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2013シーズンを振り返る 戦術編後半

 前半からの続き。
 後半から夏場に入って気温が上がりベテラン選手の動きが落ち、ジェフにとっては苦しい時期になります。
■毎年起こる30節前後の苦戦
 話は少し前後しますが、6月下旬頃にはすでにケンペスの運動量が落ち、特に守備面で負担が生じていた印象でした。
 岡本なども前からのプレスが出来ていないことに関して指摘しており、チーム全体においての悩みの1つとなっていました。

岡本昌弘「前からのプレスに関しては全部が全部前から行けないとは思っているけど、正直、今年はずっと前からの追い方がまだまだだと思います。」(6/22-J's GOAL

 このコメントを読むと、プレスに関しては以前から満足していなかったのでしょう。
 実際、昨年の藤田や荒田に比べるとケンペスは継続したプレスが出来ない選手でしたが、この頃からケンペスの守備がより一層酷くなっていった印象でした。


 それでも6月下旬から6連勝できたのは、運動量の問題よりもチームの熟成による成長の方が上回っていたからではないかと思います。
 特にこの頃は右CBからトップ下にズバッと出して、そこからチャンスメイクという形がある程度オートマチックに出来ており、それによって多少動けなくても結果が残せていたという部分があったのではないでしょうか。
 特に6連勝の中の4戦目にあたるG大阪戦では、狙い通りの攻撃から得点が生まれました。

CBキムからのくさびのパスに右サイドの田中が相手MFラインとDFラインの間で受けると、近くにいた大塚にパスを落とし大塚はワンタッチでスルーパス
くさびのパスが出ていた時点で右サイドを駆け上がっていた米倉に、そのスルーパスが通り米倉がそのままシュート。
これが決まって先制点をあげます。
CBからのくさびのパスをMFラインとDFラインで受け、その間に他の選手が飛び出していって、そこにスルーパスを出して、相手の裏を突く。
まさに、ジェフが狙っている攻撃パターンがうまく作れたシーンでした。(7/8-ゆっくりいこう


 ただ、7月下旬頃にはケンペスだけでなく、チーム全体も動けなくなり結果が出なくなっていった。
 これに関してはやはりベテランが多いという問題が大きいと思いますし、実際試合でも走れているのは若い両SBだけ…なんてことが多かったと思います。
 30節前後に勝点が伸び悩む問題は今季のチームに限らず起こっている問題であり、クラブが抱えている大きな課題ですね。

(赤丸が伸び悩み箇所。)


 また、対戦相手もバイタルエリアへの縦パスとサイド攻撃を警戒して、ボランチが極端に引きウイングがDFラインまで下がる守備をしてくるチームが増えていきました。
 特に5バックのように守られると、DFとDFの間を通すスルーパスのコースも狭くされてしまうことになり、攻略に苦労していた記憶があります。
 これに関しては、シーズン終盤に長崎、鳥取がより徹底した対策を打ってきました。
 ジェフのSBにマンマーク気味に付けてサイドからのビルドアップと攻撃参加を封じ、中盤は下がって縦パスを待ち構える守備をしてゴール前を固める展開。
 これに対してジェフは有効な対策を生み出さなかったわけで、来季に向けての課題の1つになるかもしれません。
 もっとも両試合とも前半途中まではチャンスを作っていたわけで、そこを決めきれれば…というところもあったのですが。


 守備に関しては動きが落ちてプレスが効かない、中盤で後手に回ってしまう…といった問題も大きかったですけど、今季はもったいないミスが非常に多かった印象もあります。
 バックパスを奪われたり、味方同士が被ってしまったりといった連携ミスやDFラインの集中力の欠如が、目立ったシーズンでもあったのではないでしょうか。



 8月下旬には森本が加入。
 その後ケンペスが復調し森本がフィットするまでに時間がかかってしまったため結果的に補強の効果は薄かったですが、あの頃のチーム状況を考えると補強自体は妥当だったと思います。
 まぁ、そもそもケンペスしか計算できるFWがいなかったというのが、異常な事態だったわけですが。
 もっと早くに森本が加入していれば…という思いもあり、ちょうどケンペスの低迷も底がついて森本が加入した頃から復調してきた印象でした。
■運動量の改善と町田の起用でハイテンポなサッカーに
 8月・9月で2勝2分5敗と大きく後れを取ったジェフ。
 9月には森本の2トップや町田を試すなど監督からも何かを変えたいという意志は感じたのですが、すぐに結果には結びつきませんでした。
 しかし、10月からはようやく調子を取り戻していきます。
 基本的には気温が落ち着いて、選手たちのコンディションが戻ってきたというのが一番の要因でしょう。
 極端にラインが下がることもなくなり、プレスも継続的とまではいかないものの、ある程度追えるようになっていきました。
 攻撃においてもパスワークだけでなくゴール前へ人数がかけられるようになり、夏場によく見られたケンペスが孤立する状態が少なくなっていきます。


 それと、新たな選手の投入よる効果も大きかったと思います。
 怪我から明けた山口慶は、10月13日のFC東京戦からスタメン出場。
 シーズンを通してボランチの守備能力には苦しみ中盤で先手を取れなかったわけですが、慶は相手へのアプローチが速く危険なスペースへのカバーリングも出来る選手。
 米倉が攻め上がった後の右サイドへの対応だけでなく、中盤の広いエリアをカバーしていました。

セカンドボールを相手に奪われてもスッと、近づいてパスコースを消す。
守備のスペースが見つかれば、素早く確実に潰していく。
山口慶カバーリング能力があったからこそ、120分間FC東京相手に戦えたように思います。(10/15-ゆっくりいこう


 またトップ下の町田の投入も、このチームのターニングポイントでした。
 今季初出場・初スタメンとなった9月15日の京都戦では、町田が積極的に動きすぎて他の選手がそれについていけずガス欠を起こしてしまいました。

試合開始直後のジェフは動きが良く、コンディションが戻ってきたのか、それとも飛ばし気味なのかという部分が気になってはいたのですけど、残念ながら後者だったようですね。
その時間帯はスタメン起用された町田が積極的に動き回って良いプレーをしていましたけど、それに周りの選手もつられて頑張りすぎたのかな…という気もしないでもありません。(9/16-ゆっくりいこう

 正直この時点では、他の選手が町田のテンポについていくのは難しいのではないかと感じていました。
 しかし、気温の下がった10月に入ってからは他の選手たちも徐々に運動量を取り戻し、結果的に町田が浮いた存在ではなくなっていきます。 


 そして、シーズン終盤には、前へ早いパスサッカーを展開。
 当初はアバウトなボールも多かったですけど、選手たちの受ける、出す、飛び出すといった動きも増えて、1つ1つのスピードも早くなっていき、ハイテンポなパスサッカーができるようになっていきました。
 町田が加わったことによって、チーム全体の意識改革が生まれたように思います。
 それまでパスがつなげても攻撃のスピードが上げられないためシュートまで持ち込めないことが多かっただけに、この変化というのは極めて大きいものでした。



 さらに11月になると、2列目が相手の間で受けて前を向こうというプレーだけでなく、ポストプレー役もこなすことが増えていきました。
 後方でパスを繋いでいるところに、2列目からスッと受けに下がってきてシンプルにボランチなどに落とし、そこから縦あるいは斜めに展開する。
 そして、ポスト役をこなした2列目の選手は再び前に出ていくと。
 2列目が受けに下がることによって相手選手を引きつけ、そこから動きな直して飛び出すことによって相手選手を剥がすことができる。
 シーズン終盤は、この動きが非常に効果的に作れていたと思います。

山口智からのボールを受けに谷澤が下がり、健太郎に落とします。
健太郎は下がって受けにきた町田に縦パス。
町田はワンタッチで斜め前に走りこんでいた谷澤にパスを出すと、ケンペスがその前を斜めに走り抜けます。
そこに谷澤がスルーパスを出して、GKと一対一に。
これも決定的なシーンでしたがゴールとはならず…。
パスワークで完璧に崩せたシーンだったのですが、今日もケンペスの日ではなかったですね。(12/2-ゆっくりいこう

 プレーオフ準決勝でのこのシーンでは谷澤が下がって落として走り直し、さらに町田も下がって受けてワンタッチでパスを出して攻撃を加速。
 受け直した谷澤がケンペスにスルーパスを出して、抜け出したケンペスがシュート…というところまで作れました。
 多くの選手がパスワークに絡み、2列目が下がって受ける形とワンタッチパスを交える形が作れ、シーズン終盤の代表的なパスワークになったと思います。


 ただし、この場面でも最後は決めきれなかった。
 その他のシーンでも米倉や町田にチャンスがあったものの追加点を決めきれなず、守備では山口智が潰しきれずに裏を取られてPKで失点…。
 違う意味でも、シーズン終盤を象徴する試合になってしまいました。
■課題はシーズンを通してのスタミナだが…
 縦パスの受け所を増やすためSHにも兵働などを置いたダブルトップ下を採用し、トップ下からの仕掛けが足りないということで大塚を投入。
 DFラインにスピードが足りなければキムや高橋を使って、中盤のカバーができていなかったため負傷明けの山口慶をスタメン投入。
 そして、攻撃の活性化と運動量不足解消のために町田を起用。
 細々とした変化・成長だったかもしれませんが、少しずつでも着実に1つの方向性を見据えながら、理に叶った修正・変更をしていったシーズンだったのではないかと私は思います。


 選手を変えるというだけではなく、パスワークの形成に関しても組織的に成長していったと思います。
 初めはCBからの縦パスだけでしたが、そこからボランチからの展開も増え、左サイドでは高橋、健太郎、2列目の選手が素早くトライアングルを作る形が出来るようにいなっていきました。
 そして、シーズン終盤には2列目がポスト役をこなして、シンプルに落として飛び出す形も出来ていったと。
 選手の動きに関しても、シーズンを通して1人1人のボールの受け方、さばき方がうまくなっていった印象があります。
 ボールを受ける時の細かなポジション修正が増え、サポートの入り方、ボールを受ける際のスピードも早くなっていった。
 これらによって、初めは一本しかなかったパスワークの道が、2本、3本と増えていき、ビルドアップの質と速度が向上していったように思います。


 まぁ、実際には夏場はかなり苦しみましたし、バイタルエリアへの縦パスなどもかなり研究されてしまいました。
 もう少し中央からの縦パスが継続してやれていれば…とも思いますが、上位対策がはっきりと行われるJ2ならではの難しさもあったと思います。


 また、守備においては、前線からのプレスをシーズン通して行えず、裏への対応にも大きな課題もあったように思います。
 そして、細かな連係ミスや判断ミス、集中力の欠いたシーンも多かったかなと。
 大枠で考えると守備組織というのは、等間隔に配置してブロックを作って守るか、マンマーク気味に人について連動してプレスをかけるかしかないと思います。
 しかし、等間隔で守るには8人全員のサイズと守備能力が求められるし、プレスをかけるにしては今のジェフは運動量やアジリティなどがたりない。
 現戦力だとどちらを選択しても悩ましい状況なのかなと思わなくもありません。


 特にFWのチェイスボランチのサイズ、CBのスピードなどは、選手の質の部分が大きいと思います。
 基本的には鈴木監督はプレスをかける方向でやりたいのだと思うのですが、それにあった選手構成が現在は出来ていない印象もあります。
 そこに関して良い補強が出来ればいいのでしょうが…。



 来季のことを考えると、今季終盤に出来たものがスタートからできるかどうか、夏場に調子を落としてしまわないかの2つがポイントではないかと思います。
 またある程度の形を作れたからこそ、ここからの積み重ねはより難易度が高くなるのではないか…といった不安もなくはありません。
 ただ、今季8月・9月を除けば肩上がりで戦術が整備されていったことと若い選手が出てきたことは事実だと思いますし、そのベースが残ればそこから更なる積み重ねが出来ると信じたいところです。


 やはり一番の課題は、シーズンを通してのスタミナかなと。
 決定力やDFのスピードもありますけどある程度走れた試合では良いサッカーが出来ていたはずですし、今以上に走れれば仕掛ける本数も増えていくだろうしプレスも改善されるでしょう。
 来季は今季以上に走れるかどうかが、一番のテーマではないかと改めて感じます。
 ただ、ベテランの比重が高い傾向はそう簡単には代えられないのでしょうし、複数年契約の選手もいるのでしょうから、そこが現時点で一番の悩みどころですね。