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記憶の残滓 by arkibito

2018-04-23

夢叶う!憧れのキアプッチに会う!

土曜日。

かつてTVの前で「Allez!Allez!」と

必死で応援していた自転車少年の大きな夢が一つ叶いました。

な、な、なんと、山岳王の名をほしいままにしたイタリアのレジェンド、

クラウディオ・キアプッチさんと一緒に淡路島でライディング!!!

まさかまさかアンビリーバブル@@@

興奮冷めやらぬ!!


キアプッチさんは、80年代後半〜90年代前半にグランツールで大活躍した名選手で、

同時代のライバルとしては太陽王と称されたミゲール・インデュライン

無冠のアルカンシェル、ジャンニ・ブーニョ、

史上2人しかいないトリプル・クラウンを達成したステファンロッシュ、

元祖アメリカンのグレッグ・レモンといった

錚々たるスターたちと激闘を繰り広げてきました。

グランツール総合優勝は残念ながら達成できませんでしたが、

ツール山岳賞2回、ツール総合2位2回、ジロ山岳賞3回、

ミラノ〜サンレモ1991優勝など輝かしい成績を残し、

山岳ステージで何度も繰り出される猛烈なアタックや、

大胆不敵なロングディスタンスの逃げなど、実に印象的で魅力的なスタイルで

ディアブロ(悪魔)」というニックネームで人気を博しました。

日本最高峰のロードレースであるジャパンカップでも3連覇を果たしていることもあって

日本でも大変な人気で、自分もその頃からの大ファンでした。


↓Oh!クラウディオ

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カレラCEOダビデ・ヴォイファバさんも、

元々は70年代に活躍したロードレーサーで、

現役時代「カニバル(人食い)」と恐れられ、

「カンピオニッシモ(チャンピオンの中のチャンピオン)」である

エディ・メルクスとチームメイト(モルテニ)として活躍し、

マリアローザを10日間着用するなど、現役30勝を誇る名ライダーでした。

引退後は、プロチームを立ち上げ、

自チームで使用するバイクを作るため、

ルチアーノ・バラキとともにCARRERAを設立

その後、チーム監督として、キアプッチやマルコ・パンターニ

イヴァン・バッソパオロ・ベッティーニなどの名選手を輩出、

500勝以上の勝利を獲得してきた名指導者でもあります。


↓カレラの創設者でもあり現CEOダビデ・ボイファバさん

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CARRERAバイクのオーナー限定のイベントのスペシャルゲストとして

キアプッチさんと、カレラの創設者&CEOダビデ・ヴォイファバさんが来日

総勢40人ほど、全てのバイクがカレラというレア集団で

一緒に淡路島の北部をライドし、途中、

下りのスペシャリストとしても名を馳せたキアプッチさんから、

2人一組になってダウンヒル講座。

そのあと、CircoloさんにてBBQパーティー♪

本当にカレラ冥利に尽きる大満足の1日でした。


↓じきじきにダウンヒル講座

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↓山の男は海も似合う

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キアプッチさんとは下手な英語ながら色々想いを伝えて、

またせっかく来ていただいたので、

何かお礼をと、手ぬぐいを手製してプレゼントしたこともあり、

とってもフレンドリーにずっと話していただきました。

もしタイムマシーンがあって、こどもの頃の自分に伝えれたら、

卒倒するだろうなあ。

いやあ、ほんと、つくづくフィブラ君が相棒でよかったなと

嬉しさを噛みしめておりまする@@

詳細はまた後日。


↓おみやに手ぬぐいをプレゼント(写真のは自分用の試作ver)

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走行距離:55.2km

TOTAL:244.7km

2018-04-13

VIVA!霊仙山!

ちょっと時間が経ちましたが、先日のお山の話をば。


このところの体調不良もしかりだが、

年なのか休日になかなか早起きできなくなってきていて、

お山やら自転車やらの出動が間に合わなくなって、

結局ダラダラとした休日を過ごしてしまうというのが続いていて、

そんな体たらくを棚に上げて、

やっぱり山へ行きたい、ロングライドに行きたいと

気持ちだけが先走っているのだが、

この週末は何が何でもお山に行くんだと気合十分で就寝し、

睡魔の誘惑を振り切って早朝の電車に飛び乗りお山へ。


今回のターゲットは、鈴鹿山脈の北限に位置し、

百名山伊吹山と正面向かいにある霊仙山。

以前、真冬に雪山登山で訪れたのだが、

その時は6合目でホワイトアウトに遭い、

無念の途中下山で山頂を踏めずに、ずっと宿題になっていた。

本当ならもう少し早め、

一面雪の白い世界のうちに訪れる予定だったのだが

絶不調のコンディションでずれ込んでしまった。

これ以上遅い時期になるとヒル地獄として有名なお山なので

またしばらく登りそびれる恐れもあり、満を持してのタイミング。


6時台の快速に乗り、どんぶらこっこ米原まで。

そこで乗り換えて、1駅先の醒ヶ井駅に到着したのが8:35。

以前はここから醒ヶ井の養鱒場まで路線バスがあったのだが、

すでになくなってしまっているので、

仕方なくここから4kmほど歩きます。


醒ヶ井

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なかなかお天気が素晴らしいのだけど、

すぐに暑くなって上着を脱いでテクテク名水の集落を歩く。

40分ほどで養鱒場に到着。


↓養鱒場

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しかしここが登山口ではなく、

ここからさらに4kmも退屈な林道をひたすら歩く必要があります。

アプローチが遠いよ〜@@

単調な谷沿いの林道をとぼとぼと歩いていると、

何台かの車が通り過ぎていきます。

車だと登山口まではすぐだからいいよなあと愚痴りながら

黙々と長い長い舗装道路を詰め、

ようやく1時間30分ほどかけて榑ヶ畑登山口に到着。

この日は行楽日和というのもあって、

随分下の方まで路駐の車がズラリ。

小さな東屋で登山届を出して、ようやく山歩きスタート。


↓熊注意

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↓ひたすら林道を歩く

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↓榑ヶ畑登山口

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ゲートをくぐって、進んでいくと、

うっそうとした森の中に、

随分前に放棄された集落の残骸へと分け入っていきます。

雪解けの水が足元を腐らせてぐじゅぐじゅなので、

足の置き場を選びながら進んでいくと、

小さな山小屋かなやに到着。

越冬缶ジュースは残念ながら売り切れておりました。


↓山小屋かなや

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ここから湿っぽい谷底とさよならをして、

一気に急な登りを弓なりになぞり、

小さな尾根にぶつかるところで一気に直登で上まで。

汗拭き峠ではたくさんの人が一服を入れていましたが、

混雑を避けて、ここはスルーしていきます。

大所帯のパーティーに道を譲られながら回廊を伝っていきます。


↓汗拭き峠の急登

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↓登りきって回廊を行く

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小さな岩場を乗越てから先は

南側の斜面をなぞるようにして道は続く。

大洞谷源頭と呼ばれている、

下から合流するかのように沢がぶつかる地点で、

道は急に向きを変えてジグザグ折れてゆく。

そこそこペースを維持して登ってきたので、

オーバーヒートしてしまい、ここで上着を脱ぎます。暑い!


↓大洞谷源頭

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↓四合目

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少しばかり急登を詰めると、

木立が並ぶ広々とした緩斜面に出て、

トレースに従って進んでいく。

しばらくすると北川が開けた見晴台と呼ばれる五合目に到着。

山の管理の方々が重い資材を下ろして休憩されていてご挨拶。

しばし、遠くに見える琵琶湖長浜の町並みを眺めて、リスタート。


↓五合目・見晴台から琵琶湖長浜の町並み

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ここから前方に立ちはだかる

こんもりとした山の塊に取り付いて、

大きく右側にトラバースするように

山肌を横切りながら山上を目指すのだが、

ここからただでさえ急斜面になるのに、足元の具合がすこぶる悪い。

冬の間にしっかりと積もった雪がすべて溶け込んで、

地面がまるでチョコレートフォンデュのように

ひどいぬかるみになっている。

足がとられたり、ドロドロになるのはまだいいとして、

足を差し出した瞬間に、スリップし、

斜面なので滑り落ちるような感覚をどうにか踏ん張ってこらえる始末。

まるで一人ローション相撲のような様相

トレッキングポールを取り出して、それを支えに進むのだが、

それでも油断をしていると、

ズルッ、ツルンと転倒しかける。

思わぬトラップに大苦戦してペースは大幅にダウンしてしまいます。


↓泥地獄スタート

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ようやく急な斜面が落ち着いて、滑り落ちることはなくなったが

足元の状態は変わらずで、

登山靴にべったりまとわりついた泥が重みを増してゆく。

まるでスノーシューを履いて

ぺったんぺったんと前進するような足取りで、

どうにかこうにか中腹の6合目までやってきました。


↓六合目

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ここから先は大きない木々がなくなり、

低い芝と、点在する岩のフィールドをジグザグに詰めていきます。

足元の具合も、少しずつまともな土に変わっていき、

歩きやすくなってきました。

遠く北側に再び琵琶湖の姿が見え始めました。


↓急斜面を詰める

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↓徐々にカルスト地形

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この急斜面が意外とあって、

ジグザグジグザグと岩の間を抜けながら登っていくと、

途中見覚えのある岩と木の姿が。

全開、深い雪の頃にアタックした際に撤退を決めた場所です。

あの時は雪に乗じて、6合目からほぼ直登してあそこまで詰めたのですが、

そこから先、完全なホワイトアウト前後不覚に陥り、

無理をして先へ進んでしまったら、

もう絶対降り口を見つけられないと、後退しました。

このあと予想以上に広大な山上を目の当たりにして、

あの時の判断は間違っていなかったなあと改めて感じました。

雪の季節でなくても、悪天候でガスっていたら、

結構道迷いの危険が高いと思います。


↓前回は右手の木のところで撤退

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そこからもう少しだけ登ったところにお猿岩があり、

ここが七合目。いよいよ山上にやってきました。

前方を見ると、広大なフィールドが広がっていて、

低い芝の草原にぽつぽつと白い岩がむき出しに点在して

見事なカルスト地形を見せています。

予想以上のスケール感に足取りも軽くなります。

振り返れば、豊かな水をたたえる琵琶湖がぽっかりと浮かんでいて

まさしく絶景。

関西でこれほどまで気持ちのいいお山もなかなかないでしょう!


↓七合目・お猿岩

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↓山上は広大なフィールドが広がっていました!

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↓絶景かな〜

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長浜市街

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開放的な山上に出てからは悠々と歩きます。

いまだに残雪が名残惜しそうに横たわっているところでは、

雪をすくったり、足跡をつけたりしながら、進みます。

にょきにょきと映えるように点在する岩をかいくぐっていくと、

小さな池があり、そこが八合目。

そこから右に視線を振ると、

うっすらと白い雪を纏った大きな山の塊が見え、

そこが霊仙山のピークのようです。

トレースはそちらへは向かわず、

まず前方に連なる尾根の一番高いところ、

経塚山をめがけているのでそちらへと向かいます。


カルスト台地をさらに進む

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↓八合目・お池

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↓左手に経塚山、右が霊仙山

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残雪踏み踏み

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少しずつ上りをこなしながら

ゆっくりと大きくなっていく霊仙を仰ぎ見る。

まだあそこはかすかに冬が残っているようで、ワクワクする。

そうして振り返ってみれば、

ここまで歩いてきた山上の庭園がずらーっと広がっていて

これがまたたまらない。

これ、最高に晴れた真冬の日だったら、

一面の銀世界なんだろうなあ。

しかもすぐ向かい側には、伊吹山が堂々と鎮座しているし、

その脇から、白無垢の白山御嶽山

ひょっこりはんと顔を出している。

大阪からほぼ新快速一本で行ける範囲に

こんなアルプス感あふれるお山があるなんて!

いやあ、山を満喫してますよ。素晴らしい。


伊吹山越しの白山

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↓経塚山の中腹から山頂をのぞむ

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↓見事ですなあ

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↓ただっ広い!

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えっほえっほと登りを詰めて、

尾根のピークである経塚山に到着。

ここで少しだけ補給タイム。

何しろ朝はサンドイッチしか食べてなくて、

お腹がペコペコ。

もう山頂までは持たなそうなので、

ここでおにぎりを2つほどパクパク。

しばし休憩ののち、

目の前にどーんと構えている本丸へと出発します。


↓経塚山

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↓左が最高点、右が山頂

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この霊仙山はちょっと変わっていて、

双耳峰という扱いでもないのですが、

”山頂”と呼ばれるピークと、

”最高点”と呼ばれるピークの2つがあります。

どちらから行こうかと悩んで、

ひとまず左側にある最高点を目指します。

大きな雪渓を横目に、ほぼ直登するような形で斜面に取り付きます。

うっすらと雪のパウダーと、

そこからようやく顔を出した緑を踏みしめながら、

上り詰めて最高点に到着したのが11:55。

醒ヶ井の駅から出発して約4時間30分の行程でした。


残雪を横目に

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↓霊仙山最高点

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ここからの眺めもまた素晴らしく、

北側には伊吹山と右手に広がる大垣市街、

そして南東の奥には伊勢湾が山の間に横たわっている。

そこから南側には鈴鹿山脈が縦に連なっていて、

右手側に湖東の町並み。

いやあ、絶景です。


↓1098mの最高点にて。左手に伊勢湾が見える

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↓湖東方面

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↓遠く御嶽

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↓海老のしっぽの食べ残し

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しばらく景色を堪能したのち、

もう一方のピークへと向かいます。

一度鞍部まで下っていきますが、

案の定、足元が緩いので、スリップしないように慎重に下り、

そこから、まるで洋菓子のようなシルエットの”山頂”に向けて、

最後のひと登り。


↓続いてあちらのテッペンへ

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↓クグロフのような道を登りますヨ〜

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↓えっちらおっちら

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そうして、こちらの”山頂”も無事に到着。

さっきの”最高点”よりもこちら側の方が琵琶湖がよりはっきり見渡せます。

ちょっと時期的に遅きに帰した感があったのだけど、

こちらには低木にまだ樹氷めいたものが張り付いていて、

ちょっとしたオマケが嬉しかったり。

せっかくスケール抜群の絶景が広がっているのに、

あっさり下山ももったいないので、

さっきの補給で残していたカップ麺をいただきます。

インスタントでも、この絶景を前には十分なごちそう!


↓山頂とうちゃこ

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伊吹山方面

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琵琶湖方面

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↓冬の名残り

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↓プチ樹氷

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↓定番の昼飯

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20分ほど滞在をして、いよいよ下山をします。

雪渓で遊びつつ、経塚山まで戻ってきましたが、

また同じルートというのも味気なく、

あのドロドロの斜面を下るのは想像しがたいこともあり、

もう1つのルートである柏原コースへ向かうことにしました。


↓さて下山

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↓ズンドコ下ります

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↓雪の斜面

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経塚山の直下で道を折れて、雪渓を横断しつつ、

向こう側の山にポツンと立っている避難小屋へ向かいます。

中は本当に簡素な造りですが、

真冬や荒天時に雪や雨風を防ぐには貴重な避難所になります。


↓経塚山をおりたとこ

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↓霊仙山避難小屋

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小屋から少し進んでいくと、

その先が一気の激下り。

まだ足元がしっかりしているのでスリップの心配はないが、

慎重に下ります。

暗部に降り立つと道が分岐していますが、

谷山谷ルートは台風等で荒れ具合がひどいため

通行止めになっているので、そのまま向かいの起伏へと進みます。


↓四丁横崖の激下り

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↓八合目。谷山谷ルートは通行不可

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ここから、赤テープを頼りに、

ほとんど獣道寸前に頼りない道を進んでいきます。

夏ならばしっかりとトレースがあるんだろうけど、

まだ雪解け間もない時期で、

こちら側のルートを歩く人も少ないようで、

よくよく先を確認しながら進みます。

そのまま進んでいくと目の前を小さな沢が斜めに横切っていて、

ちょうどそこが日陰になっているせいで、

残雪がしっかりと溜まっている。

そこでルートを見失ってしまう。

雪だまりには登山者の踏み跡もついておらず、

沢の先を見渡しても赤テープらしきものは見当たらない。

そのまま横断していくのか、それとも右手に沢を登っていくのか、

あるいは左手に沢を下るのか???

ここは焦らずじっくりと見極めようと目を凝らすと、

左手前方に、うっすらとトレースのようなものが見える。

方角的にはちょっと違うような気もするのだが、

とりあえずそちらへと進んでいくと、

そこを進んでいくとちょっとした広場のようなところに出た。

トレースはうっすらながら先へ進んでいるのだが、

どう考えても谷山谷方面へと向かっているので、

一度ザックを下ろし、現在地を確認する。

幸い広場からは伊吹山も見えるし、

ふりかえればさっきの避難小屋も見えるので

地図と照らし合わせながら現在地を確定すると、

やはり柏原ルートから外れているようだった。

さっきのポイントまで戻ろうとすると、周辺の木立がざわつく。

もしや熊???と構えて、周囲を確認すると

何頭かの鹿が、一目散に逃げてゆくのが見える。

あのトレースは彼らの生活道だったようです。


↓ルートをロスとして、よくわからない鹿の広場に出た

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とりあえず、このまま進むわけにもいかないので引き返しますが、

山の形状から判断するに、そのまま戻るよりも

稜線へ直接向かった方が早かろうと、林の中をごそごそ進む。

足元をよく見ると、丸っこいチョコボールのような鹿のフンが辺り一面に。

しばらく登っていくとなだらかな部分に出て、

その前方に登山客の姿を発見!

ようやく正規のルートに戻れました。

やはりさっきの雪だまりの沢を登っていくのが正解のようでした。


↓迷いに迷ってようやくルート復帰

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復帰したポイントからは急な下りとなります。

ここら辺も雪が結構残っていて、

ルートが全く埋もれてしまっていますが、

はるか下に、小さな標識のようなものが見えているので、

どうにか行先がわかりました。

急な斜面の緩い箇所を選んで

尻セードでズシャーとやったのですが、

途中雪がボコッと陥没をしてはまってしまいました@@


↓七合目までの雪の急斜面を尻セードで

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エイホッと抜け出して、看板まで再び尻セードかけて降りる。

そこからは、東の養老方面へと続く山並みと、

そこに刻まれた林道のラインが見えてきました。

ちなみにあの林道は、

員弁方面へと出るための道で柏原方面へは行かないので

うかつにそちらへ行かないように注意が必要。


林道はあるが、三重へ行ってしまうので注意

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しばらく林道ランデブーするようにして登山道が続いていきます。

登山道林道サヨウナラをするポイントで、

正規のルートは反対の斜面へと続いていて、

それとは別に、もう一つ

そのまま稜線を上がっていく細いトレースを見つける。

恐らく電気関係の作業用のものだろうが、

ちょっと頭に入れておく。


正規ルートを進んでいくと、さらに分岐があり、

そこには標識が立っている。

そのまま斜面を下りるように進む河内道は通行止めになっていて、

斜面を下りずになぞっていく柏原道へ標識通り進む。


↓標識通り、柏原道へ行くが…

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しかし、この斜面に取り付けられた道が徐々に頼りなくなっていき、

本当にこれが正規ルートなの?と思うほど。

それでもさっきちゃんと標識もあった訳だし、進むしかない。

すると、広範囲にわたって雪がへばりついた斜面に差し掛かる。

その先のルートがどうなっているのか一切の目印が見当たらないうえに、

そのまま斜面を横切るにはあまりに危険な状況になってきた。

慎重に雪をかき分けて谷へ下るようにして横断するか、

あるいは、斜面を無理やり登り返して稜線へ出るべきか…

いずれにせよ、そのままのレベルで横切るのは、

雪がなくても険しすぎて難しい状況。

これ本当に正規ルートなの???

さっきの道迷いの件もあるし、とりあえず、

もう少し前進して、違う角度から周囲を見れば

ここから見えない位置に赤テープがあるかもしれないから

それで落ち着いて判断しようと、

目の前の雪だまりに足を踏み入れたのだが、

その瞬間、ごぼっと足元の雪が崩れて、2mほど落下。

ひや〜危ない!!

足を少しくじいてしまった以外には他にけがはなかったけど、

ちょっとヒヤリとしました。

どうにかさっきの場(そこまでは間違いなくルートとはっきりわかる地点)に戻り、

そこから雪の多い谷へ下るのをやめて、

稜線を目指して急な斜面をやみくもに上ります。

そういえば、さっき林道と別れる地点で、

作業道があったはずだから、

そこを一時的にたどれば正規ルートには戻れるだろうという判断。

道なき道をよじ登ってどうにか稜線に出ると、

一定間隔で作業用の赤い杭が打たれていて、

そこをなぞって稜線のピークに出る。

周囲を見渡すと、東に大垣の町並みが見え、北側には伊吹山

この日は晴れていて進行方向がよく確認できるから、

まだ迷っても安心して、とりあえずこっち方面と進めるのだが

本格的にこの山塊に入るのは初めてだったし、

これが天気が良くなかったら、相当迷っていた危険性もあるなあ。


↓仕方なく斜面を登りなおしてどこかのピー

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大垣の町並み

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ピークから、伊吹山の見える方角の斜面を下っていくと、

中腹で休憩をしている女性がいらして、

念のためこっちで合っていますと聞くと、正解ですとの答え。

彼女も、自分と同じポイントで正規ルートを断念して、

こちらに迂回してきたそうです。

そこからすぐ先にあるY字に枝分かれした松のある場所で

正規ルートに復帰しました。


↓特徴的な松

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そこから先は明瞭なトレースを伝って、六合目まで。

なんか八合目からの区間は、

迷いに迷いまくってとっても長く時間が感じられました。


↓六合目

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六合目から再び谷を下っていきますが、

ここでも依然としてまだらの雪面が残っていて、

トレースをかき消しています。

トレースなのか、雪解けの水が集まっている小さな沢なのか、

何本もの筋が谷から放射状に延びていて、

しばらくはでたらめに谷を下って行ったのだが、

知らぬ間にルートが左の尾根へと

離脱するのを危うく見逃してしまうところでした(汗)


↓まだらの残雪が道を惑わせる

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そこから、再び稜線を歩くのだが、

通せんぼするかのように胸まである雪の塊が行く手を遮ったり

トレースを消してしまっている。

だが稜線上では、ルートを迷うこともないので、

そのままその雪を乗り越えて稜線をなぞってゆく。

しかし、これほど高度を下げているというのに、

まだこれだけの雪が残っているとは、

この辺は立派な豪雪地帯と言っていいのかもしれないなあ。

そうして五合目に到着。


↓五合目

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五合目を過ぎると、左手に管理された杉林が続き、

トレースもしっかりしたものになってくる。

時期に前方に黄色いコンテナが見え、

それが四合目の避難小屋。


↓四合目の避難小屋

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四合目から三合目までも

比較的穏やかなトレースをえっほえっほと下っていく。


↓三合目

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順調に高度を下げ、距離も詰めて、二合目まで下りる。

二合目のところはちょっと広場のようになっている。

次はどちらへ進むのかと思ったら、

倒木が行く手を塞いでいる谷底が正解のようだ。


↓小道を行けば〜♪

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↓二合目

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そのまま狭い川底にたどり着くのだが、

この冬の雪の重みのせいか、

斜面の上部から何本のもの木が倒れかけてきて、

沢を埋め尽くしているし、

足元もルートが明瞭についているわけではなく、

沢の中の安定している石をつないでいくような感じ。

これで本当に正規ルートなのかと思うほど荒れていますが

他に迂回できる余地はないので、

上からの落石や倒木に注意しつつ、慎重に抜けていきます。


↓大荒れじゃないか

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ようやくっまともな道に出てしばらく進むと一合目。

ようやく終わりが見えてきたのかなあと安堵しましたが、

しかし登山口まではまだまだ長い距離がありました。

未舗装の林道に出て、

そのまま牧場のようなところを横目にひたすら歩きます。

さらに林を抜けて、名神高速とぶつかるところが柏原登山口

一合目から30分かかりました。

ふぃ〜。


↓一合目

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↓山道を抜けました

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登山口に下山

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しかし、ゴールはもちろんここではなく、

さらに10分ほど集落を歩いてJR柏原駅に到着。

いや〜下りは下りでは長い道のりでした@@

ということで約7時間の山行を終えました。


柏原駅

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長い長いアプローチは難儀ではあるけれど、

素晴らしいロケーションとスケール感のある山に大満足でございました。

2018-02-27

谷口さんとこ

日曜日のライドの目的地は、

四条畷にあるGallery & cafe Zoologiqueでした。

絵本作家の谷口智則さんのギャラリー兼カフェです。

ちょうど谷口さんがいらして、年末ぶりにご挨拶。


谷口さんとはかれこれ15年来の知り合いで、

今はなき中津の☆印で初めて出会ったときは、

自分は大阪市大の大学院で都市再生の研究をしていて

彼はカフェ・ビブリオテークでバイトをしながら、

絵描きを目指していました。

ほどなくして、デビュー作『さる君とお月さま』が

新風舎えほんコンテストを受賞し、

そこからは破竹の勢いで、

様々なところで谷口さんの動物が顔を出していますね。


↓Gallery & cafe Zoologique

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まさか清滝峠の上るつもりもなかったのだけど、

無事にチャレンジ成功してエネルギーを使い切ったので

ここでカレーとケーキをいただきます。

谷口さんの動物をあしらったデコレーションがかわいらしい。

さすが、長年カフェ修行を積んできただけはあります。


↓サルくんのキーマカレー

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↓バニラのシフォンケーキ〜イチゴとキャラメルソースを添えて〜

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30分ほど滞在して帰りがけ、

もう長いこと使ってボロボロのスマホケースにサインしてもらいました。

あまり谷口さんの絵には出てこない猫をリクエストすると、

これまた珍しく自転車バージョンを描いてもらいました。

それから3人で記念撮影。

チャリなら1時間ちょいでこれるので、

またちょくちょくお邪魔しよう。


↓記念撮影

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↓年季の入ったスマホケース

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↓裏にいただきました

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2018-02-26

初めての清滝峠チャレンジ

日曜日。

お天気があまりよくなく当初予定していた遠征は中止。

昼になっても空模様は微妙だけど、

家にこもっていてもつまらないので、

長女と近場のツーリングに出かけます。

四条畷の谷口さんのところにでもお茶しに。

娘も久々の自転車にウキウキ。


自宅を出発し、毛馬閘門をかすめ、

いつもの城北運河沿いを走る。

そのまま鶴見緑地を横目にR163を進む。

裏道を伝って三ツ島からは第2京阪沿いの道。

娘さんも快調!


↓ひさびさのツーリング

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だんだん生駒山系が近づいてきて、色々娘に景色を解説。

近くにお父ちゃんが練習してた坂道があるねんと話していたら、

興味を持ち出し、それならダメもとでいっぺんトライしてみるとなり、

中野ランプへやってきました。


関西のローディーにはおなじみ過ぎる清滝峠TT。

ヒルクライムの登竜門であるこのコースは、

距離3.2km、標高差218m、平均勾配6.7%、最高斜度10.3%、

序盤の急坂から終盤の緩勾配のつづら折れにつながる

ビギナーコースです。


これまでも娘はアワ1の際などに、

坂道で粘り強さを発揮して、坂道ねえちゃんと呼ばれてきましたが、

本格的なヒルクライムは初。

小学女子の体力的にもそうだし、

アルミ製キッズバイクの重さ(自分のフィブラ君より重い)や、

ビンディングペダルじゃないという事も考えると、

まず足つきなしではゴールできないだろうけど、

速さとかも含めて無視して、

とりあえずチャレンジで行けるところまで。


↓中野ランプ

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身支度を整えて、いざスタート。

序盤からすでに一番軽いギアをチョイスし、くるくる回していきます。

ドンツキまで登って、高架をくぐるわずかの平坦では休憩走り。

そこからの急なスロープは

立ち漕ぎダンシングを見せて、しのぎ切ります。


↓清滝峠TTスタート!

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1つ目の信号は無事クリアするも、

本線のところまでのストレートが結構急で、

最初の関門。

たまたま通りすがりの地元の年配の方が沿道から

お嬢ちゃんガンバレ!をいただき、

娘も力が入ります。

2つ目の信号も捕まることなく、通過。

ここも少しだけ斜度が緩むので、

次の急勾配に向けて温存しながら走ります。


↓序盤のきついところ

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↓信号はクリアに通過

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ここから最も勾配のきついホテル前までの正念場。

路面の轍もうっとおしく、ヨロヨロとペースが落ちますが、

必死の形相で、ペダルをこぎ続ける娘。

後ろから見守りながら、声をかけます。

途中、何人かローディーさんが下ってきて、ガンバレコール。

真っ赤っかな顔をしながらも、その声に反応して、

力強くペダリング。

ホテル前を通過し、

ほんのわずかだけ斜度の緩む区間でペースを落とし、

クリーンセンターまでの急坂もどうにかクリア!

ここまで来たら、後は緩い斜面がダラダラ続くだけなので、

足つきなしでのゴールが現実味を帯びてきました。


斜度が一気に緩んだことで、娘もひと段落したようで、

声かけにも言葉を返しながらくるくると進みます。


↓つづら折れ区間まで来た!

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あとはゼブラカーブをいくつも抜けて、

ラスト雑木林の先からのストレートをこなして、

交差点で無事ゴール!!

まさか、まさか、足つきなしで登りきってしまうとは!!

恐るべし娘です。

いやあ、根性あるわあ。

残念ながら再婚を付けていないので、

精密なタイムはわかりませんが、時計で測って21分台。

立派立派!!

娘も相当自信になったようで、やったやったと大喜び。

いやあ、ひいき目抜きでスゴイ。

がんばりました!


↓清滝峠

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↓交差点でゴール

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↓恐るべし!

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しばし休憩ののち、再び大阪側へ下りますが、

なかなかの急斜面なので、

時折休憩をはさみつつ慎重に下りました。


↓慎重にダウンヒル

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そこからすぐの谷口さんとこ(別記事)で休憩させてもらってから、

再び同じ道をトレースして帰宅。

またひとつ娘が大きく感じるライドでした。


走行距離:38.9km

TOTAL:189.5km


↓走行ルート

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2018-02-10

チェルフィッチェ 『三月の5日間』リクリエーション

金曜日。

京都岡崎のロームシアターに気になる演劇を見てきました。

これもまたツイッターの反響ぶりに、

何だこれは!?といてもたってもいられず、

内容もキャストもよくわからないままに当日飛び込みで。


演劇は、ビラや告知を見ても

実際どんなものなのか想像がつきにくいものがあり

何を観に行くかは、博打的な要素が

比較的他に比べて大きいなと感じています。

なので、実際に観劇した人のコメントというのは

ものすごく重要な材料で、それも

普通に面白かった、楽しかったというのではなく、

下手すると解読不明なコメントが続くような作品だと、

これはどういうこと?どうなっているの?と、

想像力をかきたてられ、

それを自分の目で確認するというのが

一番の動機になっています。

衝動って大事。


↓ロームシアター

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今回観劇したのは、

岡田利規が全作品の脚本・演出を担当する

演劇カンパニーであるチェルフィッチェの

代表作『三月の5日間』という作品(2004年初演作)。

時は2003年の3月。

イラク戦争が今にも勃発しようとしていて、

不穏な世界情勢が渦巻いているなか、

東京・渋谷の街角に居合わせた若者たちの5日間を描いた戯曲。


↓チェルフィッチェ『三月の5日間』リクリエーション

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開演時間となり暗転。

そこからゆっくりと世界が立ち上がってゆく。

舞台上部にはホテルの天井と思わしき

四角いボックスが浮遊している。

地面には二方向からゼブラゾーン。

渋谷のスクランブルを連想させる。

極めてシンプルでミニマムな装置。


そして、かなりラフな普段着の格好の女の子が、

ダラダラと袖から登場。

いかにも場を持て余し、

所在なげにのろのろと舞台の中央へと。

しばらくこちら側を物珍しそうにゆっくりと右から左へと眺め、

うすら笑いのようなものを浮かべながら、

退屈しのぎにでもと言った風に、

おもむろに話はじめる。


「それじゃ『三月の5日間』ってのをはじめようと思うんですけど、

5日間のまずその第一日目ですけど、

あ、これは二〇〇三年の三月の話なんですけど、

朝起きたら、

あ、これはミノベくんって人の話なんですけど…

ホテルだったんですね朝起きたら、

あれなんでホテルにいるんだ俺って思ったんですけど、

しかも隣に誰だよこいつ知らねえっていう女が

なんか寝てるよって思ったんですけど、

でもすぐ思い出したんですけど、

あ、きのうの夜そういえば、

そうだここ渋谷のラブホだ思いだした、

ってすぐ思いだしたんですけど、

だから朝起きたらホテルだったっていうその朝は、

三月の5日間の正確に言うと二日目の朝なんで、

まずは一日目のことから話そうと思ってるんですけど、

だからその一日前の話からしようと思うんですけど…」


とりとめのない話が、

延々、途切れなく投げかけられる。

その極めて日常的で、

若者特有の歯切れのないダラダラとした口ぶりは

もはや演技なのか素なのか。

すでに劇が始まっているのか、

それとも劇が始まる前説なのか、

そもそもこの女の人は役者なのか、

それともどこからか迷い込んできた場違いな素人さん?

というくらい、平然と。

あまりに日常的な会話のやり取りに突如巻き込まれ、

こちらも思わず「へえ」「そうなんだあ」と

相槌を入れてしまうようなほど

いわゆる演劇というにはほど遠いような

低い体温で劇は進んでゆく。

しかも、その不安定で、要領を得ない口ぶりに、

身体を乗っ取られてしまったのか、

イソギンチャクかクラゲの如く

常に手足をブラブラ、妙な方向へ体を捻じ曲げ、

終始落ち着きのない様子。

そう、彼女は役を演じているというよりもむしろ、

自らが発している浮ついたセリフそのものになりきっている。

そして、その立ち振る舞いは、まるで、

様々な揺らぎのなかで危ういバランスをとりながら、

どうにか社会との折り合いをつけようと生きる

若者たちの独特な浮遊感を実に見事に体現しているように見えた。


そのうち、一人また一人と舞台に人が現れ、

同じようにして、

奇妙な体の動きを織り交ぜながら、

感情がうまく表現できていないような不器用な口ぶり、

かみ合っていそうで、実はそうならない会話が

淡々と繰り広げられてゆく。

時には、全く同じセリフが登場したり、

同じ役柄を別の人が取って代わったり、

主観・客観・傍観・俯瞰、

様々なアングルから同一の場面をループしたり。

まるで人称を全て剥奪して、

2003年3月のリアルの彼らも、

それらを回想する語りの中にいるカギカッコつきの彼らも、

あるいはそれらを劇として繰り広げられている、

今京都のこの場所で生じている現象という次元さえもを巻き込んで

ストーリーがメタ化してゆく。

そうやっていくつものレイヤーを何枚も何枚も

割とデタラメに積み重ねていった結果、

残像感を伴った物語の厚みというものが生まれていき、

その重なりのちょっとしたズレ・ブレが、

登場人物たちの交わりそうで交わらない関係性と

絶妙にシンクロしてゆく。

そして、まるで立体パズルを組み立ててゆく要領で、

同じ空間を複数の視点から多面的に捉えることで

舞台の上に、実に生々しい渋谷の街、

それも遠い国で戦争が起ころうとしていることなど

ほとんどお構いなしに惰性で回り続ける等身大の渋谷が

立体的に立ち上がってくるのである。


そういった独特の浮遊感や、

ぼんやりとした不安に彩られた、

定まらないおとぎの世界で、

チャプチャプと大波小波にあてどなく漂いながら、

時折アブクを食らって生きるクラゲのような彼らの

退屈で平凡な日常のスケッチに、

突如異物が混入される。

それがイラク戦争に反対するためのデモ行進に

バッタリと出くわすというくだり。

各セクションに織り交ぜられるその瞬間は、

まるで強烈なビンタか、

バケツで水を浴びせかけられたかのように

一気に”現実”を突き付けられるような瞬間で、

それまで、もやもや、ふわふわとしていた場の空気が、

目に見えて引き締まるような感覚を覚えるのだ。

それは心地よい眠りの中で見た夢の世界から、

乱暴に鳴り続ける目覚まし時計によって、

有無を言わさず叩き起こされるかのような感じに近い。

この落差を体感させることが

まるでこの作品の目的であるかのようである。

しかしこの落差は一体全体何なのだろう。

少なくとも、このデモ行進が、

自分の頭の中の世界とリアルな現実社会との間に存在する、

目に見えないほど薄いが実は強度のある被膜を

ぶち破る一種の起爆装置として描かれていることは間違いない。

実際、彼らがそこを飛び抜けた先の渋谷は、

いつもの渋谷ではもはやなく、

見知らぬ異国の街のような感覚をもって前に立ちはだかる。

自らさえも持て余すほどの時間と自由との中で、

行先も目的もわからないまま、

ただ茫然と日々を繰り返す若者たちが

その日常の範疇から、無意識的に

”越境”してゆく瞬間を、

これほど生々しく追体験させる作品はそうない。

つまり、それはただ傍から目撃するのでもなく、

疑似体験でもなく、

自分がまさにかつて味わったはずの実体験を

ぶり返すようなという意味で。


そうして、身の丈の現実から

思わず足をはみ出してしまったにもかかわらず、

最後のシーンでは、坂の途中で、

ホームレスの男が電信柱の影で野糞している所に出くわし、

そういう場面に出くわしたことのショックもさることながら

その人を最初、犬か何か動物だと思って見てしまった

自分自身に嫌悪して、吐いてしまい、

そうこうしているうちに、

渋谷の街はまたいつもの平凡な渋谷に戻ってしまう。

そして出会った男女は互いに名前も知らず、

おそらく二度と再会することもない。

何か平凡な日常から抜け出すことができたかもしれない5日間は、

そのまま真空パックされたように

記憶の奥底に回収され、

次の瞬間にはもう、渋谷の巨大な改札の雑踏の中へと

いつもの日常が流れ込んでゆく。

これほどあっけない幕切れこそが、

この作品の仕舞いにふさわしい。

暗転する舞台の空虚を見つめながら、

これをどう処理すればよいのか

呆然とするしかない自分だけが取り残されるのであった。

これは実にスリリングで生々しい演劇体験でした。


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上演終了後、

美術ライターの島貫泰介さんの進行で、

朝倉千恵子さん、板橋優里さん、

中間アヤカさん、米川幸リオンさんの

4名の演者が登壇してのアフタートーク。

各人の役への入り方や、

全国巡業で地方ごとの客席の反応の違い、

1回上演が終わるごとに、

年を取り続ける作品の円熟ぶり等々について

お話を伺うことができました。

しかし、その裏話的な内容よりも、

自分が驚いたのは、

今ここでご本人として登場して

素のトーンで話しているはずの彼・彼女らの

口ぶりだったり、身振り手振りのさまが、

まさにさっき舞台上で繰り広げられていた物語の

登場人物そのままだったこと。

特に、”ミッフィーちゃん”は

ほとんど本人が本人役をしたんじゃないかというくらいで、

素なのか、素という演技なのか、困惑させられる。

まるでさっきの本編の延長戦か、

スピンオフドラマを見ているかのような衝撃のオマケでした。

このアフタートークと本編の演劇とを見比べ、

その差異のなさを目の当たりにする機会を得たことで、

作品に対して、より強度が増した印象を持つことができました。


劇場を出て、川端通りへ出る道すがら、

人気のない通りで、思い立って、

ちょっとデモ行進の再現シーンを真似てやってみた。

不意に先の角から自転車が飛び出してきて、

ハッと我に返り、すぐに仕草をやめて、

何事もなく家路を急いだ。

夜の街を楽しむ人でにぎわう三条通まで来る頃には

もう、いつもの日常がそこに広がっていた。


<追記>

兎にも角にも、ものすごいものを目撃してしまったわけだが、

後から思い返せば、これに似たような読書体験が実はあって、

福永信の『星座から見た地球』を読んだ時の衝撃が

それに近いなあと感じました。