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棒日記VII -Life without art is stupid- このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-03-07 歴史を刻み続けるために

シンメトリー 誉田哲也 B- 

シンメトリー

姫川玲子シリーズの三作目にして初の短編集。ただ僕の読書経験が浅いだけかもしれないのだが、キャラクターものである警察小説の短編集を初めて読んだのでなかなか新鮮であった。姫川はかなり掘り下げがいのあるキャラクターなので単純に彼女を多角的に捉えたということだけでも本書は面白い。加えてそれぞれの短編が適度な重みを持っていたのも好感。

基本的には誉田哲也は長編を書く作家というイメージがあった上に、上述の通り警察キャラもの小説の短編集は初めてだったのでとにかく読み口が新鮮だった。実は短編集と気づいた時に一瞬「今回は微妙かもな・・・」と勝手に期待値を下げていたのだが、本書は正直言うと意外な面白さがあり楽しめた。姫川玲子というキャラクターの掘り下げも成しているし、更にそれぞれの短編が書き分けられており飽きさせない。誉田哲也は短編も結構いけると認識を新たにする必要を感じさせる作品と言っていいだろう。

そもそも姫川はかなりクセのあるキャラクターである。合わない人にとってはかなりイライラさせる存在だろう。しかしクセがあるからこそ掘り下げれば掘り下げるほど味が出る。本書は彼女の馬鹿な一面、鼻持ちならない一面、青臭い一面など、マイナスの面すらも含めて描写しようと努めている。短編ごとに別方向からそのように描写しているので、姫川玲子というキャラクターを隅々まで読者は知ることになる。キャラクターを押し出すシリーズとしては非常な働きを成しているのだ。それでいて、根本的な彼女の情報(過去とか)には触れない辺りうまい。長編に対する興味を失わせない配慮と言えるだろう。

興味深いのはいわゆる「姫川班」の面々をはじめとした過去シリーズにおいて重要な役割を果たした人物たちの話がかなり少ないということだ。本書は決して様々なシリーズキャラクターにスポットを当てるものではなく、姫川一人に絞っているのである。各短編に登場する人物は過去作には出てきていない人物揃いであり、多分これからのシリーズにもほとんど登場することはないだろう。本短編集の狙いが感じられるところである。

横山秀夫のように短編の中でも謎の起承転結をしっかりつけ、時には伏線を使った謎解き、時には意外な犯人を導く、というような捜査の面白みを作り出す、という面はやや足りない。というよりもその楽しみについては本短編集では求めていないのかもしれない。代わりに、姫川の様々な側面と対応して描かれるそれぞれの人物模様は味わい深い。いくつかの短編では視点や文章表現にも工夫があり、決して飽きさせないのが本書の強みだろう。

百年のマルコ 柳広司 D 

百万のマルコ (創元推理文庫)

文庫オリジナル作品。

投獄されたマルコ・ポーロが同じ牢の仲間たちに語る不可思議な話、その不思議さをどこに落ち着かせていくのかが主眼の13作の短編が収録されている。本書においてマルコの語る話は実在の東方見聞録を著したマルコ・ポーロの記述とはやや違っていて、「ホラ吹き」と作中で呼ばれるにふさわしいものだ。とにかく極端で、強烈で、聞いたこともないような風習や文化が彼の口から語られ、そしてそれに絡めたマルコの武勇伝が不思議交じりに提供される。そこには謎があり、牢の仲間たちはああでもないこうでもないとマルコがどうやって場を切り抜けたのかを考えるのが本書の構成である。

僕が本書をどうも気に入ることができなかった理由はいくつかあり、まずは各ホラ話に魅力を感じられなかったこと。どれもやたらに大仰で極端なものばかりで(それはホラ話だと考えれば当然なのだとは分かっていても)何度も同じような大仰さばかり続いているとちょっとうんざりきてしまうのである。また、ホラ話の不思議さを話し合う牢の住人たちの会話に推理の面白さを見つけ難かったこともひとつ。そもそもネタがシンプル過ぎるせいもあってか、推理をこねくり回す楽しみがあまり無かったのだ。ひとつひとつの短編が短すぎるのではないかと強く思った。

classical fantasy within 第三話 火を噴く龍 島田荘司 C+ 

Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍 (講談社BOX)

2008年度大河ノベルの3冊目であり、ここから半年は作者の充電期間となる。

本作品の第一部最終巻と位置付けられているのだが、とても1つのエピソードの終わりとは思えない結末には驚かされた。ともすればぶつ切りとの感触を与えかねない幕切れではあるのだが、どこか破滅的な空気がその幕切れの先にある「何か」を感じさせて先が非常に気になる読み口を作り出している。しかも巻末に予告されている半年後に始まる二部では大きく舞台を変えるとのこと。物語に対する興味はかなり煽られることになる。

今回はオーバーテクノロジーを交えて瑞々しい少年の目から語っていた過去二話とは違い、戦争と戦争のもたらす「負」を強調するかなりヘビーな展開となっている。迫害の描写はかなり精神的にくるもので、加えて前巻から続く得体のしれない不安と相まって読んでいる最中にはかなり心を揺さぶられた。半年も待たされるのはなかなかに酷だが、その分良いものを望みたい。

kindaiti343kindaiti343 2008/04/17 10:22 いったいこの物語はどこへ行くか気になりますし、本格云々書いてあったり、伏線が張ってあるような気もするんですが、どこに着地するか楽しみです。

architectarchitect 2008/04/23 02:20 ほんと全くどこに着地するのかわかんないのが凄いです。