桂屋孫一のニューヨーク・アートダイアリー

2016-11-27

NYC-JPN-HGKな近況。

01:26

11月12日(土)

16:00 美しい女性を連れて当社現代美術セールの下見会を訪れた、近頃話題のビッグ・バイヤーと会う。このコレクター氏は、最近茶碗や仏像等の日本美術品にもご興味が有ると聞き及んで居たので、同じく現代美術の大コレクターで有ったパワーズ夫妻コレクション中の仏像をお勧めする。

20:00 自宅でノンビリとDVD観賞…今夜の映画は横溝正史原作、篠田正浩監督の1981年度角川映画悪霊島」。最近何故か再び、横溝正史江戸川乱歩が少年時代以来のマイ・ブームと為って居て、おどろおどろしく、淫靡でノスタルジックな昭和初期的な物に憧れて居る。このDVDを観て驚いたのは、劇中使用されて居る「Let It Be」と「Get Back」の両曲が、昔観た時にはビートルズのオリジナル楽曲だったのに、このDVDでは別のアーティストの歌に変わって居た事。著作権の問題だろうか?然し、岩下志麻は何と美しいのだろう!…そして映画監督(特に篠田正浩吉田喜重、序でに大島渚)とは、何と幸せな職業なのだろう!


11月13日(日)

14:00 NY在住の多摩美卒業生達に、印象派・近代絵画現代美術の下見会ツアーをする。その後はアイリッシュ・バーで懇親会。

18:00 昨晩に続き、家で横溝正史ナイト(笑)…今晩は「悪魔が来たりて笛を吹く」。この作品は珍しく角川映画では無く、1979年角川春樹本人が東映でプロデュースした作品。本作では金田一耕助を西田敏之が演じるが、石坂浩二に慣れて居ると、どうしても違和感が有る(「八つ墓村」での渥美清も同じだ)。当時映画館で見た時は、何しろ怖かった覚えが有って、それは悪魔のフィギュアの所為だった。が今見ると、ちゃんちゃら可笑しい。逆に、当時何とも思わなかった二木てる美が可愛くて驚く。


11月14日(月)

14:30 パーク・アヴェニュー・アーモリーで開催中のアート・フェア、「The Salon Art + Design」へ。日本美術を含めた世界のデコラティブ作品が並ぶ中で、複数の顔見知りディーラー達と懇談する。


11月15日(火)

8:30 来年3月の藤田美術館セールに関する電話会議。若しかしたら、エスティメイトの変更が有るかも。

19:00 ジャパン・ソサエティにて、アーティストの友人I氏と、最近ハマって居る角川映画の「野獣死すべし」を観る。1980年村川透監督の本作は松田優作の代表作と云えると思うが、「太陽にほえろ」での「何じゃ、こりゃぁ…」と共に、本作での「わかるか?お前にわかるか?」と云う松田のセリフを、高校生だった僕は何度も真似した物だ(笑)。また当時大好きだった小林麻美も懐かしかったが、今観ると可成り面長で其れ程美人でも無く、役柄も少々奇妙。また松田が住んで居る設定の部屋のインテリアも当時の最新オサレ部屋の典型だし、「元戦場カメラマン」と云う役柄もカッコイイが、松田のキャラ自体は大藪春彦の原作のイメージとは程遠い…何れも角川春樹の個人的趣味なのでは無いか?

21:00 映画後は、近所の日本居酒屋「R」でI氏と食事。「いつ永久帰国をするべきか?」は、長くNYに住んだ者の永遠のテーマ。


11月16日(水)

17:00 ANA109便に搭乗し、羽田へ…10月末から始まった、全日空JFK羽田便に乗るのは初めてだ。機内では碌な映画が無く、仕方無くもう10回以上は観て居て、台詞も殆ど覚えて仕舞った「ノッティングヒルの恋人」を観るが、相変わらずラストの記者会見のシーンでジュリア・ロバーツが「In definitely…」と答えると、不覚にも涙して仕舞ふ。その後は懐かしのドラマ「救命病棟24時」を見続け、出演者の演技の巧さ故感動頻り。


11月17日(木)

21:30 到着が遅れても、羽田なら流石に余り気に為らない…羽田便は矢張り便利。某局ディレクターの出迎えを受け、恒例の神田明神詣後、神保町の自宅に帰還。


11月18日(金)

13:30 六本木古美術店を訪問後、その隣に出来たアート複合ビル「六本木アートコンプレックス」で開催中の展覧会、タカ・イシイ「Inaugural Exhibition: MOVED」、小山登美夫ギャラリー蜷川実花 Lights of」、シュウゴ・アーツ「小林正人 Thrice Upon a Time」を見学。

18:00 代官山で始まった、内田鋼一展「いろいろ」のオープニング・レセプションへ…氏の多彩な才能に耽溺する。展示品は焼物を始め当に「色々」だったが、今回驚いたのは「バー・カウンター」。内田さんご自身の為の制作ではなかろうか(笑)。

22:00 自宅で新藤兼人監督・津川雅彦主演の「濹東綺譚」を観る。本作はATG最後の作品。女郎屋の女将役の乙羽信子(新藤夫人)が中々良いが、乙羽は1960年の同作品にも出て居るらしい…流石だ。それに付けても、お雪役の墨田ユキは一体何処に行って仕舞ったのだらう?


11月19日(土)

9:00 新幹線に乗り大阪へ。車中、12/16にワタリウムコメンテーターとして話す、宗徧流八代目家元山田寅次郎に就ての本、「山田寅次郎宗有」を勉強の為に読む。この男は実業家・民間外交官・茶道家元の顔を持つ本当に面白い人で、謂わば「近代の冒険王」。

15:00 3月にニューヨークで売り立てをする藤田美術館にて、打ち合わせ。台湾での下見会の様子等の報告する。下見会の評判は上々で、中国のトップ・コレクター達も大注目。青銅器もそうだが絵画大人気で、乾隆帝所持の「六龍図巻」等は恐らくは中国絵画のオークション・レコードを出すのでは無いか…期待が高まる。

20:00 僕主催の、翌日結婚するニューヨークの友人J君の為の「バチェラー・ディナー」を、六本木「M」で。出席者はJ君を含めた建築家写真家ジュエリーデザイナー(この3人は独身だ!)、そして僕の全員ニューヨークからの男5名で、「肉尽くし」ディナーでお祝いをする。そしてその後は…内緒(笑)。


11月20日(日)

12:30 「これぞ結婚式日和!」な素晴らしい天候の下、明治神宮に赴き、J君&Aちゃんの神前結婚式に参列。明治神宮での式に出るのは初めてで、余りの人の多さに驚きながら外人観光客の撮影の嵐の中を、神殿へと僕らは列を成して進む。髭を蓄えた紋付袴姿のJ君は、まるで明治の元勲の様。白無垢・綿帽子のAちゃんと共に、日本の結婚式此処に在り、な荘厳な式でした。

14:30 明治記念館に移り、披露宴…此処は緑が美しい。開宴すると、これもニューヨークから馳せ参じた「ニセ・マルコビッチ」ことSの乾杯に続き、「ニセ・ケン」こと僕のスピーチスピーチは何と僕だけと云うプレッシャーの中、「心の金継ぎ」の話をするが(拙ダイアリー:「『再生』、或いは『呼び継ぎ』の心」参照)、僕が今迄披露宴でスピーチをした10組程のカップルは誰1人離婚して居ないので、ラッキーと信じたい。J君&Aちゃん、本当に御目出度う!

19:00 渋谷のバーで二次会。今は帰国した嘗てのニューヨークの友人等との、久し振りの再会も楽しい。誠に幸福な1日だった。


11月21日(月)

16:00 表参道ギャラリー・セゾンで開催中の「クリスチャン・アヴァ Beyond the Palettes」を観る。重層の絵具をカットした作品。


11月22日(火)

14:30 トルコ大使館で開催された「ティー・パーティー」に(別に共和党支持者の集まりでは無い)。これは山田寅次郎著「土耳古畫考」の再出版を記念するパーティー。会場では和多利一家の皆さんや、学校の後輩でも有る当代宗徧流家元イスラム美術の専門家大使館文化担当官等と談笑。そんな中、偶々隣に立って居た日本人女性と話して居て、僕が古美術関係者だと知ると、その方が「あら、では私の父をご存知かしら?」と仰る。「お父様は何と云う方ですか?」と聞くと、その名は勿論お会いした事の有る某有名茶道具商Y氏で有った…世間は狭い。

18:30 友人と「ブリジット・ジョーンズの日記:ダメな私の最後のモテ期」を観る。このシリーズは1作目しか見て居ないが、イギリスっぽさは大分薄れた様に思う。然しコリン・ファースはシブく、良い年の取り方をして居る。そして劇中、飛行機事故で死亡したとしてヒュー・グラントの葬式が営まれるが、映画の最後に新聞記事で彼の生存が確認されると云うオチ有り…其処は如何にもブリティッシュ。


11月23日(水:勤労感謝の日

8:00 朝起きて、僕には誰も「勤労」を感謝して呉れない事に気付き、自分の脳と身体に「いつも働いて呉れて、有難う」と呟く。その後お抹茶を頂きながら、DVDで「江戸川乱歩の陰獣」を観賞。あおい輝彦や香山美子の演技も良く、昭和初期の雰囲気が良く出て居た。

12:30 一緒に結婚式に出席した写真家G君と、九段下蕎麦屋「I」でランチ。

14:30 G君を伴い、サントリー美術館で開催中の「小田野直武と秋田蘭画」展を観る。31歳の若さで亡くなった直武の作品は少ないが、実に面白い。直武以外にも佐竹曙山・義躬、司馬江漢等も出て居て、遠近法や陰影法等、秋田蘭画近世洋風画の「苦闘」が偲ばれる、非常に良い展覧会だ。

17:00 G君と共通の友人で現代和菓子職人のSさんを呼び出して、六本木「T」でコーヒー・タイム…序でにマロン・ショートを頂く。然し今年の「マロンちゃん」はイマイチ…もう終わっちゃうし、残念。


11月24日(木)

7:30 朝起きると、外は何と雪!11月の初雪は54年振りだそうで、これは明日が杉本博司演出の朗読劇「肉声」の、初日だからか?(笑)杉本氏は、鎌倉期の木彫「雷神像」を購入してから「天気の神」に祟られる事が多く、例えばニューヨーク茶室の披きの日は、10月なのに50数年振りの初雪猛吹雪、「三番叟」日本公演初日は激烈台風で多くの人が来場出来ず、「杉本文楽」は東日本大震災で中止…そして明日が「肉声」初日…だからに相違ない!

12:00 写真家&ペインターと、銀座の「T」で鯛茶ランチ。久し振りの鯛茶は本当に美味い。

19:00 友人と食事の為、麻布十番のすき焼き屋「K」に行くが、予約が入ってないと云われ立ち往生。困って、何とか席が無いかと交渉して居たら、直ぐ其処に座って居た白髭の老人が僕を見上げ、「あれ、若しかして孫一さん?」と聞くでは無いか!良く見たらその老人は、何とニューヨークを数年前に引き払い帰国したSさんで、嘗てニューヨークで店をやって居たと云う店主とは長年の付き合いだと云う。そのSさんの声掛けで同席させて貰い、美味しいすき焼きを堪能した後は、近所のこれ又元ニューヨーカーが経営するジャズ・バー「T」へ行き、再会を祝した。いやぁ、世界は本当に狭い!


11月25日(金)

15:30 三井記念美術館で始まった、「特別展 日本の伝統芸能展」のオープニング・レセプションへ。本展は国立劇場開場50周年を記念した物で、雅楽能楽歌舞伎文楽・演芸・民族芸能を網羅し、 日本の芸能の真髄に迫る。「観能図」等屏風に良い物が出て居たが、最近マーケットでは風俗画の人気が低いのが残念。

19:00 朗読劇「肉声」を観る為に、青山の草月ホールへ。本作はジャン・コクトー原作、杉本博司演出・美術、平野啓一郎翻案・脚本、庄司紗矢香音楽・演奏、寺島しのぶ出演と云う、豪華且つマニアックな舞台で、第二次大戦前夜、ル・コルビジェ風の館に浮世絵春画収集家(渋井清氏だろう)に拠って囲われた女の、男との電話での会話のみが語られる。その満員の会場には、森美術館理事長・館長や原美術館館長、永青文庫副館長等の美術界の大物達の顔も見えたが、笑いを誘ったのは杉本氏本人に拠る開演前の「携帯アナウンス」…流石ヒッチコック並みの杉本氏、タダでは済まない(笑)。そして本を手にした寺島の演技も(恐らくは、本を手にするが故に難しく為るに違いないが…)、庄司のヴァイオリン演奏も素晴らしかったのだが、個人的に惜しむらくは、庄司のヴァイオリンが劇前、劇中のインターバル、そして最後と、寺島のセリフと一切被る事が無かった事で、電話のベル音以外全く音の無い台詞劇を長時間観るが少々辛かった。然し平野の脚本は、エロティックな表現が多いにも関わらず(事前に知らされ、想像して居た程はエロく無かった)、文学的且つ高貴で、当初から依頼されて居た「三島風」を実現して居たと思うし、背後のスクリーンに写し出された杉本作品も、視覚効果抜群で有ったと思う。最近偶々「陰獣」や「濹東綺譚」を観て居た所為か、戦前の昭和日本を容易くイメージ出来た事も手伝って、才能溢れる両氏を僭越ながら出会わせた結果の本作、嬉しく拝見しました!


そして今僕は香港…来年3月に開催される、藤田美術館所蔵品オークションの下見会が開催中。物凄い人気なので、3月が待ち遠し過ぎる。


−お知らせ−

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい。

タメタメ 2016/11/28 23:01 「野獣死すべし」・・・この映画が出ると黙っているわけには・・・。途中で物語は破たんし、舞台劇のようにセリフの洪水になっていくんだけど傑作ですな。列車の中でのリップヴァンウィンクルのお話のシーンのマネをしたり、放課後に体育館へ行って天井を指さして奇声を発したり・・・やりましたね。麻美女史の撃たれるシーンは日本映画屈指の美しさですよ。さて乱歩はミーハーと言われようとやはり「芋虫」。で、もし読んでないならポウの影響を受けて書いているアンブローズ・ビアスの「ハルビン・フレイザーの死」あたりを読むとよろし。彼の最高傑作は「アウル・クリーク鉄橋の出来事」だけど・・・あれ?この作品、物語構造が「野獣死すべし(映画の方)」に通じるような…以上。

孫一孫一 2016/11/29 09:46 乱歩は多分全作読んで居るよ。「芋虫」は映画化されてるのかな?

タメタメ 2016/11/29 21:16 若松孝二監督の「キャタピラー」・・・でもあれは若松監督の作品かな(この辺は大藪センセイがお怒りだった?映画版「野獣・・・」と同じ構図)。最近時を同じくして乱歩にハマっている人から「蟲」を強く推された。

孫一孫一 2016/11/29 22:15 「人間椅子」も捨て難い…そう云えば、そんな名のバンドも居たなぁ。

大阪・原田大阪・原田 2016/11/30 21:26 桂屋様
お久しぶりです。
私も藤田美術館は好きで良く行かせて頂いております。
間違っていたら大変申し訳ございません。
私が調べたところ12月12日に大阪で下見会があるそうですが
もし宜しければ詳細をお教えいただけませんでしょうか?
ちょうど休みですので
ありましたら万難排してでも
行かせて頂きます。

孫一孫一 2016/12/01 15:13 原田さん、ご無沙汰です。大阪の下見会は、関係者だけでも混雑が予想される為、残念ながら招待客オンリーなのです。申し訳有りません!

2016-11-20

「トランプ効果」…?:秋のメイン・セール結果。

08:43

気が付けばもう11月も半ば過ぎ、ロックフェラー・センターには史上2番目に大きなツリーが立ち、今年も後ひと月半…。

そんな中我が国の首相は「金のドライバー」なる貢物を持って、未だ宣誓も就任もして居ないドナルド・トランプに所謂「朝貢外交」をしに行った。全く以って恥ずかしい。

そこではパフォーマンス好きで自己愛に溢れる首相は大得意だったが、海外のメディアは非常に冷静で、トランプが通訳も用意しなかった事や娘が同席した事等、一向に介して居ないのだろう。ドヤ顔の喧嘩慣れして居ないお坊っちゃまは、何れ百戦錬磨のトランプに痛い目に会うに違いない。

それともう1点云わせて貰えば、首相がもしどうしても今回の会談をやりたかったのなら、もっと隠密に、メディアも気付かない程の「プライヴェート」な会談にすべきだったと思う…Too lateだが。

そのトランプの勝利後急落したニューヨーク株価は、その後ダウ史上最高価格を記録し、円安と日本の株価も復活させた。そして富裕層に好意的なトランプの経済政策は、今週ニューヨークで開催された秋のメイン・セールズにも、好意的な結果を齎したと思う。

そんな各オークション・ハウスの今週のセール結果は、以下の通り。


フィリップス「20世紀&現代美術」ー

イブニング・セール売上:1億1123万9500ドル(約120億円)、売却率92%(34/37)

トップ・ロット:リヒター「Dϋsenjäger」:2556万5000ドル(約27億6000万円)

1000万ドル以上での売却:3点:リヒター、リキテンスタイン、スティ

●デイ・セール売上:981万750ドル(約10億6000万円)

●「20世紀&現代美術」総計:1億2105万250ドル(約130億6000万円)


サザビーズ印象派・近代絵画」ー

イブニング・セール売上:1億5771万4750ドル(約170億3000万円)、売却率79%(34/43)

トップ・ロット:ムンク「Pikene PÅ Broen (Girls in the Bidge)」:5448万7500ドル(約58億8000万円)

1000万ドル以上での売却:2点:ムンクピカソ

●デイ・セール売上:3883万1750ドル(約42億円)

●「印象派・近代絵画」総計:1億9654万6500ドル(約212億3000万円)


ー同「現代美術」ー

イブニング・セール売上:2億7656万750ドル(約298億7000万円)、売却率:94%(60/64)

トップ・ロット:リヒター「A, B, Still」:3398万7500ドル(約36億7000万円)

1000万ドル以上での売却:6点:ホックニー、ウォーホル、バスキア、リヒター2点、デ・クーニング

●デイ・セール売上:8017万9875ドル(約86億6000万円)

●「現代美術」総計:3億5674万625ドル(約385億3000万円)


クリスティーズ印象派・近代絵画」ー

イブニング・セール売上:2億4634万4500ドル(約266億円)、売却率:80%(39/49)

トップ・ロット:モネ「Meule」:8144万7500ドル(約88億円:アーティスト・レコード

1000万ドル以上での売却:4点:モネピカソ2点、カンディンスキー(アーティスト・レコード

●デイ・セール売上:3283万250ドル(約35億5000ドル)

●「印象派・近代絵画」総計:2億7917万4750ドル(約301億5000万円)


ー同「戦後・現代美術」ー

イブニング・セール売上:2億7697万2500ドル(約299億1000万円)、売却率:85%(55/65)

トップ・ロット:デ・クーニング「Untitled XXV」:6632万7500ドル(約71億6000万円:アーティスト・レコード

1000万ドル以上での売却:5点:デ・クーニング、リヒター、ライマン、カリン(アーティスト・レコード)、デュビュフェ

●デイ・セール売上:6146万2250ドル(約66億4000万円)

●「戦後・現代美術」総計:3億3843万4750ドル(約365億5000万円)


と云う事で、4人のアーティストのオークション・レコードを出したクリスティーズが、この秋も「ワールド・リーディングアートカンパニー」の座を守った訳だが、全体的にも高い売却率と安定した売上を記録し、ホッと一息。各オークション・ハウスの週間売上は以下。


フィリップス:1億2105万250ドル(約130億6000万円)

サザビーズ:5億5328万7125ドル(約597億6000万円)

クリスティーズ:6億1760万9500ドル(約667億円)


その意味でトランプの勝利は、約13億ドル(1400億円)をアート・マーケットで費やした「この1週間」に関しては、その効用を発揮したと云って良いかも知れない…そして共和党への政権の復帰は、今回アーティスト・レコードを出したモネカンディンスキー、デ・クーニング、或いは現役最高価格作家のリヒターと云った「マスターズ」へアート業界の資金を集めさせた、保守的な結果だったとも云えるのでは無いか。

9.11の際もリーマン・ショック時も、アートの世界には株の世界から半年遅れて「景気の波」がやって来る。そして人格は兎も角、トランプの登場は日本を含めた世界の美術業界の「トランプ(切り札)」に為るかも知れない。

今世界に君臨する極右・自国優先・排他主義の指導者達に因って、世界が滅びさえしなければ、だが…。


−お知らせ−

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!

2016-11-12

大統領選時に「利休」を観る。

00:23

ドナルド・トランプ大統領選を圧勝した。

ヒラリーが負けた事には確かに驚いたし失望もしたが、2大政党に因る揺り戻しや変化を求めての「これが、アメリカなのだ」感も有ると同時に、英国EU離脱決定の時と似た、何処か「成る程」感も有る。

それは今回の選挙の年齢別獲得票を見れば明らかだが、中年世代以上がトランプを支持して居て、これは英国国民投票時と同じ…要は「良かった昔に戻りたい」票では無かろうか。加えて支持する候補が居らず、「トランプが嫌いだから、ヒラリーに入れた」人よりも、「ヒラリーが嫌いだから、トランプに入れた」人の方が圧倒的に多かったらしいから、ヒラリーが同じ民主党支持者(バーニーの支持者)や、一般女性有権者にも徹底的に嫌われて居た所以だろう(あれだけ女性蔑視発言をして居たトランプと、女性からの得票率は拮抗して居るのだから)。

投票日当日、僕は夜通し速報番組を見て居たのだが、その夜最も印象的だったのは、トランプがヒラリーからの祝福電話を受け、家族共々勝利宣言スピーチの為に壇上に向かう際のトランプの顔だった。何故なら彼の顔は苦戦の末の勝利にも関わらずパッとせず、何時もの強気で傲慢な面は片鱗も無く、云ってみれば「ヤベぇ、勝っちゃった…どうしよう…」と云う風にさえ見えたからだ。

それは、若しかしたらトランプはどうせ決戦では負けると思って居て(決戦迄来ただけで、充分元は取れるし、将来も儲かる)、が故に、其れ迄の1年半暴言やパフォーマンスを繰り返して来たのでは無いかと正直思った位で、その意味では先日当選後初めてオバマと会見した時の「猫」振りも理解出来るが、此の様に当選後豹変すると為ると、暗殺の危険性を含めてこれからが余計心配に為って来る。

が、それでもダウ株価は最高値を叩き出し、公約の1つで有る富裕層への減税は、金がより大きな投資(当然「美術品」も含む)に向かう可能性を十分に秘めて居るので、これも支持された理由の1つで有る事は理解出来る…なので「隠れトランプ」為る人々は実際隠れて等居らず、英国EU離脱の時と同様、僕の周りにはちゃんと存在して居たのだ。

さて、今迄アメリカ大統領選の敗者はその敗戦スピーチに於いて、勝者を「これからは彼(勝者)が私達の大統領だ」と云って来た…あのトランプにですら、で有る。でも其処が僕には凄く羨ましくて、ウニャウニャした選挙制度国民投票も経ずに政治の長に為り、勝手な事ばかりして居る我が国の首相より余程マシで気持ちが良いし、羨ましい(序でに反トランプ・デモも、韓国の反朴デモも羨ましい)。

これで強行採決したTPPも今の所意味が無くなり、赤っ恥の首相には良い薬…そして日本の堕落を阻止するには、選挙制度と教育の改革が真っ先に必要だと云う事を云って置きたい。

その選挙で大わらわだったニューヨークの美術界は、秋のメイン・シーズンに入り、オークションハウスでも近現代美術の下見会が始まった。今回はスーパー高額作品は無く(今となっては、2−30億円位では「スーパー高額作品」とは云わなくなった…嘆)、ここ数年でも大人しい感じだが、はてさてトランプ効果が早々と出るや否や…。

そんな中僕はと云うと、海外での販路拡大を狙って東京都職員が連れて来た、伝統工芸の職人さん達にクリスティーズを案内し、その後彼等のプレゼンアジアソサエティーの人やデザイナー等4人と聞いて評価したり、アート・フェアのレセプションに出席したりして居たが、仕事に関しても素晴らしいニュースが飛び込んで来た。

それはここ数年顧客から預かって居た高額日本美術作品が、日本の某公立美術館に購入決定された事で、この「日本の『公立』美術館に因る『直接』購入」は、クリスティーズ史上如何なる美術品でも恐らく初めての事(少なくとも東洋美術では初めて)。それが今迄叶わなかったのは、購入に関する稟議や評価委員会等で時間が掛かる事や、ドル建ての会計等が原因だったのだが、今回あの手この手で漸く成立に漕ぎ着けた。

詳しくは云えないが、この作品は購入決定をした美術館の文字通り「大目玉」に為る作品…そしてこの仕事は僕のキャリアの中でも、当然「初めて」の事なので非常に誇らしいし、長く辛抱して頂いた持主の顧客にも、これで面目を果たす事が出来た。皆様に感謝、感謝で有る。

と云う事で、本題…時差ボケで夜中に起きて仕舞った時間を使って、日本から持ち帰ったDVD「利休」を観た。

1989年勅使河原宏監督の名作「利休」は、当時の日本の芸術の粋を集めた、豪華且つ品格の高い作品で、先ずはスタッフが凄い…原作:野上彌生子、脚本:赤瀬川原平、音楽:武満徹、衣装:ワダエミ建築監修:谷口昌生、茶道具監修:林屋晴三、装飾監修:高津利治。

因みに装飾監修の故高津利治氏は時代劇等で装飾を担当する「高津商会」の2代目で、京都「高津古文化会館」の前館長…その「ホンモノ」の大コレクターが劇中使われる美術品の担当をするのだから、ホンモノ志向に決まって居る(劇中登場する「柳橋図屏風」や軸、織部茶碗等もマジに素晴らしい)。

そしてキャストも然り。三國連太郎山崎努と云ったプロの映画俳優陣は云う迄も無いが、各界からの出演者がこれまた豪華で、梨園からは幸四郎吉右衛門橋之助(現芝翫)・八十助(故三津五郎)・獅童日本舞踊からは三代目花柳寿楽(青山裕一)、能楽界からは観世栄夫、美術界からは元永定正・飯田善國・堂本尚郎細川護煕、その他花師の栗崎昇、現MIHO MUSEUM館長の熊倉功夫、モデルの山口小夜子迄、本業で無くとも演技も無難な上に、何時どの場面で登場するか分からないので、如何なる「日本伝統文化芸能数寄」も画面から眼が離せない。

そんな「利休」は、有名な「朝顔」のエピソードから始まり利休自刃迄を描くが、利休に纏わるエピソード総浚いの中でも、長次郎等伯と云った同時代アーティストの登場も日本美術ファンには嬉しい。

またこの「利休」が公開された1ヶ月後には、熊井啓監督のもう一つの利休映画「千利休 本覚坊遺文」が公開されて居るが、本作品の方が熊井作品よりも全体的に芸術性が高くて画面構成も美しく、最近の「利休にたずねよ」を含めた三利休物、即ち三國・三船・海老蔵の中でも、やはり三國の利休が最も本物の利休像に近かったのでは無いかと思う。

序でに「お茶繋がり」で云って置けば、来年4月東博で待望の「特別展 茶の湯」が開催される。この展覧会では名碗・名器は勿論、近代の数寄者の四大巨人、即ち藤田香雪・益田鈍翁・平瀬露香・原三渓の「眼」も取り上げるらしく、これも楽しみ過ぎる。

然し今回の大統領選の時期に、偶々僕が「利休」を再見して思ったのは、桃山時代の日本と21世紀のアメリカの違いは有れ、政治に於いても「お茶」の力は偉大だと云う事(共和党ティー・パーティを思い出した)、そして一国を統治するのは並大抵では無い、と云う事だったのでした。


−お知らせ−

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!

2016-11-06

「道成寺」断想。

10:49

数日前にNYに戻って来た僕は、時差ボケのボーッとした頭をハッキリさせる為に、最近巷で流行って居る2つの事象を検証してみた。

先ずは、滔々機内で観た「君の名は」。物語は良く出来て居るが、「時をかける少女」と「転校生」の合成焼き直し感も有るし、正直このアニメ映画が100億円も稼いだ理由が、僕には未だに分からない。「シン・ゴジラ」の時もそうだったが、此れは日本人の芸術的リテラシーが下がった所為なのか、はたまた僕が年を取ったからなのか。

そしてピコ太郎の「PPAP」…初めて観た時は「これの何が面白いのだろう?」と思ったのだが、ビルボードチャートに入ったりして世間が余りに騒ぐので、何度も観て居たら結局ハマって仕舞った。

このピコ太郎、リズム感が良くて、良く見るとダンスも何気に上手く、一寸MC・ハマーを彷彿とさせる(褒め過ぎか…笑)。また或る記事に因ると彼は自称53歳との事で、嘗てテクノバンドでキーボードを弾いて居た事も有るらしいから、年代的にもテクノダンス・ミュージックの申し子で有っても不思議は無い。

其処でふと思いついたのが、ピコ太郎には自民党の「TPP強行採決揶揄した、「PPAP-TPP」を是非とも発表して貰いたい(笑)…「TPP」にはヒラリーも反対して居るのだから、シニカルパロディ・ソングとして再びアメリカでもヒットするのでは無いか?

此処でそんなピコ太郎と同い年の僕の、今回の日本滞在終盤でのアート行動をメモして置こう。

先ずは展覧会…三井記念美術館での「松島 瑞巌寺伊達政宗」展では、作行きの良い平安初期の仏像群に眼が止まる。

また根津美術館の「円山応挙 写生を超えて」展では、個人蔵の掛物が多く出品されて居たが、流石「雪松図」と「藤花図」の両屏風と「七難七福図巻」が飛び抜けて素晴らしい。然し応挙は、色々な意味で難しい絵師だと再認識する。

現代美術関係では、SBIオークションの下見会を観に代官山ヒルサイド・フォーラムへ。最近ではシンワや毎日オークション等でも日本の現代美術を多く扱う様に為って来たが、SBIのラインナップは買い易い作品も多く、面白い。加藤泉元永定正の作品に惹かれるモノが有ったが、勿論財布は云う事を聞かない(涙)。

8階へと移ってから初めて訪れた、ギャラリー小柳で開催中の「かんらん舎(1980-1993):Daniel Buren/Tony Cragg/Imi Knoebel」展は、伝説の画廊とそのオーナー大谷芳久を、大谷が認めた当時未だ若手だった3人の現代美術家の作品を通して回顧する試みだが、その作品達は四半世紀前の作品とは思えない程新しい…これぞ目利きの眼の勝利。序でにギャラリー奥の居心地の良い「サロン」も拝見したが、此処で一杯傾けながらアートを観たら、思わず買って仕舞うコレクターも居るに相違ない。

そして岡本太郎記念館で始まった「舘鼻則孝 呪術の美学」では、舘鼻の工芸的作品と岡本作品との力強いコラボを堪能。特に2階の「橋」を挟んだ生と死の部屋の対比は、面白い。この辺に関しては、僕自身が12/14に「生」部屋でアーティストと話すので(下記「お知らせ」参照)、割愛…トーク、乞うご期待です。

さて此処からが今日の本題…「道成寺」で有る。

実は最近、僕は能の「道成寺」を2回観て居る…いや、正確には「1.2」回位、と云った方が良いかも知れない。それは何故かと云うと、その内の「0.2」回分が、最近DVDを入手した映画「天河伝説殺人事件」内での「道成寺」だからだ。

1991年市川崑監督の本作は、能の宗家の跡取り問題をフィーチャーした殺人事件で、吉野天川村弁財天を祀る天河神社を舞台とする探偵モノ。その劇中、観世榮夫監修・銕仙会協力の下舞われるのが「二人静」や「羽衣」、「賀茂」(?だと思う)、そして「道成寺」だ。この「道成寺」の「鐘入」の最中に、シテを務めて居た宗家の息子が毒殺されるのだが、そのトリックは観てのお楽しみ。

そして残りの「1.0」回とは、この間の日曜日に宝生能楽堂で開催された、同銕仙会主催の「八世観世銕之丞静雪 十七回忌追善能」で、現銕之丞師ご子息の観世淳夫師が舞った「道成寺」。

祖父追善弱冠24歳の孫が「道成寺」を舞うプレッシャーは相当だと思うが、乱拍子を打った大倉源次郎師を始めとする一流の囃子方にもサポートされ、舞台は若々しく力強いものと為った。この「道成寺」は、「石橋」等を務め終えた能楽師が目出度い披きとして演じる大曲でも有るのだが、女の底なしの情念や未練を表現するこの能は、人生、いや恋愛経験の豊富さも必要とされるので、淳夫師が男性として成長した後にまた観てみたい、と云うのが本音だ。

さてこの「道成寺」は、「熊野」「恋重荷」「葵上」等と共に、僕が最も好きな能の1つ。そしてこの物語は、上に書いた女の情念のみならず、メタモルフォーゼの物語とも云えると思う。それは三島の「近代能楽集」内の「道成寺」でも明らかな様に、「鐘」(三島版では「巨大な衣裳箪笥」)と云う「『密室』での変身」が重要なテーマだからだ。

そして「道成寺」は、恐らくは「シテが『1人』で面と装束を替える」唯一の能で有ろう事から、この密室内での変身(と鐘内の準備)は、自分1人で行われる「秘儀」とでも呼びたく為る。

その意味で、「天河伝説」でも殺人動機が単なる宗家跡目争いでは無く、男女の報われぬ愛が故で有る事、また鐘の中での「秘儀」の最中の殺人と云う設定は、殺人者と死者との因果と未練を表現して居て、良く考えられて居ると云えよう。

云われてみれば、自己の意識無意識に関わらず、女性は一夜にしてグレゴール・ザムザ的変身をも遂げる…そして「乱拍子」に拠って表現される、人知れず行われる「秘儀」の直前の静寂と徐々に狂って行く姿は、不穏且つ不気味で有るが故に、秘儀を終え変貌した女を見た男に、激烈な恐怖とエロティシズムを感じさせるのだ。

と、分かった様な事を書いて来た僕だが、10回以上も「道成寺」を観ても、半世紀を生きても、未だ女性の事はサッパリ分からない…が、「道成寺」を観続けて来た僕は、今此処でこれだけは云える!

若い男性諸君には「女性は一瞬にして変貌する」、「女性の変貌前の静けさに気をつけろ」、序でに女性には「松のほかには花ばかり」と、過大な期待を持たせても危ない(笑)。

また女性諸君には、今話題に為って居る「電車内での化粧」問題に就て、「化粧と云う女性の『変貌の秘儀』は、公共の場で無く『密室』で行われるべきだ」と云う事だ(キリッ)。

が、秘儀を終え変貌した女性は、美しく妖しく、そして恐ろしい程にirresistible…「道成寺」とは、女性と云う生き物に就て、余りにも含蓄の多い能なので有る。


−お知らせ−

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!

ymichisymichis 2016/11/27 22:10 お久しぶりです。来月23日に福山で大島衣恵さんが「道成寺」です。今年「道成寺」を中心に観ることにしていて、4回目です。こちらに書かれていることも鑑賞の参考になります。来年は何を中心に観ようかと思っていますが、やはり「道成寺」で行こう、と決めました。

孫一孫一 2016/11/27 22:52 ymichis様、ご無沙汰しております。そうですか、衣恵さんが道成寺を!…観たかったです。「道成寺」、矢張り最も魅力的なお能の一ですね。

2016-10-30

「悲しきマロンちゃん」的近況。

23:55

10月25日(火)

20:30 ANA便が、珍しく30分早く成田着。機内では碌な映画が無かったお陰で、懐かしのドラマ「ロング ・バケーション」を遂に視聴完了。最終話、瀬名のコンクール決勝でのシーンに不覚にも感動して仕舞ふ。然しこの時代のドラマには夢や希望も有って、ドラマ初主演のキムタクも中々良い。到着後はディレクターT氏の出迎えを受ける…ここ10ヶ月程、T氏にはかなりの時間会って居るので、或る意味彼女・女房並みとも云える(笑)。一緒に神田明神にお詣り後、帰宅。


10月26日(水)

6:00 時差ボケの所為で夜中に何度も起きて仕舞い、それが故に良く眠れず、仕方無く起床。バナナ豆乳青汁シェイク、サプリメント、お抹茶を頂く。

9:00 某雑誌への執筆の参考にする為、ビデオしか持って居なかった篠田正浩監督作品「写楽」(1995)と、溝口健二の「歌麿をめぐる五人の女」(1926)をアマゾンで注文。特に「写楽」は良く出来た映画だが、本作には当時漸く頭角を現し始めて居た、現代の「耕書堂」ことTSUTAYAが制作プロデューサーに入って居て、増田社長命名のその社名の由来も再確認出来る。

12:00 都内某ホテルの寿司店「N」で、VIP顧客ご夫妻とランチ。その後甘味処で「栗あんみつ」を頂き、今年も「マロンちゃん」のエンジンが掛かる(笑)。

14:00 某浮世絵商に赴き、最近興味を持って居る横浜絵を観る。一川芳員のモノが面白い。横浜絵は桃山時代の南蛮江戸後期の江漢以来の「西洋文化上陸」絵画なので、先祖を横浜に在った外人相手ビジネスに持ち、今外国で日本美術を扱う僕が、この分野に年々親しみを持ち始めたのも宜なるかな。

16:30 飯倉近辺の行きつけのフレーマーを訪れ、頼んで居た某額装作品の箱を受け取る。然し、日本で箱を作ると何で「黄色い袋」が付いて来るのだろう…「黄色」でなければいけないのか?赤とか白とか?

17:30 六本木某所にて、来日中のコレクターJ夫妻とミーティング。J氏は今年88歳で、日本の学者達が米寿のお祝いをしてくれるそうだ。その後ディナーは夫妻行きつけの「回転寿司」へ。昼夜異なった種類の、異なった美味しさのお寿司を頂いた…これも日本の食の醍醐味。


10月27日(木)

10:00 注文した「写楽」と「歌麿をめぐる五人の女」のDVDが届く。「写楽」のジャケットの葉月里緒奈が美しい。余りの嬉しさに、追加で市川崑の「天河伝説殺人事件」と「獄門島」、勅使河原宏の「利休」を注文する。能と俳句茶の湯日本文化を映画で観るのは愉しみの一つ。

12:00 都内某ホテルの天麩羅店「Y」にて、母親と昼食。相変わらずの母と、亡き父の誕生日(文化の日)に親戚を招いての食事会に就て打ち合わせをする。

15:30 オフィスに寄った後、同僚と某私立美術館の親会社を訪ね、担当者とミーティング。先は長い。

17:00 元イッセイ・ミヤケのデザイナー藤原大氏からの招待を受け、資生堂で始まった氏がディレクターを務める展覧会、「Link of Life エイジングは未来だ」展のオープニング・レセプションへ。この展覧会は、資生堂の社員と社外のクリエイター研究者とのコラボレーションが、アート作品として展示される面白い企画。

19:00 銀座を後にし、今度はワタリウムで開催中の「ナムジュン・パイク展」のカタログ出版記念レセプションへ。レセプションには磯崎新氏や平凡社社長等名士も来て居て、本展覧会の共同キュレーター渡辺真也君と和多利さん姉弟に拠る、美しい力作カタログの出版を祝う。展覧会後期も素晴らしく、アップリンクで上映された渡辺君が監督をした映画「Soul Odyssey」の評判も良いみたい。プロデューサーの1人として嬉しい限りだ。

20:30 ワタリウムに一緒に行った友人と、青山「D」でディナー。相変わらず男前のシチリア料理に舌鼓を打つ。帰り際、送りに出て来たIシェフから「D」の開店10周年記念パーティーの招待を受け、「もう10年か…10年はひと昔、夢だ夢だ」と熊谷直実の様に呟く。


10月28日(金)

10:00 東博に向かい、開催中の特別展「禅ー心をかたちにー」と「平安の秘仏滋賀櫟野寺の大観音とみほとけたち」を観る。両方とも素晴らしい展覧会だが、個人的には「禅展」の後半が一番良く、矢張り室町絵画が素晴らしい。一点吃驚したのは、展覧会のカード・図録共「仙僉廚「僊僉廚筏されて居た事で、何時からこの表記に為ったのだろう?確かに仙僂蓮⇔彼の人生終了直前迄「僊僉廚般松茲辰燭蕕靴い里世、今迄「仙僉廚把未辰突茲燭里鯤僂┐襪里蓮意識の上でも難しい。

12:30 代官山の行きつけ「O」で、オムライスと「栗のスフレ」を頂く。死ぬ程旨い「O」の栗のスフレは、「マロンちゃん」な僕に取っては遣り過す事の出来ない季節の風物詩なのだが、何しろ毎年2〜3週間程しか出さない。で、数年前にボンヤリして居てミスして仕舞った年が有って、その年の秋からの1年間は恐ろしい後悔に苛まれた…ので、今年は電話でいつ迄店で出されるかを確認の上食べに行った訳だが、その事を知ったムッシュ(シェフ)が悔いの無い様にと、何と「ダブル」で出して呉れて、大感激!またムッシュ情報に拠ると、今年は栗が不作で、「O」で出す期間も可なり短く為って仕舞ったらしい。成る程そう云われれば、今年はコンビニにも栗のデザートが少ない気がするのだが、如何だろうか?嗚呼、栗不足だなんて、マロンちゃんには悲し過ぎる…。

15:00 京橋の古美術店を訪ね、仏像を幾つか拝見する…が、交渉は上手く行かず、残念賞

19:00 翌日の「海外から見た禅画:白隠と仙僉廚亡悗垢襯譽チャーの為の準備をする。人前で90分間も話すのは、何度やっても緊張するなぁ。


10月29日(土)

3:30 時差ボケが取れず、何とこの時間に起きて仕舞ふ。今日はレクチャー、にも関わらずだ…大丈夫か、俺?

12:00 某TV局と、骨董フェア「目白コレクション」に向かう。「目白コレクション」は毎年行って居るフェアで、廉価な骨董や民芸品が多いが、時折掘り出しっぽいモノも有る。今回は幸い(笑)欲しいモノは無かったが、昔僕が持って居た仏像が出て居て、ビックリ…嬉しい再会で有った。

13:30 骨董フェアの後は、永青文庫で始まった「仙僖錙璽襯鼻廚魎僂帽圓。此処では仙僂痢屬罎襯ワ」絵画を堪能したが、白隠と仙僂箸浪燭醗曚覆2人なのだろう。

15:30 朝日カルチャーセンター新宿で、「海外から見た禅画:白隠と仙僉廚搬蠅気譴織譽チャーを行う。玄人・素人さんを含めた熱心な生徒さん達には、此方の方が元気付けられた。受講して頂いた皆さん、有難うございました!講義の終わりには、朝カル担当のAさんから来年東博で開催される「運慶展」のレクチャーを依頼され、受講者の皆さんにも発表される。来年はその「運慶展」と、奈良博での「快慶展」の揃い踏み… 仏像好きには堪らん1年に為りそうだ。

18:00 TV局ディレクターと共に、天王洲の寺田アートコンプレックスに向かう。僕が今回初めて行く事に為ったこの場所には、アーティスト・スタジオと白金から移転して来た山本現代、URANO、児玉画廊、そしてYUKA TSURUNO等のギャラリーが入って居て、この晩はオープン・スタジオとギャラリーのオープニング・レセプションに乱入。URANOの淺井裕介展「胞子と水脈」では作家とも話す事が出来、以前都現美で観た「泥の絵画」を再見して、その迫力に唸る。児玉画廊伊藤隆介「天王洲洋画劇場」は、その技術とコンセプトが面白く、特に「エクソシスト」が気に入った。が、一番驚いたのは山本現代で始まった西尾康之展「REM」。今回の西尾の新作は、レム睡眠をテーマとした3DCG作品の体験展示だが、虚無感漂う「数値的造形」は生々しくエロティックで、何処かロマンティック。素晴らしい作品だと思う。

20:30 白金の焼肉屋「J」で、ディレクター氏と作家と食事。美味過ぎる焼肉各種・冷麺カレー迄を堪能…これで、明日も頑張れる!

22:30 余りの満腹と睡眠不足で撃沈。至福と云えば至福だが、年といえば、年(涙)。


明日からは京都主張。久々の祇園が僕を待って居る…かも知れない(笑)。それに付けても今年のマロンちゃん、一体どう為っちゃうんだろうか…(涙)。


−お知らせ−

*10月15日発売の雑誌BRUTUS 834号「現代アートと暮らしたい!」を、ほんの少しお手伝いしました。内容充実の本号、是非ご覧下さい→http://magazineworld.jp/brutus/

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにて、リヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!

文庫の中の人文庫の中の人 2016/10/31 23:08 時差ボケのところ、仙?展へもお運びいただき、ありがとうございます <(_ _)> メジコレ会場で孫一さんと肘をこづき合った「まさかのリプロダクション」仏は当家へ連れ帰ってしまいました。

孫一孫一 2016/11/01 05:40 文庫の中の方様、そうでしたか!モノは場所が変わると違って見える事も多いので、また拝見させて下さい。然し骨董市はヒトもモノも「出逢いの場」ですね〜。仙?展も楽しかったです。

まめほうしまめほうし 2016/11/01 19:07 お忙しい中、目白コレクションへお運びいただきありがとうございました。以前お持ちになっていたという仏像を連れて出展していた者です(^.^)
こんなところで…と驚きの再会だったご様子は、まるで以前お付き合いのあった彼女との偶然の再会シーンのようにも映りました(笑)
また次回の「目白コレクション 春」へもお出かけくださいませ。

孫一孫一 2016/11/01 21:49 まめほうし様、そうでしたか、私とダイアリーご存知でしたか!いや仏様との再会、吃驚致しました。変わらぬ可愛さでした。あの後眼の利く知り合いから、「あの仏様、ニューヨークで以前観た、孫一さんのに似てたよね」と云われ、これまた吃驚致しました。春も楽しみにして居ります!

モノ好きモノ好き 2016/11/04 10:50 孫一さん、こんにちは。いつも楽しくブログを拝読しております。

さて、「黄色い袋」の件ですが、かつては防虫効果のある鬱金染の袋を使っていたことの名残りではないでしょうか?

呉服屋さんが着物を包む風呂敷がなぜ黄色いのか?と不思議に思った時、昔は虫がつかないように鬱金染の風呂敷を使っていたからだと祖母が教えてくれたことがあります。

ですので、もしかしたら、作品を納める箱もかつては鬱金染の袋に包まれていたのが、今では「黄色」の色だけ形骸化して残っているのでは?と思い、大きなお世話ながらも書き込みさせていただきました。

そして、この季節限定の美味しいマロンちゃん報告、今年も楽しみにしています!

孫一孫一 2016/11/04 14:29 モノ好き様、あぁ成る程、鬱金染めの名残ですか!そう言えば 前に「虫除け」の意味がある、と聞いた事が有りましたが、その時に何故「黄色」が虫除けなのか?と思った事を思い出しました。「名残」とはまた日本的ですね…有難うございました!マロンちゃん、今年も頑張ります!