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記憶の残滓 by arkibito

2018-02-06

『いただきます みそをつくるこどもたち』 by オオダヴィン監督

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土曜日。音楽教室の後、

十三のシアターセブンに家族で映画鑑賞。

先日、1つ上の第七藝術劇場に映画を見に来た時、

気になる作品を見つけてやってきました。

『いただきます みそをつくるこどもたち』という映画です。


舞台は福岡保育園

そこでは、知育・体育・保育の全ての根源は食育にありということを

30年以上前から理念として取り組んでこられている施設で、

昔ながらの日本の食卓にのぼっていた和食を推奨し、

生きた酵母を摂取することのできる

重要なタンパク源として味噌と納豆

玄米に旬の無農薬野菜を積極的に食べることをしています。

しかもその味噌を園児が自分たちでこしらえるのです。

そして驚きは、この保育園では毎日、給食は100%完食。

飽食、偏食の時代にこれは極めてすごいことなのです。

食べ残しゼロで、園児たちは元気いっぱい。

アレルギーもなく、インフルエンザにもならない、

元気で生命力の高い子どもたちの姿を見ると、

こちらも元気をもらうようでした。


日本人は、明治文明開化までの時代、

1000年近くほぼほぼ肉食をせず、

魚は別としてベジタリアンに近いような食文化を続けてきた民族。

その歴史は我々の体にDNAとして刻まれていて、

現代の欧米型の食事

つまり肉を食べ、乳製品を取るような食生活

そもそもそれに適応した内臓を

持ち合わせていない日本人には不向きで、

さまざまな病気や疾患、アレルギーを引き起こすのだと

科学的にはっきりと証明されているそうです。

食を改善することで、そういった弊害を取り除くことができ、

また生き生きとした生活を起こることができる。

まさに食べたものがわたしになる,ということなのです。


我が家も小さな娘たちのことを考えて、

できるだけ旬のものを使った料理、

和食中心を心がけてはいますが、

どうしても共働きで忙しい毎日だと、

なかなか難しい側面もあります。

昼は昼で外食はラーメンだったり、丼ものに偏りがちで

多々反省しなければ!!


そしてびっくりしたのは、

エンディングテーマが、坂本美雨 with CANTUSのみなさん!

しかも『星めぐりの歌』!

こんなところでみなさんと再会できるとはいと嬉し。


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今年は順調に映画鑑賞に通っているが、

いわゆるハリウッド大作とかじゃなくて、

こういうドキュメントはかかせない。

話題作とかは、いずれソフトが出たりTVでやったりするけれど、

こういうドキュメントはまずソフト化されることがないから

上映している間に観ておかないと

次またいつ観れるかわからないのだ。

ある意味アウラな体験。

2018-02-05

NO MORE 広島の旅

随分時間が経ちましたが、

18きっぷ広島の旅の最終章を。


雨に沈む呉の町を後にし、

列車は広島湾をなぞりつつ、

活気あふれる広島タウンへと滑り込む。


↓呉を離れ一路広島

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昼過ぎには広島を離れて岐路に着かねばならないが、

それまでの数時間で観光と、

やっぱりお好み焼きを食べて帰らないと。

昨晩、ずいぶん贅沢をしたツケで、お財布が心もとなく、

お土産代とお好み焼き代をざっと勘定してみると綱渡り。

ここは経費削減とばかりに、

広電は使わず、徒歩で中心部へと向かう。

まだぽつりぽつりとは降っていたものの、

気になるほどでもなく、駅前大橋稲荷橋と渡り、八丁堀へ。

そこからアーケードを伝って平和記念公園へ。


まず訪れたのは、原爆ドームのすぐ裏手にある島病院。

言わずと知れた広島原爆の爆心地。

この上空約600mで原子爆弾リトルボーイ」がさく裂、

人類史上初めて実戦投入された原子爆弾の威力はすさまじく、

広島を瞬時に地獄絵図へと変えてしまいました。


原爆ドームの裏にある島病院

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↓爆心地

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そこからすぐのところにある原爆ドームへ。

当時、広島県産業奨励館としてモダンな佇まいを見せていた建物は

日光の数千倍の熱線と、

衝撃波を伴う秒速440メートル以上の爆風にさらされ

350万パスカルという爆風圧をほぼ直上から食らいました。

衝撃を受けた角度や、

窓が多く衝撃が外へ抜けやすい構造だったことなどから

その骨格だけは破壊をまぬかれ、

人類の負の遺産として残ることになりました。

灼熱の炎と想像を絶する衝撃にさらされた残骸は、

戦争の悲惨さや原爆の恐ろしさを伝える遺産でもあり、

ひいては平和を願うシンボルでもあります。

身の引き締まる思いがします。


原爆ドーム

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↓生々しい衝撃

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そこから見えている橋は相生橋

すずさんと周作が、ばけもんにさらわれて、

初めて出会った場所として描かれています。


相生橋

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相生橋

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平和記念公園へ足を踏み入れます。

かつてここには活気あふれる中島町という下町が広がっていました。

しとしとと涙色にくれる空の下、静かな緑の中を歩きます。

原爆の子の像のところには、全国各地、世界各地から届けられた

平和の祈りが込められた無数の折り紙の鶴が備えられています。

アメリア大統領として初めてこの地を訪問したオバマ大統領

千羽鶴を折ったことで、注目を浴びていますね。


平和記念公園

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原爆の子の像

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それから黙々と灯り続ける平和の灯へ。

あの日街を焼けつくした炎と同じ火。

でもこの日は、あの日の思いを灯し続け、

一井の人たちのささやかな暮らしを照らし続けるための火。

なんといってよいやら言葉もない。


↓平和の灯

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原爆慰霊碑

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さらに独特な静寂に包まれた公園を歩きます。

重たすぎる歴史がこの場所に根差しているのがひしひしと伝わる感じ。

1.17の東遊園地のあの感じを思い起こします。

そうして広島平和記念資料館に立ち寄ります。


広島平和記念資料館

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入ってすぐのところに、

原爆投下の様子を再現したCG映像があります。

かなり生々しくショッキングですが、

目を背けてはいけない事実。

動画を上げておきますが、

ぜひ一度現地で目の当たりにしてほしい。

あの日、あの場所で、息づいていた一井の人たちの暮らしが、

一瞬で跡形もなく焼き尽くされ、破壊されたのだ。


↓失われた人々の暮らし

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↓ショッキング

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核兵器の危険性(右は原爆投下命令書)

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原子爆弾のモデル(ファットマンとリトルボーイ

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本当ならもっとじっくりと時間をかけてみて回りたかったが

そろそろ時間的な余裕がなく駆け足になってしまいました。

それでもこの場所で起こってしまった事の重みと、

子供たちや次の世代へ自分がやれることは何かという自問と、

にわかに物騒になりつつある今の日本への憂国心とについて

深く考えざるを得ない。

人類の歴史上唯一の被爆国でありながら、

核兵器禁止条約に参加しようとしない矛盾。

”想定外”の大地震によって深刻な被害を被りながら、

原発を推進・再開し、原発ビジネスに依存し、

他国に技術を輸出し続ける矛盾。

そして、芸能人とは仲良く会食するのに

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の事務局長とは会おうとせず、

アメリカの武器商人の言いなりで、

暴走を続ける現政権が、その危険が明らかなのに、

今もって権力の座を確固たるものにしてしまっている国民の意識の矛盾。

そろそろ本気で考えないといけないんじゃないかニッポン。


続いてお隣の国立広島原爆死没者追悼平和祈念館へ。

地下へらせん状に続いていく通路を折り、

静まり返った慰霊所でしばし佇む。

外国のツーリストが多数訪れていて、

熱心に解説を読んだり、

目をつむって黙とうしているような姿がとても印象的だった。

まぎれもなく起こってしまった事実を目の当たりにすれば

戦争が、そして核兵器が、いかに悲惨で残忍でどれだけ野蛮なのか、

万国共通で理解できるはずだ。

あれこれ机上の空論を戦わせて、

一見して、さも高尚な理念や理屈を振りかざしてみても、

結局は誰かが、他人の犠牲を払って、己が利益を優先しているに過ぎない。

そしてそれが可能なのは、

一般の市民ではなく、権力のある人間に限られる。

だからこそその権力ある人間を、あらゆる手段・方法を用いて、

常にウォッチし、精査し、批判しなければならない。

それが自由民主主義によってもたらされた権利であり義務であるはずが、

その根本を政治家はもちろん、多くの国民が忘れ去ろうとしている。

自分の都合さえよければ、自分の利益さえ確保できればそれでよし。

それではもはや公共の理念は保てないし、国民国家の体をなしていない。

面倒なことは専門家に丸投げ、どうせ変わりようがないと投票を放棄して、

権利をドブに捨てているうちに、

実はそれが自らの意思で行使しないということだったのが、

いつの間にかその権利をはく奪されているということに、

巧妙にすり替わっていく静かなる恐怖。

それに気づいた時にはもうはや手遅れ、

などということにならなければよいが…


国立広島原爆死没者追悼平和祈念館

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戦没者リスト

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↓雁木

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平和記念公園で一通り見て回り、

色々な思いを胸に秘めてそろそろ帰り支度。

そのまま広島駅を目指し歩きつつ、

どこかでお昼ご飯を食べてから出立。

有名店はどこも昼時は観光客の行列で、とてもじゃないが待てない。

どうしようかと路地裏を歩いていると、

空いているお店があったので飛び込みます。

「みっちゃん太田屋」さん。

あの有名な方の「みっちゃん」とはたぶんあまり関係がないです。

地元の人たちが主なアットホームなお店。


↓みっちゃん太田屋

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↓やっぱ鉄板前はええです

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スペシャル(生イカ・えび・肉ダブル・玉子)のそばと、

ビールを注文。

鉄板のカウンターに座りながら、

たくさんのお好み焼きが焼かれていくのを眺めつつ。

大阪お好み焼きとは違って、広島のはほとんど生地がなく、

キャベツ焼きに近い感じ。

大きなコテでぎゅうぎゅう押し付ける焼き方も大阪とは全く違います。

ハフハフ言わせながら香ばしいキャベツと、

プルプルの麺を味わいました。


↓いただきます♪

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あっという間に食べ終えて、大急ぎで駅へ向かいます。

駅の売店でおみやげをチャチャッと買って、

混雑する糸崎行の列車に飛び乗ります。

帰りはなけなしの所持金で買った

カープハイボールとイカフライでチビチビやりつつ。

帰宅したのが20時ごろでした。


↓呑み鉄モードで帰ります

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↓かすむしまなみ海道

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尾道通過

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2018-02-02

『私が殺したリー・モーガン』 by ガスパー・コリン監督

1972年2月19日深夜、極寒のNY。

Manhattanの一角にあるJAZZCLUB「Slugs'」は猛吹雪にも関わらず盛況。

稀代のトランぺッター率いるクインテットは、

今日も熱狂的な演奏を続けていた。

ミッドナイトに差し掛かる頃、

濃密な空気が充満する室内に風穴を開けるように、運命のドアが開く。

吹き込む吹雪とともに、一人の女。

駆け寄る男たちを押しのけて、ステージへ。

おもむろに手がバックの中へと差し伸べられる。

そこにはスポットライトの真ん中で、

次の演奏までのつかの間の休息を楽しむ男。

そして振り向きざま…

聞きなれぬ乾いた音がこだまする。

外は依然として猛烈な雪。

凍り付いた街並みを切り裂ようにして響くサイレンの音。

夜の闇はいまだ深く、もう二度と朝はやってこない。

男の名は、LEE MORGAN

世界を熱狂させた稀代のトランぺッター。

その成れの果て。


ジャズ史上最悪の事件として、

今なお深い傷跡を残し続けているリー・モーガンの射殺事件。

運命の引き金を引いた内縁の妻ヘレン・モーガン

生前に残したカセットテープの独白と、

親交のあった様々なジャズミュージシャンたちの証言インタビューを軸に

33歳で突然、世界からフェイドアウトしてしまった

リー・モーガンの最期について迫るスリリングなドキュメンタリー

全編に、都会の風を体現するような乾いた珠玉のトランペットが鳴り響き、

60’70’のアメリカを切り取った印象的なショットの数々がスクリーンを飾る。

JAZZな男にふさわしいJAZZな作品でした。


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もはや説明不要なほど、ジャズ界の伝説的トランぺッターですが、

リー・モーガンについて少しだけ解説。

若干18歳で、ディジー・ガレスピーによって発掘された逸材で、

同年にジャズの名門ブルーノートからデビュー。

大先輩や大御所にも物怖じせず、果敢にプレイするスタイルは

瞬く間に熱狂の渦を作り出します。

しかし、他の多くのジャズメンがそうだったように、

ドラッグの深刻な罠に陥っていきます。

早世の栄光はもはやはるか彼方の遺物となりつつあるような

どん底の日々から彼を救ったのが、

NYのジャズメンの世話焼き姐さんとして慕われていたヘレンだった。

彼女との二人三脚の円満な日々によって立ち直ったモーガンは、

名盤『Sidewinder』で華々しくカムバックを遂げます。

時代はもはやJAZZからROCK全盛へと移り変わる頃。

ロックテイストをふんだんに盛り込んだ変速ブルースは、

一世を風靡しました。

しかし、ジャズ界きってのヤンチャ坊やは、

年上女房の不安をよそに

再び甘い甘い罠に手を染めてゆきます。

夜な夜なスポーツカーを乗り回しては、

どこかの街角で、どこかの女とドラックに興じる日々。

若いガールフレンドに破天荒な生活を続けるモーガンに対する

ヘレンの焦りといら立ち、

それを母親のようにしかりつけるヘレンを疎ましく感じるモーガン

はたから見れば堅い絆で結ばれているかのような二人の間に

徐々に冷たいすきま風が吹き荒れてゆきます。

そうして運命の夜。

死へのカウントダウンはその前から始まっていました。

若いガールフレンドを乗せ、

「スラッグス」へ向かうフォルクスワーゲンが、

大雪に足を取られてスリップし、カーブを曲がり切れずに大破。

モーガンは楽器だけを抱え、身も凍る思いで店にたどり着きます。

一方、ヘレンは長らくモーガンの演奏場所へは顔を出すことがなかったが、

この日は別の店へ別の演奏を聴く道すがら、

「スラッグス」へタクシーを走らせました。

彼から護身用にともらったピストルをバッグに忍ばせて。

そして悲劇は起こったのでした。

普通に考えれば、女たらしでだらしのない男の哀れな末路。

よくある色恋沙汰なのですが、

そこはそれ。

JAZZによって彩られた悲劇は

一段とドラマチックに感じられます。


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ザ・サイドワインダー+1

ザ・サイドワインダー+1


2018-01-24

『この世界の片隅に』聖地巡礼

先日の呉のはなし。

『この世界の片隅に』の舞台となった呉の町を歩いて、

すずさんたちの暮らしぶりを偲ぶというのが旅のメインでしたが、

時間の関係でまずは灰ヶ峰への山登り。

(山登り記事→http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20180115/1516008181

下山して、宿への道すがらに、

山の手側の聖地巡礼スポットをめぐることにします。


ちなみに呉駅やインフォメーションには、

映画のロケ地マップが掲示されていて、便利です。

ある時期まではMAPを配布していたようだけど、

この時は見つけられなかったので、

ひょっとしたらもう品切れかもしれませんね。


ちなみに聖地巡礼の記事を上げる際は必ずお断りしていますが、

各施設は決して観光スポットや商業施設ではなく、

地域住民の生活の場ですので、

むやみに大勢でどしどし訪れたり、大きな声で騒いだり

近隣の迷惑にならないようにくれぐれも

マナーを順守してください。

ちなみに写真のキャプションの番号は

一番下の場面一覧と一致しています。


↓ロケ地MAP

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↓インフォメーション

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↓バス停にて。三ツ蔵までの案内

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登山口からまずはすずさんたちが住んでいたとされる

某地区へ向かいます。

呉の町は、四方を山に囲まれた小さな平野部で、

そこに向けて灰ヶ峰をはじめとする山々から、

四方に枝分かれした支尾根が海へ向かって伸びており、

その起伏にへばりつくようにして住宅街が広がっています。

ちょうど映画でも周作さんが説明しているように、

山が四方を取り囲んでいて、

九の嶺(山)=九嶺(きゅうれい)が訛って、

呉という地名の由来になったともいわれています。

なので、呉の町を横断しようとすると、

いくつもの支尾根をまたいでいくことになるので、

何度もアップダウンが続きます。


↓呉は坂の町

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難儀しながら、階段をこなしていくと、

進行方向に鉢巻山の山並みが見えます。

すずさんが、畑から自宅から何度も仰ぎ見た空と山の景色。

ある時は、あの山を旋回する戦闘機の空爆が、

色とりどりの噴煙をあげ、

ある時は、あの山の向こう側に、

今までに経験したことのないような眩い閃光が走り、

おどろおどろしいキノコ雲が沸き起こったのです。


↓鉢巻山の向こう側で原爆が…

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映画で描かれていたすずさんたちの住まう地区は、

相当に山の高いところで、

その斜面を削り取って家屋や田畑を造成していましたが、

実際にこの辺りは相当な急斜面。

そこにしがみつくようにして建物がひしめき合っています。

現在ではたくさんの建物が立って、

当時とは全く違う景色でしょうが、

恐らくこの地形だけはそのまま変わっていないと思います。

呉の町とこちらと、荷物を担いで徒歩で行き来するというのは

それだけでも結構な重労働だったろうと思います。


↓すずさんの集落

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↓西教寺

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↓こういう急斜面に暮らしてたのかな

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個人的な経験則として、

坂道のある町にはドラマがある。

大好きな尾道もそうだし、長崎もそうだし、塩屋もそう。

そしてこの呉の港町もそうだ。

平地に比べて、登ったり降りたり、

”道のり”というものがより実感として伝わるからかもしれない。

その距離的なもの、地理的なものが

町の印象に奥行きを与えるからだろう。

そして、その奥行きによって生み出される

様々な暮らしのドラマを1つ1つ垣間見るというのは、

旅の醍醐味でもある。


↓(1)辰川バス停

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↓すずさんの生活

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↓すずさんの生活

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↓(2)畝原自治会館

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↓(3)旧辰川小学校

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いくつか近辺に描かれているスポットを見て回り、

そのまま海側に向かって降りていく。

途中、聖地巡礼のシンボル的なスポットに出ます。

「三ツ蔵」と呼ばれていますが、

国の重要文化財「旧澤原家住宅」で、

中国地方を代表する大規模商家の暮らしぶりを今に伝えています。

すずさんが呉の町へ出るシーンで何度か登場し、

とても印象に残る特徴的な建物です。

それにしても映画の描写は実物そのまんまです。

思わず、すずさんの暮らしていた時代の呉の町へとタイムスリップ


↓(4)三ツ蔵

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↓三ツ蔵

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山間から呉の中心部へと下ってきました。

ちょうど降り立った地点から少し進むと、

遊女のリンさんと出会う朝日遊郭のあった朝日町。

もはや当時の面影は全く残されていないが、

付近に流れる堺川の橋に「朝日橋」の文字が刻まれている。


↓(5)帰りの目印の郵便局のあったところ

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↓(6)遊郭のあった朝日町

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↓朝日町

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↓朝日橋

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何か痕跡らしいものは残っていないかしらんと

散策していると、妙なものを見つける。

バスが通る並木道には等間隔で電信柱が並んでいるのだが

そのうちの1つだけ、どうも形状がおかしい。

近づいてみると、

何か元あった一回り大きな土台の上?中?に電信柱が伸びている。

場所的に、ひょっとしてこれは

遊郭の入り口に立っていた楼門の一部なのかもしれない。

確証は得られないので、間違いかもしれませんのであしからず。


↓(7)遊郭の裏門

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↓おや?

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↓表門の跡?

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朝日町を後にし、付近を散策。

ここから少し山間へ戻ると、千福さんがあります。

「千福一杯いかがです〜♪」のCMでおなじみの

呉の銘酒・千福を醸す三宅本店さん。

以前、呉を訪れた際に、工場を見学させていただいたことがある。

ちなみに呉の地酒には、この「千福」のほかに、

最近勢いのある「雨後の月」や「華鳩」、

「白天龍」「水龍」「宝剣」「音戸の瀬」「三谷春」とあり、

広島きっての酒処でもある。

それもそのはず、先ほど上った灰ヶ峰の湧き水が呉の町の出発点であり、

名水を求めて港が造られ、酒が造られる。

土地と暮らしはいつでも一体なのだ。


↓千福

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さて、そろそろ街へと戻ろう。

朝日町を抜け、相生橋のたもとへ。

堺川から一筋入った何の変哲もない路地を歩く。

ここはすずさんが、砂糖を求めて出かけた

「東泉場」と呼ばれる闇市が開かれていた場所。

これより海側は歓楽街だったり、海軍の工場地帯で、

ここが呉市民の台所として栄えていたのである。

その一角はには今の地元を支えるスーパーが建っていて、

やはり場所の役割は時代を経ても引き継がれている。

と、よく目を凝らしてみると「とうせんば」の文字を発見。


↓(8)砂糖を買いに行った東泉場のあった一帯

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↓今は三和ストアー

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↓とうせんば!

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そのまま駅方面へ進んで、中央橋に出る。

振り返ると、夜の帳にひっそりとフェイドアウトしようとしている

灰ヶ峰の黒いシルエット。

映画のラスト、戦争孤児となったヨーコをおぶって、

広島から戻ったすずと周作がぽつぽつと家路につくシーンそのままだ。

帰る場所がある。

それが幸せの第一歩だとでもいう風に。

思い出すだけでも泣けてくる。


↓(9)帰り道

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この日の最後は堺川にかかる小春橋。

当時、市電が通っていた目抜き通りの堺橋のひとつ上流の橋です。

忘れ物をとどけてくれるようにと周作から電話を受けたすずさんは、

珍しくお化粧をパンパン。

周作には白すぎると言われてしまいますが、

そこがまたすずさんのかわいらしいところ。

せっかくだからと映画デートへ繰り出すも、

ちょうど艦艇が寄港していて町は大混雑。

仕方なく映画をあきらめて、

2人がたどり着いたのがこの小春橋でした。


↓(10)小春橋

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ということで、

ひとまず1日目の巡礼はここでおしまい。

翌日の朝に海側をめぐります。


翌日8時に宿を出て、呉の海側へ向かいます。

空はどんよりと雲が垂れ込め、しとしとと冷たい雨。

なんとなく物悲しさを帯びた呉の町。

宿は本通りに面していて、

少し歩くと「四ツ道路」の交差点。

この言ったには呉で一番大きな闇市が建った場所だそうです。

今は当然その面影もありません。


↓四ツ道路

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そのまま本通りを進み、

JR線をくぐるところが「めがね橋」という交差点。

めがね橋はJR線の高架の橋を指すのではなく、

ここには昔本当にアーチ形のレンガ橋が水路に架けられ、

一般市民と海軍との区域の境界線としての役割を果たしていました。

(今でもひっそりと地下に埋められているらしい)


JR線をくぐると、映画で特徴的な風景として残っている

旧海軍下士官兵集会所(通称・青山クラブ)の建物が見えます。

軍港が入港時に、下士官と水平の滞在用の施設として立てられたもので、

丸いコーナー部分がユニーク。

耐震問題で、取り壊しが検討されていましたが、

多くの市民の要望が叶って、つい先日、

全面保存に方針が転換されました。

これも映画の影響が多分にあったと思います。

この辺りはすでに、海軍の敷地内で、

すずさんが忘れ物を届けるシーンで登場します。


↓(11)めがね橋のところ

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↓(12)集会所前

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入船山公園を右手に、緩やかな坂道を登っていくと、

ドンツキに階段があります。

径子と晴美ちゃんが元夫の下関の家へ向かうため

駅に来たのだが、すごい混雑で待たされる間、

空襲で負傷した義父・延太郎が入院していた

海軍病院へとお見舞いに行きます。

その病院がこの階段の先にあり、

今でも医療センターが建っています。

ちなみにこの階段は現在は通行禁止になっています。


↓(13)病院への階段

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さらにそこから、坂道を進んでいきます。

現在、高校の敷地となっているところが、

映画で、突然の空襲警報ですずさんと晴美ちゃんが

逃げ込んだ共同防空壕のあったところです。

駅にいるお母さんを心配し、不安がる晴美ちゃんのため、

すずは得意の絵を地面に描いて落ち着かせます。

空襲が止み、外へ出た2人は防火用水用の水でのどを潤します。

そして…


晴美「ねえ すずさん、あっち見てってええ? 

何の船が居りんさったか お兄さんに教えてあげるん」

すず「えー見えるかね?」

晴美「ちいとだけ ちいとだけね?」


2人は、駅とは反対の方向へと歩き出してしまいます…


↓(14)防空壕のあったあたり

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たどり着いた高台。

普段は遮蔽壁が張り巡らされて、

軍港の様子を覗き見ることはできません。

しかし、あの日、

空襲によって1か所だけぽっかりと穴が開けられてしまいました。

晴美ちゃんは無邪気にそちらへと駆けてゆく。

すずさんも手を引っ張られてついて行く。

そこからは海と港の様子がすっきりと見渡すことができました。

しかし、その瞬間、悲劇が二人を襲いました。


ほんの少し気づくのが早ければ。

あるいはもう少し近づくのが遅ければ。

寄り道をせずに、駅へ向かっていれば。

あの日お休みをせずおとなしく学校へ通っていれば。

でも、もう時間は巻き戻りません…。


晴美ちゃんはただ、お船が見たかった。

下関のお兄ちゃんへのみやげ話に。

すずさんはただ、その気持ちに応えてあげたかった。

ただそれだけのこと。

ただそれだけのことだったのに。


戦争はすべてを奪う。

世界の片隅のささやかな日常でさえも。

得るものなど何一つない。

ただ残酷で悲惨な愚行。

それでも、今日もなお世界から戦争はなくならない。

そしてこの日本でさえも、

その恐怖がひたひたと現実味を帯びている。

戦争はいけない。戦争はいけない。

すずさんや晴美ちゃんのような悲劇を二度と生み出してはいけない。

そんな反戦への気持ちを新たにしつつ、

晴美ちゃんとすずさん、

そして実際に空襲に遭われた呉の人々、

戦争で亡くなったすべての方々を思って、

そっと手を合わせました。


すずさん、空が泣いています。


↓港が見渡せる高台

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↓(15)悲劇の場所

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ここからは呉の港の様子がよく見渡せます。

ちょうどこの日は、呉港をベースとしている

護衛艦「加賀」がドック入りをしていました。


↓ドックが見えます

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↓護衛艦「加賀」

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↓見応えあります

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↓立派な産業遺産

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しばらく留まっているうちに

随分と雨が強くなってきました。

悲しくてやりきれない気持ちを引きずりながら、

とぼとぼと海自の呉地方総監部へと下ってきました。

そこから自衛隊の敷地を抜けて、

中央桟橋に到着。

いよいよ呉の旅の終着点です。

現実の世界と映画の世界、

2018年と1945年、

時代と世界を頭の中で行き来しながら、

とても印象的な街めぐりをすることができました。


↓中央桟橋

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↓中央桟橋より

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↓中央桟橋より

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↓オマケ(てつのくじら館)

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次の目的地、広島へ向かうため駅へ。

電車まで少し時間があったので、駅の売店をのぞくと、

いくつか関連のグッズがありました。

娘にはタオルや文房具、自分みやげにお酒を購入。

お酒は特製ラベルの千福。

きっと北条家でも祝いの時に飲まれていたことでしょう。

このお酒は次の8月6日まで大事に取っておこうと思います。


↓『この世界の片隅に』ラベル

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↓千福さんのお酒です

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2018-01-10

2017年myベスト

総括に続いて、これまた毎年恒例のMyベスト発表。

2017年の各部門賞に参ります。


【ベストマウンテン: 子連れハイク 富士山登頂】

●総括: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170827/1503844374

●1日目: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170830/1504105456

●2日目: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170901/1504248257

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2017年は、様々な分野に活動が広がり、

色々な方面への遠征も増えたため、

メインの活動である山行の割合が減ってしまいました。

スケジュール的な問題に加えて、

2017年は週末ごとに天候が悪く、

実際に山に入れるチャンスも少なかったように思います。

今年は北アルプスには土砂降りの鹿島槍ヶ岳にK大先生と遠征に行ったきり、

上高地入りすら果たせず…。

とはいえ、山への情熱がなくなったわけではなく、

むしろ遠ざかる山にまた早くおいでと言われているような気すらします。

今年の山行で最もハードだったのは、

ここ数年の宿題だったダイヤモンドトレイル全縦走。

今の自分の能力・体力の限りを尽くした激闘でした。

でも、去年のNO.1はと問われれば、迷うことなく、

長女と達成した富士山登頂!

自分自身は3度目の登頂でしたが、

これだけスッキリ晴れた富士山は初めてでしたし、

何より自分のことよりも

娘が自らの足で偉業を達成したことがうれしかった!


【ベストライド: なんちゃってキャノンボール with うめ&ROADYASAI】

●総括: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171107/1510029999

●第1区間: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171127/1511775934

●第2区間: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171206/1512528495

●第3区間: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171214/1513241428

●打4区間: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171228/1514438324

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ベストライドは文句なしで「なんちゃってキャノンボール」。

ダラダラと自転車復帰して、ぼちぼちと走ってはいたものの、

本格的な超ロングライドに

最初はやれんのかっという気持ちが大きかったですが、

昔取った杵柄、やれちゃいました。

もう競技的な走り方やストイックな練習はできませんし、

したいとも思いませんが、

やっぱりロングライドってドラマだな、面白いなと。

かつての仲間がそれを後押ししてくれて、

一緒に感動を共有できたというのも

これからの自転車人生の大きな財産となりました。

山と同じく、娘が一緒に走ってくれるというのも大きく、

木馬の皆さんと走ったアワ1でのラストの登りは、

大人がみな大感動で、あれも忘れられない思い出です。

今年もやっぱりロングライドにこだわって

走っていけたらいいなと思いますが、それよりまず、

うめさんに怒られる前にパンク修理練習せな@@@


【ベスト産業遺産: 本屋改造プロジェクト at スタンダードブックストア心斎橋】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170327/1490582478

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産業遺産めぐりもたくさんしましたね。

念願だった”埼玉のパルテノン神殿”こと首都圏外郭放水路は見事でした。

また、決してアニメオタクではないのですが、

『耳をすませば』『究極超人あ〜る君』など

大きく自分の人生に影響を及ぼした作品の聖地巡礼もやりましたねえ。

あとは、山歩きができない分、

街中、それも夜の街をフィールドにして、

写真を撮るという遊び方も本格的に実施するようになり、

これも活動の新たな柱になりそうな予感。

と、この部門はひとくくりにしづらいアレコレが含まれるのですが、

その中で一番印象的だったのが、春先に、

いつも贔屓にしている本屋&文化発信基地である

スタンダードブックストア心斎橋のリニューアル工事のお手伝い。

改装工事をお客さんも巻き込んでやって、

場所を一緒に創造する(ついでコストしっかりカット)という、

面白いアイデア。さすが中川おじさんです。

本屋さん、それも大好きなお店に自分で手を加えられるなんて

こんな機会は多分なかなかありません。

元々好きだった場所が、さらに思い出深い場所になりました。


【ベストMUSIC: 『Lift』by トクマルシューゴ】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170123/1485146729

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今年は音楽の分野が一気に盛り上がりました。

色々なライブにでかけたり、イベントに出演したり。

個人の音楽活動では、オリジナル曲は1曲しか完成できなかったけど、

弾き語り練習のカバーはたくさん。

今年は、ストックの中からせめて3,4曲は仕上げたいなあと思っています。

去年聴いた曲の中で、一つだけ選ぶとすれば、

トクマルシューゴさんの『Lift』。

2016年の暮れに舞台『私は慎吾』を観に行って、

その音楽を担当されていたのがトクマルさんで、

その流れでニューアルバム記念のライブに行ったのだけど、

あらゆる楽器を持ち替えて超絶に演奏する音楽マニアぶりに度肝を抜かれ、

ただひたすらに”音”が”楽”する奇想天外なライブに、

ああ、音楽って本当に自由でいいんだと、

今まで自分の中にあった固定概念を

気持ちいいぐらいにぶっ飛ばしてくれました。

その中でもこの曲は、とにかくLiftのごとく浮遊していく感覚が面白く、

とにかく気持ちいい!!PVもスッバラシイ!!


【ベストBOOK: 『エドウィン・マルハウス』by スティーブン・ミルハウザー】


読書の時間は相変わらず、

通勤や遠征の合間の電車の中という隙き間産業で、

雑誌等々を除いて、ちゃんと読書となると数えるほどしかない。

本屋に行けば大量に買ってしまい、

積読書がどんどん膨らんでしまっています。

去年、1年かけてじっくり読んだのが、この一冊。

実はまだブログで感想をまとめてないのだけど、

目くるめく万華鏡のような圧倒的に詳細な場面描写、

やけにリアルな悪夢の不気味さを思い出させる後読感など、

中毒性たっぷりのミルハウザー節全開の一冊でした。

わでゅい子、わでゅい子(悪い子、悪い子)


【ベストMOVIE: 『この世界の片隅に』by 片渕須直監督】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170130/1485739952


上映直後にはなかなか行けず、

年をまたいでようやく観ることができたのだが、

まさかこれほどまでに心の大きな部分を占めるほど大切な作品になるとは。

作品の素晴らしさや、中身の話は

もうさんざんいろんなところでしてきたから、今回は別の観点を。

個人的に、日本のアニメーション界は

「美男美少女キャラ」「胸キュン舞台設定」「徹底したリアル背景描写」の

3点セットで崩壊の一途をたどっていると思っている。

物理的な制約を受ける実写(リアル)と違い、

極限的には紙とペンだけで、重力も時間軸も、はたまた真実でさえも、

あらゆるものを超越できるはずの世界であるはずなのに、

どこかで見たり聞いたような陳腐なテーマや題材を借りてきて、

とにかく単純に現実を模倣するだけのリアルさにかまけて、

真のイマジネーションをどんどんと委縮させている。

途方もなく馬鹿馬鹿しい発想や、壮大過ぎる冒険心、

危険極まりない野望といったものがいつしか失われ、

アニメーションがイマジネーションの創造ではなく、

単なるツールでしかなくなってしまっている。

これを危機と言わずに何といえようか。

その極限がその前の年にブームとなった『君の名は』で、

そういう思いを抱いていた矢先に、この作品に巡り合い、

アニメーションでここまでのことが表現できるんだ、

アニメーションだからこそ伝えられる思いがあるんだ、

しかもそれが、小さな子供たちの心の中にまでも

射程に捉えることができる力を帯びている、

やっぱりアニメーションは豊かで素晴らしいと痛感することができたのでした。

例えば、穏やかな瀬戸内の海の水面に、

白い兎がぴょんぴょん跳ねる場面。

例えば、畑仕事の最中に突如空襲が飛来するのだけど、

すずさんの心の中は絵を描くことでいっぱいで

パンパンと爆発が鳴るたびに、絵の具が空に散らばるといった表現。

これらはアニメーションだからこそできる描写であって、

伝えたいものの本質と、それを的確に伝える方法が、

ピタッと一致して、それこそが真のクリエイティブなのだろうと感じたのでした。


【ベストドラマ: 『カルテット』】

●『おとなの掟』: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170329/1490751378

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170125/1485309113

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去年は魅力的なドラマがたくさんありました。

全力でみね子を応援してきた朝ドラの『ひよっこ』、

高畑充希ちゃんの一挙手一投足が見逃せない

『過保護のカホコ』と随分迷いましたが、

2017年のNO1は『カルテット』!

とにかく、脚本が素晴らしい。

セリフの一つ一つに大人の重みがズシリとあり、

そのセリフに負けない役者人の存在感と説得力。

カルテットの織り成す、何重奏ものドラマの深さに、

思わずドはまりしました。


【ベスト演劇: 『MANGA Performance W3(ワンダースリー)』】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171220/1513737888

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演劇も前年からぼちぼち観に行くようになりました。

やはり画面のものと、目の前の舞台のものとは似て非なるモノ。

その面白さがわかってきた今日この頃です。

30年ぶりに親子3代で観に行った

『レ・ミゼラブル』も本当に感動しましたが、

今年はやはり、ワンダースリー!

カメレオン役者の坂口さんの存在が、

演劇の世界への扉を開けてくれたのは間違いありません。


【ベストフットボーラー: 中村憲剛】

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2017年はあまり、サッカー関連にかかわることがなかったのですが、

一番うれしかったのは、川崎Fの悲願の初タイトル。

ルヴァンカップでまたしても栄冠を目前に敗れ、

シルバーコレクターの呪いが続くかと思われたが、

最終節での大逆転でのリーグ制覇。

泣き崩れた中村憲剛の熱い涙にこちらもほろり。

川崎一筋、日本人屈指のMFに、ようやく勝利の女神がほほ笑んだ!

おめでとう!

ちなみに自分はガンバサポですが、

今年は無冠はもちろん、中堅も中堅、話題にも上らない程度のリザルト。

体制5年の区切りで長谷川さんが退任して、

2018年は果たして!?


【ベスト野球人: サファテ(ソフトバンク)】

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今年は、セパ両リーグとも

2位と10ゲーム差以上の首位独走状態で、

2強10弱でしたから、

他のチーム・選手がどれだけ盛り上げて成績を残そうとも、

広島とソフトバンク以外からの選出はあり得ません。

まして我が燕軍団など…(涙)

その最強2チームの中で選ぶとすれば、

文句なしでソフトバンクの守護神サファテでしょう。

66試合登板で、防御率1.09、2勝2敗54セーブ。

102個の三振に、わずかに8失点。

文句なしの成績はもちろん、

彼が出てきた時点で、すでにゲームセットという、

絶対的な安心感はすさまじい。

いやあ、うちにもぜひこういうストッパーがいればなあ…


【ベストドライバー: 佐藤琢磨】

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根っからのF1フリークでしたが、

ここ数年はほとんど興味が薄れてしまった。

フォーミュラEも、やっぱりサウンドがしょぼかったり、

燃費を計算して全力で走らなかったり、

蓄電の限界でピットでマシンを乗り換えたり、

興ざめな部分も大きく、

世代自動車の開発の畑という側面からはともかく、

やはりまだまだモータースポーツと呼ぶには

未熟な点が多く見なくなった。

半面、最近はスーパーGTなど国内レースが面白くて

そちらに興味がシフトしてきている。

そういった中で、日本人あるいはメイド・イン・ジャパンが

世界的に活躍する場面というのがなかなかお目にかかれない中、

やってくれました、タクマ!!

アジア人として初のインディ500優勝。

F1のモナコGP、ル・マン24時間とならぶ世界3大レースで、

ドライバーの腕が最も試されるオーバル200周、

時速350kmオーバーの真剣勝負を

まさか日本人が制するなんて!!

これぞアメリカンドリーム!!


【ベストグルメ: 「USHIO CHOCOLATL」のチョコレート】

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2017年のベストグルメはまさかまさかのチョコレートです。

自分でもびっくりですが、それほど食べたときは衝撃的でした。

カカオ豆と砂糖だけで作られた、

シンプルながらもこだわりの詰まったチョコは、

作り手の熱い思いがビンビンに伝わる絶品でした。

尾道の向島にある工場にもぜひ訪れてみたい。


【ベスト酒: 弥栄鶴 亀の尾蔵舞】

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年々、酒の量が増えているような気がします。

全国津々浦々のお酒をたくさんいただきましたし、

酒蔵さんにもお邪魔しました。

酒を通じて人との交わりもあり、

まさに類さんが提案する酒縁を感じている次第。

その中で年の一本を選び抜くとしたら、

京都は丹後半島のこちら。

近年の日本酒ブームでは、

獺祭に代表されるような、

すっきりフルーティーで飲みやすいタイプのものが

もてはやされ市場を席巻していますが、

これはその潮流とは真逆で、

非常に濃厚なボディにふくよかな酸味がじゅわり。

亀の尾という一度は絶えた酒米を復活させるところから出発し、

丹後ならではの自然の恵みをダイレクトに伝えるクセのあるお酒に

存分に酔いしれました。

限界まで精米をしてクセ癖のない呑みやすさを追求すると、

同じゴールに向かって酒の性質はどうしても似通ってきてしまいます。

それでは正直何呑んでも一緒のことで全然面白くない。

せっかく、日本という四季豊か、自然豊かな国土に、

それぞれの土地に根差した文化や風土があって、

そこからモロに影響を受けているものが日本酒なのであって、

水も違えば、米も違う、酵母も違えば、気温も環境も違う。

クセがあって当然で、地元臭さがあってよいのだ。

その違いを味わい、楽しんでこそ、

酒の良さがわかるのであって、

酒を味わうとは日本の文化や風土を

そのまま味わうことなのだと思っている。


【ベスト酒場:「あずき色のマーカス】

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このところは、各地への遠征の帰りに

必ずその土地の酒を買って帰ることにしていて、

それらをわが家で味わう、家呑みが主流になりつつあるのだが

やはり酒場で飲む酒というのは、自宅にはない味というものがある。

酒を呑むということは、

文字通り酒という飲み物を飲むということではなく、

酒を呑むということの全て、その行為に酔いしれることである。

味な空気を纏った場所で、おいしい食事を楽しみながら飲む酒、

店の人や他のお客とのやり取りをしながら、

あるいはガヤガヤとした空気の只中に身を置いて、

その空気を肴に飲む酒というのもまたどれも格別なのだ。

そういう意味で、なじみの店を持つということは、

酒飲みにとってはとても大切なこと。

自分にも1つの町に1つのなじみの店をもつようにしているが、

我がホームグラウンド天満に、去年新しく仲間入りしたのが、

「あずき色のマーカス」。

酒に造詣が深いのはもちろん、

生もと造りの酒にこだわるという変態ぶりを発揮する

マーカスさんとの酒談義は格別の肴である。


【ベスト麺: 華Sansyou学の麻婆麺】

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生活圏がどこもかしこも関西屈指の麺激戦区なので、

ラーメンうどんその他、麺づくしの日々ですが、

去年すっかりハマってしまったのが、

西中島南方にある「華Sansyou学」の麻婆麺!!

もともとは新大阪の中華の名店ファンファンで修業されていて、

実力は折り紙付き。

絶品の麻婆豆腐もさることながら、

その濃厚な旨さと辛さに負けない麺の旨さと甘みのフォロー!!

極めて中毒性が高く、

こうやって書いているだけで、

思い出してヨダレが出てしまう@@@


【ベストカレー: ダイヤモンドビリヤニ】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170607/1496812356

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根っからの黄レンジャーを自負しておりますが、

もはやとても追いつけないほど

関西のスパイスカレー業界は拡大普及しておりますが、

カレー部門の一等賞は、

中津の「ダイヤモンド★ビリヤニ」さんで決まり!

ここ数年で一気にブレイクしつつあるビリヤニですが、

ここは釜炊きを直接提供してくれる珍しい専門店。

まずはその見た目のインパクトが絶大で、

窯を開いた時のアツアツの湯気からの登場シーンは、

思わず拍手をしてしまう。

あの手この手のトッピングの出し入れで、

マジックのように味変をしながら、最後まで楽しめて、

食事というより、ちょっとしたアトラクション感覚。

ああ、これまた食べたくなってきちゃった!じゅるる@@


【ベストイベント: アンサンブルズ東京】

坂本美雨withCANTUS WS: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171003/1507009129

坂本美雨withCANTUS WS◆Аhttp://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171020/1508477747

●大友良英スペシャルビッグバンド WS: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171023/1508748264 

●当日パレード: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171025/1508900715

●その他の演目: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171025/1508911191

坂本美雨withCANTUS本番: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171030/1509339170

●大友良英スペシャルビッグバンド本番: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171031/1509417942

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ベストイベントは文句なしでアンサンブルズ東京。

2年連続2回目は、2演目かけもちで楽しみました。

もうこれについては散々っぱら書いてますので、

ぜひ各記事を読んでくださいまし。

とにかく魔法のような日々でした。


【ベストブーム: レトロ印刷JAM】

●記事 Аhttp://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170911/1505093983

●記事◆Аhttp://d.hatena.ne.jp/arkibito/20171129/1511918943

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去年最大のヒットは、

わが家のご近所で発見した大人の図工室「レトロ印刷JAM」さん。

ふらっと立ち寄って、思い付きで、セルフで、

モノ作りが楽しめる夢のような空間。

素人工作部隊であるわが家の可能性を無限大に広げてくれました。

特にセルフで簡単にシルクスクリーンができる

「スリマッカ」との出会いは決定的な出来事。

今年もジャンジャカと利用させていただきます!!


【ベストプロダクツ: 夏の自由研究 わが町の立体模型】

●記事: http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170825/1503623221

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様々なイベントに出たり、色々な人と出会ったりする中で、

わが家の工作部隊の出番が増えた一年。

おもちゃでもゲームでもいいですが、

なにか楽しいもの、面白いものをお金で買ってきて消費するということでは

もはや満足できないというか、

何か楽しいもの、面白いものを自分たちで考えて、自分たちで作ってみよう、

という方が何十倍も面白いのです。

何より大きいのは、同じように面白がって、

一緒に工作をしてくれる奥さんと子供たちの存在。

感謝ですね。

わが家のものづくり気質の最たるものが、

長女の夏休みの自由研究で作ったわが町の立体模型でした。

夏休み期間に何度も町を歩いては、調査を繰り返し、

それを地図に落とし込んで、消しゴムを削り完成させていく。

まるで新しい町を自ら創造するかのようなワクワク感がありました。



【マン・オブ・ザ・2017: 大友良英】

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もはやこの方をなくして2017年は語れません!!

本当に、人生の豊かさを身でもって

教えてくれた恩人といっても過言ではないほど。

型があっての型破り、そうやって世界を拡張していくこと、

音楽にしても芸術にしても、

全てのことは、つまるところ、

生き生きとした場をいかに創出するかということに尽きる、

それらを肩ひじ張ることなく、

自然体で身でもって知らしめてくれました。

ご本人はきっと、そんな大袈裟なことじゃないよ〜と言いそうですが

心の原動力をそっと授けていただいた、そんな気持ちでいます。


ということで、ようやく2017年終了!

今年も去年に負けないくらい

色とりどりの1年にしたいと思います。