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棒日記VII -Life without art is stupid- このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-05-22 秘すれば花

オールラウンダー廻&ぢごぷり

| 18:27

オールラウンダー廻(1) (イブニングKC)ぢごぷり(1) (アフタヌーンKC)

EDEN&げんしけんというアフタヌーンでの人気連載を終えた遠藤浩輝と木尾士目の新刊が出た。二つともこれまでの作品からすれば変化球でありながら、作者らしさを感じさせるものであったので、まとめて紹介。

『オールラウンダー廻』はアマ修斗の話である。格闘技が若干斜陽の感もあるこの時代に、修斗、しかもアマという物凄い地味な舞台設定だが、重度の格闘技ファンである遠藤浩輝にとってはある意味当然といってもおかしくない題材であろう。今はなきメカ&萌え雑誌メカビ』では何故か超コアな格闘技エッセイ(?)を連載していたし、ヤングマガジンだったかに同じく修斗を題材にした漫画を書いていたこともあったはず。そんな遠藤浩輝が書くわけなので、通り一遍の格闘技漫画とは一線を画しており戦いの攻防はとにかく地味。派手さのかけらも無いが、ぶっ飛び格闘漫画に飽きてきた嫌気がさしている人、あるいは格闘技通の人には断然お勧めだ。筋肉の書き方が丁寧という作者の絵の特徴もまたこの題材では効果的になっている。

勿論、数々の鬼畜シーンで人々のトラウマを増やしてきた遠藤浩輝であるので、ただ暢気にアマ修斗をやる、というだけの漫画ではない。一巻から能天気な主人公とは裏腹に、裏の主人公たるタカシの人生はハードそのもの。地道の積み重ねであるアマ修斗とのコントラストでなんとも不思議な読み口になっている。大きく離れてしまった旧友二人の格闘技人生はどこへ行くのか、楽しみな作品と言えよう。


『ぢごぷり』はなんと育児漫画である。『五年生』ではドロドロの恋愛劇を書いていたのに、『げんしけん』ではゆるいオタクライフ辛辣な風刺をいきなり共存させるというチャレンジをしていたが、さすがに育児漫画というチャレンジをしてくるとは誰も予想できないはずだ。一読すると『げんしけん』よりも更に丸みが増しデフォルメされた絵柄に驚かされるだろう。絵柄を見る限りではのんびり育児ライフ漫画と感じるかもしれない。しかしこの漫画の各話タイトルを見よ。なんと「地獄○丁目」(!)なのである。

そう、本書は木尾士目自身の育児体験を下地にしたリアル路線の育児漫画なのだ。とはいっても『ママはテンパリスト』のようなエッセイ漫画ではない。自身の体験をもとにしているといっても、キャラクターは根っからのフィクションとして作ることで「笑えない育児の実態」を強調するという、ドロドロな感情描写に定評がある、木尾士目ならではの試みを行っているのである。エッセイ風味にするといくら育児が大変でも、子供に思わず本気の悪態をついてしまうなんて描写はできまい。

育児の現実をフィクションにすることで、躊躇なくリアルに、そしてハードに描くという絶後の試みを行っている強烈な漫画なのだ。ひらがな四文字というそれっぽいタイトル、丸っこい絵柄にゆめゆめ騙されてはいけない。題材こそ木尾士目らしからぬが、描写はやっぱり作者らしい漫画で、結局は優しく終わった『げんしけん』に食い足りなかったファンにこそお勧めしたい漫画である。