桂屋孫一のニューヨーク・アートダイアリー

2016-05-20

美しい芸術は「愛の在り処」を標す。

13:23

東京滞在中は全く以ってイライラするニュースばかりで、賄賂やトラブル続きのオリンピックなんかさっさと辞めちまえ!だし、甘利も森も舛添も電通もとっととクビにすべき。序でに自分を「立法府の長」と勘違いして居る「三権分立」すら知らない総理は、沖縄女性が元米軍兵に殺された事に関してコメントを求められても無視、なんて状況は誠に耐え難い…日本は何時からこんな「腐国強兵」な国に為って仕舞ったのだろう?

そんな中ニューヨークに舞い戻った僕は、ニューヨーク・タイムズアート欄に心温まる記事を見つけた…それは昨年亡くなったニューヨーク在住のジャズピアニスト、「プーさん」こと菊地雅章氏のニュー・アルバム、「黒いオルフェ」のレビューだ(→http://www.nytimes.com/2016/05/19/arts/music/masabumi-kikuchi-black-orpheus.html?smid=tw-nytimesarts&smtyp=cur)。

プーさんの事は此処に何度か書いたから繰り返さないが(拙ダイアリー:「プーさんとどら焼き」「Incurably romantic」「老ジャズピアニストのバースデー」参照)、今回のこのアルバム(→http://www.universal-music.co.jp/masabumi-kikuchi/products/ucce-1160/)に収録された、2012年に上野東京文化会館でのプーさんのソロ・プレイ(→https://www.youtube.com/watch?v=jxmR-A-lssM)は、インプロヴァイゼイションは元より、その一音一音の輝きが余りに美しくて、個人的にはキース・ジャレットなんか全く眼じゃない。

そしてこのレビューのタイトルに「不協和音を通してピースフルにプレイする菊地雅章」と有る様に、プーさんの演奏は安らか極まりないので、この演奏を聴きながら、プーさんの遺品の中から貰ったメシアン聖餐式」の楽譜(プーさんが遺した楽譜には、例えばラヴェルの「夜のガスパール」やドビュッシー等、クラシックも多かった)を眺めて居ると、涙が出そうに為るが、アーティストの中には死んでから世間に認められる人も多いから、プーさんも若しかしたらその典型だったか…と、今は亡き天才に思いを馳せ、彼の音楽と云う芸術への溢れる「愛」を思う。

そこで今日の本題は、その「愛」…人が探そうとしても簡単には見つけられない「愛の在り処」を標す、最近体験した2つの素晴らしい芸術作品に就いて。

そしてそんな「愛」を語る芸術は古今東西数多有れども、人間性も愛も希薄浅薄に為り、乾き始めた21世紀に入ってから、これ程迄に痛く美しい、愛に関する「文学」と「映画」が有っただろうか?

男女の愛と人生に就いて描かれたこの2つの芸術作品に、共通点は少ない。が然し、愛と人とが必ず迎える「経年変化」や「未来こそが過去を変える」と云う事実、そして全編を通じて流れる「音楽」と、その音楽を人生の生業とする主人公の存在は図らずも共通している。

文学の方の主人公は若き天才クラシックギタリストで、一方映画の方はナイトの称号を授けられる老齢の作曲家指揮者…この「一世を風靡した」2人の男性音楽家と各々の運命の女性との愛は、音楽家同士に年齢差や国籍の違いは有っても、何れも濃密且つ不遇な歴史を綴る。

そんな音楽家達の内、若いギタリストは不意打ちを食らった様に恋に落ち、敗れ、騙され、嘘を伴う運命に翻弄されるが、最後に遠い未来への光を見る。逆に年老いた作曲家は愛を、気力を喪い、遠い過去を重く引摺るが、最後にその過去にケリを付け、光を浴びる…「映画」中で、主人公の親友の映画監督が云う様に、「老人に取って未来は近く、過去は遠い…逆に若者に取って未来は遠く、過去は近い」のだ。

また、この2人を「愛の過去」の混沌と失望、諦念から再生させた共通項が、「友人の自死」で有った事も興味深い。そう「死」とは「気付き」で有って、必ず身近の者にそれを齎すからだが、身近な死程自分の生を確認させ、愛おしませる物も無い。愛に敗れ、諦めた「様に見える」男の本心は、友人の死に因って再抽出され、再燃する…自分の「愛」が未だ死んで居ない事を証明する為に。或いは自分に取っての真の「愛の在り処」を探し出す為に。

卓越したこの文学と映画の2つの物語、或いは主人公達に、自分の過去や経験、想い出を重ね合わせる事は容易いが、自分の未来への道筋が形振り構わぬかどうか、そして自己欺瞞が無いかどうかが、美しき愛の人生を送る上での絶対条件で有る…そして僕はその「道標」を、この2作品に観た。

が、僕が幾ら此処で何を書いても、全く用を為さない…何故なら、この2作品の素晴らしさを此処で語り尽くす事は不可能だし、僕のこの2篇に対する感情は、恐らくは生々し過ぎて理性を欠いて仕舞うからだ。その前に、何しろ美しい芸術は自分で体験せねば決して判らない。

その「文学」とは即ち平野啓一郎著「マチネの終わりに」、「映画」とはパオロ・ソレンティーノ監督作品「グランドフィナーレ(原題:Youth)」。

そして、この涙無くしては読む事も観る事も出来ない2作品を体験すれば、自分の過去と未来に横たわる真の「愛の在り処」の存在と、幾つに為っても一生を賭けてそれを捜し求める、終わり無き旅に出る勇気が湧くに違いない…是非読んで、観て、体験して頂きたい。

最後に「グランドフィナーレ」の「フィナーレ」で、ヴィクトリアムローヴァヴァイオリンBBC管弦楽団の演奏をバックに、スミ・ジョーに拠って歌われるDavid Langの「Simple Song #3」(→https://www.youtube.com/watch?v=UCVnFUUI6X4)を記して置く。

マチネの終わりに」と「グランドフィナーレ」と云う、美し過ぎる芸術作品を体験した後では、「送るべき愛の人生とは、この『Simple Song』その物で有る」と云っても、決して過言では無い。


"Simple Song #3" by David Lang

I feel complete

I lose all control

I lose all control

I respond

I feel chills

I break

I know all those lonely nights

I know all those lonely nights

I know everything

I lose all control

I get a chill

I know all those lonely nights

I die

I hear all that is left to be heard

I wish you would never stop

I've got a feeling

I live there

I live for you now

I leave no sense behind

I feel complete

I've got a feeling

I wish you're moving like rain

I'll be there

I lose all control

When you whisper my name


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2016-05-14

バスキアが売れた夜、茶室で垣間見た「コレクター魂」。

16:26

急に暑く為った日本…が、日本には未だ美しき「サンクチュアリ」が存在して居て、心身共に疲労困憊のこんな時期の僕は、そんな「自然」に大層癒される。

それはこの間の火曜日の事…その前日にNYに帰る筈だった僕は、重要な仕事の為に1週間滞在を延ばす事に為って仕舞ったのだが、そのお陰で武者小路千家家元後嗣千宗屋氏からのお誘いを頂き、春日大社での「第六十次式年造替 献茶式」に参列させて頂ける事と為った。

6:30の新幹線奈良に向かったこの日は、朝から雨模様で心配したが、春日大社に着く頃には雨が上がり、杜の緑が深まり草いきれも感じる。そして先ずはお参りを済ませ、献茶式の行われる舞殿に行き、受付を済ませて座る頃には陽が差し始め、家元代理の宗屋氏が献茶を始める頃には、檜皮葺の屋根からは水蒸気が立ち昇り、森は涼しげな風に騒めき、鳥は囀り、序でに神の遣いの子鹿までが近くに降りて来て、首を傾げながら献茶式を眺めると云う、或る意味アニミズム極致的な雰囲気の下で、荘厳な献茶式は滞り無く終了。

現地でご一緒したT師やA氏、M氏とのその後の楽しい呈茶を含め、何とも癒された素晴らしい1日と為ったが、翌日大阪で観たかった藤田美術館での「絵ものがたり」展(「鳥獣戯画断簡」や「玄奘三蔵絵」も出て居る!)を拝見したり、某業者の処で大名品絵画を拝見したりと、目の鍛錬も仕事も順調に進んだのも、春日神のご加護…そして若宗匠にも大感謝、で有る。

さて今日の話題は、何と云っても今週ニューヨークで開催されたメインセールズ、「印象派・近代絵画」と「現代美術」のイヴニング・セールの結果に就て。

先ずはサザビーズ印象派・近代絵画イヴニング。此方の売上は1億4454万6000ドル(約154億4000万円)だったが、落札率が余り良く無く1/3が不落札。トップ・ロットはロダンの大理石像「永遠の春」で2041万ドル(約21億5000万円)で売れ、1000万ドル超で売却された作品は、このロダン以外にはシニャックヴラマンクの計3点のみ。

一方クリスティーズの方はと云うと、粗同額の1億4153万2000ドル(約151億4400万円)を売り、52点中44点売却、トップ・ロットはモネの「睡蓮」の2704万5000ドル(約28億9000万円)で、1000万ドル以上で売却された作品は、もう1点のモディリアーニとの2点だけだった。

印象派が静かだった為危惧された現代美術だったが、サザビーズ方は1000万ドル超の作品が5点、トップ・ロットはトゥンブリーの3665万ドル(約39億2000万円)で、総売上は2億4219万4000ドル(約259億円)と、決して悪くない成績。

対するクリスティーズは、2つの現代美術イヴニングを開催…先ず一晩目のコンセプト・セール「Bound to Fail」の方は、7812万3250ドル(約83億5000万円)を売上げ、此方のトップ・ロットはカテランの「Him」(ヒットラー)の1718万9000ドル(約18億4000万円)、クーンズの「バスケットボールを浮かべた水槽」と共に1000万ドル超作品と為った。

そして二晩目の「現代美術イヴニング・セール」の結果は、日本の美術業界を激震させた!

53点中5点が1000万ドル超で売れ、総額3億1838万8000ドル(約364億3800万円)を記録したこのセール中のトップ・ロット、1982年の作で嘗ては日本に在った事も有る5M超のバスキアの大作「無題」が、Zozotownファウンダーの前澤友作氏に拠って5728万5000ドル(アーティスト・レコード:約61億3000万円)で落札され、その事が本人に拠って公表されたからだ!

NYのメディアに拠ると、前澤氏はこのセールでバスキアの他にも数点、またサザビーズでも何点か落札し、2日間で恐らくは100億円近くを自身の現代美術財団の美術館の為に遣ったと云う。

結局クリスティーズ現代美術イヴニング・セールズは、都合3億9651万1250ドル(約424億2600万円)を売上げ、お陰様で競合他社に圧勝したのだが、このバスキアのニュースは、僕に過去に会った或る人物を思い出させた…それは1990年ルノワールをでサザビーズニューヨークで、翌日ゴッホクリスティーズ落札し、2日間で当時世界最高級品質+価格の絵画2点に200億円近くを遣った、某企業会長だったS氏の事で有る。

僕はS氏に2度だけお会いした事が有って、その頃はもう車椅子で移動されて居たが、絵を見る時の眼光は未だ非常に鋭く厳しく、お話をしてもアートに対する深い愛情に溢れて居たのが印象深い。

さて、此処で話は一昨日木曜日の夜に遡る…その日僕はアートフェア東京を観に行ったり、能役者の処で能面を拝見したりと動き回って居たが、夜はかいちやうと目黒イタリアン「M」で恒例のディナーを楽しんだ。

そしてブッラータ&プチトマトや新玉葱稚鮎フリット桜海老パスタ、仔牛のカツレツ等を頂き大満足の後は、かいちやう宅の茶室に移動し、もう1人若い友人をゲストに招いての「夜のお茶」と為った。

その未だ若いゲスト氏も大のアート数寄…彼はご家族の眼と血を引き継ぎ、最近はお茶も嗜まれ、茶道具にも現代美術にも造詣が深い。そして男3人でそろそろとお茶が始まった。

季節に合った梅花皮の大きい青井戸と、トロッとして高台の力強い平熊川で始まったお茶は、黒大棗や瀬戸水指、大徳寺禅僧の三字書と共に茶味溢れ、趣味を同じくする男達の会話を熱くさせる。そして席での会話が前夜売れたバスキアの事に及び、必然的にS氏の話が出たのだが、その時若いゲスト氏が思わず呟いたのだった。

「孫一さん、私、何処と無く悔しいんです。」

「あぁ、そうなのか…『コレクターの血』とはそう云う事なのかも知れない」と、その時僕は思った。何故ならそのゲスト氏こそ、前述の大コレクターS氏のお孫さんだったからだ。

僕は、今回の前澤氏の絵画購入が若いコレクター達の血を滾らせ、日本人にアートを持ち共に暮らす歓びを教える事を願い、ジャンルを問わない高品質のアートを日本に齎す事を切望する。

茶室で垣間見た、若きゲスト氏の「コレクター魂」…立場は違えども、お互いに切磋琢磨しながら見守って行きたい、と熟く思った孫一なのでした。


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2016-05-08

「自主規制」的近況。

10:27

5月3日(火:憲法記念日

11:30 品川駅で友人と待ち合わせ、電車を3回乗り換えて、久し振りの箱根へ…先ずは宮ノ下の富士屋ホテルに向かい、神社建築風の高天井メイン・ダイニング「The Fujiya」で、ビーフ・カレーを伝統に則って「フォークのみ」で食べる。食後には名物「アップルパイ・ア・ラ・モード」を注文したが、其れに付けても「食欲」と云う病気が治らない(涙)。その後、庭園の中腹に在るご先祖様の銅像にご挨拶し、最近横浜のお墓へのご無沙汰をお詫びしながら手を合わせる。

13:00 富士屋ホテルからタクシーでポーラ美術館へ向かい、現在開催中の展覧会「Modern Beauty-Art and Fashion in France」を観る。化粧道具やドレス等のファッションと、それを取り巻く文学者やアーティスト達の群像、そして印象派19世紀絵画との組み合わせが非常に良く出来て居るハイ・ブロウな展覧会で、特に館所蔵の印象派作品のクオリティに改めて驚く。同時開催の館蔵名品展も堪能。

19:00 帰りに乗ったロマンスカー新宿で降り、友人に別れを告げてJRの改札に入った途端に、ポケットに有る筈の携帯が無い事に気付く。慌ててJRの改札を出て小田急線ホームに駆け戻り、係員にその旨を告げると、電車はホームを出て行って仕舞ったばかり。落胆して事務所に赴くと、色々質問された後、別の強面の駅員さんが箱から取り出したのは、何と僕の携帯…こう云った「小さな奇跡」が、僕に神の存在を再確認させる。


5月4日(水:みどりの日

12:30 都内ホテル「I」内の寿司屋「N」で、重要クライアント夫妻とランチ。最近購入依頼を受けて居た、ヴァイオリンに関する報告等を行う。然しこの日の「I」は、有名百貨店のバザールが行われて居たらしく大混雑で、駐車場に入る為に自家用車が並んで居るのを初めて見た…「バザール」でこんなに人が熱狂するとは、酷い円高と共に誰かさんの「三本の矢」が聞いて呆れる。

17:00 行き付けの一軒家カフェ「L」に行き、美味い珈琲とベイクド・チーズケーキを食べ、マスターと話をしてマッタリとする。僕が35年近く通うこの店の存在は、それこそ「小さな奇跡」だ(→拙ダイアリー:「『秘宝』の様な喫茶店」参照)。

20:00 小説家H氏と、久々のブルー・ノート東京で「ベニー・ゴルソン・クァルテット」を観る。僕は、ゴルソンをテナー・プレイヤーとしてよりコンポーザーとして買って居て、例えば「Whisper Not」や「I Remember Crifford」と云った名曲も多く、今回は特にこの2曲を聴きに行ったと云っても過言では無い。にも関わらず、ゴルソンがこの2曲を演らなかったばかりか、バックのトリオもリゾート・ホテルのロビーで聞く演奏レヴェルの有様。何時もだったら超ムカつく処だが、87歳に為ったゴルソンの元気な姿を見るのはこれが最後かも知れないとの思い、そして嘗てアート・ブレイキーリー・モーガン等とプレイした彼の過去の栄光、偉大なるメロディ・メイカーへの尊敬を以ってして、何とか我慢する(笑)。然し不思議なのは、彼が毎回自分のパートが終わった後に、マウスピース・カヴァーを自分のテナーに放り込む事…音に影響有るんじゃ無いか?

21:30 ブルー・ノート近くの、学生時代から通って居るカフェ「F」でH氏とディナー。政治や芸術等に就て色々と語り合うが、40-50代の男とは何と悩み多き生き物なのだろう…。


5月5日(木:こどもの日

10:30 東京ステーション・ギャラリーで開催中の、「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」展へ。川端のアート好きは有名で、特に大雅・蕪村合作「十便十宜帖」等の古美術には、国宝を含む重要作品も多い。川端が自死した時、骨董屋が未払いの金の代わりに作品を持って帰ろうと自宅に殺到した話は有名だが、今回の展示では草間彌生ピカソ等も展示されて居て、川端の広い趣味が分かる。他の文豪達との往復書簡等も大層興味深い。

13:00 真夏の様な陽気の中代官山に赴き、ヒルサイドフォーラムで開催中の「マグナム・ファースト日本展」を観る。

13:30 その近所のレストラン「I」のテラスで、現代写真系の友人とランチ。「グリルド・シーザーサラダ」が美味い。「I」のオーナーで旧知のT氏も来て居て、ご挨拶…然し、代官山がこんなにも人で溢れる様に為るなんて、「シェ・リュイ」や「トムズ・サンドイッチ」、「ボエム」等に通って居た学生時代には思いもしなかった。

16:00 ランチ後、ダッシュで清澄白河に向かい、現在「小泉明郎展 空気」を開催中の無人島プロダクションで、「キセイノキセキ vol.1」と題された小泉氏と卯城竜太氏のトークを聴く。この「表現の自由」と「規制」をテーマに掲げたトークは、現在都現美で開催中の展覧会「キセイノセイキ」の関連イヴェントだが(そして無人島プロダクションで現在展覧中の小泉作品は、都現美の展覧会から「外された」モノだ)、展覧会を開催して居る癖に屁っ放り腰な都現美、そしてこんなにも素晴らしい作品を作り、それを武器に闘うべきなのに、都現美長谷川祐子氏を「尊重した」小泉氏に、少々ガッカリしたのも事実。が、今回のトークは、客席に居た椹木野衣氏が質疑応答中に発した質問・発言が全てで、この案件は突き詰めなければ意味が無い。流石、である。然し、例えば江戸期でも国芳の「荷宝蔵壁のむだ書き」の様に、天保の改革時に禁止された「役者絵」を自身の作では無く、「蔵の壁に描かれた似顔絵を写した」と云う言い訳を用い、あの絵の上手い国芳ヘタウマに徹して版元と共に出版した勇気有る「レジスタンス」と、それを見て見ぬ振りをして「許した」幕府の両者間の、或る種の「寛容」と「妥協」にも一考の余地が有る気もする。

19:30 座談会途中で再発した座骨神経痛を騙し騙ししながら白金に行き、「I」でVIP顧客とすき焼きを食べる。ご飯を小盛り一杯で止めた、自分のその小さな「規制」(笑)に拍手を送りたい。


5月6日(金)

10:30 オフィスに行き、西洋美術を中心に集める某美術館コレクションに就ての、簡単な戦略打ち合わせをする。

12:30 銀座の「G」でランチ。ここのサラダとハンバーグは最高に美味いが、何時もキッチン・カウンターに居るシェフが、僕のダイエットを邪魔をするのが甚だ迷惑…そして其れに負け続ける俺は、「レザボア・ドッグ(負け犬)」だ(涙)。

14:00 神保町の版画店「H」に、浮世絵版画を観に行く。今巷では国芳が大ブームだが、この店にも外人客が来て居て、熱心に国芳を観て居た。

15:00 もう大分前に買った版画作品を、友人の引っ越し祝い様に額装する為、飯倉の行き付けのフレーム・ショップ「K」に持って行き、そのセンスを信用して居るO氏と、額に就いて打ち合わせ。額も仕事も「センス」が第一…そしてそのセンスを磨き続けるには、「自分の専門外の最高の芸術」を見続け、体験し続ける事が肝要だ。かのゴダールも、センスの無い映画作品を観た時に云ったでは無いか…「この映画には何も映って居ない。何故ならフレームの外のモノが何も映って居ないからだ」と!

16:00 溜まったメールへの返事と一休みを兼ねて「L」に行き、珈琲で一服して居ると外人客が4人入って来たのだが、お店のSちゃんが彼らと意思の疎通が上手く出来無かった様なので、通訳を買って出、序でにメニューに載せるべく英語を考える。35年通い続けて居る「L」に、少しでも恩返しをしたい。

19:00 家に戻り、ポリーニの「ショパン夜想曲集」を聴きながら、或る作品に関しての調べ物をするが、「ポリーニピアノ」は「ポリーニピアノ」以外の何物でも無く、詰まりは素晴らし過ぎて、一瞬耳を欹てて仕舞い、本を繰る手が止まって仕舞う…いや、それこそが「風格」の証しなのだ。


5月7日(土)

9:00 3ヶ月に一遍の、恒例の定期検診(血液検査)を主治医の処で…過食中なので結果が怖い。

10:30 近美で開催中の「安田靫彦展」を観る。靫彦程「墨線」に作家自身の性格が出て居る画家も居ないと思うが、グラフィックで軽快な作品はそんな「線」の賜物…そして特に仏画にその精彩を観る。川端康成と同様に、靫彦が古美術の熱心なコレクターだった事は知られて居るが、作品中に描かれた焼物等への彼の真剣で暖かな眼差しは、梅原龍三郎鳥海青児、或いは前田青邨共通する、アートを創る者の過去から生き延びて来たアートへの愛と尊敬に溢れる。

13:00 都現美で開催中の展覧会「キセイノセイキ」を、対照的に大混雑の「ピクサー展」の長蛇の列を擦り抜けて観る。「検閲」と「自主規制」をテーマとしたこのMOTとArtists' Guild協働展は、何しろ必見のハード・コアな展覧会だ。が、都現美には発表されないトーク・イヴェントや、制作者から自らの名前を外したカタログ制作に関して、そして現在展覧会場で何の説明も無い侭、唯作品名と作者名だけが記されたカードが壁に貼られる小泉作品に関して、説明責任が有ると思う。特に小泉作品の展示現状では、「唯の白壁が、小泉明郎の『空気』と云う作品だ」と来場者に思われて仕舞う事必然で、せめて「(半)自主規制」の経緯を説明するキャプションは付けるべきでは無いか?何れにせよ、我々はこのテーマに関してもっと「公に」議論せねばならない。

14:30 都現美を後にして、近くの無人島プロダクションを再訪し、小泉明郎「空気」展を再見。改めて「空気」作品群に感心する。欲しい。その後ヴィンス・ヴォーンを髣髴とさせる小泉氏&藤城女史と話をするが、藤城さんは少々お疲れ気味…踏ん張って欲しい。

16:30 歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部を観る。今回も相変わらずの海老蔵人気、プラス菊之助の息子寺嶋和史の初舞台人気で、女性が8割の満席。最初の狂言「勢獅子音羽花籠」は、僕の地元神田明神が舞台の華やか&目出度い演し物で、和史君を抱いて登場した菊之助の両脇を2人のお祖父ちゃん、即ち菊五郎吉右衛門が脇を固めたが、当の和史君は何とあの雰囲気の中で寝て登場(笑)。最後は手を振って愛想を振り撒いて居たが、流石大物の風格十分で有る。次のお馴染み「三人吉三巴白浪・大川端庚申塚の場」は、お嬢吉三菊之助とお坊吉三の海老蔵の対峙が見処だったが、矢張り菊之助の芸の方が格上。三演目目の「時今也桔梗旗揚」は松緑が大熱演し、時蔵女形も何時もの様に素晴らしい。久々にグッと来る松緑を観たが、これで後は「華」が有れば…と思うのは僕だけだろうか?そして最後の「男女道成寺」では、菊之助の踊りの上手さと「手」の美しさに、眼を奪われっ放し。然し「道成寺物」は、男が出ない方が絶対的に宜しい…歌舞伎の「道成寺物」では、凡ゆる意味で「京鹿子娘道成寺」の美しさを超える事は出来ないと思う。

21:30 久々の代官山「A」で、Kシェフお薦めの季節の絶品料理、即ち「稚鮎フリット」「花ズッキーニの栄螺詰め」「桜海老の薄焼きピザ」「白アスパラとミル貝のココット」「ステーク・フリット」等を頂く。そしてトドメは「苺パフェ」…神よ、この哀れな大羊を憐れみ給え(涙)。


Kシェフの「好み」では(笑)、ダイエット効果が最高潮だった痩身の頃の僕よりも、リバウンドした今位の方が良いとの事…「美の発見」とは人それぞれで有るが、「体重の自由」にもそろそろシリアスな「自主規制」を掛けた方が良いかも知れない(再涙)。


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2016-05-02

「邯鄲」的動向。

08:28

4月27日(水)

15:30 NH009便にて来日。東京に着くと、毎度の如く神田明神に参拝。そろそろ結果の出そうな大仕事の勝利を祈願する。

19:00 その重要な競合仕事の結果の電話(或いはメール)を待ちながら、駿河台下の弟の店「I」で食事。結局連絡は来ず、失意の侭帰宅。

2:00 風呂に入ってもベッドに入っても連絡が来なかった為、落ち着かず眠れない。心を和ませる為に再読中の平野啓一郎著「マチネの終わりに」を読むが、この「3度」読む予定の小説は罪深い程に素晴らしい…感想は何れ此処に誌さねば。その後深夜2時頃、顧客からやっとポジティヴなメールが来て、ベッドの中で1人狂喜乱舞する。


4月28日(木)

12:00 前日の日本到着に因る時差ボケ+睡眠不足を圧しながら、母親と代官山「O」でランチ。今回は自費での休暇を兼ねての来日なのだが、実際は色々と働かねば為らない。その意味で人生そう甘くはないが、「表面張力」を利用した超美味な「大盛りポタージュ+絶品クルトン」で可なり癒される。

14:00 土曜日に行うレクチャーの為に、ラップトップ東京オフィスに借りに行く。時計担当の新顔の男性社員が居て、ビックリ…頑張って貰いたい。

16:00 渋谷「C」ホテルのロビーで、古典芸能関係の顧客と幾つかのビジネスに関しての打ち合わせ。最近古典芸能付いているなぁ。

18:00 大岩オスカール「世界は光に満ちている」展レセプションの為、アートフロント・ギャラリーへ。 某美大T学長を紹介されたり、相変わらず飄々として居るオスカールに、金箔や銀を使った新作や、サンパウロ東京ニューヨーク跨ぐファンタジックな絵画説明を聞いたり。オスカールの男木島インスタレーション「部屋の中の部屋」の「モデル」が欲し過ぎる…。

19:30 西麻布和食「W」で、田中一村の親戚のご夫人と食事。知られざる一村の話が、異常に興味深かった。


4月29日(金:昭和天皇誕生日)

8:30 某公共放送のご好意で、都美館で開催中の「生誕300年記念 若冲展」を開館前に拝見。館に入った時点で既に長蛇の列だったのに、開館時間の9:30少し前に館を出る頃には、その列は幾重かに蟠を巻き、図録の巻頭文で辻先生が祈られて居た「加熱し過ぎない様に」と云う願いは、儚くも打ち砕かれて居た…若冲人気恐るべし。図録販売の方も絶好調で、来館者の4人に1人が買って帰ると聞くが、その図録に佐藤康宏先生が一切寄稿されて居ない事に気付く…これは「鳥獣花木図屏風」を巡る、他の先生方との意見対立の所為だろうか?若しそうだったら残念至極だが、意見の異なる先生方双方には、個人的には是非「公の場」で論争して欲しい。そうすれば、そこで第三者が見つける事も有るだろうと思う。展覧会の方は、ワシントンナショナル・ギャラリー以来拝見の「動植綵絵」全幅展示が何しろ圧巻だが、再会したMIHO MUSEUMの「白梅錦鶏図」も矢張り可なり素晴らしい。唯一の疑問は、今判って居る若冲唯一の水墨絵巻「水墨游」が出て居ない事…確か香港に在る筈だが…何故だろう?

9:30 東博に移動し、「生誕150年 黒田清輝展ー日本近代絵画の巨匠」展を観る。ロンドンクリスティーズ印象派イヴニング・セールで売られた、パリ万博出品の「木陰」が懐かしい…が、誰が何と云っても、 僕に取って最も素晴らしい作品は、ポーラ所蔵の「野辺」だ!

11:30 上野を後にして、今度は表参道舘鼻則孝氏のアトリエへ行き、革製品の展示会を観る。素晴らしいパスポート・ケースを購入。

19:00 表参道「T」で、友人とステーキ・ディナー。タルタルやシーザーサラダ等も注文するが、「ダイエット中だから」とか云って、メインのステーキが2人で250gだけなんて、足りる訳無いぢゃ無いか!


4月30日(土)

12:00 重要顧客と赤坂「C」ホテル内の「O」でランチをし、極めて重要なビジネスの打ち合わせ。お互いその晩のディナーが重そうだったので、軽めに済ますが、これこそ「中年の知恵」と云う奴では無いか?(笑)

15:30 朝日カルチャー・センター新宿にて、「江戸絵画の美を探る:若冲国芳・海外から見た奇想絵師たち」と題されたレクチャーを行う。海外コレクター所有の作品や、クリスティーズで売却した両作家の作品を提示しながら、数十名の熱心な生徒さん達との掛け合いを含めての、90分間の講義。若冲絵師としての2つの「弱点」を提示しながら、世間の声に惑わされず、辻先生の様に「アートを見る時に、自分に取っての『奇想』を『発見』する重要性」を強調…小林秀雄も「美とは発見で有る」と云って居るでは無いか!受講して頂いた皆さん、有難う御座いました!

20:30 某地方公立美術館の学芸員に会い、行き付けの新橋寿司屋「S」で食事公立美術館ならではの問題点を聞き、驚愕頻り。日本の美術館は公立私立共、即時「開国」が必要だ。


5月1日(日)

15:30 国立能楽堂で、「舞台生活50周年記念 第十二回櫻間右陣之會」を観る。今回の右陣師の舞台は、大好きな「邯鄲」(拙ダイアリー:「げに何事も一炊の夢」参照)で、「50年間の治世や栄華等、飯が炊ける迄のほんの『一炊の夢』」と云うお能。この「邯鄲」を僕が前回観たのは、46才だった2009年だったから、今回「50年」を超えた右陣師の華麗な舞と渋い謡は、同じく50年以上を既に生きた僕の心と強烈にシンクロし、感動を呼ぶ。公演後は右陣師のご厚意で、使用したばかりの「邯鄲男」の面を拝見。江戸中期作の、代々家に伝わると聞く素晴らしい作行きの面だったが、右陣師がつい先程迄掛けて居たが故の、此処まで生々しく未だ熱を保って居る面を拝見したのは生まれて初めてで、大興奮。矢張り日本美術品の殆どは、使われてこそ精彩を放つ事が多い。 そして能面と茶碗は、その最たる物…当に眼福で有った。

19:30 久し振りに会う、舞台俳優の友人Eと銀座の「T」で寿司を摘む。この日「大駱駝艦」を観て来たと云うEとは芸術、特に映画と舞台の趣味が合うので、日本で会うのが何時も楽しみ。今回も大将の握る赤酢の江戸前寿司に舌鼓を打ちながらの、芸術談義に花を咲かせた美しい至福のひと時でした。


長かったGWも「一炊の夢」…そして世間はGW後半戦へ。アメリカよりこれだけ連休の多い日本が羨ましいが、日本人が働き過ぎ、と云うのは実際大嘘だと思う(笑)。

2016-04-25

紫色の雨の下、プリンスの死を悼む。

18:09

ニューヨークでの大統領予備選は、トランプとヒラリーが圧勝した。

矢張り、と云って仕舞えば元も子も無いが、バーニーは年を取り過ぎて居るし、結果は見えて居たかも知れない…にしても、此の儘行けばトランプが過半数を取り、共和党の代表に為る可能性も大。党内の誰かが、本気で止めに来るのでは無いかとも思う。

そんな中仕事の合間を縫って、今月8日からジャパン・ソサエティで開催して居た「Japan Sings! The Japanese Musical Film」シリーズの中から、2本を拝見…大島渚監督1967年作品「日本春歌考」と、2001年度三池崇史監督作品「カタクリ家の幸福」だ。

先ずは「日本春歌考」…相変わらずの大島節が唸られて居る作品だが、御茶ノ水界隈で生まれ育った僕には、冒頭近くで映されて居た当時の駿河台や聖橋が異様に懐かしい。

思えば70年安保の時には、御茶ノ水明大前の大通りでは全共闘が機動隊と夜毎闘い、闘争の翌朝の通りは文字通り「兵どもが夢の跡」で、道には血糊がこびり付き、割れた火炎瓶の破片、ゲバ棒や「安保粉砕」と書かれたヘルメット等が散乱して居て、それを弟と拾って被っては意味も分からず「安保粉砕、春闘勝利!」とか叫んで遊んだものだ(何と云う「左」な子供だったのだろう!:笑)。

そんな時代背景の中で、「春歌」を下敷きに「妄想」と「現実」を行き来するこの作品には、若き日の荒木一郎伊丹十三宮本信子吉田日出子等が出て居て、青春映画の体裁を取りながらも「右とか左とか、体制なんかどうでも良いじゃないか!」的な、大島の思想が色濃く反映された佳作で有った。

一方「カタクリ家の幸福」の方は、沢田研二松坂慶子、そして忌野清志郎遠藤憲一丹波哲郎竹中直人等の怪優達が脇を締める、思ったよりも面白い爆笑コメディ・ミュージカル作品。

特に清志郎演じる超ナンセンスなリチャード佐川と、丹波演ずる祖父仁平の2役がサイコーで、この作品をよりコミカルに仕立てて居る…そしてジュリー(この作品で、彼の愛称「ジュリー」が「ジュリーアンドリューズ」から取られたモノだと初めて知った!)も大熱演で、その歌唱力に改めて感心させられた。

然し、全く関係無いが、この沢田研二と云う人には妙な色気と云うか魅力が有って、それは「悪魔のようなあいつ」や「太陽を盗んだ男」、「魔界転生」等でもとっくに証明済みなのだが、何と云っても僕が愛する田中裕子を妻にした所が、一番尊敬出来る(笑)。「あの」田中裕子が惚れる位なのだから、さぞ本人自身も魅力的なのだろう、と思う。

と云う事で、此処からが今日の本題…「クイーン」(エリザベス女王)のバースデーに、「プリンス」が急死して仕舞った。57歳だった。

余りにも急なニュースだったので、ニュース速報を携帯で受けたニューヨークの街の誰もが「何処かの国の『王子』」が死んだのかと思った程で、直ぐには信じられず、その状況は僕にマイケル・ジャクソンが亡くなった時の事を思い出させた(拙ダイアリー:「『マイケルは本当に死んだのか』、或いは『商業舞台の終焉』」参照)。

プリンスは前の週に自家用機内で具合が悪くなり、緊急着陸して病院に搬送された後は直ぐに退院して「風邪(Flu)だ」とのコメントが発表されて居たが、その後の公演は数回キャンセルされて居た。此方の友人に拠ると、彼は「エホバの証人」のメンバーだったと云う情報も有り、それも今回の急逝と何か関係が有るやも知れない。

また余り知られて居ないかも知れないが、MJマドンナ、そしてこのプリンスは同じ年の生まれで、これでポップ界のトップ3の内の2人が死んで仕舞って、残るはマドンナだけ。今年は大物ミュージシャンの死が本当に多いが(これも僕自身が年を取った所為だろう…)、その中でもプリンスはプロデューサーとしても有能で、彼の「オンナ達」だったヴァニティ、シーラ・Eアポロニア、或いはThe Time等を世に出した功績も大きい。

そして僕のプリンスとの出会いは1979年の「I Wanna Be Your Lover」(→http://www.dailymotion.com/video/x15zj5c_prince-i-wanna-be-your-lover-official-video_music)で、その曲の入ったアルバム「For You」には、後にチャカ・カーンがカヴァーして大ヒットと為った「I Feel for You」も入って居たりする名盤なのだが、彼の音楽的名声を不動の物にしたのは、新聞などで書かれて居る様に私小説的な「Purple Rain」では無く(確かに「Purple Rain」は泣けるが)、その前の「1999」だと思う。

僕のディスコ全盛時代には、その1つ前のアルバム「Contraversy」から、タイトル曲や「Let's Work」と云う曲が良く掛かって居て、アルバム「1999」が出た時もそのタイトル・チューン「1999」がディスコで多用されては居たが、実際彼の音楽がロック色を徐々に強めて行くに連れ、R&Bや「ブラコン」(Black Contemporary…懐かしい名称だ!)・ファンが離れて行ったのも事実だ。

が、武満徹やダリル・ジョーンズも敬愛したプリンスの音楽の偉大さは、その「特異さ」と「新しさ」、そして「詩」にこそ有るのだが、その辺の事は以前此処で詳しく書いたので繰り返さない(→拙ダイアリー:「小さな巨人」:PRINCE@M.S.G.」参照)。

ニューヨークの映画館は急遽「パープル・レイン」を上映し、ケーブル・チャンネルでも繰り返し放映され、アポロ・シアター等でもトリビュート・ライヴが開催されて居る…R&B、ロック等のカテゴリーを超えた彼の人気が偲ばれるだろう。

此処に彼への敬意を表して、1983年にジェームズ・ブラウンのコンサートに来て居て、JBにステージに上げられたマイケルとプリンスの珍しいスリー・ショット・ライヴ映像を添付して置く(→https://m.youtube.com/watch?v=Yy9L4ft7EGk)。

"I only wanted to see you in laughing in the purple rain," and "I just want your extra time and your... kiss."

大大大好きな「Kiss」を聴きながら、僕も"Great Artist Formerly Known As Prince"の冥福を祈ろう。


*お知らせ

来る4/30(土)PM3:30-5:00、朝日カルチャーセンター新宿にて、「江戸絵画の美を探る:若冲国芳・海外から見た奇想絵師たち」と云う講座を担当します。詳しくは→https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/92fef51d-63d5-3c42-13b6-56b41d9fab74迄。