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2011/03/25

MIT原子力理工学部による「臨界」の解説

本記事は8つ目の翻訳記事で、元記事は日本時間19日午前6時52分に公開されたものです。前7つと同様にGoogle Docs上で作業が行われました。下訳を作成された @masae_i さん、校正してくださった toshiki.saito さん、 @LunarModule7 さん、ありがとうございます。

注意: この記事は福島第一原発の最新の状態を解説したものではありません。福島第一原発事故関連で日本語の良質な記事・ニュースソースをご覧ください。また、この記事のほかにも様々な記事が翻訳済みです。翻訳記事の一覧はMIT原子力理工学部による原子力発電の解説(翻訳)にあります。

目次

「臨界」とは

臨界再臨界という言葉が、広く報道で使われています。臨界というのは原子力分野の専門用語で、システム内における中性子のバランスを表すものです。臨界前というのは、中性子の減少率が、中性子の生成率よりも大きいシステムを表します。その状態では、中性子の総数(中性子の数)が時間が経つにつれて減少します。超臨界というのは、中性子の生成率が、中性子の減少率よりも大きいシステムを表します。その状態では、中性子の総数が増加します。中性子の総数が一定に保たれるとき、これは生成率と減少率の間に完璧なバランスが存在することを意味します。この状態を、原子力システムが「臨界である」と言います。あるシステムの臨界点は、核分裂やその他の原因によって中性子が生成される割合と、炉心に吸収されたり炉心から放出されたりして中性子が失われる割合を、比較して算出されます。原子炉は、その臨界点、つまり中性子のバランスをコントロールする装置なのです。

原子炉の出力は、この中性子の総数に正比例して決まります。システムの中に多くの中性子があればあるほど、より多くの核分裂が起こり、より大きなエネルギーを生成します。原子炉の起動時には、失われる中性子よりも生成される中性子が多く、中性子の総数がゆっくり増加するように調整し、原子炉が超臨界の状態になるようにします。これによって、中性子の総数が増加し、より大きな出力が生まれます。目標のレベルに到達したとき、中性子の総数と出力を一定に保つため、原子炉は臨界状態に置かれます。最終的に原子炉を停止する間には、中性子の総数と出力が減少するように、原子炉は臨界前の状態に置かれます。それゆえ、原子炉が「臨界に達した」と言われるときには、実は原子炉が安定し一定の出力を維持していることを意味します。

通常の原子力発電が行われている間、原子炉は臨界を保っています。他のシステム、例えば使用済み燃料プールでは、臨界を防ぐようなメカニズムが用意されています。もしそのようなシステムが臨界に到達したままである場合、それは再臨界と呼ばれます。確実に再臨界が起きないようにするため、中性子を吸収するホウ素や他の物質(訳注:中性子吸収材)が利用されています。中性子吸収剤が加えられることによって中性子の減少率が大きく向上し、システムを確実に臨界前に保つのです。

(日本のBWRのように)軽水炉のほとんどの型では、原子炉を冷やすためだけではなく、中性子の速度を落とすためにも、(訳注:減速材として)水が使われます。これらのシステムでは、より速度の遅い中性子(訳注:熱中性子が核分裂反応の大部分を担います。それゆえ、もし水が蒸発して失われた場合、中性子は水があるときほど速度を落とさず、核分裂反応の可能性と出力が減少し、原子力システムを臨界前の状態にするのです。

もし冷却状態にないBWR原子炉または使用済み燃料プールで、水が加熱されて蒸発すれば、水の温度上昇と、その結果生じる水の蒸発によって、システムは臨界前の状態に置かれやすくなります。これらのシステムの中、例えば原子炉制御棒にも、莫大な量のホウ素が含まれており、また使用済み燃料プールではホウ素が様々なかたちで利用されています。加えて、使用済み燃料プールを支える鉄構造はときにホウ酸化鉄で作られている場合があり、それも莫大な量のホウ素を含んでいます。もし仮に核燃料が溶け出したとしても、(流れ込む先の)新たな幾何学的配置は中性子を減速させるのに適しておらず、水の再注入が必要な状態だとしても、再臨界は起きにくいでしょう。(訳注:まとめると、中性子吸収剤が周辺に豊富に存在すること、および、臨界に達するために必要な減速材としてはたらく水が、炉心溶融するような温度では通常周辺に存在しえないことから、再臨界の可能性は低いと説明しています。)

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