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2016シーズンを振り返る 長谷部監督編 その3

 その2に続いて、その3では長谷部監督と周囲の見方やクラブ運営に関してをまとめてみました。
 文章的にはその2から続くものですが、1つにまとめると長くなってしまったので、一度区切っています。
 実質的なクラブ全体の総括となっています。
■"リトマス試験紙"としての長谷部監督
 個人的にはそこまで重要視していませんが、監督のキャラクターというものもクラブ関係者にとっては大事なのかもしれません。
 スポンサーや親会社のウケなども重要なのかもしれませんし、派手さなども優先してエスナイデル監督の内定が決まり、長谷部監督は退任となったのでしょうか。
 もっともその2で書いた通りクラブの長谷部監督へのバックアップはかなり希薄な印象でしたし、初めから契約を延長するつもりはほとんどなかったのかもしれませんが。


 確かに長谷部監督は実施したサッカーもオーソドックスなもので、キャラクターにおいても目立つ方ではないと思います。
 サポーターからの評価に関しても不満の声こそそこまで多くなかったとは思いますが、実際のフクアリでも盛り上りなどの点ではもう1つだったのようにも感じていました。
 ただ、個人的には地味で堅実な監督だからこそ、今のクラブ状況においては逆に良いのではないかと思っていました。



 関塚監督はネームバリューもあって、サッカーでも個に任せるところが多く、結果的に派手で人気のある監督だったと思います。
 個に任せる部分が大きいため選手個人が目立つことも多いし、選手たちの調子が良く勢いに乗れさえすれば爆発力があった。
 しかし、組織として戦えない分、チームは不安定な状況が続き、実際に勢いに乗れたのも一時だけだった。


 鈴木監督は派手さなかったものの確実にパスを繋ぐ形は作れていて、それが関塚監督就任直後のベースになっていったと思います。
 米倉のSB起用なども米倉を見ていた木山監督や守備に難のある関塚監督、理論的な長谷部監督などでは実現は難しかったのではないかと思うし、中村も活かす形を作りキムなども育て上げた。
 しかし、地味なキャラクターで、一部で人気だった木山監督の後を継いだこともあってか人気はもう1つでした。


 14年には開幕直後から居残りなどが起り、結果的に冷静にサッカーを見る・応援するというような環境にはなりにくかった。
 それによってチームも戦いにくい状況だったろうと思います。
 それらはもちろんチームを見る側の問題ではあるわけですが、実際に問題が起こっている以上は監督人事に加味しなければいけないところもあるのかもしれません。



 そんな中、長谷部監督は派手さはないものの誠実なイメージで、ジェフOBでもあり苦戦した関塚監督の後であることもあって、今のところ批判は少ない印象も受けます。
 その結果、じっくりとチームを見守る環境を作りやすいのではないでしょうか。
 これまでのジェフは良くも悪くも監督がクローズアップされてしまうことが多かったですが、結果的に長谷部監督ならそこから脱却できる可能性もあるのではないかと思っていました。


 確かに長谷部監督はカリスマ性がそこまであるタイプではないのかもしれませんし、ピッチ上において"魔法"が使えるタイプでもないのでしょう。
 積極的に若手を起用してはいましたが、驚くような采配やコンバートがあるわけではなく、基本的にはロジックに沿った決定をしていく指揮官だと思います。
 チームを"勝たせる"という意味ではカリスマ性や"魔法"も必要になってくると思いますし、そこを求めるのなら他に実績にある優秀な監督を招聘すべきだとも思います。



 ただ、今のジェフが早期に結果を求めるクラブ状況にあるのか。
 そして、ジェフは監督が"勝たせる"という面を、重要視し過ぎている面もあるのではないか。
 確かにサッカーは監督の影響力が大きいスポーツだと思うし、これまでジェフはここ数年監督人事に失敗している印象はあるわけですが、良くも悪くも勝敗を監督に委ねすぎているところがあるような気もしています。


 その結果、サッカー内容を評価するという面が軽視されている。
 そして、クラブの現在地や選手の評価というのが、曖昧になっている気もします。
 これもジェフがエンタメ方向に進もうとしている弊害なのでしょうか。



 フロントやサポーターも含めて周囲のクラブ関係者が、チームの現状をしっかりと見つめて冷静に評価できるようになるということは、チームを着実に育てあげる上でも重要なことではないかと思います。
 今のジェフにはそこが大きく欠けているように思いますし、監督の人気によってチームへの評価が大きく揺れ動き、結果的にじっくりサッカーを見守るといった状況を作れていない印象もあります。
 長谷部監督が地味でも堅実なチーム作りをすることで、いわば"リトマス試験紙"のような存在として良い面も悪い面も浮き彫りにしてくれれば、チームの立ち位置も明確になり今のジェフに足りているモノ・足りないモノが見えてくるかもしれません。


 そうなれば、チームの強みも作りやすいでしょうし、ノルマや目標の設定なども改善されるかもしれない。
 延いてはチームの方向性もより確実でより明確なものを、築き上げる土台を作れるのではないでしょうか。
 今のジェフに必要なのは、そういったベースを作ることが出来る監督ではないかと思っていました。
■『REVOLUTION』とは何だったのか
 最後に理論的な話ではないのかもしれませんが、"人との繋がり"に関して。
 長谷部監督は厳しい状況でバトンを引き受け、最低限の仕事をしっかりとこなしてくれたと私は思います。
 それだけに、もう1年見守ってあげるべきだったのではないかと思っていました。


 今季J2で優勝を遂げた札幌の四方田監督も、PO進出を果たした京都の石丸監督も昨年途中にバトンを受けた形となります。
 シーズン途中にコーチから監督に昇格し、チームを立て直した若き日本人監督ということで、長谷部監督と似通ったケースだと思います。
 確かに就任から1年半が経ち札幌も京都も課題は浮き彫りになってきていますが、前年を踏まえたチーム作りをしたことでここまで順位を上げることが出来たのでしょう。



 その背景には、人と人との信頼関係もあったのではないでしょうか。
 昨年厳しいチーム状況にもかかわらず監督を続投し多くの選手が退団しましたが、ジェフはアマル監督解任時にも大量に流出しており、選手も監督人事はしっかりと見ている。
 信頼関係の問題はすぐには表に出ないこともあるでしょうが、将来的に大きな影響を与える可能性があると思います。


 もちろん長谷部監督の後任に実績ある有力な監督を抜擢できるのであれば納得できたかもしれませんが、やはり今のジェフではそれは難しかったということではないでしょうか。
 エスナイデル監督も日本に来て化学変化のような形で成功する可能性は否定できないとは思いますが、少なくとも今までに成功例のない若い監督を招聘したわけですから、結果的に長谷部監督に対して失礼な決断をしたとも捉えることが出来る状況ではないかと思います。
 今回に限らずですが、ジェフはどこか"血の通っていない監督人事"に思えるというか、トップダウンどころか外から現場を見て意思決定が行われているのではないかと思ってしまいます。


 一時報じられたアカデミーへのテコ入れなどにも言えるのかもしれませんが、問題解決を図る上で現場の状況を理解した上で変化を加えようとするのと、ただダメだから責任者などの首をすげ替えるのとでは全く違うはずです。
 今年は監督ではなく選手を入れ替えたわけですが、結果的には同じように「ダメだったからバッサリと変えよう」というだけで、根本的な考えは変わっていないように感じます。
 今季加入した選手たちも関塚監督のサッカーに疑問を呈していたことからも、現場からの意見を聞かずしっかりとしたボトムアップが出来ていないからこそ、監督が続投となり選手を総入れ替えして失敗したのではないかと思わなくもありません。



 人との繋がりを大事に出来ない。
 現場の声を聴いた上での判断が出来ない…ということが続けば、チームのみならずクラブとして成熟していかないのも当然のこと。
 また来年もチームを一新して、ゼロからのスタートとなってしまうのでしょうか。


 監督人事などに関してはどうしても親会社に問題があるのではないかとも思ってしますが、厳しい言い方をすれば親会社を説得することのできないフロントにも責任の一端はあるのかもしれません。
 来年の監督人事に関してもリストアップしたのは強化部なのではないかと思いますし、フロントが監督人事に全く関わっていないということではないでしょう。
 祖母井GMの頃は岡社長が親会社から現場を守る形で成功したのだと思われますし、親会社が代わることよりもフロントが現場を守り切る関係性を築き上げることを期待した方が今は現実的なのではないかと思います。



 今季は『REVOLUTION』を掲げたジェフですが、順位も下がり監督も途中で入れ替わり、根本的な部分では変われなかったシーズンだったと思います。
 結局、監督や選手をすげ替えただけでは、『クラブ改革』には至らないということでしょう。
 現実的な方向性を掲げて、ぶれることなく実行し、着実な成長を目指して、周囲もじっくりと見守っていく…。


 そういった堅実な姿勢こそが、今のジェフに足りない部分なのではないかと思います。
 ただ闇雲に変化を求めるのでは、むしろ今までのジェフと何ら変わらない。
 それでは『REVOLUTION』は果たせていないことになるのではないでしょうか。



 社長にせよGMにせよ監督にせよ選手にせよ、「決まったからには応援したい」という決まり文句もありますが、率直に言って私はまだ心の底から信頼して応援するという気持ちにまでは至っていません。
 もちろん「頑張ってほしい」という思いは強くありますが、クラブの意思決定が間違っていれば多くの関係者がまた悲しむことになるわけで、簡単に全てを支持することはできないと思っています。
 疑問がある中で「決まったからには応援したい」とサラッと言ってしまうのは言葉が軽すぎると思いますし、それこそ信頼のない言葉になってしまいます。


 もうジェフは10年近くほぼ右肩下がりで低迷・迷走しているわけで、まずは信頼を回復するところからスタートしなければいけないのかもしれません。
 特にここ2年間は成績でもJ2中位で終っているわけで、ここからいきなり「絶対J1に昇格せよ」というのはさすがに無理がある状況だと思います。
 現状で運良くJ1に昇格したところで力不足で苦しむ可能性も十分にあるわけで、結果以上に今求められることはクラブとしてもチームとしても一歩ずつでも確実に成長の兆しを見せるところからではないでしょうか。



 もちろん長年低迷しているクラブだからこそ、フロントの方々も苦労されているのだろうとは思います。
 しかし、『REVOLUTION』を掲げてクラブとして明確に何を変えるのかを提示せず、チームにばかり成績面でのノルマや"戦う集団"を求めるのは無責任に見えなくもありません。
 まずはフロントとして、希望を持てる実現可能なビジョンを掲げて、一歩一歩積み重ねていき、心の底から応援できるようなクラブ作りを目指してほしいと私は思います。


 今のジェフにとっては、まず"信頼回復"というものが今は大事になってくるのかもしれません。
 個人的には2016年は『REVOLUTION』したようには見えないシーズンだったと思いますし、来年こそは真の意味での『REVOLUTION』を期待したいと思います。