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北の考古学─日々の着想

2015-05-15

十六島(ウップルイ)地名はアイヌ語起源か

 島根県松江市には「恵曇」(エトモ)の地名がある。北海道の室蘭市にはアイヌ語由来の地名として「絵鞆」(エトモ)があり、恵曇についてもアイヌ語との関係が指摘されてきた。同じ島根県の出雲市には十六島(ウップルイ)の地名があり、これもアイヌ語説が唱えられてきた地名のひとつだが、その根拠は「―ップルイ」という日本語的ではない音にあるようだ。

 五来重2014『山の宗教』(角川ソフィア文庫)を読むと、このウップルイの由来について次のように記されている。
「どうして十六島をウップルイと読むのか、不思議でたまらなかったのですが、偶然、二十年ぐらい前(昭和五十四年現在)に、彦山のほうへ調査に行きましたとき、彦山の山麓で集められたお札を別府在住の松岡実という民俗学者が持っておりました。じつはその中にウップルイの謎を解くものがありました。要するに、ウップルイとは、日御碕の下のほうの磯に生えた海苔です。その海苔を紙包みにして、ここの山伏は配って歩いた。彦山の山麓あたりまで配って歩いた。この海苔を食するものはすべての病、災いを打ちふるうべし、と書いて打ちふるうのがウップルイになった。みんなふるい落としてしまう。それを、十六善神影向の地にちなみ、前二字の十六を採ってウップルイとよんだというのです」(200頁)。

 五来とはちがった立場であるが、「─ップルイ」が「ふるい(振るい落とす)」に由来するとの説はほかにもある。
 黒沢石斎1914「懐橘談・隠州視聴合紀」『出雲文庫第2編』(近代デジタルライブラリー)の「十六島」をみると、これをウップルイとよぶことについて「予按ずるに彼水底の海苔を取りて露打振ひ打振ひ日に乾しければ、打ふるひ海苔といふをだみたる声にてウップルイといひ十六善神島の海苔と文字に書いては言葉長々しき故に善神を略して俗のウップルイといふを其まま文字によみならはしたり」とある。

 はたして「打ちふるい」が「ウップルイ」に転ずるのであろうか。疑心暗鬼だったのであるが、先日、飯田真1993「続編 下野国鬼怒川上流及その他水系流域の狩猟伝承採集記録」『日本民俗文化資料集成1』(三一書房)を読んでいると、「猟師は何事につけても物事を吉凶に結びつけるので、コヌカップルイ(小糠振い)又は御幣担ぎ・縁起担ぎ等と呼ばれている」(446頁)とあって、「―ふるい」が「―ップルイ」となることはあったらしい。とすれば、五来説や黒沢説もありうるということか。

 いずれにせよ、ウップルイ地名=アイヌ語説は支持できそうもないようである。とはいえ東北以外にもアイヌ語と起源を同じくする地名はあってよいというのが私の立場なので、引き続き興味をもってみていきたいとおもう。

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