buturi/Riki/YuukouSuuji.htm
    例題:4.23×0.38=1.6 [単位なし]
    上に同じ
  5. 物理学解体新書 http://www.buturigaku.net/main02/Report/Reports063.html
    積、商の絡む計算の記載なし
  6. 京都大学 http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/ubung/yyosuke/uebung/sig_digit.htm
    あらきの出身学部がこんな記述を出しているとはね…
    1. 例題:3.6 × 2.574 = 3.6 × 2.6 = 9.4
      f(X,Y)=XY なので Δf=|Y||ΔX|+|X||ΔY|, ΔX=0.1, ΔY=0.001 で計算すると
      測定結果=9.2664±0.0261=9.27±0.3 …結果を小数第2位まで取るべき
    2. 例題:6.88×3.03×0.761 = 15.9
      f(X,Y,Z)=XYZ なので Δf=|YZ||ΔX|+|XZ||ΔY|+|XY||ΔZ|, ΔX=0.01, ΔY=0.01, ΔZ=0.001 で計算すると
      測定結果=15.8641104±0.0962615=15.86±0.10
      …不確かさの最上位が1なのでテイラーの記述に従って不確かさを2桁とると、結果を小数第2位まで取るべき
    3. 例題:8.75 ÷ 8.77 = 1.00
      f(X,Y)=X/Y なので Δf=|1/Y||ΔX|+|X/Y2||ΔY|, ΔX=0.01, ΔY=0.01 で計算すると
      測定結果=0.99772±0.00228=0.998±0.002
      …結果を小数第3位まで取るのが妥当
    4. 例題:8.79 ÷ 8.77 = 1.00
      f(X,Y)=X/Y なので Δf=|1/Y||ΔX|+|X/Y2||ΔY|, ΔX=0.01, ΔY=0.01 で計算すると
      測定結果=1.00228±0.00228=1.002±0.002
      …結果を小数第3位まで取るのが妥当
    5. これは「有効数字の暗部」ではなく、「桁そろえの表面的な技法に終始して、計測値のきちんとした処理を教育しないという暗部」であろう。京大理学部なら1年生前期でテイラー展開を使って不確かさとその扱いを解説してもついてこれるはず。
    6. こんなクイズが最後にある
      4.14を10倍することを考えましょう。この時4.14を10回足すならば、有効数字の取り扱いの原則からして、結果は41.40と4ケタになり、掛け算だとみなせば、結果は3ケタで、41.4です。どちらがもっともらしいでしょうか?またそれはなぜですか?
      もちろん訊き方が曖昧でいわゆる「フレーム問題」になっているから、正解は「どちらの考え方も、それがもっともだと思えるような不確かさの計算の文脈がある」である。
  7. 新潟大学 http://www.gs.niigata-u.ac.jp/~kimlab/lecture/numerical/muldiv.html
    途中の誤差計算は妥当なのだが…
    例題:一辺が 12.3456 cm、もう一辺が 7.4 cm の長方形の面積を求めよ。
    f(X,Y)=XY なので Δf=|Y||ΔX|+|X||ΔY|, ΔX=0.0001, ΔY=0.1 で計算すると
    測定結果=91.35744±1.2353=91.4±1.2 …不確かさの最上位が1なのでテイラーの記述に従って不確かさを2桁とると、結果を小数第1位まで取るべき
  8. あまのがわ http://www.geocities.jp/milkyway_amanogawa/number.pdf
    途中の誤差計算は妥当なのだが…
    例題:10.4m×7.4m=77m2
    f(X,Y)=XY なので Δf=|Y||ΔX|+|X||ΔY|, ΔX=0.1, ΔY=0.1 で計算すると
    測定結果=76.96±1.78=77.0±1.8 …不確かさの最上位が1なのでテイラーの記述に従って不確かさを2桁とると、結果を小数第1位まで取るべき
  9. 桐蔭横浜大学(?) http://www.cc.toin.ac.jp/tech/elec/ft25/step1-1.htm
    積、商の絡む計算の記載なし
  10. 早稲田大学 http://www.okochi.env.waseda.ac.jp/pdf/H20significant_figures.pdf
    例題:「1.61x2.434/0.23456」を計算すると,「16.70677…」となる.この場合は,最小の有効数字である「1.61」に有効数字を合わせて「16.7」と表示する
    f(X,Y,Z)=XY/Z なので Δf=|Y/Z||ΔX|+|X/Z||ΔY|+|XY/Z2||ΔZ|, ΔX=0.01, ΔY=0.001, ΔZ=0.00001 で計算すると
    測定結果=16.70677...±0.11134...=16.71±0.11
    …不確かさの最上位が1なのでテイラーの記述に従って不確かさを2桁とると、結果を小数第2位まで取るべき

書きかけ


*1

f:id:arakik10:20101016211630j:image
「不確かさ uncertainty」は国際計量用語集 International Vacabulary of Metrology に記されている専門用語である。測定結果を X±ΔX, 例えば 1.23±0.05mm と書いたときの 0.05mm の部分。この部分は「誤差 error」ではない。
参考: http://www.iso.org/sites/JCGM/VIM/JCGM_200e.html
ちなみにMITの物理学の授業では「不確かさが分かっていない測定は無意味」ということが盛んに強調されている。http://www.youtube.com/watch?v=PmJV8CHIqFc

*2:測定という自然科学の基本操作に関して「科学のようなフリをして科学ではないもの」という定義に一致していると思われる。参考:http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/lab/pseudoscience/ps-comments
問題視したいのは「正確な定義を教えないこと」ではない。受験勉強の場面で学習者が「桁揃えの技法」にばかり関心を持っており、大学入学後もおそらくその意識、関心の水準に留まっていることと、Google検索上位のページを見ると大学教員の作成したサイトですら不確かさの扱いと「桁揃えの技法」が乖離したページだらけであることである。

*3:ただし誤差がランダムに入ると期待される場合、この計算法は不確かさを過大評価している。

*4:2013.3.18に加筆

*5:これは値として過大評価になっている。誤差がランダムに入ると期待される場合、テイラー展開の1次の各項 |f,x||x|, |f,y||y|, ... が互いに独立なランダム変数であると仮定して、不確かさを次式で評価する

Δf = √( |f,x|2|x|2 + |f,y|2|y|2 + ...)

kimikimi 2010/10/21 15:27 実用上、自乗和の平方根よりもテーラー展開の一次のほうが使い易い(実際、掛けたり割ったりしなきゃあならないような二つの量の誤差に相関がないことなんて滅多に無いからね。)ので、講義でもテーラー展開の一次までで誤差のestimateをすることだけを教えてるわけだが、あらきさんの書き方だと何か特別なestimationの方法と、特別なルールがあって、それを使わないといけないと主張しているかのように誤解されかねないよ。この話の結果は「積商の相対誤差はもとの相対誤差の和」っていうそれだけのこと。このことさえわかってもらえればよい。
有効桁(有効数字)だけの議論だと、同じ絶対誤差0.1でも、9.9の相対誤差だと1%程度なのに、1.0の相対誤差だと10%になってしまう。だからちゃんと絶対誤差だけでなく相対誤差を考えようねって話。
それじゃあ、誤差1%の1.00…は1.00±0.01で誤差9%の9.00…は9.00±0.81なのかっていうと、
まず9.00±0.81の最後の1にはあんまり意味が無いよねえ。そこで9.0±0.8と書こう。
1.00±0.01のほうはもう少し厄介で、
たとえば4.30…の2.1%は0.0903、2.4%は0.1032だからといって
誤差2.1%の4.30…は4.30±0.09
誤差2.4%の4.30…は4.3±0.1
ってのはどうなのよ。これは4.30±0.10の方がいいんじゃないか、
ということ。Talerは控えめに"perhaps a 2"と書いてるけど私は±0.25ぐらいまでは全然違和感がない。
まあ、単にあらきさんの書き方だと「ムツカしいこと」だと捉えられてしまうんじゃないかとおもっていらないことを書いてしまったけれど、云いたいことは同じ。というかもっと過激で。
「積商の相対誤差は相対誤差の和」っていう単純なことも教えられておらんのか?!
ということ。有効数字のprocedureと同じく単にprocedureだけ教えるならテーラー展開もいらないのに。

arakik10arakik10 2010/10/22 06:31 kimi さま
コメントありがとうございます
相対誤差でまとめるのは、考えたけど書きませんでした(もともと「覚書」ですし)。というのも相対誤差だけでシンプルに書けるのは1次式の積のときだけで、物理学実験に出てくるボルダ振子モデルなんかだと、結構、導関数の式も面倒な形になっちゃいますね。「コンピュータリテラシー2」の授業で(筆算 and/or Maple, Excel)で2週かけて演習したけど。
今回は「積、商」の計算を取り上げたけど、それはGoogle上位の不確かさ評価のページのサンプルで扱った題材では「積、商」以上に複雑なモデル式が無かっただけのことです。
実際、不確かさ評価は大学初年次以上でないとついてこれない難しいことだと思いますよ。ただ「大卒」以上のはずの学校(特に大学)の先生がいい加減なページを書き飛ばしているのは、当人がダメというよりは、日本の tertiary education レベルの科学教育のダメさ加減を示しているような気がしますね。

ちゅんたちゅんた 2013/03/18 10:06 「不確かさ」を計算するとした場合,書きかけの絵を見てみると測定値の確からしさみたいなので,平均値の標準誤差(Standard error of mean)で良いのでしょうか?それとも標準偏差?分散?

ちゅんたちゅんた 2013/03/18 10:07 追記:正規分布だった場合という事にしておいてください。

arakik10arakik10 2013/03/19 04:22 ちゅんたさま、コメントありがとうございます。

>「不確かさ」を計算するとした場合,書きかけの絵を見てみると測定値の確からしさみたいなので,平均値の標準誤差(Standard error of mean)で良いのでしょうか?それとも標準偏差?分散?
>追記:正規分布だった場合という事にしておいてください。

多分、対象の性質によって計算が変わると思います(ボク自身も計測のプロではなく、教科書やウェブで勉強をしている身です)。
各測定が正規分布的でランダムな測定値を出すと思える場合には、そう仮定して、分布の標準偏差を推定して出すようです。
特定の区間内の値を一様かつランダムに取ると思えるもの、例えば目盛の1/10の精度で目分量で内挿して読むときなどは、その分布を前提に標準偏差を推定して出すという風にやるみたいです。

月曜日月曜日 2017/11/18 14:36 生物系学部に属する大学生のものです.
このページを読ませていただいて有効数字のモヤモヤが少し改善されました.

私の学部のある教員は「どんな計算でもデータの中で最小の有効数字の桁数に合わせればいい」と教えています.

関数が異なれば誤差の出方も異なるから,その都度計算する必要があるという認識でよろしいでしょうか?

arakik10arakik10 2017/11/19 10:06 月曜日さま
> このページを読ませていただいて有効数字のモヤモヤが少し改善されました.
月曜日さまのお役に立てて光栄です。

> 私の学部のある教員は「どんな計算でもデータの中で最小の有効数字の桁数に合わせればいい」と教えています.
いくつかの測定量の組み合わせの話と思いますが、量の加減算か乗除算かで扱いが変わるのですから、ひどくレベルの低い話ですね。このエントリでは乗除算を扱っていました。加減算だと量 X+Y に不確かさが入るので X+ΔX + Y+ΔY になりますから、ΔX と ΔY の内で大きい方で不確かさの評価が決まるはずです。

> 関数が異なれば誤差の出方も異なるから,その都度計算する必要があるという認識でよろしいでしょうか?
その通りです。代入される関数毎にきちんとテイラー展開をして評価します。

月曜日月曜日 2017/11/26 11:34 arakik10様

回答ありがとうございました.スッキリです.
有効数字の話に限りませんが,生物系ではデータの処理などの統計的な部分が軽視されているような印象があります.実験で有意差が出たところにはみんな興味を持ちますが,果たしてその検定が適切なものなのかなどはあまり議論になりません(ある程度はありますが).もっと生物系にも統計学や数的処理に関する考え方が浸透していくといいなと思います.

2010-03-27 (Sat)

[]RSK 山陽放送 ラジオ:岡山理科大学 学長室通信

山陽放送RSKラジオで『岡山理科大学 学長室通信』という番組をやっている(全10回)。岡山理科大学の波田善夫学長が植物学のちょっとした薀蓄を語る番組で、ウェブでも配信されている。サイトにずっと残しておいて欲しいなあ。というわけで、理科大のアウトリーチ活動の一環ですので聴いてください。

2009-12-19 (Sat)

[]岡山理科大学主催のクリスマス・ミニレクチャー

f:id:arakik10:20091219130722j:image

丸善 | 催し物情報 : 岡山シンフォニービル店?☆岡山理科大学プレゼンツ☆ 小・中学生のためのクリスマス・ミニレクチャー

チラシ(PDFファイル)

岡山理科大学は理科の大学です。

大学生のお兄さんやお姉さんは、先生と一緒に世の中の不思議を解明したり、

人の役に立つモノを作ったりと毎日大忙しです。

今回は、そんな岡山理科大学が、科学のおもしろさを小・中学生のみなさんへ

お伝えしたくて、「クリスマス・ミニレクチャー」を企画しました。

さまざまな科学実験や研究してできた物を展示していますので、

ぜひ遊びにきてください。きっと理科の楽しさを実感できるはずです。

みなさんとお会いできるのを楽しみにしています!

というわけで、理科大のアウトリーチ活動の一環ですので来てください。

no title

2009-08-07 (Fri)

[][][]部分分数分解の解法(通分をしないで済む「ヘビサイドの目隠し法」)

教育用の覚書。部分分数分解は分数関数の不定積分や、有理関数のラプラス逆変換(Laplace inverse transform)などで用いる基本的な技法である

部分分数分解とはと一意に分解すること。ただしP(x)は(m1+…+mn)よりも小さい次数の多項式で分母のどの因数とも約分できないものとする*1
係数の決定法で有理関数を通分して、係数比較をして、係数の連立一次方程式を解く方法は勧められない。なぜなら四則演算の数が多くなり、ケアレスミスのリスクが上がるからである*2。係数決定で一番、明快なものは「ヘビサイドの方法*3」であろう。
問題:¥frac{7}{(x-2)(x+5)}=¥frac{A}{x-2}+¥frac{B}{x+5}…(1) のA,Bを求めよ
方針:分母を0にする因数を両辺にかけて、その解を代入すると、その因数を分母に持つ項の係数が計算できる。
解答:A=1, B=-1 すなわち ¥frac{7}{(x-2)(x+5)}=¥frac{1}{x-2}+¥frac{-1}{x+5}
解法:

式(1)の両辺に(x-2)をかけて¥frac{7}{x+5}=A+¥frac{B(x-2)}{x+5}

この両辺に x=2 を代入して¥frac{7}{2+5}=A+¥frac{B(2-2)}{x+5}=A+0 ∴A=1

式(1)の両辺に(x+5)をかけて¥frac{7}{x-2}=¥frac{A(x+5)}{x-2}+B

この両辺に x=-5 を代入して¥frac{7}{-5-2}=¥frac{A(-5+5)}{x-2}+B=0+B ∴B=-1

例題の出典:no title http://next1.cc.it-hiroshima.ac.jp/MULTIMEDIA/calcans/node91.html

係数決定で一番、安直なものは両辺のxに適当な値を代入すれば、係数の1次方程式が得られる。へヴィサイドの方法では重解のときには、最高次数の係数だけが簡単に求まる。
問題:¥frac{4(3+3x-x^2)}{(x-1)^2(x+1)}=¥frac{A}{x-1}+¥frac{B}{(x-1)^2}+¥frac{C}{x+1}…(1)
方針:因数が重解の場合はその最大次数を両辺にかけること
解答:A=-3, B=10, C=-1 すなわち ¥frac{4(3+3x-x^2)}{(x-1)^2(x+1)}=¥frac{-3}{x-1}+¥frac{10}{(x-1)^2}+¥frac{-1}{x+1}
解法:

(1)の両辺に(x-1)2をかけて¥frac{4(3+3x-x^2)}{x+1}=A(x-1)+B+¥frac{C(x-1)^2}{x+1}…(2)

(2)の両辺にx=1を代入して¥frac{4(3+3-1^2)}{1+1}=A(1-1)+B+¥frac{C(1-1)^2}{1+1}  ∴B=10

(1)の両辺に(x+1)をかけて¥frac{4(3+3x-x^2)}{(x-1)^2}=¥frac{A(x+1)}{x-1}+¥frac{B(x+1)}{(x-1)^2}+C…(3)

(3)の両辺にx=-1を代入して¥frac{4(3+3(-1)-(-1)^2)}{(-1-1)^2}=¥frac{A(-1+1)}{-1-1}+¥frac{B(-1+1)}{(-1-1)^2}+C  ∴C=-1

(1)の両辺にx=0を代入して¥frac{4(3+0-0)}{(0-1)^2(0+1)}=¥frac{A}{0-1}+¥frac{B}{(0-1)^2}+¥frac{C}{0+1}…(4)

(4)の両辺に B, C の値を代入して12=-A+B+C=-A+(10)+(-1)  ∴A=-3 *4

例題の出典:部分分数 分解 http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/q-and-a/2003/06/20030627-1.html

*1[2011.1.4]Wikipediaの「ヘビサイドの展開定理」の記述が正しくなっている。[2009.11.19追記]Wikipediaの「ヘビサイドの定理」に書かれている式は間違っている。

*2:通分する答案が出回っている理由は「部分分数分解の一意性」が指導要領準拠の高校数学の教科書に記述されていないので、答案上は分解を答案内で検証すべき「仮説」扱いしなくてはならないせいではないかと勝手に想像している。

*3:Heaviside's cover-up method と呼ばれている。訳は「ヘビサイドの目隠し法」くらいか?部分分数分解は「へヴィサイドの定理」ではない。

*4:ヘビサイドの方法に忠実にAを出すとすればA=¥lim_{x¥to1}¥frac{d}{dx}¥frac{4(3+3x-x^2)}{x+1}となる。ヘビサイドの方法の詳細はここに書いた⇒部分分数分解の算法は Heaviside の展開定理ではない*1 - あらきけいすけの雑記帳

2009-08-04 (Tue)

[][]部分分数分解の算法は Heaviside の展開定理ではない*1

(注:具体的な計算法については:部分分数分解の解法(通分をしないで済む「ヘビサイドの目隠し法」) - あらきけいすけの雑記帳を見てね。)

タイトルの答えは「わからん(調査中)」である→「呼んではいけない」。

Heavisideの展開定理とは線形常微分方程式の解を求める定理である*2例えばある微分方程式の初期値問題の Laplace 変換が X(s)=¥frac{1}{(s-1)(s-2)} であったとすると、これを部分分数分解して逆ラプラス変換をすると解 x(t)=e^{x}+e^{2x} が得られるというところまで計算するのがヘビサイドの展開定理である。その計算の途中に現れる部分分数への分解の算法は Heaviside cover up method であり Heaviside expansion theorem ではない。
以下、教育用の資料作成のための覚書。部分分数分解 (partial fraction decomposition) - あらきけいすけの雑記帳もちょこちょこと書き足している。

ヘヴィサイドの展開定理 - Wikipedia(2009年4月9日 (木) 11:30 )には、なぜか Laplace 変換ではなく、なぜか部分分数分解に関する「公式」を書き留めてあるのだが、記述にまちがいがある。[2011.1.4]2010年12月13日に全面的に改稿されていて、現在は正しい記述になっている。

部分分数分解とは有理関数 f(x) = P(x)/Q(x) (ただし分母の多項式 Q(x) は分子の多項式 P(x) より次数が高いとする)に対して、分母が Q(x) = (x-a1)m1 (x-a2)m2 … (x-an)mn と因数分解されるとき、f(x) を (x-ai)-j の線形結合、すなわち

に書き換える操作のこと。ここで係数 Cij は式
ただし j=1,2,...,mi,  ¥left(¥frac{d}{dx}¥right)^{0} は微分をしないという意味
で求められる。和の添字は「因数」と「べき」の2種類必要になるから Wikipedia の記述はウソ*3

ウェブ上で「Heavisideの定理」で検索すると*4部分分数分解のアルゴリズムの記述が頻繁に見つかる、ところが Heaviside's expansion theorem で検索をすると*5*6、例えば Inverting the Laplace Transform のように、有理関数の Laplace 逆変換を与える公式を指すものがひっかかるようである。逆に部分分数分解の手法は Heaviside's cover-up method*7 という名前が検索にかかる。そして cover-up method には「訳語」が見当たらない。英語と日本語の対応がチグハグな状況である(多分、日本語の方が知識の導入、普及の過程でデタラメが入っているのではないか)。

(多分)数学史の資料としても利用できるハイラー, ワナーの『解析教程』によれば、部分分数分解そのものは(おそらく基本的な積分の技法として) Heaviside 以前にかなり研究されていたようだ*8。そしてその部分分数に関する記述の中にへヴィサイドの名前は全く出てこない。この「記述の欠如」は、部分分数分解とヘビサイドの重要な業績は全く関係が無いことを示唆しているのかもしれない。


[2010.3.6]文献探索のために
HEAVISIDE AND THE OPERATIONAL CALCULUS Cooper - Google ???? http://www.jstor.org/pss/3610762 Successive discoveries of the Heaviside expansion theorem Daekin - Google ???? no title

*1:旧題『部分分数分解の算法を Heaviside の定理と呼んでいいのか?』。2010.9.30に変更

*2:[2010.9.16]Michael A. B. Deakin, "Successive discoveries of the Heaviside expansion theorem", Int. J. Math. Educ. Sci. Technol., 1986, Vol.17, No.1, 51-60 を取り寄せて調べた。逆に日本でのこの誤用の「震源」に興味が出てきた。

*3:2011.1.4に抹消

*4?w?r?T?C?h??藝 - Google ????

*5Heaviside expansion theorem - Google ????

*6:[2009.11.7追記]”heaviside expansion theorem” - Google 検索
書籍で調べてもヘビサイドの定理はラプラス変換が記述されている。

*7Heaviside cover-up method - Google ????
部分分数分解の算法である「Heavisideの定理」の英訳を探そうとして相当に苦労した覚えがある。

*8:ハイラー, ワナー, 『解析教程』, 第II章 II.5.1 に部分分数への分解の証明とこの計算法の歴史的経緯の記述が載っているが、そこにはにはヨハン・ベルヌーイ、ライプニッツ、オイラー、エルミートの名前が挙がっているが、ヘビサイドの名前は無い。

2009-07-24 (Fri)

[][]ISOに記されている対数関数の表記法

教育用の覚書。蟹江訳,ハイラー,ワナー,『解析教程』の§I.3の訳注にlogの表記法について記されている。自然対数の表記に底を書かない"log"を用いるのは日本の教科書の慣習(単なるローカル・ルール)のようである。ISO標準では次のようになっているようだ。

The clear advice of the United States Department of Commerce National Institute of Standards and Technology is to follow the ISO standard Mathematical signs and symbols for use in physical sciences and technology, ISO 31-11:1992, which suggests these notations:[8]

The notation "ln(x)" means loge(x);

The notation "lg(x)" means log10(x);

The notation "lb(x)" means log2(x).

http://en.wikipedia.org/wiki/Logarithm#Recommendations_and_standards

日本語のWikipediaの『対数』の項目には、このISO標準に基づく表記法の記述が欠けている。