桂屋孫一のニューヨーク・アートダイアリー

2017-03-16

速報!「宗器寶繪ー藤田美術館藏中國古代藝術珍品」が、アジア美術オークション世界新記録達成!

15:05

先週16度まで気温が上がったニューヨークは、週末に「冬時間」を終え「夏時間」に為った途端に、マイナス8度まで冷え込み、選りに選って月曜夜から火曜に掛けての猛吹雪と出された予報の為に、「藤田美術館セール」前日の火曜日はクリスティーズサザビーズも休業、下見会は中止され、火曜日に予定されたオークションも全て翌日に延期と為った。

そんな中、その月曜日に下見会を訪れた中国人顧客達は、口を揃えて僕に「今回の天候不順は、全て君等の売る陳容の『六龍図』のドラゴンの所為だ!」と云い、「そしてこの大雪が降るのが火曜日で、君達のオークションの有る水曜で無いのは、ドラゴンが運ぶ幸運だ!」とも語った。

では、その余りにも中国的で神話的な予言は当たったのか?…と云うと、大当たり!

クリスティーズニューヨークにて、15日夜7時から始まった「Important Chinese Art from the Fujita Museum/宗器寶繪ー藤田美術館藏中國古代藝術珍品」は、信じられない位の活発なビッドの応酬で、計31点の内2点だけ売れなかったが(その2点もアフターセールで直ぐに売れた)、総計2億6283万9500ドル(約301億2000万円)を叩き出した。

この金額は、今迄の如何なる東洋美術の1回のセールでの世界新記録で、当然僕が担当したオークションでも今迄で最高額。その上出品がたった31点だった事を鑑みると、今の現代美術印象派のイヴニング・セールにも全く引けを取らない。そしてもう一つ出た新記録は、如何なる青銅器でも最高額と為った「方尊」の、3720万7500ドル(約42億円)だった。

8点出た1000万ドル超の作品の内、トップ・ロットは伝陳容の作と云われる乾隆帝旧蔵の「六龍図巻」で、4896万7500ドル(約55億5100万円)、以下上記方尊、方罍と続き、 僕の好きだった「瓿」と「羊」は、各々仲良く2712万7500ドル(約30億7500万円)で売却された。

では、何故こんなにスゴい結果と為ったのかと聞かれれば、先ずは矢張り「品質」と「来歴」で、乾隆帝所持・藤田美術館蔵の強力な来歴と類い稀なクオリティーが、マーケットに於けるフレッシュネスと共に、中国人バイヤーを最大限に魅了したのだろう。更には、コンサヴァティヴなエスティメイト…「お値打ち感」は何時でも購買欲を唆る。

そして何と云っても今回の最大の勝因は、ニューヨークというロケーションだったのでは?とも思う。ニューヨークは歴史上、世界のアート・マーケットの中心地…其処で、然もイヴニングセールで出される作品は如何なる分野のアートでも世界最高峰に相違なく、況してやこのニューヨークで世界最高品質の美術品を買う歓びは、中国人でも西洋人でも何物にも代え難いし、特に中国の人に取っては、遥々ニューヨークから母国文化財を買い戻すと云う、強い意気込みも生まれたのでは無いか。

更にもう一点付け加えれば、今回の「売却目的」への賛同が有ったかも知れない。それは特に中国メディアからのインタビューの最中に感じた事なのだが、前回此処に記した藤田美術館の未来の為の売却目的は、彼等に非常に理解され肯定的だったからで、これはメディアのみならず、コレクターでも然り。

僕は常に中国メディアには、「日本には中国美術収集とその保存の長い歴史が有り、それは日本人の中国美術への『敬意』と、後世に残さねばと云う責務感から発生して居る」と説明して居るが、これこそ藤田美術館も長い年月を掛けて証明して来た事なのだ。

セール中、「昭和初期に藤田家が3度行なった入札も、実はこんな感じの売れ方では無かったのでは?」等と思いながら、この成功裏に終わった仕事に携わった全ての人達の協力とご縁に感謝し、歴史上に残るオークションを開催出来た歓びを分かち合いたいと思う。

そして藤田美術館が近く彩りを新たにし、また訪れる日を鶴首しながら、取り急ぎ此処にご報告迄。

然し凄いオークションだった…準備から本番迄、凄過ぎてホント〜に疲れました(笑)。


ーお知らせー

*3月16-17日(木-金)、The Kitano Hotel New Yorkに於いて、「桃源茶会」が開催されます。今年は濃茶席を千宗屋氏、薄茶席を谷松屋戸田商店が担当されます。お問い合わせ・お申し込みはMs. Mariko Ikeuchi (212-885-7072)、若しくはRSVP@kitano.com迄。

*3月27日(月)22:25-23:14、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」に出演します→http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/メディアには見せられないモノ・人・事が多過ぎて、どんな事に為って居るのか全く判りませんが(笑)、お時間の有る方は御笑覧下さい。

きらきら星きらきら星 2017/03/23 19:34 ご無沙汰しております。オークションの大成功おめでとうございます!チャイナマネーはスゴイですね!

たまたま水曜日からキタノに泊まっていたので桃源茶会に参加、至福のひとときを過ごさせていただきました。ニューヨークは1年半ぶりでしたが本当に寒かったですねえ!でもオークションの値段を聞いてもうビックリ!寒さが吹っ飛びました。藤田美術館のあの土蔵を思い出して感慨深いものがありました。

若宗匠の濃茶は最高に美味しかったし、戸田さんが持参されたお道具類も素晴らしいものでした。孫一さんは前日に参加されていたそうでお目にかかれず残念でした。(クリステイーズにも行ってみましたが閉まっていましたので)

27日のTVも楽しみにしています。(我が師匠の)ますますのご活躍をお祈りしてます。K.O

孫一孫一 2017/03/24 01:52 きらきら星様、大変ご無沙汰致して居ります。桃源茶会、いらっしゃたのですか…良い茶会でしたね!美術館セールも、数十年に1回の「これぞオークションの極み!」と云う感じで、観られた方はラッキーだったと思います。TVはお暇でしたら…。

きらきら星きらきら星 2017/03/28 11:43 度々すみません。

NHKの番組とってもカッコ良かったです。いつもどおりの自然体の孫一さんが映っていたのが何よりうれしかった。プライスさんのコレクションが日本に里帰りという話もワクワクです。楽しみにしてます。(桜間道雄先生の晩年の弟子だった)私には真理さんと能面に再会できたのも思いがけないことでした。
それにしても藤田のオークション会場に行きたかったなあ!あの場所で「おめでとう!」を言いたかったです。

いつか孫一さんと歌舞伎座や能楽堂でひょっこりお会いできることを楽しみに!。

孫一孫一 2017/03/28 12:31 きらきら星様、ご覧頂き有難うございました。僕は俳優にはなれませんね笑。
また何処かでお目に掛かれますのを、楽しみにしております!

モノ好きモノ好き 2017/03/28 20:18 いつもブログを楽しく拝読しております。プロフェッショナル拝見しました。ゾクゾクワクワクしました。この企画受けて下さったお陰のゾクゾクワクワクです。どうもありがとうございました!孫一さんのプロフェッショナリズムと真心・心意気を経たプライスさんのコレクションを日本で拝見出来るのを今から楽しみにしています!

孫一孫一 2017/03/28 22:03 モノ好き様、番組を見て頂き、有難うございました!The WhoとRCに助けられて居ます。これからも応援宜しくお願い致します、

フテネコフテネコ 2017/03/29 05:19 孫一さん、はじめまして!昨日たまたまテレビで拝見させて頂きました。眠気がすっかりとんで見入ってしまいました。美術品の奥深さ、スケールの大きさ、緊張感に本当にゾクゾクしました! お仕事に対する姿勢、考え方にもとても共感しました。素晴らしいです!
自分の仕事に対する姿勢を見つめなおし、最近行っていなかった美術館巡りをまた再開したいと思います!
きっかけを作って頂いてありがとうございます。
私もNYに移り住んであっという間に18年経ちました。
今でも大好きな街です。孫一さんお仕事頑張ってくださいね、応援しています!!

孫一孫一 2017/03/29 07:35 フテネコ様、メッセージを有難うございます。僕もNY17年、この街が大好きですし、この街で会う人やアートに、いつでも自分を見つめ直す機会や勇気を貰っています。フテネコさんも頑張って下さい!

2017-03-10

"Important Chinese Art from the Fujita Museum" オークション開催。

21:09

帰って来た途端に寒く為ったニューヨークでは、春のアート・シーズンが始まった。

そんな週末に行って来たのは、Pier 92-94で開催された「Armory Show」。今回は日本からも三瀦さんや大田さん、小山さん等が出展し、特にミヅマが展示した会田誠の未だ制作中(?)の大作「Jumble of 100 Flowers」は、2m x 17.5mの大壁画調の作品で、作家自身が1人でこの大作を描いて居る処等は、某作家の作品に対する或る意味アンチテーゼと取れなくも無いが、良く見るとかなり細かい日本的細工も仕込まれて居て、見応え充分の作品。

フェア全体では「絵画」のヴォリュームが増えて居る気がして、これは回帰的傾向なのかも知れないが、安易なコンセプチュアル・アートやヴィデオ・アートに食傷気味な僕には誠に望ましい。会場に人は沢山入っては居たが、はてさて売上は如何に?と云った感じで有った。

さて最近困ったニュースが入って来て、それは今年1月に改正されたワシントン条約。今迄美術品に於いても、象牙や鼈甲、珊瑚等の輸出入が粗100%無理に為り、象牙に至ってはアメリカ国内での販売も許されない。

そんな中ローズウッド(紫檀)とエボニー(黒檀)の2種の木材が、かなり強い制限下に置かれて仕舞った…これは例えば中国家具や、掛軸の軸先、七宝焼青銅器の台、又は箱迄、輸出する前に確認をせねばならないと云う事に為る。種類にも拠るだろうが、CITESを取るには最低4ー5ヶ月掛かるので、オークションに出品するにも時間を見ねばならない。最近は螺鈿もチェックを受けると云うし、東洋美術の輸出入が益々難しく為る…自然野生動物を大切にする事に全く異議は無いが、東洋美術従事者が困る事には違いない。

それはさて置き、春のAsian Art Weekが愈々開幕…今回のニューヨークの大目玉は、勿論クリスティーズで15日に「イヴニング・セール」として開催される、藤田美術館所蔵の中国美術セール「Important Chinese Art from the Fujita Museum/宗器寶繪ー藤田美術館藏中國古代藝術珍品」だ!

1954年、大阪市内に設立された藤田美術館は、藤田組や藤田観光等を興した藤田家の長、実業家で近代の大コレクター、藤田傳三郎を祖とする美術館。

今巷で話題の「耀変天目茶碗」や「紫式部日記絵詞」等の国宝9点、重文52点を含む数千点を誇る館のコレクションは、 仏教美術茶道具・鎌倉江戸絵画迄バラエティに富み、実際「指定品」数に於いて日本の如何なる私立美術館の中でも最多で有る事実からしても、数と質、名実共に「日本一」と云っても過言では無い。

さて、この藤田美術館が今回収蔵する中国美術品を売却する事にしたのには、ハッキリとした理由と目的が有る。それは、

1. 美術館建物の老朽化に拠る、新美術館施設の建設。2. 新築された最新技術を持つ美術館と為り、今後「日本美術」の美術館として、より安全且つ長期間文化財を保存し、次代へと継承する役割を果たす。

為のファンディングだ。

こう云った美術館改築、設備充当、収蔵品の修復、新収蔵品の購入等の用途の資金を得る為の収蔵品の「売却」は、例えばメトロポリタン美術館ボストン美術館等の米国の美術館では毎年の様に行われて居るのだが、日本の美術館はその意味では大変遅れて居ると云わざるを得ない。

クリスティーズは2008年に根津美術館所蔵の「清朝時計」を売却し、現在の隈研吾氏に拠る館改築の為の資金作りのお手伝いをさせて頂いたが、今回の藤田美術館セールは作品数も多く内容も濃く、その意味で今回の藤田美術館の「決定」は、21世紀の日本の美術館運営の先駆けと為る、重要且つ画期的な物と云えると思う。

では此処からは、そのオークションのスニーク・プレビューを。

出品作の内訳は、元・明の龍泉窯青磁が3点、北魏・隋・唐の石仏3点、商・西周時代の青銅器が6点、西漢から清時代に掛けての文房具が7点、そして絵画が唐から清時代の12点の、総計31点。

その中でも特筆すべきは絵画青銅器で、先ず青銅器は「方尊(ほうそん)」・「方罍(ほうらい)」・「瓿(ほう)」・「觥/犠尊(こう/ぎそん)」の4点が、何れもワールド・ベスト・クオリティで素晴らしい…が、個人的には非常に珍しい羊型の觥と、恐らくは確認されている物の中でも3番目に大きいと云われる瓿が好きだ。

「鳳龍文羊觥(犠尊)」(→http://www.christies.com/lotfinder/lot/a-highly-important-and-extremely-rare-bronze-6061294-details.aspx?from=salesummery&intobjectid=6061294&sid=2193dfc3-a446-4226-9117-921b8fc7a3df)は酒を入れる祭器で、その顔や眼は何処かピカソの「牛」やエジプト美術の動物を思い出させる。全身に彫られた文様も精緻で、全体的にも小さいがピリッとして居て、非常にクオリティの高い、お金が有ったなら買って側に置き、ずっと撫でて居たくなる様なカワイイ作品。

また「犠首饕餮虺龍文瓿」(→http://www.christies.com/lotfinder/lot/an-extremely-rare-massive-bronze-ritual-wine-6061293-details.aspx?from=salesummery&intobjectid=6061293&sid=30930ed7-8dec-452a-b4c3-c9d7b022cf89)は、これだけ大きいのに作風が全く間延びして居らず、美しく風格が有る。

実はこの「瓿」には兄弟作品が存在して居て、それは現在香雪美術館に収蔵されて居る「瓿」(→http://www.kosetsu-museum.or.jp/collection/kougei/kougei03/index.html)。では、何故香雪「瓿」が藤田「瓿」の兄弟だと分かるかと云うと、香雪作品は藤田作品と形も彫りもそっくりだが一回り小さく、が然し、この香雪「瓿」には「藤田箱」が付いて居て、元々この2作品はペアとして藤田家に有った事が判る。

然も当時村山(香雪)家にお出入りだった某有名茶道具商に拠ると、何とその茶道具商のお祖父さんが「瓿」を自転車の後ろに括り付けて、藤田家から村山家迄運んだのだと云う(今は保険額が怖くて、とても出来ない:笑)…明治・大正期の大コレクター同士の、何ともノンビリとした良い話で有りませんか!

そして絵画。長く宮廷に有った事が確認されて居る六巻の画巻が、今回の絵画セクションで最も重要な作品群なのだが、その中での白眉はと聞かれれば、陳容作と云われる墨画巻「六龍図」(→http://www.christies.com/lotfinder/paintings/chen-rong-as-catalogued-in-shiqu-6061275-details.aspx?from=salesummery&intobjectid=6061275&sid=30930ed7-8dec-452a-b4c3-c9d7b022cf89)に為るだろう。

この作品を観ると、後の雪村や雲谷派の作品、光琳、延いては横山大観の重文画巻「生々流転」の祖として、本作を捉える事さえ出来る。幽遠で力強い構図と筆力、吹墨の技法等も含めて、何と云うか「水墨画の極み」的作品で、エスティメイトは120万〜180万ドルと為ってはいるが、「龍」と云う画題、乾隆帝の来歴も手伝って、恐らく「エスティメイトの10倍以上に為るのでは?」と予想される程のスター・ロット。

またこの「六龍図」には、これら六巻の画巻が中華民国4(1915)年に、醇親王府から山中商会への受け渡されたと云う「レシート」が付いて居るので、歴史的価値もかなり大きい…どんな値段が付くか、乞うご期待だ!

と云う事で、後はオンライン・カタログ(→http://www.christies.com/salelanding/index.aspx?lid=1&intsaleid=26905&saletitle=)を読んで貰うとして、オークションは来週の水曜日夕方7時、下見会は10日からセール当日の5時迄開催して居るので(入場無料)、お時間の有る方は是非…藤田美術館の大名品を通して、古代中国清朝宮廷に想いを馳せる、またと無いチャンスなのだから!


ーお知らせー

*3月12日(日)15:00-16:00、クリスティーズニューヨークの社屋に於いて、武者小路千家家元後嗣千宗屋氏に拠るレクチャー「Quintessence of Asian Art – The Fujita Museum Collection」(東洋美術の真髄ー藤田美術館コレクション)が行われます。入場無料・全席自由ですので、下見会と共に皆様のご来場をお待ちして居ります。

*3月13日(月)18:30-19:30、ジャパン・ソサエティにて、同上千宗屋氏に拠る「The Subtle Art of the Japanese Tea Ceremony」と題された講演会が開催されます。詳細はこちら→http://www.japansociety.org/event/sen-sooku-the-subtle-art-of-the-japanese-tea-ceremony

*3月16-17日(木-金)、The Kitano Hotel New Yorkに於いて、「桃源茶会」が開催されます。今年は濃茶席を千宗屋氏、薄茶席を谷松屋戸田商店が担当されます。お問い合わせ・お申し込みはMs. Mariko Ikeuchi (212-885-7072)、若しくはRSVP@kitano.com迄。

*3月27日(月)22:25-23:14、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」に出演します→http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/メディアには見せられないモノ・人・事が多過ぎて、どんな事に為って居るのか全く判りませんが(笑)、お時間が有る方はご覧下さい。

2017-03-04

「La La Land」に観た、今日本に必要なモノ。

13:54

重要なミーティング2つと、レクチャーをする為に短期で日本に行って来た。

その日本では「森友学園」問題が国会で質疑されて居たが、安倍総理には本当〜に愛想が尽きる。夫人は「私人」だと言い張るが、私人だろうが公人だろうが、こんな大きな問題に説明責任が有る事位火を見るよりも明らかで、詭弁も大概にして貰いたい。

また政治的圧力無しで国有地の価格が「8億」も安く為るならば、誰だって買いたいに決まって居るのにも関わらず、国として調査をするとも言明もせず、夫人に釈明もさせない…アメリカだったら、この時点で一発公聴会モノなのに、甘っちょろい話極まりない。

さて今回僕が招聘されたレクチャーは、イギリスのラグジュアリー・トラベル会社の主催で、コンラッド東京のアネックスを借り切って世界中からのバイヤーを集めた、謂わば「展示会」のイヴェントとしての催しで、聴衆は外国人4:日本人6の割合(→https://www.travelvoice.jp/20170302-84180)。

今回のレクチャラーは僕を含めて2名で、もうひと方はコラムニスト且つ「世界のベスト・レストラン50」の日本評議委員長をされて居る方。この方のレクチャーはヴィデオやパワーポイントを駆使した、流石21世紀的で然も「食」と云う興味深い分野の話だったので、レクチャー・タイトルの様に桃山時代を標榜し、自分の舌と口と声だけで「Zipangu Revived」と題された講演をする僕としては、一寸おっかな吃驚だったのだが、当日の朝観た或る番組で、ファッション・デザイナー山本耀司氏が「コンピューターを信じるな、先ず疑え!」と強調して居た事を胸に、心強く登壇。

冒頭に「私は今回、私の口以外何も使用せずにレクチャーするので、一生懸命聞くか、確り寝るか何方か選んで下さい(笑)」と云ったお陰か、海外から見た日本文化、外国人の日本美術趣味、福田美術館や江之浦測候所等のラグジュアリー外国人への将来的オススメ・スポット、ホンモノ志向の重要性の追求等の内容だったレクチャーを、200名近い聴衆の方々にメモを取ったりして真剣に聴いて頂いた。質疑応答も講演後の質問も多かったので、少しは役に立ったのでは無いだろうか…と自画自賛で幕を閉じました。

閑話休題。前回、北斎の娘お栄の事を此処に書いたが、今回の帰りのANA便で、このお栄を主人公としたアニメ映画百日紅〜Miss HOKUSAI〜」がヴィデオ・プログラムに入って居るのに偶然気付き、観てみる事にした。

そもそもアニメが大の苦手な僕が(ジブリですら1本も観て居ない)、此処半年で2本もアニメを観るなんて奇跡的なのだが(因みにもう1本は「君の名は」)、お栄が主人公なら話は別だ!

この「百日紅さるすべり)」は、何と杉浦日向子作の漫画が原作だそうで、北斎を始めとし、お栄、渓斎英泉、歌川国直、葛飾北明、魚屋北渓等が登場する、江戸庶民の生活感溢れる作品だ。小説「眩」で英泉と恋に陥ちたお栄が、本作では北渓に恋心を寄せるのも面白い。

このアニメ映画は、「クレヨンしんちゃん」の制作グループが手掛けたとの事で、何処か大人向けに出来て居て、海外でも上映され受賞もしたらしいが、他のお栄作品と違う点は、北斎のもう1人の娘、つまりお栄の年の離れた妹が盲目の少女として登場し、ヒューマン・ドラマ化されて居る所だろう。

そしてもう1点興味深かったのは、北斎の「百物語・さらやしき」のアイディアに為ったで有ろう、吉原の「花魁ろくろ首」を始めとする百鬼夜行妖怪が登場するオカルトな箇所で、これは流石、元荒俣宏夫人だった杉浦の原作の為せる技に相違ない。

世の中に、こんなにお栄の事を気にして居た人が居た事には正直驚いたが、此れも「肉食系女子」時代の賜物かも知れない。そう為ると次は「百福図」を描いた暁斎の娘、「暁翠」の出番か?…と思わなくも無い。誰か暁翠の事を書いてくれませんかね?川鍋楠美暁斎記念館館長も、お元気で頑張ってらっしゃる事ですし…。

では、此処からが真の本題…吃驚する程再び寒く為って居たニューヨークへの同じ帰り便で、2度目の鑑賞をした「La La Land」で有る。

本年度アカデミー賞で、作品賞は逃した物の6部門を獲ったこの「La La Land」には(逃した理由も何と無く判る)、過去の名作ミュージカル映画へのオマージュがふんだんに使われ、本作で史上最年少タイ記録監督賞を獲ったデミアン・チャゼルの脚本は、最後の最後でその輝きを見せる。

また主演の2人の演技が各々素晴らしく、当初エマ・「ワトソン」がキャスティングされたらしいが、この「夢のハリウッド」映画ではエマ・「ストーン」の起用が大正解だったと思うし、元々好きだったゴズリングの演技は、「ブルー・ヴァレンタイン」並に良かったと思う。

そしてこの映画を見終わって、アメリカン・ドリームに代表される強い「ポジティヴネス」こそが、今日本に一番欠けて居るモノだと感じたのだが、そう強く思ったのには、実は村上春樹の新作がタイムリーにも刊行された事と関わりが有る。

(此処から先のダイアリーは、「ハルキスト」対応して居りませんので、悪しからず)

そもそも村上春樹の小説に長年共感出来ず、「1Q84」でこの「剽窃作家」に絶望した僕は(拙ダイアリー:「『1Q84』読了と、今此処に在る危惧」参照)、「騎士団長殺し」は未だ読んで居ないし、読む事も無いかも知れない。が、どうせ透明で神経過敏でモテモテの「僕」が、複数の女性と散々セックスを楽しみ、自己愛に塗れ、簡単な事をさも意味有りげに、長々と哲学チックに書いて居るのでは無いか?と疑わざるを得ない…さて読んだ方、如何でしたか?

「外に出る勇気」や「ポジティヴネス」、そして「明るい未来への希望」と「他者との積極的な関係性の開示」…今の日本に最も欠けて居るモノが、「La La Land」には有る。

最近読んだ、セックス・シーンが皆無なのに愛が溢れ、現実的且つ最後に希望の光が覗く平野啓一郎の恋愛小説「マチネに終わりに」と、恐らくは好対照な村上春樹の新作…何方に今日本人が共感すべきかは、云う迄も無いだろう。その意味で、「La La Land」の様な映画を今作れる日本人は皆無に違いない…寂しい限りで有る。

そしてニューヨークでは、春のAsian Art Weekが愈々始まる。

次回のダイアリーは、歴史的なオークションに為る可能性大な、「藤田美術館セール」に就て…乞うご期待!


ーお知らせー

*3月12日(日)15:00-16:00、クリスティーズニューヨークの社屋に於いて、武者小路千家家元後嗣千宗屋氏に拠るレクチャー「Quintessence of Asian Art – The Fujita Museum Collection」(東洋美術の真髄ー藤田美術館コレクション)が行われます。入場無料・全席自由ですので、下見会と共に皆様のご来場をお待ちして居ります。

*3月13日(月)18:30-19:30、ジャパン・ソサエティにて、同上千宗屋氏に拠る「The Subtle Art of the Japanese Tea Ceremony」と題された講演会が開催されます。詳細はこちら→http://www.japansociety.org/event/sen-sooku-the-subtle-art-of-the-japanese-tea-ceremony

*3月16-17日(木-金)、The Kitano Hotel New Yorkに於いて、「桃源茶会」が開催されます。今年は濃茶席を千宗屋氏、薄茶席を谷松屋戸田商店が担当されます。お問い合わせ・お申し込みはMs. Mariko Ikeuchi (212-885-7072)、若しくはRSVP@kitano.com迄。

*3月27日(月)22:25-23:14、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」に出演します→http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/。どんな事に為って居るのか全く判りませんが(笑)、お時間が有る方はご覧下さい。

ymichisymichis 2017/03/04 23:41 こんばんわ。機会があれば、アニメですが「この世界の片隅に」も観てくださいませ。アメリカにいる人は「君の名は」を好まれるようですが。広島人として。漫画もあります。

孫一孫一 2017/03/04 23:54 ymichis様、ご無沙汰しております。「この世界の片隅に」、評判は聞いております。確かその作品も機内プログラムに入って居た様な…次回是非観てみます!

2017-02-24

娘・絵師・アート・ディレクター…その名は「お栄」。

09:59

例年に無く暖かいニューヨークに、悲しいニュースが流れて来た。鈴木清順監督が亡くなった…93歳だった。

僕に取って鈴木清順と云えば、何と云っても「ツィゴイネルワイゼン」と「陽炎座」だが、清順監督は女優もさる事ながら、原田芳雄松田優作、そして「夢二」の沢田研二等、男優の使い方が上手いと思う。

そんな鈴木清順は、大好きだった近年の「ピストル・オペラ」、そして俳優として出演した「ミロクローゼ」(拙ダイアリー:「出でよ、『熊谷ベッソン」!:『ミロクローゼ』@Japan Society」参照)が僕の記憶に残って居る最期だが、実は個人的に俳優としての鈴木清順を思い出す作品が別に有って、それは1996年の「必殺、主水死す」だ。

この「必殺!主水死す」は、ご存知TV「必殺シリーズ」全盛期の映画作品で、仕置人にはお馴染みの藤田まこと三田村邦彦中条きよし、常連の菅井きんや白木万理も出て居るのだが、さて我らが清順先生はと云うと、映画のハナから「殺害死体」役で出て来て、然もその役柄は何と「葛飾北斎」なので有る。

武家のお世継ぎ争いに巻き込まれた清順先生演じる北斎は、人探しの似顔絵を描く様に依頼された末殺されて仕舞う。そしてその犯人探しを主水に依頼するのが、今回のダイアリーの主役、美保純演ずる処の北斎の娘「お栄」なのだ!

さて今回僕がこのお栄を取り上げた理由は実はこの他にも有って、それは今偶々読んで居る小説、朝日まかて著「眩(くらら)」の主人公もお栄、最近久し振りにDVDで観た新藤兼人監督作品の「北斎漫画」でも、大好きな田中裕子がお栄を演じて居たから。

この「北斎漫画」でのお栄は、北斎の娘以外にも北斎作品の「アート・ディレクター」役割を果たしても居るし、恋女房的存在でも有る。また「眩」では、渓斎英泉に仄かな恋心を抱く絵師としてのお栄も描かれて居るが、そのキャラクターは男勝りで破壊的だ。

さてお栄、別名葛飾応為のはっきりとした現存作品は少なく、応為の絵画と云えば例えば太田記念美術館所蔵の「吉原格子先之図」の様に、洋風画的な「陰影」を用いたモノが有名だが、僕がキャリアの中でラッキーにも扱った2点は、或る意味お栄の性格が最も出て居る作品だったと思う。

其の内の1点は、分かって居る応為落款の有る作品としては最大のモノで、現在クリーヴランド美術館所蔵となって居る、絹本著色掛幅の「関羽割臂図」(→http://www.christies.com/lotfinder/lot/katsushika-oi-operating-on-guanyus-arm-1340833-details.aspx?from=searchresults&intObjectID=1340833&sid=63845826-4010-4a94-8696-b369c0526bca)。

中国故事に基づいた、血に塗れ迫力溢れる本作品は、元高級外車販売麻布自動車が持って居た麻布美術工芸館の旧蔵品だが、とても女絵師に拠るモノとは思えない。1998年のオークションで、4万から6万ドルのエスティメイトに対して、16万7500ドルの高値で売れた作品だ。

そしてもう1点は、父北斎の三十六景を彷彿とさせる、現在個人蔵の「竹林富士図」。まるで南国の椰子の木の様な竹林の向こうに富士が聳え立つ構図は遠近法を用いて居て、洋風画の要素が極めて強く、父親への挑戦とも受け止められる作品だと思う。この作品は10年位前にオークションに出したのだが、何故か売れなかった…買っとけば良かった(笑)。

日本近世美術史上、清原雪信や池玉瀾、浮世絵では山崎龍女等、文献にも出る程の女絵師は数少ない。その中でもこの応為ことお栄の存在は、大作家の娘で有り父親の作品のディレクター、そして女流絵師で有るに留まらず、「近代女性の走り」としても重要な存在なのだ。

勇敢で男勝りで、流行に早く好奇心旺盛、困苦や欠乏に平気で耐えられる、親父殿に迄サジェッションをする顎の出た娘…今で云う「肉食系女子」お栄。

大変な女性だが、魅力的でも有る(笑)。

2017-02-15

信仰と勧善懲悪、そして新しい「アイ」のかたち。

18:46

今回の日本滞在も終盤戦に入り、先週末も展覧会やコンサート、舞台鑑賞のアート・ライフも充実度を増す。

展覧会の方は東京都庭園美術館「並河靖之七宝明治七宝の誘惑ー透明な黒の感性」、原美術館エリザベスペイトン:Still life 静/生」、そしてエルメスでの「曖昧な関係」展を観覧。中でも並河七宝ペイトン展が良かった。

村田理如氏の尽力で、最近漸く日本でも大人気と為った明治七宝だが、その代表格並河靖之の展覧会は会場との親和性も手伝って、豪華の一言。七宝技術に於いて「漆黒のバックグラウンド」を初めて確立した並河の作品は、例えば墨絵と琳派と云った、ミニマルとデコラティヴの両輪を持つ日本美術の正統なる潮流の上に在る事実を、華美な装飾、余白を用いた構図やクロワゾニスム、そして伝統工芸的超絶細密技工で証明する。

一方ペイトンは、現代具象美術作家の中でも僕が最も好きな作家の1人で、それは彼女の描くポートレイトが「イラストレーション」の方向へ倒れ込みそうに見えても、確りと「アート」に踏み止まって居るからだ。

今回の展示での発見は、ペイトン技法…板をキャンバスに貼り、それに油彩で描いて居るが、側面に垂れた絵具を敢えて拭わず、画面の平面性に対して作品としての立体感を持たせる工夫がされて居て、作家の「手」をも感じる事が出来る、良い展覧会だった。

またアートの合間には、銀座山野楽器で開催された、友人のクラシックギタリスト益田正洋君とリコーダー奏者のミニ・コンサートへ。益田君のラテンの血が騒がせるピアソラ等の曲を楽しんだが、個人的にはリコーダーの音色がどうしても好きに為れず….何故なんだろう?

で、此処からが本題。今日は最近体験したシネマ&ステージの事を…先ずはスコセッシの新作、遠藤周作原作の話題作「沈黙」で有る。

中学生だったかと思うが、未だカトリック系の男子付属校に通って居た頃、僕はこの「沈黙」を読んだ。そして大きな共感と感動を得たのを覚えて居るが、今回の映画化には監督がスコセッシだと云う事も手伝って(僕は個人的に、スコセッシを買って居ないのだ…)、ニューヨークで本作の予告編やTVCMを観ても、ずっと「?」マークが消えなかった。

が、豈図らんや、スコセッシ版「沈黙」は中々良く出来て居て、それは特に主演のアンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーの演技に因ると思うが、長時間尺にも関わらず全く飽きず、観て居る無信仰の僕ですら、何度も何度も踏絵を強要され、棄教を迫られて居る気がした程だった。「信仰」の意味を深く考えさせられる、必見作品で有る。

そしてステージ1つ目は、六本木歌舞伎第二弾の「座頭市」。何時もはジャニーズが公演をしていると云う「Ex Theater Roppongi」で開催された、海老蔵寺島しのぶ主演の新時代歌舞伎だが、今回は脚本リリー・フランキー演出三池崇史と云う豪華版。

三池の映画版「座頭市はたけしの好演も有って、良く出来た勧善懲悪作品として好きだったので、期待して行ったのだが、不安だったのは海老蔵の演技…然し今回の海老蔵は最近の歌舞伎座での彼とは異なり、活き活きとして居て、此処何年でも最高の演技だったと思う。海老蔵は古典よりも、こう云った舞台の方が性に合って居るのだろう。

また観客席からも「音羽屋!」との掛け声が掛かって居た、その血を引く寺島しのぶも流石の熱演で、本作も彼女が演じた2役を寺島で無い女優が演じたならば、僕の嫌いな、何時も通りの陳腐極まり無い所謂「ニュー歌舞伎」に為って仕舞って居ただろう。その意味でこの「座頭市」は、僕に取っては今迄でも唯一許せる「ニュー歌舞伎」と為ったので有る。

そして今回の大トリは、現代美術家杉本博司新作能「利休ー江之浦」@MOA美術館能楽堂。今回は、現在T大大学院で能と庭を研究している若き友人R君と東京駅で待ち合わせをし、観光客で満員の新幹線に乗って、いざ出陣。

美術館館長や大コレクター達、アートディーラーやアーティスト、はたまた首相経験者迄で超満員の能楽堂で始まった「利休ー江之浦」は、杉本博司企画・監修、馬場あき子作、浅見真州演出亀井広忠囃子作調、千宗屋茶の湯監修、と云う最強スタッフ、そしてシテ利休の霊を浅見真州、ツレ細川忠興観世銕之丞、アイに石田幸雄と千宗屋と云った豪華キャストで始まった。

秀吉小田原攻めで著名な「天正庵」を舞台に繰り広げられる「利休」の前半は、静かで緊張感溢れる…が、最大の見所は、 舞台に立てた木板に提げられた一重切竹花入に、老人が椿を投げ入れる場面だ。

その竹花入は杉本氏が最近入手した、利休作・宗旦極・萬野美術館旧蔵の逸品、銘「江之浦」(命銘は杉本氏)で、同じく利休が作り、古渓宗陳に贈られ、益田家に伝来した「おだはら」が今回借用出来なかったが故に、杉本氏の前に忽然と現れた「運命のモノ」で有る。

またこの「利休ー江之浦」の「間(アイ)」は、今までの能には曾て無かった演出で、それは茶人千宗屋が舞台上で実際に点前をしたからだ!間狂言の話の後、静々と現れ、敷かれた畳に座った茶人は、遠目からも明らかに良いモノと見えた水指を取り出し、粛々と点前をする…恰も利休の霊が降霊した、厳粛な瞬間だった。

これは例えば黒沢の「蜘蛛巣城」で山田五十鈴が抱える根来瓶子、或いは「利休にたずねよ」で海老蔵が点てた長次郎「万代屋黒」の様に、モノも人も「ホンモノ」が登場する緊張感に溢れた、能の「アイ」の新しい形と為ったので有る。

さて観覧後の感想はと云うと、「利休ー江之浦」はその作行の精巧さで、新作能に有りがちな睡魔にも襲われず、素頓狂な演出や謡も無く、古典能かと見間違う程の出来で有った!

敢えて欲を云えば、前場に動きが少ないのとアイでの点茶が少々長い事、後場序破急の急がそれこそ「急」過ぎるのと、序の舞を始め舞が少ない事、また最後利休の霊が幕に消えた所で終わった方が、余韻が残る気がした事位だろうか。

然しそれ等を鑑みても、この新作能は実際実に素晴らしい出来と言わざるを得ず、それは僕の半世紀の能鑑賞人生で観た数多くの如何なる新作能でも、この「利休ー江之浦」だけが唯一もう一度観たい能だからだ!

公演後は杉本氏デザインの新MOA美術館を観覧し、その後は熱海某所で開催された「利休降霊記念大カラオケ会」(笑)にて、御大と「金がない」を熱唱…草葉の陰の利休さんも、この企画にはさぞ驚いたに相違いない。

そんな「新しい『アイ』の形」を知った僕は、今機内…NYへと戻る。

タメタメ 2017/02/15 19:44 「沈黙」良かったでしょ?私も同じくスコセッシは買ってないけど、ここでのスコセッシは称賛されるべきだよね。人は自分の周囲が「暴力装置」と化したとき(それは時には極端な肉体的苦痛という形ではなく無言の圧力ということもある)自分の信じるものを捨てないでおけるものか・・・という遠藤周作センセイによる究極の問いかけをスコセッシが真摯に受け止め本当に丁寧に映像化していた。個人的にはイッセー尾形の演技が「野蛮で無知な未開人」VS「啓蒙的な殉教者」というステレオタイプの単純化された構造を排除して物語に深みを与えていたと思います。エンドクレジットまで素晴らしいのでぜひ映画館で観て欲しいよね。

孫一孫一 2017/02/15 21:34 音楽が少なかったのも、個人的には良かったなぁ。