Hatena::ブログ(Diary)

あらまの日々

2011-02-21

一人モテ構造

| 20:23

うちの夫婦は趣味がオタクがかっていまして、週末の夜に子供を寝かしつけた後は缶チューハイを半分こしつつ、一緒にアニメを見たりします。最近のアニメは、ライトノベルを原作として作られているものも多いのですが、アニメ化された人気の高いライトノベル、特に男性作家によって書かれたものに、とある傾向があることに目が向くようになりました。とにかく、物語の語り部である男性主人公が一人でモテまくるのです。

ここ数年の話題作(ライトノベル原作→アニメ化)で、我が家で見たものとしては、次のような作品があります。

  1. 涼宮ハルヒの憂鬱」累計600万部
  2. 狼と香辛料」累計350万部
  3. 俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 累計280万部
  4. 化物語」 累計119万部

(原作の累計発行部数についてはこちらのサイトを参考にしました)

合計1,300万冊以上売れているテキストの中で、「男性主人公が一人で多数の女性から好意を寄せられる」という「一人モテ構造」が成り立っているのです。ここでリストアップしたライトノベル等のオタク作品には縁のない方でも、「島耕作のように主人公がモテる」と言うと、雰囲気が分かっていただけるでしょうか?男性作家が描くオタクのパラダイスというのは、かくも強欲な世界なのですね。

ですが、もう少し注意深くこれらの「一人モテ構造」小説を見てみると、この構造のもう一つの特徴が浮かび上がってきます。それは、「メインヒロインは一人だけ」という特徴です。つまり、華やかな女性陣に取り囲まれているように見えても、主人公と強い恋愛関係を築き上げる女性はメインヒロイン一人だけ。他の女性はサブヒロインとしての立ち位置をわきまえていて、「主人公を取り合うメインヒロイン対サブヒロイン」といった敵対構造は通常発生しない、という特殊に平和な世界に主人公たちは生きているのです。。

どうやら、男性作家が描くオタクのパラダイスというのは、「メインヒロインと一途な恋愛を貫きつつ、サブヒロインたちからも軽く多モテしたい」というご都合主義的かつ強欲な世界のようです。複数のヒロインの間で本気の取り合いが起こったり、強い嫉妬が生じたりするのは面倒。でも魅力的なサブヒロインたちとは友好的な関係をキープしておきたい。そのため、主人公はしばしばメインヒロインから「あなたは誰にでも優しい」と釘を刺されます。「何それムカつく」と思われるかもしれませんが、このような人間関係をベースに書かれている小説がとても売れている、というのも事実なのです。こうした本を買い求める男(ex.私)が現実とフィクションを区別できていることを祈ることにいたしましょう。

ところで、女性作家の書くライトノベルは読んだことがないので、私の読んだことのあるマンガの話に限られてしまうのですが…女性作家の描く「女性主人公の一人モテ構造」というのは、見たことがありません。女性作家のマンガの中では、「色とりどりのサブヒーロー達からの多モテ」が描かれないのです。例えば、次に挙げるマンガはどれも女性作家の作品ですが、全て「1対1の強い恋愛関係が数組共存する」という特徴があります。

  • のだめカンタービレ」累計3,080万部
  • 鋼の錬金術師」累計5,000万部
  • 君に届け」累計1,400万部

(累計発行部数はWikipediaでの調査結果を参考にしました)

私の読んだ限りでは、女性マンガ作家の描くパラダイスは、「主人公の女性&親しい友人たちが皆良き伴侶を得て、主要登場人物全員がハッピー」という、ある意味ご都合主義的な、しかし皆がWin-Win関係にある世界のようです。

このように、男性作家と女性作家の描くパラダイスが「非対称」である点は、オタク的な視点から男性と女性の恋愛に対する欲求の違いを浮かび上がらせているようで、興味深いなぁと思うところです。

ふくふく 2011/02/22 00:35 どうも。ふくです。毎度お邪魔します。
オタク的視点からの男性と女性の恋愛に関する欲求の違い、について。これは持論というよりも、精神科医でオタク論にも造詣の深い斎藤環氏の受け売りなのですが、同氏は「男性は恋愛については所有原理、女性は関係性原理」というように分析しています(『関係する女 所有する男』講談社現代新書)。男性は「○○をモノにする」というように恋愛相手を所有対象(ちょっと誤解を招く表現かもしれませんが)としてとらえる傾向があり、女性は恋愛相手との関係性の変化・発展を楽しむ、という内容の分析であったと思います。
このようなジェンダー論から見ると、男性向け作品のハーレムパラダイスが所有原理に基づくものでありガッチリと本命は確保しつつサブの娘達にも手を出して「所有する」というのは実に納得がいきます。対して、女性向け作品の1to1の幸福な関係、というのも女性が関係性原理を重視すると言う説明がしっくり来ます。斎藤環氏の分析はかなり正鵠を射ていると思います。
さて、この先は私の固有の持論なのですが、男性の「所有原理」を推し進めてゆくと、主人公に視点を置いてそこに感情移入するハーレムパラダイスものから、やがては主人公である男性キャラそのものが邪魔になり男性キャラが消失し、ただひたすらに萌えキャラとしての女の子だけが登場する作品を内部視点からではなく外部視点から楽しむようになる。これが、例えば「らき☆すた」であり、「けいおん!」であるのではないか。
対して、女性向き作品の場合、「関係性を楽しむ」という方向性が進むと、作品中の女性が邪魔になり、男性と男性の関係性を楽しむBLに向かうのではないか。いわゆる「腐女子」が必ずしも自分自身はホモセクシャルではないのにBLを好む、というのはこのように説明できるのではないか、と思っています。先鋭的な腐女子は人と人との関係に留まらず、最早「モノとモノとの関係」をも楽しめると言うことですが、これなどは「関係性嗜好」の究極の進化形態ではないでしょうか。
長々と失礼しました。

arama0123arama0123 2011/02/24 20:51 ふくさん、コメントをありがとうございます。なるほど、既に斎藤環氏もそのような考察をされていたのですね。というか、多くの人が既に気にしている問題なんですよね。(^^;)
確かに、一人モテ構造は「みんなオレのもの」という男性が強く持つ所有欲の顕れ、という話は分かるように思います(ここでは誤解を恐れず「所有」という言葉をそのまま使おうと思います)。それを踏まえた上で僕が特に面白いと思うのは、モノの所有と大きく違って、「メインヒロインが一人」「実は恋愛は一途」という基本線が崩れないところです。もし十分なニーズがあるなら、「A子もB子も(C子もD子も)所有する」という主人公総取りの物語パターンで売れる一人モテ小説ができても良さそうなものです。しかし、僕から見ると一人モテ構造の物語世界のサブヒロイン達のほとんどがニュートラルに見えます。例えばハルヒの物語世界では、大人版の朝比奈さんに未来の時間平面で恋人がいたとしてもおかしくないですよね?でもそこには触れずにニュートラルな状態に置いておく。この「明確な所有関係」ではなく「何となく曖昧な恋愛ニュートラル状態」にあるサブヒロイン達が、主人公総取りの単純な「ハーレム」に例えきれない興味深い点だと思う訳です。ではなぜ一途な恋愛が好まれるのか?については、今のところ全く考察が及びません(笑)。

また、「けいおん!」や「らき☆すた」などの萌えキャラアニメが「所有原理」を突き詰めた姿である、という考え方には若干の違和感があります。これらのアニメは「キャラは皆オレのもの」ではなくて、「キャラは誰のものでもない」あるいは「キャラは皆のもの」という、どちらかと言うと「共有原理」が働いた結果ではないか、と思っています。物語世界からあえて「恋愛」軸を取り外して、主要キャラが全員「恋愛ニュートラル」な状態です。「君に届け」にも「風早くんはみんなのものだよね!」っていう場面がありましたよね(笑)。あれと同じ力学が作用している気がします。

という風にふくさんのコメントに触発されて改めて考え直し中な訳ですが、上に書いた『「恋愛」軸を取り外す』という考えを推し進めると…また一記事書けるかもしれません(笑)。その時にはまたふくさんの考えを聞かせていただきたいと思います。<(_ _)>

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/arama0123/20110221/1298287437
Connection: close