岩田規久男著「「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書)」を読む

さくっと読んでしまったので書く。

今回のテーマは「小さな政府」である。だが、当然のように大きな政府が良いという話ではなく、過去のイギリスやスウェーデンでの実例を踏まえながら、大きい政府の良し悪し、小さな政府の良し悪しをそれぞれ検討しつつ小泉政権の採点をするというスタイルの本となっている。

大きな政府、小さな政府という言葉自体にスローガン的な要素があり、何かと政治的な用語ではあるが、その要素のひとつひとつは純粋に経済学的な話題ばかりであり、良い点悪い点をきっちりと押えていくことは重要なことである。

特に日本で行われた「国土の均衡ある発展」がいかに日本の成長を妨げたか、また小泉改革と呼ばれた各種規制緩和が実に名を取って実を捨てる政策ばかりであったかということが、このような新書の形で出版されたのは非常に意義深いことだと思う。

また、小さな政府にすると、姉歯事件のように不十分な検査が行われたり、タクシー運転手の賃金低下や事故の増加などが起こるという懸念に対し、「保険の不在が問題」「実際には事故率は低下しているし、賃金低下は不況が問題」と経済学者ならではのクリアカットな解説も面白い。

ただ、残念な点もある。それは、タイトルが『「小さな政府」を問いなおす』となっていながらも、あまり問い直していない、むしろ小さな政府を支持しながらそれを適正に実行しない小泉政権を切って捨てるというわかりにくい構成になってしまっている点である。岩規久先生はいつも切れ味の鋭い視点を提供してくれるので好きなのだが、今回はおさまりの悪さを感じてしまった。

また、小さな政府を推進する立場から書かれているため、適正なナショナルミニマムの水準が明確にされていないのも不満と言えば不満であろうか。明確には書かれていないので何とも言えないが、平等の水準に関しても「日本のお金持ち研究」の橘木氏らの見解とはかなり異なっているように見受けられる。

そういえば、本書では教育バウチャーが推奨されていたが、あれってどこかに実証データあるんだろうか*1

「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書)

「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書)

*1:小中の義務教育は、金持ちや貧乏人、天才やアホが同じ立場で生活できる人生において得難い場だと考えているので、私はむしろ中小は完全公立義務教育化すべきだと妄想していたりする

DB設計のメタ理論

思ったのだが、データベース設計の論点ってすべて以下の三軸で説明できるような気がする。

  1. ID-複合主キー軸
  2. トップダウン-ボトムアップ
  3. リソース重視-イベント重視軸

はぶ先生は「ID、ボトムアップ、イベント重視より」、渡辺先生は「複合主キー、トップダウン、リソース重視より」ってな感じ。そう考えると意見が一致しないのも頷くしかないな。