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記憶の残滓 by arkibito

2017-03-13

関東 右往左往

東京遠征2日目。

個別トピックスは色々詳しく書くのに時間がかかるので

その前に、まずは移動についてまとめ。

生粋の関西人にとっては、東京地理や交通網はちんぷんかんぷん

地下鉄でさえ、大阪のように碁盤の目のように理路整然としておらず、

皇居を中心として複雑怪奇に曲がりくねり、

オマケに今日ではあれやこれやと相互乗り入れが盛んで、

来た電車の案内板に表示されている駅名さえ、

果たしてどっち方面?なんてこともよくある。

JRJRで、山手線東海道線横須賀総武線京浜東北線

複数路線が並行している個所がいくつもあり、どれがどれやら。

最近になって、ようやく山手線の内側ならわかってきましたが、

その外側に広大に広がる未知なる関東平野に、

あちらこちら張り巡らされた私鉄JRローカル線

今回はいくつもつないでの移動。

しかもタイトスケジュールのため、一度の接続ミスが命取り。

太川・蛭子コンビのようにはいきません。

綿密に計画を立て、あとはダッシュ。


朝7:15の中野坂上駅から満員電車に乗り込み2駅先の新宿

そこからダッシュで京王線。初めて乗ります京王線

準特急なる電車に乗り、笹塚明大前調布府中を過ぎて、

8時を少し過ぎたところで1つ目の目的地である聖蹟桜ヶ丘駅に到着。

ここで2時間ほどみっちり歩き倒し、駅に戻ってきて、

10:30の準特急新宿に取って返す。

そこでJR中央本線に乗り換え、6つ先の荻窪へ。

そこでも1時間ほど滞在して、ダッシュで戻ってきて12:30の電車に乗り込む。

またもや新宿に到着して今度は埼京線に乗り換え。

池袋赤羽と過ぎて、武蔵浦和武蔵野線に乗り換え。

もはやこの辺の土地勘なく、

車窓を見てもただっ広い平野で方向感覚も鈍る。

4つ目の南越谷で降りて、隣接する新越谷駅東武スカイツリーライン線。

それで北上して春日部に着いたら、ダッシュで東武野田線に乗り、

2つ目の南桜井駅で下車。

ここでも3時間ほど滞在し、帰りは1つ隣の藤の牛島駅から。

そのまま大宮まで出て、そこから京浜東北線に乗り、西川口駅で下車。

そこで1時間滞在して、帰りは川口駅から東京へ。

なんとか滞りなくすべてのミッションをクリアできました。

東京大宮ってすぐ近くのように思っていましたが、全然。

この日は、まるで大阪から午前中に京都行って、

その足で神戸に行って、ラストは奈良、くらいな移動。

1つの沿線でいくつか用事をつなげられたら一番良かったけど、

あれこれ欲張りすぎてこんなことになってしまいました。

でもまあ充実の2daysでした。


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お昼ご飯は、荻窪で、時間を見誤り30分空いたスキにこちらへ。

門下同士でいろいろトラブルや軋轢があるそうですが、

関東では相当ネームバリューのある一門のはず。

でも、麺はフニャフニャで風味もなく、

スープも妙な甘だるっこさで、しかも最初からぬるいからラストは冷たく。

具がどっさりなのはありがたいけど、

そのせいで麺をつけるのに邪魔でバランスが悪いし、

なんかなあ〜。

大阪の激戦区の味の方がよっぽどだと思いました。

まあ、旅の時はいつも食は犠牲にしがちなので、

まとまって食べれただけでもよしとしよう。

2017-03-07

金沢王道コース デザインの本質を探る旅?

北陸旅行2日目。

加賀温泉を9:36に出発して、30分ほどで金沢にとうちゃこ。

さすがシーズンなのと、

新幹線東京から一本ということもあってか、

駅前からものすごい人出です。

こちとら人数もいてベビーカーなので、

無理にバスは使わずにタクシー移動。

金沢に来たら寄らずにはいられないのが21世紀美術館ですね。

美術館内はすごい人で、チケットブースからすごい行列でしたが、

やっぱりここは外すわけにはいきません。


金沢21世紀美術館

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レアンドロのプール

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行ったときは、「工芸とデザインの境目展」というのをやっていました。

どちらもモノづくりという意味では同じで、

しかもどこまでが工芸でどこまでがデザインなのか、

線引きが非常に曖昧ですが、

プロセスと素材」「手と機械」「かたち」「さび(経年変化」

といった観点からその境目を模索するという内容の企画。

例えば、タイプライターとiMAC

バカラのグラスとIKEAの割れないコップ、

昔のコカコーラの瓶と、今のコカコーラのスリムボトル

石垣コンクリート壁などといったような

同一の目的で作られた商品を、

古い時代の道具たちを”工芸”、最新のツールを”デザイン”として

対比するという展示の仕方でした。


個人的な感想としては、

ますますその境目がどうなのかわからなくなるような感じでした。

つまりこの企画で”工芸”と位置付けられたモノの方が、

”デザイン”と位置付けられたモノよりも、

デザイン的に優れていると感じたからです。

結論としては、「工芸」とは、

まず最初に何か作業や仕事(料理や木工)があり、

それらを効率かつ正確に行えるものとして生み出された道具が、

機能美としてデザイン的な素質を発するもの。

一方、「デザイン」とは、モノの機能的な内面から湧き出たものではなく、

コマーシャル的な意味合いから表面的に飾り立てられたものであり、

それによって消費行動へと駆り立てるための一種のお化粧にすぎない、

として捉えた方が個人的には随分しっくりくる。


結果的に製品をプロダクトするという行為は同じだったとしても、

その出発点、あるいは考え方の原点が、

いいモノを”つくりだす”ということが、

いつしか多く”売る”というところにすり替えられた時、

没個性化が始まり、真の意味でのデザイン的な魅力を見失う。

誰にでも使い勝手がよく、誰にでも受け入れられる、

けれども、無味無臭、人畜無害な

極めて凡庸なものが世界を席巻することになる。


アパレルの世界でいう”ユニセックス”デザインなどというものは、

文字通り男である女であるという根本的なボーダー=個性すらも

ある意味否定したものだ。

男にも売れる、女にも売れる、シェアが拡大する、売り上げが上がる。

それは商業的には成功かもしれないが、それは求められたものなのか。

昔のスポーツカーや、ビートルなどの

個性的なフォルムやデザインに胸躍らせても、

どのメーカーも似たり寄ったりの現代のツルンとした

家電自動車にもはやロマンは感じられない。

1つとして違いのない真っ白なiphoneに対して

黒電話やピンクの公衆電話もつ”味わい”とは

決してノスタルジー的な意味合いだけではないはずだ。

しかし機能や効率が格段に向上するのに反比例して、

デザインはどんどん形骸化してゆく。

便利で快適で文句もないが、ただつまらない、面白くない。

これは製品やデザインという世界に留まる話ではなく、

フォーマット化された店舗、住宅、芸術作品まであらゆる世界で

同時進行的に起こっているデザインの砂漠化だ。


町に溶け込んだ老舗の珈琲屋と

スターバックスの対比がわかりやすいかもしれない。

前者は、もちろん商売として

コーヒーを提供するということが前提だとしても、

町の人たちのくつろぎの場を提供するといった

別の側面を持ち合わせていて、

そのお店の持つ場の魅力というものは、

そこにしかない=ユニークなものだ。

一方で、スターバックスは、

もちろんくつろぎの場を提供するということもあるにせよ、

結果的にはサービスを「売る」「買う」という場所でしかなく、

そのお店の持つ場の雰囲気というものは、

全国どこでも同じサービスが受けられるという均一化が支配する。


あるいはビールなど、日本のどこで飲んでも

同じ商品であれば同じ味がするはずだが、

ファミレスやファストフード店で飲むよりも、

老舗の角打ちやベースボールスタジアムで飲む方が

うんと美味しいに決まっている。

また、きっと、そこが会社の会議室や便所だったら

好きなビールも飲めたもんじゃないだろう。

このように、単に商品を売る・買う、使いこなすといった、

消費や効率の範疇に留まらないものを

人は敏感に感じ取って生きているのであって、

そういう部分こそ、人間の求める豊かさそのものだと思うし、

それを追求することこそが、

本当の意味での”デザイン”なのではないだろうか。

今のデザインのほとんどは、

商品を売るためのツールに成り下がっているものがあまりに多い。

現代社会には”消費”という病魔はどこにでも棲みついているし、

どの分野・世界でも巣食っている。

売れること、シェアを占めること、

流行のメインストリームを席巻することが正義だと

本当に信じられている現代社会で、

工芸”を取り戻すには、

やはりモノづくりの原点を見直すこと、

豊かさの本質を探る必要があると改めて感じました。

そもそも日本人はそういうワビとかサビと称されるものへの

気遣いとか感性に長けているはずだと信じたいところです。


↓「トーマス・ルフ」展

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つづいて同時にやっていた「トーマス・ルフ」展。

アンドレアス・グルスキーなどと並ぶ、

ベッヒャー派を代表するドイツ写真家です。

自ら撮影した写真の作品に留まらず、

例えばネット上にあふれる大量の画像データや、

NASAの衛星画像といった既存の画像を加工した作品などを発表しつつ、

溢れかえる画像に囲まれて生きる現代社会においての

写真・メディアの在り方についての視点を与えています。

非常に冷ややかなまなざしから捉えられた写真たちの

無言の佇まいのすごみというか、

そういうところがベッヒャー派ならではでした。

初期の「ハウス」というシリーズの写真が、

自分の感性にぴったりで見入ってしまいました。


↓カラー・アクティヴィティ・ハウス by オラファー・エリアソン

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美術館を満喫したら、

すぐ近くにある気になっている本屋さんに向かいます。

「Books under Hotchkiss」という流通に囚われない新しい本屋さん。

2Fがギャラリーのようになっていて、

そこにものづくり表現者さんの作品を展示して、

そのテーマや内容に関連する本を期間中に1Fで販売をするという形式。

3か月ごとに入れ替えがって、

その度に商品も全部入れ替えるということで、それもなかなか面白い。

この間のスタンダードブックストアさんでの本屋トークや、

さきほどの工芸とデザインの話にもつながりますが、

単に本を物販するということではなく、

本というものを糸口にして、

”知”をやり取りする場をデザインするということの実践とでもいう感じです。

この時は、「Books & Dogs展」ということで、

たくさんの作家さんやデザイナーさんが

犬にまつわる本をチョイスしたものが並んでおりました。


↓BUH - Books under Hotchkiss

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↓Books & Dogs展

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↓不思議な本屋です

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さて、すっかり時間が過ぎて14時近く。

おなかペコペコですので、遅めのお昼ご飯にすることにします。

ということで片町までトコトコ歩いていたのですが、

途中で次女がどこかで片方の靴を脱いで無くなっていて、

慌てて歩いてきた道を戻って、道端に転がっているのを無事救出したり。

マカオで長女がサンダルをなくして、

大慌てしたのを思い出しました。

姉妹そろって靴なくすな〜。


で、お昼ご飯には名物の金沢おでんを、ということで、

「赤玉本店」になってきました。

ここの牛スジ煮込みが本当に上品な味わいでおいしくて、

注ぎ金沢に来たら絶対食べたい!と思っておったのです。

昼間からお酒をいただきつつ堪能させていただきました。

んまい!


↓赤玉本店

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↓お目当ての牛スジ煮込みを能登の宗玄で

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金沢おでん

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ゆっくり遅めの昼食を済ませたら、

帰りの電車まであまり十分な時間が無くなってきましたが

せっかくなので、ひがし茶屋街までワープして散策。

町家を改装したカフェで一服したり、お土産を物色したり。


↓ひがし茶屋街

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↓和カフェで休憩

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↓ちょっとブレイク

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金沢駅まで戻ってきて、電車の時間まで駅ビルでおみやげタイム。

ちょっと戦列を離れて地酒ブースへ。

自販機で入れたお酒呑みつつ、見て回り、1本お買い上げ。

あとは晩御飯にお弁当とか、色々。


↓ラストの酒

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帰りのサンダーバードはモロ混みで大変でしたが、

20時ごろに無事に帰宅しました。

なんだかんだ子連れ旅は大変ですが、

カニも酒もアートも満喫できた北陸の旅でした。

2017-02-10

酒場探訪記 「ジャックとマチルダ」

最近お気にの「ジャックとマチルダ」さんにて。

すっかり顔を覚えられてしまいました。

ここはお酒のラインナップがよく、一杯380or480円で気軽に呑めるし

飯はうまいし、お店の人との距離感もつかず離れずで居心地がよい。


この日は結構繁盛してて、焼き場の目の前にスタンディング。

オーダーが通るたびに煙がすごいので

マスターがすみません!と言ってきますが、

もう俺ごと炙ってくれ。


久しぶりにビール飲みたいなあと赤星スタート。

アテはポテサラ

いぶりがっこの刻んだのが入っていていいアクセント。

せせりの炙りも旨し。


↓赤星とポテサラ

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↓せせり炙り

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隣の常連さんがお店の人と地酒談義されてて、

「こないだ店に出てたアレはものすごくレアで、また入れてえな」

「あれは関西ではほんと手に入らなくて、あの1本だけなんです…」

という話で、どの銘柄のことかなと思ったら、

自宅で寝かしてる「山川光男」のことで、

マスターが「なんであるんすかっ!」とびっくりされてました。

まあ、探せば見つかります。

そっからお酒談義に混ぜてもらってワイワイと。


最近はビール飲んだらすぐお腹膨れてしまうのだけど、

せっかくなので日本酒も1杯だけ。

大好きな岐阜は美濃太田の御代櫻の津島屋の外伝、

”父なるライン”がありましたので迷わずそれ。

ワイン酵母仕込みの酸味のあるお酒で、

酸っぱいの大好きなワタクシの大のお気に入り。

グビグビ、プハァ〜やっぱり旨いねえ。


↓津島屋 父なるライン

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2016-11-18

スノーホワイト 白山 日帰り

そうだ、白山に行こう!

そう思い立ったのはわずか1週間前のこと。

ずっと行きたい行きたいと思いながらも行けずじまいだった白山。

一番の要因は足がないことだった。

マイカーがあれば比較的近くて行きやすいのだが、

公共交通機関を利用する身としては、金沢で前泊して、

朝一のバスに乗り、麓で再度バスを乗り換えてというとなかなか面倒だし、

無駄に一泊分お金もかかる。

そこで、福井からレンタカーを借りてのアプローチを考えたのだが、

夏場はマイカー規制で、冬場は冬季閉鎖で、

登山口から6km手前の市ノ瀬園地までしか行けない。

今の時期登山バスは運行を終了しているので、

その片道6km・往復12km歩かないといけない。

困って色々調べてみると、

通行規制のかかっているシーズンの

わずかな合間(10月下旬〜11月中旬)だけ

別当出合までの道の封鎖が解除されている。

もうここしかない!と思い立って大急ぎで段取り。


他の人の参考記録を覗くと、

すでに前の週に白山は今季の初冠雪を記録し、

山上は雪山シーズンに入っている。

登りやすい山とはいえ、標高は2702mあるので、

相当な冷え込みが予想できる。

今回は麓で車なので、荷物をデポして行けるので、

多めの防寒衣類や寝袋をパッキング。


20:54発の特急サンダーバードに乗り、

福井駅には22:47着。

降りるとすでに肌寒い。しかもパラパラと小雨。

ここからR8沿いにあるレンタカー屋さんまでは4kmの歩きなのに…

というのも、福井にもたくさんレンタカー屋はあるのだが

24h営業でこの時間帯に空いているのはそこしかないのだ。

福井の道はどこも幅広でがらんとしていて、

なんとなく心細さを感じながら40分ほど歩いてお店に到着。

なぜかレンタカーとカラオケ屋の兼用という込み入った複合施設。


↓レンタカーを借ります

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手続きを済ませて、いざヴィッツ発進!

2年ぶりの車の運転なので、最初の10分くらいは軽いパニック。

やはり習慣って大事。やらないと忘れます。

モウロクしたご老人が操作ミスで事故を起こすというのもうなずけます。

店を出て角を曲がったらすぐに停車して、

基本操作やボタンを目指し声出しで確認しました(笑)

R8バイパスで北上を開始し、福井北JCTをかすめて、

わずかに中部縦貫道をつかって勝山方面へ。

交通量が少ないので煽られることもなく、運転に集中できます。

あとはナビに従ってR416をトレースし、R157に入ります。

ここからは山道ですが、走りやすい道で、大分運転も慣れてきました。

白峰で大きくUを切る形で、県道33号に入る。

市ノ瀬まではおおむね車線もあって整備されているので問題ないが、

ただ、小雨で真っ暗だし、手取川に沿ってクネクネとしているので

ちょっとドキドキ。


↓2時間ドライブで市ノ瀬着

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市ノ瀬からは、一年の大半は一般車の通行が規制されて、

登山バスがピストンする区間。

行き違いができない狭い道で、しかもクネクネアップダウンもあり、

一層慎重に15分ほど。

別当出合の手前の駐車場に到着。

駐車場は河原まで下ったところにあるので、

わずかな登りを嫌って、上部の県道の路肩に止めている人が多かったが

自分はちゃんと駐車場にイン。

ライトを消すと真っ暗です。

いそいそと翌日の準備をしたり、寝袋を出したりして、朝まで仮眠。

もっと冷えるかと思いましたが、着込んだおかげでよく眠れました。

5時を過ぎるとすでに出発をしようとしている人や、

麓から車で到着した人などで騒がしくなる。

自分も山に持っていくものと、車においていくものを仕分けしたり、

山上の寒さでバーナーが不能になった場合を考えて、

ここで先に湯を沸かしてサーモスに準備しておいたり。

そうこうしているうちに周囲も明るくなってきたので、

6:15にいよいよ山行スタート!


↓別当出合の駐車場を出発

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まずは駐車場から県道33号まで少し登ります。

そこから落石ゲートをまたいで、さらに10分ほど歩いていくと、

別当出合のターミナルに出ます。

ここで登山届を提出し、トイレを済ませて、いざ!

一番イージーなのは砂防新道コースで、

そちらへ行くにはまず吊橋を渡る必要があるのだが

冬場は踏板が外されて渡れなくなっています。

(無理に鉄骨を伝ってわたる輩がいるらしいが…)

ということで、この日は、

もう1つの定番コースである観光新道をピストンすることになります。

空を見上げると、前日の小雨はやんでいるものの、雲が舞っている感じ。

雲はおそらく早朝に出るだけで晴れそうだけど、山上は相当風が強そうです。

ここから見る別山のフォルムが鋭くて、本峰よりも気になる存在。


↓別当出合登山口。奥の橋は踏板が撤去され通行不可

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↓別山が気になる

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さて、吊橋の脇から山道に突入します。

前日の雨で地面はドロドロで、ツルツルに濡れた岩や木やすべりやすい。

最初は大きくジグザグを切っているので、

少し登っては平行移動、少し登っては平行移動だったが、

工事作業用の道をまたぐあたりから、一気に斜度が増し、

長々と急な石畳に息が上がる。

登っていくにつれて空も明るくなり、

別山の枯れたすそ野が少しずつ見渡せるようになってきました。

直登に近いようなしんどい区間もありながら、

1時間ほどで別当坂分岐に到着。


↓のっけから激坂が続きます

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↓少しずつ明るくなってきました

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↓市ノ瀬からの白山禅定道と合流

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ここからは稜線歩き。

まずは目の前にそびえる出っ張りへの急な登り。

ヒーヒーいいながらクリアすると

そこからは細かいアップダウンが続きます。

稜線の北側の斜面は陰になるので、

雪がちらちらとのこっています。

この辺りからペースを上げて

先発隊の人たちを次々とパスしていきます。

仙人窟をくぐると、

白山の本丸の山塊がどどーんと待ち構えていて圧倒されます。


↓ここからは稜線歩き

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↓朝日が顔を出す

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↓雪が混じりだします

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↓仙人窟をくぐる

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↓あの上が弥陀ケ原

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この観光新道は、左右ともに眺望がよく、

左手には白山釈迦岳が構え、右手には別山と、

崩落をし続ける谷の様子がよく見えます。

いくつかの出っ張りをこなし、一度大きく下るのですが

そこが結構雪がたまっている上に、凍り付いてツルツル滑る。

気をつけなきゃと思った瞬間にズルッ!

大きく尻もちをついてしまいました。

小さな鞍部から再び上りが発生、藪の間を抜けていくと、

ほどなくして殿ヶ池避難小屋に到着しました。

時刻は8:23。

ここでは前泊している人たちが結構いるみたいで

小屋の中はびっしり寝袋が敷かれている状態。

これから山頂に向かおうとしている人たちが

慌ただしく出入りしていました。

朝が冷え込んだので相当厚着をしていたのですが、

そのせいで全身ムレムレだったので、

何枚か脱ぎ気をしてこの後に備えたり、

トイレ休憩などで10分ほど滞在。


↓向かいに見える白山釈迦岳

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↓振り返って

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↓最高のお天気

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↓殿ヶ池避難小屋

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8:30をまわり、リスタート。

ここからは雪や凍結が目立つようになってきます。

アイゼンまではふようだが、ストック装備で行きます。

山も上部になってくるにつ入れて少しずつ風も強くなってきて

体感が寒い。

岩のむき出しの斜面となり、雪も目に見えて増えてきました。

展望の効いた斜面をえっちらと登り、

蛇塚と呼ばれる小さな窪地を抜けていくと、

別山方面の見事な眺望が迎えてくれました。


↓雪交じりの山

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↓馬のたて髪

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↓滑る!

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↓いよいよ本格的に雪が増えてきた

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↓蛇塚

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↓なかなかの絶景

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早朝はどんよりと雲がちだった空も、

朝日の勢いに後押しされて、素晴らしい青空を見せてくれています。

斜面を横切るようにして取り付けられた道は雪ですべりやすく、

うっかり足を滑らせて右側の斜面を転がり落ちれば大変なので

慎重に歩きます。

そうして砂防新道との合流地点である黒ボコ岩に到着したのが9:22。


↓黒ボコ岩

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黒ボコ岩の分岐を左に折れて少し歩いていくと…

すばらしい雪原が目の前に広がっていました。

ここは弥陀ケ原と呼ばれる一帯で、

麓からは見えなかった白山連峰の最高峰の御前峰がどーん。

なんだこの美しさは!

弥陀ケ原からはこれまでとは違って完全に雪山の世界へと突入します。

北からの風は一層強くなり、

吹き上げられた雪がサラサラと宙を舞っては輝きます。

それらが木々にあたり固まって樹氷があちらこちらにできていました。

他の登山客も一様にその美しさに見とれて、カメラを構えています。

中にはスキー板を抱えた人もいて、

おそらく初滑りを楽しみに来ているのでしょうね。

スキーをしないのでよくわかりませんが、

このくらいの積雪があれば滑れるんですね。


↓弥陀ケ原

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↓樹氷

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↓山スキーの人も続々

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弥陀ケ原は木道が整備されていてその上をコツコツと歩きます。

雪が積もっているところはいいのだが、

丸太がむき出しの所は凍結をしていてとにかく滑るので

雪のあるところを選んでずんずん進みます。

そのうち、雪原を抜け、再び急なのぼりへと進みます。

ここは雪が吹き溜っていて、ズボズボと膝くらいまで埋まり、

まだ十分雪が締まっていないので、一歩足を踏み出した途端に、

ずるっと滑り落ちる感じで、なかなか上がっていきません。

登山靴には雪がこびりつき足先が冷たい!

ストックをうまく支えに使って登るのだが、

ストックを抜く度に、折り畳み部分がポキンポキンと折れてしまって難儀。

もうストックもボロボロなので買い替え時かなあ…

15分ほど急登と格闘して、

ようやく前方に室堂ビジターセンターが見えてきました。

小屋は当然閉まっていて売店などもやっていません。

軒先で少し休憩です。


↓室堂到着

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室堂から見上げる御前峰は

まさに白山という名にふさわしいシルエットで、

雲一つない青空とのコントラストが本当に美しく、

ビシビシと冷たい風でこわばった顔も思わず笑みになってしまう。

ひゃほい!


↓青空とのコントラストが眩しいぜ

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しばしの休憩と補給を済ませたらいざ最高点である御前峰へ出発。

荷物をデポすることもできるのだが、一緒に背負っていきます。

山頂までは残り距離にして750m、標高差250mです。

まだそれほど登頂している先発隊はおらず、

わずかについたトレースを頼りに登ります。

室堂から上は、弥陀ケ原で見た雪原よりもさらに雪の量が増し、

しかも強烈な北風が、狂ったように左ほほに殴り掛かる始末で

体感がめちゃくちゃ寒い!!

序盤のブッシュを抜ける区間はまだよかったのだが、

そこから全くむき出しの山肌に突入すると、

もはや登山道らしきものはなくなって、真っ白な雪原。

遮るものが一切なく、暴れる風をモロに受けて前進もままならない。

それどころか、時折ブワ〜ッとトップが吹いて、

足元から吹き飛ばされそうなくらいの圧を受けて、

思わずストックにしがみついて構えなくてはならない。

足元はずぶずぶと柔らかい雪の中に沈んでいき、

右を引っこ抜いては左、

左を引っこ抜いては右を繰り返していく。


↓いざ山頂アタック

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↓白の世界

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↓青石

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↓高天ヶ原

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もう山頂が目の前になってくると、

一転して雪の付き方が穏やかになり、

石畳がむき出しになっているところも出てくる。

つまり、それだけ上部は風が強いということ。

40分ほど雪と風と格闘した末に、

標高2702m、白山連峰の最高点である御前峰に登頂です。

いや〜ラスト厳しかった@@@


↓御前峰登頂♪エビの尻尾がすごい!

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記念撮影の前にまずはお堂にお参り。

お堂はびっしり凍てついておりますが、

囲われているので風から身を守ってくれます。

そして最高点の碑の前で記念撮影。

同じころに到着された方と写真を取り合いっこしながらワイワイ。


↓凍てつく奥宮

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本当は余裕があればお鉢めぐりをしながら、

剣ヶ峰(2,677m)と大汝峰(2,684m)の方へも行ってみたかったが、

ご覧の通りの雪世界。

日帰りなので無理はご法度ということで、今回はパスしました。


↓剣ヶ峰と大汝峰

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何といっても最高に天気がよく、はるか遠く東には

天と地を隔てるように連なる北アルプスがズラリ!

劔も立山も、槍も穂高も、乗鞍もオールスターが勢ぞろい!

スバラシイ!

面白いのはある一定の高さ以上は雪に覆われた冬の世界なのだが

それより下はまだこれから紅葉を迎えようとしていて、

はっきりと世界が異なるのがわかります。


↓北アルプスが丸見え!

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↓室堂を見下ろす

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途中から腕時計が完全に馬鹿になり、

頼りにしていたiPHONEも室堂から寒さのせいで起動しなくなり、

時間がわからないので、近くにいた人に時間を聞くと

そろそろ11時になろうとしていました。

山頂は相当寒いのだが、360度どこ見てもウキウキしてしまって

気づけば20分も予定をオーバー。

名残惜しいですがそろそろ下山を開始します。

下山は楽チンで、なかば強引に突っ込んでいって滑っても、

雪だまりのクッションで止まるので、

ザックザックとテンポよく下ります。

途中から続々と、後続の人たちが苦しそうに登ってくるので、

エールを送りつつ、室堂まであっという間でした。


↓冬!

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↓びっしりエビの尻尾。というよりタラバのカニ身っぽい

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室堂で、少しばかりまとまった補給をすることにします。

陽の当たっているベンチに腰掛けて、カレーヌードルの支度。

朝に仕込んでいたサーモスのお湯はまだ熱々だったので、

雪上で余計な装備を広げることなく、あっという間に出来上がり。

しかし、ここで肝心の割りばしが入ってないことに気づく。

ガッデム!!どうしやう?

色々荷物を探っていると、未使用の歯ブラシが一本出てきました。

同じ口に入れるスティックだしこれでいいやと、代用。

山で食べるちょっと固めに仕上がったカレーヌードルは

やっぱウマイやぁ〜♪


↓カップヌードルカレーでお昼

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お腹も満たされ、暖も取れたので体力が一気に回復。

元気いっぱいで下山を開始します。

室堂から弥陀ケ原までも先ほどと同じようにズズズ〜っと滑り降ります。

お昼頃となり、お天道様もだいぶん強くなったせいで、

表面の雪が解けてきたようで、

朝のような真っ白さが少し損なわれて、

足元がサクッサクという感触からベチョベチョになってきました。

名残惜しく弥陀ケ原から振り返って白山にさようなら。


↓弥陀ケ原から振り返って

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↓今度は別山アタックだな

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弥陀ケ原をすぎ、黒ボコ岩を過ぎると、季節は一気に逆戻り。

朝登ってきたときにはびっしりとあった雪は

この辺では随分解けて、登山道がむき出しきなっています。

この辺りからどんどん下からの登山客とすれ違います。

中には欧米人のグループもいましたが、

なぜみな半袖半ズボン?

彼らは富士山でも北アルプスでも、

びっくりするくらい薄着の人が多いけど、

さすがに室堂から上はその恰好では寒すぎると思うんだけど。

逆に自分は、真冬の山上対策であれこれびっしり着込んでいて

ここまで下ってくるととにかくムレムレで暑い!

殿ヶ池避難小屋に到着すると中には誰もいなかったので、

アンダーのタイツやら何やら全部とっぱらって着替え。

寒いのもつらいけど、暑いのも体力を奪う。


↓観光新道を下ります

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↓砂防新道方面

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着替えを済ませ、小屋を出発。

あとはトントントンと観光新道の稜線のアップダウンをこなし、

最後は急坂を下って

13:50に別当出合の登山口へ無事に下山しました。


↓無事に下山

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そこから駐車場までさらに歩いて、30分ほど準備と一服。

何気に標高差1500m、13kmを歩いてきたのでお疲れモードですが

今回はここから運転。

夜間はほとんど交通量もなかったので、

ゆっくり走っていてもよかったけど、

昼間は交通量があるのであちこちに気を配って走らないと。

まずは市ノ瀬までの狭小区間。

改めて昼間に見ると久しぶりのドライブにしてはハードな道でした。

白峰までの山肌は色とりどりの紅葉が見事。


↓帰ります

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↓道中の山は紅葉

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R157は意外と交通量があり、しかも谷トンネルまでは登りで

ヴィッツの馬力ではベタ踏みでもペースが上がらない。

幸い後ろからはほとんど車が来なくてよかった。

勝山に入って、ルートを思案。

この時間帯からだと福井市内のR8バイパスはきっとモロ混み。

なので、できるだけR8を使いたくないので、

越前大野から回ってR158で福井を目指します。

どこか寄って行ってもよかったのだけど、

その余裕もなくとにかく安全運転に集中するのが精いっぱいで

福井に直行してしまいました。

やはりブランクは大きいなあ。

無事に車を返却できたのが16:30。

そこから歩いて福井駅に到着が17:00。

まずは帰りの特急の手配をしてから、腹ごしらえで駅そば。

福井駅の駅そばはツユが旨くてお気に入りです。

あとは30分ほど時間があったので、

駅ビルのみやげ物屋さんであれこれ物色。

17:44の特急サンダーバードに乗り込み、帰阪が19:34でした。


↓駅そば

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↓またね♪

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ということで、高所登山はおそらく今回がオーラス。

あとは年末まで六甲を中心にパトロールかな。

今年は一般的に天候不順で、毎週末天気が読み辛かったですが

奇跡的にほとんど雨に降られることもなく、

幸せなシーズンでございました。

2016-09-18

『君の名は』 by 新海誠

日曜日。

次の仕事に関連があるので

今話題の『君の名は』を観に。

おっさん一人で行くのもこっ恥ずかしいので長女と一緒に。

webで梅田の劇場を予約しようとしたら

すでにどの回もいっぱいだったので、大日イオンまで。

さすがの人気もあって

なかなかエンターテインメント作品としては楽しめる作品でした。

小学生の娘にもわかりやすい話の内容で、

映像も美しく。

こういう作品が今のメジャーになってきたのだなというのが実感。


ただそれが今後の日本のクリエイティブの発展にとって

いいのか悪いのか。

うまい例えではないけれど、

『津軽海峡冬景色』のような奥深くて抒情的な歌に対する

『恋するフォーチュンクッキー』のような感じというか、

地元の市場で売ってる新鮮で不格好な野菜に対して、

徹底管理されたトップバリュー製品というか、

こういう味付けが濃くて中毒性のある

インスタントなものばかり味わってたら

きっとヤヴァイだろうなあという怖さがあった。

辛口映画評論家としてはちょっと言っておきたい。


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本作の一番の魅力は何といっても背景の精密な描写だろう。

監督の出身地である長野県の諏訪や飛騨地方、

そして東京の風景はまるで本物そっくり。

実際にそのシーンの元になった実物の場所を訪ねる

聖地巡礼も盛んにおこなわれているという。

確かに背景の描写はすごい。

でもそのすごさが、作品の本質である物語の薄っぺらさを

補うというより包み隠す巧妙なすり替えになっていて、

どう、この背景の描き方すごいでしょと

半ばクドイほどの強引さを終始感じた。

背景の描写の精密さというのは、本作に限らず、

日本アニメのお家芸ではある。

でも、例えば宮崎アニメの背景の精巧な描写は、

それ自体が作品の主役なのではなく、

物語をより身近にリアルに感じてもらい、

その世界観へスムーズに導入するための

手段の1つに過ぎなかったはずだ。

または、重厚な物語に耐えられるだけの

ビジュアルのクオリティを追求した結果だろう。

確固たる物語。伝えたいメッセージがまずあって、

その骨組みを確かに肉付けするものでなければ

それは単に風景を模写しただけのことに過ぎない。

模写を自慢するだけだったら、それは映画とはいいがたい。

なぜなら、映画とは総合芸術だからだ。

例えば、英語はコミュニケーションの一手段で

習得した英語で何をするのかが大事なはずなのに、

それを学ぶということだけが目的化し、

そのちっぽけなステータスに満足してしまうような小さな人間がいるが、

それと同じような目的と手段の取り違えが大いにある。

背景の描写の精密さというのは作り手も見る側も、

その審査基準が明確でわかりやすいポイントだが、

情熱と労力を注ぐ方向性が割合がどうも違うような気がする。

背景の精密な描写は金と時間をかければ、誰でも実現可能なこと。

それを実際やるかやらないかというのは

確かに大きな差であり、評価されるポイントではある。

でもクリエイターにとって肝要なのは、

現実にあるものを模写することではなく

想像力の豊かさにあふれた物語性や、

誰も考えもつかなかったような世界観を

表現することでなくてはならないと信じたい。


続いて気になったのは演出過多、

特に音楽が雄弁しすぎて、

はっきり言って余計な場面が多かった。

画と音の関係性というのは映画にとっては

おそらくもっとも重要な要素で、

音楽の壮大さで無理やりクライマックスを盛り上げるような

程度の低い作品は、国内外問わず山ほどあるが、

映像にそれらしい音楽を乗っけてさえすれば

もっともらしい作品になるし、

逆にその使い方を誤れば、全く拍子抜けすることもある。

まさに演出のキモ。

本作ではもっと登場人物の感情に寄り添いたい、

感情移入したい感じる場面でも、

いちいち過保護に曲を乗せてきて、

それがインスト曲ではなく、

歌詞付きなので歌が画に勝ってしまって、

感情の余白というか見る側が入り込む隙間が

一切なくなってしまうことがあった。

あれが久石譲さんならもっとうまい塩梅でやるんだろうし、

物語に自信があれば、あえてキモのシーンでは

一切の音をつけずに画に集中させることだってできたはずだ。

何でもかんでも味付けを濃くすればいいというものではないし、

ここでもやはり物語の薄っぺらさをひた隠しているかのような

自信のなさを感じました。

バラエティ番組で、ネタはたいして面白くないのに、

テロップを多めに入れて笑いを盛られているようなあの感覚に近い。

自信がない人ほど音楽に頼る、これ、映画あるあるですね。


あと、意外な問題はそれを見る側のクオリティの低さ、

とくに感動に対する敷居が恐ろしく低い。

これは本を読まないという世代的指向の問題、

スマホでのコミュニケーションが当たり前の世の中では

レスポンスのクイックネスがことさら重要視されるようになったり、

LINEスタンプやインスタ投稿のように

中身ではなくヴィジュアル至上主義になっているという点がやはり大きい。

要は物語の精密さではなく見た目重視、

文脈をじっくり読み解くのではなく、

手っ取り早く面白いということが求められる世の中になったということだ。

見る側の指向のレベルが高くなければ

クリエイターは絶対に成長しないし、

逆に成長しないクリエイターの作品がスタンダード化すれば、

見る側のレベルも高くならない。

今の世の中、双方が面倒くさいプロセスを取っ払って、

横着をしている気がします。

その面倒くさいプロセスこそ面白い醍醐味のはずなのですが…


これは別にアニメに限った話ではなく、

実写の邦画やTV番組、漫画、音楽、そして現代アートの世界ですら…

あらゆるクリエイティブであるべき世界で起こっている現象。

実際、映画が始まる前の予告でも、

同じようなテーマ、同じようなキャストが、

2Dか3Dか表現方法が少し違うだけでやっていることは

全く同じことをしている作品のPRばかりで愕然とする。

(胸キュン少女漫画原作を若手実力派俳優と呼ばれる人たちが演じるのばっか)

それらには、何かを表現したいとか、何かを生み出したいとか、

やりたいことをとことんやるという

自分の内面から湧き上がってくるパッションではなく、

何が売れるか、何がウケるかという

他人からの評価を出発点とする打算しか感じ取れない。

そこにイマジネーションはあるのか。

そこにクリエイティビティはあるのか。

面白ければ、話題性や興行がよければ名作というわけでは決してない。

残念ながら、同じアプローチを続けるようなら新海さんや細田守さんは、

宮崎駿や押井守にはなれそうにない。