2008-01-13(Sun): ジャン・ノエル・ジャンヌネー著『Googleとの闘い』

Googleとの闘い―文化の多様性を守るために

・「ウェブ関係のおススメ書籍『Googleとの闘い』『Webコミュニティでいちばん大切なこと」(編集日誌、2008-01-06)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080107/1199639484

として紹介した

・『Googleとの闘い−文化の多様性を守るために』(ジャン・ノエル・ジャンヌネー著、佐々木勉訳、岩波書店、2007年、1680円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000226177/arg-22/

を読了。

ジャン・ノエル・ジャンヌネーさんは前のフランス国立図書館の館長。2002年から2007年まで国立図書館館長を務めた方で、元々は歴史学者という。

以下のようにすでにいくつかの書評が出ているが、

堀部篤史googleとの闘い」(恵文社一乗寺店 店長日記、2007-12-03)
http://d.hatena.ne.jp/keibunsha/20071203
・小出誠二「フランスにおけるGoogleとの闘い」(セマンティックWebダイアリー、2007-12-16)
http://diary.jp.aol.com/pturkevv6vee/53.html
・谷平吉「日本語グーグルブック検索の開始と危惧」(あなたはこの本を知っていますか!、2007-12-23)
http://chihosho.seesaa.net/article/74297830.html
・加来丈雄「Googleとの闘い−文化の多様性を守るために(ジャン‐ノエル・ジャンヌネー著、岩波書店)」(IT-PLUS、2008-01-04)
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMIT1h000004012008
西垣通「米国主導の文化侵略に異議」(中日新聞、2008-01-13)
http://www.tokyo-np.co.jp/book/shohyo/shohyo2008011302.html
・黒澤公人「Googleとの闘い(元フランス国立図書館長)」(黒澤公人のドキュメンテーションシステムの100年(1960年-2060年)、2008-01-08
http://ameblo.jp/kimito001/entry-10064515568.html

自分としては、著者の思想の根幹にあると思われる文化的な多元性の尊重−なかば信仰に近い−が印象的だった。また、そのニュアンスを規制や保護という言葉で表現しきれないのだが、多元性を守るという目的のためには公権力の介入という手段を否定していないことがなかば衝撃でもあった。もちろん、ジャンヌネーさん一人をもってフランスを代表させることはできないが、フランスの文化のあり方について別の見方や価値観を提示されたように思う。従来の印象とは異なるそれだけの深みを持つのが文化というものだと思えば、だからこそ文化的な多元性が尊重される必要があるということなのだろう。

ちなみに、ジャンヌネーさんは決してGoogleに対しても、インターネットに対しても、否定的ではなく、それはそれで一つの思想と行動であるとみなしているようだ。インターネットに対していまだ過剰な反応を日本の大学や図書館に感じることがあるだけに、これは新鮮な驚き。

なお、誤字や固有名詞の表記の不統一が散見され、岩波書店の編集力の低下を感じたことも書き添えておく。

以下、思いついたことのメモ。

本書はドイツ語、アラビア語、中国語、ポルトガル語、イタリア語、スペイン語、英語、日本語で訳されているのだが、それぞれの言語で書名がどう訳されているのか興味深い。

ジャン・ノエル・ジャンヌネーさんは研究者から高級官僚を経験し、国立図書館館長も務めているが、各国の国立図書館の館長にはどういう人物が登用されるのだろう。国立国会図書館が慣例を破って長尾真さん(前京都大学総長)を外部から館長に起用したことは記憶に新しいが、他の国々ではどのような条件や過程で国立図書館長が決められているのか、ぜひ知りたいところだ。

・「国立国会図書館の次期館長は長尾真さん」(編集日誌、2007-03-18)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20070322/1174517047