桂屋孫一のニューヨーク・アートダイアリー

2017-01-15

34年前のメリー・クリスマス。

16:32

ニューヨークの気温は−8度迄下がり、滅切り寒く為った。

就任を約1週間後に控えたトランプの、色々な意味での「勢い」は衰えず株価も好調な侭だが、オバマの「フェアウェル・スピーチ」を聴くと、如何に両者の間にインテリジェンスの差が有るかが判る。そしてそのオバマの実績をどうこう云う人も多いが、個人的には此れだけの大統領を持ったアメリカ人は誇りに思うべきだと思うし、オバマは単に非白人系初の大統領だと云う事のみならず、歴史上に残る人物だと信じて止まない。大統領、大変お疲れ様でした!

で、今日は先ずは「ラウンジシンクロニシティ」のお話。

飛行機での移動とは面白い物で、同じ路線に何度も乗って居ると、期せずして連続的に同じ知り合いと同じ便に為る事が有って、それはNY在住者であればNY⇄日本での仕事と移動のサイクルがお互いに同調して居るらしく、NYや東京の街中でどんなに会って居る人でも、空港ラウンジで全く会わない人も居る事を考えると、全く以って不思議で有る。

そんな「ラウンジシンクロニシティ」に関する少々身につまされる(?)話を、海外某都市在住のアーティストA氏から聞いた。A氏は仕事柄、その都市と東京を1年でもかなりの回数往復する所謂「フリークエント・フライヤー」なので、マイレッジのグレードも最高、ビジネスクラスに乗る際も当然「ファーストクラスラウンジ」で時間を過ごす事が出来る。

さてそのA氏には、同じ都市に住む宿命のライバルとでも呼ぶべきアーティストB氏が居て、この2人のアートは全く異なる正反対の種類の物で有り、その生き方も含めて、お互いを全く相容れない。が、普段その街でも日本でも決して会わないそんな2人に限って、東京便を待つラウンジでバッタリと一緒に為る事が多いのも宿命(笑)…これは、そんな或る日の物語。

ラウンジでA氏は、宿敵B氏の姿を見つける。オトナなA氏はB氏に勿論会釈位はするが、遠く離れた席に陣取り、会話等は決してしない。そして時間が来て、搭乗開始のアナウンスが有ると、2人は徐に立ち上がり各々ゲートへと向かったのだが、そのゲートから飛行機迄の間にA氏は怒り心頭と為って仕舞う…それは最高のマイレッジ・グレードにも関わらず、日頃慎まやかなA氏がビジネスクラスへ向かったのに対し、その日B氏はファーストクラスへと向かったからだ!

「むぅ…同じファーストクラスラウンジに居たのに、何で奴がファーストで、俺がビジネスなのだ?同じ飛行機で彼奴の『下』に乗る事等、出来ん!」

と怒りの収まらないA氏は、地上スタッフを捕まえると、急ぎファーストへのアップグレードを頼む…何と云っても、マイルは腐る程持って居るのだから。

そしてA氏は何万マイルかを使って、無事ファーストクラスへとアップグレードをし、B氏には澄まし顔を決め込んで東京迄のフライトを楽しんだ訳だが、A氏が僕にこの話を語った時、彼はこう最後に付け加えたのだった。

「でもね桂屋君、 僕があのBに対抗する為に、今迄一体どれだけ『無駄なマイル』を使ったか分かるかね?」(笑)

閑話休題。さてA氏とは全く違う状況だが、今年から本仕事の傍らK大学で客員として教える事に為った僕は、今回の日本からの帰りも、此処の処良く一緒に為る「教授」と再び同便搭乗と相成った。

そして昨晩は、その「教授」の若き日(当時31歳!)の姿を観る事に…ジャパン・ソサエティで上映された、「Merry Christmas, Mr. Laurence」(「戦場のメリークリスマス」)で有る。ご存知「戦メリ」は1983年大島渚作品。僕はこの映画をリアルタイムで観て居るのだが、それがもう34年前、大学に入った年だったとは驚きだ。

出演者も教授を始め、たけしやジョニー大倉内田裕也内藤剛志室田日出男等当然だが皆若くて、金田龍之介も懐かしい。が、今回この作品を34年振りに再見して驚いたのは、本作には女性が1人も出て来ない事と、爆撃等の所謂戦争シーンが全く無い事、そして全編を通じてそこはかと無く感じるホモ・セクシャル感だった。

また外国人俳優達の演技が、主演・脇役を含めて総体的に良く、此処まで自然に外国人俳優を外国映画の様に使い熟せた日本人監督は、大島以外には居ないのでは無かろうか?それ程この作品での大島の演出は、輝いて居ると思う。

そして、デヴィッド・ボウイ。彼が亡くなった時、 僕は彼とクリスティーズロンドンのウェアハウスで、2人っきりでこの映画の事を話した事を思い出したのだが(拙ダイアリー:「手と指の力」参照)、この作品中のボウイは当時36歳(因みにたけしとボウイは同い年)で、軍服を脱いで背中を見せるシーンも艶かしく、それから6年後に会った彼の未だ瑞々しかった姿を思い出させた。

34年と云う年月は長い…ボウイも大島も死に、たけしは顔の形を変える程の事故に遭い、教授は現在闘病中。そして世界はこの映画中のハラとローレンスの様に、未だ最終的に理解し合えずに居る。

当時大学生に為ったばかりだった自分を思い返す事は困難だし、そんな事に興味も無い。が、34年前の「戦メリ」が、日本映画としては時代を先取りした作品で有った事だけは確認出来た。

ラストで「Merry Christmas, Mr. Laurence !」と、或る意味「救い」を求めたので有ろうたけしの顔が、今は街やテレビでも余り見掛けない、極めて「日本人的」な顏だった事も…。


−お知らせ−

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、2017年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。

ミャウミャウ 2017/01/17 16:13 なんて懐かしい。私が映画館で戦メリを観たのは高校生の時でした。
初めてデヴィッド・ボウイを知り、彼が出ている映画を全部観ました。
レコードも買いましたが、役者としての彼の方が好きでした。
あの頃、北野武が世界的な映画監督になるなんて誰が予想したでしょうか。
また、ピアノを習っていたのでサウンドトラックの楽譜を買って弾いていました。
三島由紀夫を読むきっかけにもなりましたし、いろいろと感慨深い映画でした。

孫一孫一 2017/01/17 22:55 本当ですよね!この作品を観た時に、たけしがヴェネチア映画祭で賞を獲る大監督に、教授が映画音楽でアカデミー賞やグラミー賞を獲る程の世界的アーティストに為るなんて、誰が想像出来たでしょうか⁉ 全ては「戦メリ」から始まってますね。ボウイも含めて大島渚の炯眼に恐れ入ります。

2017-01-07

年末年始藝術備忘録。

22:33

新年明けまして、御目出度う御座います。本年もこのダイアリー、引き続き宜しゅうお頼み申し上げます!

という訳で、氷点下ニューヨークに戻って来た(因みに今日の天気は雪、最低気温は−8度也)。年末年始は下に記す様に、日本でノンビリとアート三昧だった訳だが、大晦日の「第九」除夜の鐘撞き→初詣と云う流れは中々良かったので、若しかしたら恒例化するかも知れない。

然し日本の正月TV番組は「お笑い」ばかりで、初めの内は僕なんかにも物珍しくて面白いので観て居たが、余り同じ様な面子と下らなさに辟易して仕舞う。もっと文化的な企画は出来無い物だろうか?が、その中でも「しくじり先生」に出て居た関西のお笑い芸人夫婦(名前は忘れた)の回には、不覚にも感動して仕舞って、それは不幸のドン底に有っても尚夫婦の愛の在り方が当にストレート且つ、明るく欺瞞の無い物だったからだ。こう云う夫婦って良いなぁ、と感じ入った。

そんな中、僕がこの年末年始に経験したアートを分野別にメモして置こうと思う。因みに今回展覧会は入って居ない…日本は、年末年始やって無い美術館が多過ぎるのだ!(怒)


・映画

●「ブルーに生まれついて」:2015年、ロバート・バドロー監督作品。主演のイーサン・ホークが白人ジャズ・トランぺッター、チェット・ベイカーを演じる伝記映画。高校生時代、僕がジャズを聴き始めた頃、最初に買った数枚のLP盤の内の1枚が「Chet Baker Sings」だったのだが、彼のクールなペットの演奏と特に「My Funny Valentine」の何とも切ない歌声は、マイルスの例えば「Kind of Blue」とは対極的に僕を魅了したのだった。本作ではイーサン・ホークがかなり良い味でベイカーを演じ、ミュージシャンはジャンキーで有っても魅力的で有り得る、と云う事実を証明して居る。また本作中でマイルスを演じるケダー・ブラウンは、以前見た「マイルス・アヘッド」のドン・チードルより余程マイルスらしく感じられた。チェットを彷彿とさせる囁き声でイーサン自身が歌って居る、「My Funny Valentine」や「I've Never Been in Love Before」等の音楽もサイコー!

●「追憶の森」:此方は機内で観た1本で、2015年ガス・ヴァン・サント監督作品、マシュー・マコノヒー渡辺謙が主演を務める。ガス・ヴァン・サントは僕の好きな監督の1人で、特に「ドラッグストア・カウボーイ」や「グッドウィル・ハンティング」、「小説家を見つけたら」「ミルク」が素晴らしい!…と思っていたのだが、本作はそれらとは趣を異にする、極めてプライヴェートで暗い物語の作品だ。然し、カンヌで公開時に大ブーイングだったらしいこの作品を僕は結構好きで、それはマコノヒーの演技に尽きる。鑑賞後、「『最高の死に場所』を見つけるのは、甚だ困難な事に違いない」との想いが増すが、それでも探す価値は十二分に有ると思う…人生の最後とは、それだけ重要なのだから。

●「ジャック・リーチャー:Never Go Back」:此方も機内での1本。前作同様トム・クルーズ主演、監督は「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィック。元憲兵隊犯罪捜査官の流れ者ジャック・リーチャーは、英国人作家リー・チャイルドに拠って創造されたが、まるでアメリカン・ハードボイルドの私立探偵その物。ロバート・デュヴァルも出て居た前作も機内で観たのだが、僕はこのリーチャー役は、何気にトム・クルーズの最高のハマり役の1つでは無いかと睨んで居る。若い頃からハードボイルドはかなり読んだが、僕的にはやはりスペンサーマーロウアーチャーで、このリーチャーも中々イイ感じ。

●「千利休 本覺坊遺文」:DVDで観た1本。最近、勅使河原宏監督作「利休」と田中光敏監督作「利休にたずねよ」を観たので、もう一つの利休作品、と云う訳。本作は1989年西友(!)製作の熊井啓監督作品で、井上靖原作、奥田瑛二主演。利休は三船敏郎が務め、織田有楽には萬屋錦之介秀吉芦田伸介が演じる。生花指導に川瀬敏郎、時代考証はお馴染み高津商会の高津利治がクレジットされて居るので、劇中の確認作業も一興。本作はベネチア映画祭で「銀獅子賞」(監督賞)を獲って居るが、正直果たして其処まで良い映画だろうか?との感が強い。印象的だったのは、本作が遺作と為った萬屋錦之介の過剰な程の熱演と、利休・山上宗二・織部が茶会を開いた時のシーンでの、「『無』では無くならないが、『死』では無くなる」と云う事。「茶人の自刃」と云うテーマは、研究の価値アリでは無かろうか?


・本

野村四郎「狂言師の家に生まれた能役者」:和泉流狂言師の家に生まれ、能楽シテ方人間国宝と為った野村四郎師の半生記。今ウチの舞台を借りて居る女流能楽師の方が、野村師の弟子と云う事も有って、興味深く読んだ。狂言師から能のシテ方に為るのは、型や発声等の点からもさぞ大変かと思うが、四男だった事も有っただろうが、天才観世寿夫に惹かれて能の方に来た著者の根性には、頭が下がる。僕は昔から能や歌舞伎の世界の昔話や芸談を見聞きするのが楽しく、この本も例外では無い。

小川隆夫「証言で綴る日本のジャズ」:以前から個人的に親しくさせて頂いて居る、小川さんから頂いた渾身の著作。小川さんは名だたるレコード・コレクター&ジャズジャーナリストで、整形外科医としてもマイルス・デイヴィス主治医としても有名な方。そしてこの本で小川さんとの対談に登場する、日本を代表するジャズ・ミュージシャンや評論家達の話は余りに面白くて、読むのが止められなく為る。さて僕が少年時代、何と無くジャズに興味を持ったのは実は映画からで、嘗て住んで居た近所に在った名画座国立スカラ座」で観た、「グレンミラー物語」と「愛情物語」の2本組だった。この2本の映画を観て衝撃だったのは、先ず「愛情物語」の中で弾かれるショパンノクターン2番が、僕の習って居たクラシックのそれとは全然違って居た事、そして「グレンミラー」の中でのサッチモの演奏が生まれて初めて聴く音楽だった事に、衝撃を受けたのだった。そして時は流れ、中学時代、再び国立スカラ座で「スティング」を観た時に聴いた、スコット・ジョプリンラグタイムピアノ名曲「エンターテイナー」と「ソラース」(これがまた良い曲なのだ!)をコピーしたり、TV番組「サウンド・イン・S」での世良譲北村英治松本英彦等の演奏を見入ったりして居た僕が、その後生まれて初めて買ったジャズレコードは、オスカー・ピーターソン・トリオの「We Get Requests」とコルトレーン「Giant Steps」、マイルスの「Kind of Blue」と上記チェット・ベイカーの「Chet Baker Sings」、そしてバド・パウエルの「The Scene Changes-The Amazing Bud Powell」。そして同時にフュージョンにも目覚め、ナベサダの「カリフォルニア・シャワー」を資生堂のCMで聴いて、アルトサックスを始めたのだが…と、長く為ったのでこの辺にするが、こんな「僕のジャズ史」を書きたく為る程、この本は魅力的で楽しい情報に満ち溢れて居る、ジャズファン必携の書だ!

●高木凛「最後の版元:浮世絵再興を夢みた男 渡邊庄三郎」:「新版画」の生みの親とも云って良い、渡辺木版画舗初代店主、渡邊庄三郎の生涯を描く。江戸期の浮世絵版元蔦屋重三郎に倣い、現代の版元と為った渡邊の情熱と仕事は、スティーヴ・ジョブズ迄をも魅了し、1984年マッキントッシュの発表セレモニーに於いて、ジョブズが橋口五葉の「髪梳ける女」を用いさせた事実等、知られざるエピソードを含み乍ら、新版画誕生秘話が記される。さて、川瀬巴水・橋口五葉・伊東深水・吉田博等、数居る新版画作家・作品の中でも、個人的に僕は深水の「対鏡」が一番好きで、それは鮮やかで艶やかな着物の赤と肌の白の色彩コントラストと構図、そして何よりもそれが、驚くべき事に深水が未だ18歳の時の作品にも拘らず、芳醇なエロティシズムと木版ならではの味わいの有る、恐るべき作品だからだ。父の代から家族的にも長いお付き合いを頂いて居る渡邊家は、現在3代目の章一郎さん…これからも、日本の版画芸術の為に頑張って頂きたい。

●二宮敦人「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」:藝大の学生達との会話を通して、アーティストの卵達の日常をリポートする。僕の周りには藝大出身者や在学中の人が多いので、この本を読んでもそう驚く事もないが、著者の妻が現役「藝大生」らしいので、どちらかと云うと、著者とその彼女との生活の方が興味深い。また藝大と一言で云っても、「音校」と「美校」の差異は甚だしく、それは僕の友人達の中でも明らかだが、例えば「音校」に所属して居ても馴染めず、「美校」の人とばかり遊んで居た人や、「音校」の女子に憧れて日々音校に通って居た美校の学生も居たりするから、バランスは良いかも知れない。そもそも芸術には「点数」が無い以上、評価をするのが困難な分野だが、日本に於いて藝大以外の私立美大は、入試では粗定員スレスレか定員割れして居る現状が有り、その中で藝大の存在は矢張り突出して居る。その意味でこれからの藝大の在り方が問われるし、学生の種類や在り方も変わって来るに違いない。然し、藝大生を「変わって居る」と云うが、「誰と比べて」変わって居るのだろう?


・音楽/舞台

●「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会 2016」@東京文化会館:大晦日に聴きに行った、13:00から交響曲第1番が始まり、途中休憩を挟みながら最後の「第九」が23:55に終了すると云う、マラソン大演奏会。このコンサートにチェロでフル出演して居たのが中学の同級生のF君で、彼からのお誘いだったのだが、結局1-2番と7-9番を聴くに留まった。指揮の小林研一郎の愛称は「コバケン」(ケンコバ、では無い:笑)、時には「炎のコバケン」(!)と呼ばれて居るそうで、実に情熱的な指揮で有ったが、それ以上にあれ程「礼儀正しい」指揮者を見た事がない…人柄だろう。そして僕は恥かしながら、何と「第九」を初めて、然も大晦日に効いたのだが、素晴らしい演奏でかなり感動して仕舞った!「第九」前の休憩時間に会ったF君が云うには、「これだけ長く弾いてると、自分が幽体離脱して、何処かから自分が弾いてるのを見て居る気分になるんだよ…」との事。F君、お疲れ様でした!

●「壽 初春大歌舞伎 昼の部」@歌舞伎座:正月4日に、家族で観劇。招待日らしく、客席では演劇研究家のW先生や鳥居派の当代にもお会いする。さて、目玉の愛之助の一人五役早変わりが見せ場の「大津道成寺」は、先ず以って松嶋屋の踊りがイマイチなのと、早変わりもモタついて客席もシラケ気味に為り、ガッカリ…長身の為、ロビーで一際眼を惹いた「嫁」見たさのファンの多さだけが目立ったのも、宜なるかな。少し庇えば、僕が「道成寺」と云う演目を、能でも歌舞伎でも此処の所かなり観て居る事も、辛い点に為る理由かも知れない。が然し、染五郎吉右衛門は流石上手くて、最近僕が観た染五郎はかなり良く為って来て居るし、特に「伊賀越道中双六 沼津」の播磨屋が超素晴らしく、「大播磨!」と声が掛かる程の熱演…播磨屋、凄い役者だ。


さぁて、一癖も二癖も有る作家や作品に囲まれて(ルパンIII世風に)、今年もどんなアートに出逢えるのか…楽しみ、楽しみ。


−お知らせ−

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、2017年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。

2016-12-30

年の瀬の行動の記録。

01:50

12月22日(木)

11:30 渋谷で、恐らくは30年振りかと思われる「六本木の先輩」とランチ。その先輩は学校は違ったが、僕が高校生の時にK大生だったNさんで、僕を良くディスコやオシャレなレストランに連れて行ってくれた人だ。では、何故このNさんと会う事に為ったかと云うと、それはNYで偶にお会いして居た武者小路千家「随縁会」のKさんが、或る日「孫一さん、Nを知ってますか?」と僕に聞いて来たからで、後で聞くと何と彼らは又従兄弟同士なのだそう。偶々ニューヨークでの日本文化に就て話して居たら、僕の名前が出て来てお互い吃驚したそうだ…矢張り世間は異常に狭い。

15:00 新しくアジア美術部門の世界統括ヘッドに為ったFと、虎ノ門のアンダーズでミーティング。「上の人」は、上のクラスのホテルに泊まるのだと再認識。

16:30 青山スパイラルで開催して居た「TAF + plus-ultra」へ、佐藤令奈の作品を観に。然し若手作家&ギャラリストをフィーチャーするこのイヴェントは、レントゲン池内氏の功績が大。これからも刺激的なフェアを期待して居る。

19:00 顧客と東麻布和食店「F」で食事。此処は元々骨董屋の様な名前の店で、名前の変わった後も、店内は余り変わらない。もう一度来たいかと云われると?だったが、料理の味はまぁまぁ。その後は白金で一杯遣って解散


12月23日(金:天皇誕生日

13:00 上越新幹線を使って、群馬県鄙びたR温泉へ。あぁ、これぞ日本人の至福!上毛牛のしゃぶしゃぶを食べ、肌がツルツルに為る温泉に満足するが、帰りの電車に乗り遅れる…然し、これも旅の醍醐味だ!と思ふ。いとおかし。


12月24日(土)

18:00 歌舞伎座に向かい、公演前に鳴物の家元に年末のご挨拶。今年も良き茶碗と共に、良き時を過ごさせて頂きました。

18:30 今年最後の歌舞伎は「十二月大歌舞伎 第3部」、「二人椀久」と「京鹿子娘五人道成寺」。さてクリスマス・イヴに態々この演目を観るのには理由が有って、それは「クリスマス」と云えば「ジングルベル」、「ベル」と云えば「鐘」、「鐘」と云えば「道成寺」だからだ(拙ダイアリー:「『ジングル・ドージョージ・ベル』、或いは『和の生誕祭』」参照)!そして更為る大きな理由は何と云っても大和屋さんで、某歌舞伎関係者に「大和屋さんは、若しかしたらもう道成寺は踊らないかも知れない」と、聞いたからだった。そんな想いも有って観た玉様の舞と「眼」は、本当に素晴らしく、残りの4人が可哀想な位だったが致し方無い。「今後も大和屋道成寺を観せて下さい…」と神に祈った「ジングル・ドージョージ・ベル」なイヴと為った。

21:00 「K」で丁稚をして居た時代からの知り合いの寿司屋、「M」で食事。「M」は小さな店だが、今は立派な主人と為ったMの腕が燦然と光る名店だ。そして寿司と云う食べ物は、何万円も出して鹿爪らしく食べるのでは無く、気の合う主人と軽口を叩いて食べるに限るし、クリスマス・イヴ程和食か中華を食べるに相応しい夜は無い(笑)。歌舞伎寿司と誠に「和」なクリスマスでした。


12月25日(日)

15:00 初台オペラシティギャラリーに向かい、レセプションで確りと観れなかった山本耀司と朝倉優佳のコラボ展、「画と機」を観る。この「画と機」と云うタイトルは、松岡正剛氏に因るとの事。またペインターの朝倉優佳は、ヨウジ・ヤマモトの服に画を描いたり、店舗に壁画を描いたりして居て、既に賞も獲って居るが、個人的には代官山のベルナールの娘さんとして知って居た、現在女子美の博士課程在学中の学生さん。大きな作品の中に、力強いブラッシュとテクスチャーの有る良い作品が有った。

18:30 敬愛する現代美術家西野達氏に誘われ、中目黒高架下に出来たコンテンポラリーアート・レストラン「Pavillion」へ。この店には、男女トイレを横断する「街灯」作品「うしろからぶちこめ!」(何ちゅうタイトルや…笑)、や「天井から吊るされたベスパ」な「バレたらどうする?」等の西野作品を始め、川島小鳥名和晃平等のアートが展示されて居るが、何と云っても西野作品が抜群に良い。結局この晩は達っつあんと僕、UFO女史、アーティストK氏&Aさん、建築家Iさん&ベルナールとの忘年会と為ったのだが、店のオーナーのT氏も急遽乱入。その後達っつあんは早々と逃亡して仕舞ったが、残りの面子で中目黒の街に出て、もう一杯&ラーメンで慰労する。


12月26日(月)

8:30 前夜寝たのが略略午前3時だったにも関わらず、かいちやうと本年最後の食事の為に、パンケーキを食べに青山「C」へ。今年1年の「お茶」への感謝をし、先日「なんでも鑑定団」で出た天目茶碗や、京近美での楽展、来年東博での「茶の美術展」等の四方山話をしながら、外はパリッ、中はフワッのパンケーキを頂く。本年も大変お世話になりました!

19:00 弟の店神楽坂「K」で、小説家H氏&美術史家H先生と忘年会。このお二人は僕の友人知人の中でも最も知的なご両名なので、変な事を云わない様に緊張もするが刺激も多い。今回は「君の名は」と「シン・ゴジラ」の評価を完全にシェア出来て、誠に嬉しかった。


12月27日(火)

15:00 友人の美人姉妹と、アフタヌーン・ティー@マンダリン・オリエンタル。最近日本では「アフタヌーン・ティー」がメジャーに為った様で、ラウンジも女性客で一杯。久し振りに頂いたアフタヌーン・ティーで思い出したのは、四半世紀前に生まれて初めてロンドンのリッツで頂いた時の事…スコーンの美味しさに度肝を抜かれた序でに、お会計にも肝を潰した物だ。

19:00 アート系の友人を集めて僕が新宿歌舞伎町のオバちゃん中華「玉蘭」で毎年主催して居る、恒例の忘年会「玉蘭(タマラン)会」。今回もアーティストやキュレーターギャラリスト建築家、編集者、ライター、クリエイティブ・ディレクター、ミュージシャン等の約30名が集まり、大盛り上がり!今回は建築家長谷川匠君が「シュタイデル・ブック・アワード」のグランプリを獲ったので、先ずはそれをお祝いし、序でに司会も頼んじゃいました。後は組んず解れつの酒池肉林・阿鼻叫喚の宴(嘘:笑)と為り、その後は近くのたこ焼き屋で2次会をし、深夜2時過ぎに解散。アーティストF君に関する面白過ぎ&エロ過ぎる話題を此処に書けないのが残念だが、皆さん、今年もお疲れ様でしたー!


12月28日(水)

12:30 都内某ホテルにて、VIPクライアントと忘年ランチ。今年、僕が外国の美術館に数億円で売った屏風のオーナーだったこの顧客は、とても80歳を超えた様には思えないパワフルな方で、何時も此方がパワーを貰う。


12月29日(木)

12:00 友人と表参道「C」でランチ。此処は広くて感じの良い内装も良いが、エスニック料理が美味い。この日はラム肉の煮込みとクスクスを頂く。然し店内は女性ばかり…男は何処に行って居るのだ?

19:00 西海岸から日本に来て居る大顧客と、麻布の一軒家「K」ですき焼きディナー。この顧客とは来年大きな商いをするのだが、そのコレクションに劣らず人柄も本当に素晴らしい。そしてこのディナーが今年の仕事納め。


12月30日(金)

12:00 近所の行き付け「K」で、今年最後のランチ。奥駈と謡をやって居る社長の声が眩しい(笑)。

14:30 父の墓参に行き、今年1年の感謝を済ませると、その後実家に。TVを見て居て画面に古坂大魔王の出て居るCMが始まると、母が急に「この人は一体誰なの?」と聞くので、iPadで「PPAP」のフル・ヴァージョンを見せて説明するが、「これの何処が面白いの?」と聞かれて返答に困る。

21:30 浅草の小劇場風カラオケ店「S」で、現代美術家S氏の「建築 VS アート」大忘年会。この「S」は迫り上がる舞台、粉雪やスモーク、背景のチェンジ等全て可能で、しかも舞台後ろの衣装室でコスプレが可能な店だ。7時から始まっている筈のこの会に、僕は顧客との食事で大分遅れて仕舞ったが、何とか着いた途端、S氏&K女史の命令で、コートを脱ぐと同時に舞台へ引っ張り出され、舞台裏でヤンキー系の衣装&サングラスを着用させられると、テンションも上がらぬ侭否応無しに「タイガー&ドラゴン」を歌わされる(笑)。そして間奏中に舞台から見渡すと、「建築家テーム」には主将のI氏を始め、S女史や若手I氏等、ズラリと超有名建築家揃いで、対する僕が所属する「アートチーム」には、主将の現代美術家S氏を始め、Y画伯や小さきモノ造りのS氏、女性現代美術家のMさんや女優のTさん、実業家コレクターのダブルO氏等の強面(笑)が揃って居て緊張感が高まるが、何とか歌い終える。その後お互いの首相が歌い終わったが、建築チームの結束は強く、どうもアートチームは敗退濃厚…その時点で既に「来年は皆集まって、事前に練習せねば!」の声が上がったが、皆さん本当にそんな時間が取れるのでしょうか?(笑)


これで今年も終わり…時間と月日の余りの早さには驚く他無いが、人生の中盤を過ぎた者には、過酷とも云える。その疲れを吹き飛ばす為に、明日は「第九」を聴きに行く予定。

皆さん、良いお年を!


−お知らせ−

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、2017年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。

2016-12-22

「マロンチャワン」と「祝賀会」的近況。

08:36

12月15日(木)

10:30 オフィスにて某美術館館長と、これからの日本の美術館の在り方をよりアメリカ的にするかも知れない、との期待を持たせる、今僕が関わって居るビジネスのミーティング。それはどう云う事かと云うと、1人のコレクターにコレクションを購入して貰い、美術館に寄託して貰う。その事に拠って、コレクターは作品の保全が図れるし、美術館は寄託に因って展覧会の企画の幅が広がり研究も進む、と云う「ウィン・ウィン」な案件で、それが国立美術館ならば、コレクターの死後寄贈する事で節税にも為る。こんなビジネスが増えれば、日本の美術品の売買環境も変わるのでは無いか。

19:00 友人と参鶏湯を食べに、久し振りに麻布「G」へ。此処は学生時代からお邪魔して居るのだが、変わらず美味しい。高麗人参茶と共に、寒い夜にホッコリと暖まる。


12月16日(金)

10:30 オフィスで、藤田美術館の下見会のレヴュー・ミーティング。来場者数や新規顧客、クライアントのリアクション、設営の問題点等をレヴューする。今回の様な日本での下見会は、「買い手」を探すと云うよりも「売り手」を探す目的が強く、それは例えば来場者に「嗚呼、ウチにもこんなのが有るが、こんな値段付くのか…だったら売ろうかな?」と思わせるので有る。然しウチの営業達に拠ると、今回は「買い」に興味を示す日本人顧客も多いとか…個人的にも数点は日本に残したいと思って居るので、心強い。

12:30 若手有力古美術商と年末ランチ。美味しい蕎麦を食べた後は、彼のお店に寄って、以前一度観た事の有る垂涎の来歴を持つ黒茶碗でお茶を頂く…今年を締め括る最高の一服でした。

19:00 ワタリウムで開催された「山田寅次郎研究会」に出席し、ゲスト・コメンテーターを務める。イスラム美術の専門家、ヤマンラール水野先生の素晴らしい講演の後と云う事で大プレッシャーだったが、トプカビ宮殿に眠って居るかも知れない日本美術の名品の事や、「寅次郎のユーモアと冒険心こそが、真のインテリ国際人の矜持だ」等の話をする。ヤマンラール水野先生もユーモアの有る大変魅力的な方で、誠に楽しいレクチャーだった。

21:00 レクチャー後は、和多利家の皆さんと賑やかに食事…恥ずかしながら、僕自身が最も楽しんだ一夜でした。


12月17日(土)

9:00 重たい身体を引き摺って起き、珈琲を淹れながら、クラシックギタリスト村治奏一君の新譜「Collage de Aranjuez」聴いて、中年の身体を癒す…効果満点。

12:00 好天の下、友人と久々の代官山の「P」でピザに齧り付く…美味スグル。

14:00 国立新美術館に赴き、今回僕が1点貸し出して居る「Domani展」を観る。池内晶子と松井えり菜の作品に興味津々。

15:30 乃木坂から六本木アートコンプレックス迄テクテク歩き、先ずはタカ・イシイで開催中の鈴木理策「Mirror Portrait」展へ。半透鏡を使ったポートレイト展だが、被写体が撮影者と顔を合わせないで撮られる所がミソ。小山登美夫ギャラリーの「ヴァルダ・カイヴァーノ展」では、アルゼンチン人女性アーティストの余白を活かした抽象絵画を楽しむ。云われてみれば、この作家の作品には「南米」臭が漂う。最後はシュウゴ・アーツで開催中の、戸谷成雄「森X」展。戸谷氏はもう68歳らしいが、チェーンソーを使っての、この制作パワーはスゴい。壁に掛けられた木彫レリーフの美しさに息を呑んだ。

16:30 隣のピラミデビルに移り、ワコウ・ワークス・オブ・アート常設展を観た後は、隣のオオタ・ファインアーツで開催中の、南隆雄:Difference Between」展へ。南作品は国立新美術館で観たばかりだったが、それが直ぐに分かる程特徴的な作品だった。

17:00 階下の古美術店で、お抹茶を頂きながら店主に年末の挨拶。今年もお世話になりました。

18:00 都内ホテルの寿司店で、IT社長と禅僧との忘年会。禅僧の前妻の女流現代美術家が所属画廊を辞め、今はH女史にプロモートされてると聞き、吃驚。この晩呵々大笑した3人を繋ぐ政治思想家が今でも生きて居らしたら、今の日本の政治をどう捉えられるか…溜息が出る。


12月18日(日)

9:00 最近の僕の朝の音楽はクラシック・ギター付いてい居て、今朝は福田進一&作家平野啓一郎のコラボCD「マチネの終わりに」を聴く。この「映画音楽」為らぬ所謂「文学音楽」は、以前から僕が気にして居たニュー・ジャンルで(拙ダイアリー:「『文学音楽』のすゝめ」、「『歌うクジラ』:続『文学音楽』のすゝめ」参照)、持ってました!感が強い。美しいオリジナル楽曲、「幸福の硬貨」も必聴。

14:00 無人島プロダクションの藤城さんに招かれ、小泉明郎の新作映像作品「或る夢への儀式」のプレミア上映会へ。会場には小泉氏一家を始め、ゲストも高橋龍太郎氏他約20名。本作は既にオランダの美術館で展示されて居るとの事だが、この作品の前ギャラリーには昭和天皇の「解剖図」が展示されて居るらしい。そして本作は小泉が少年時に見た、敬虔なクリスチャンで有る父親が官憲に拠って連れ去られると云う夢を題材に、国家と天皇制問う。驚いたのは、作品の最後に顔を隠したコーラスが歌う「国歌 護国を祈る」と云う曲で、何処かで聞いたメロディーだと思ったら、そのメロディーはキリスト教賛美歌の「主よ御許に」で、何と歌詞は明治時代天皇制賛美歌として変えられて居るとの事。靖国神社の隣のカトリック系私立校で6年間聖歌隊に属した身としては、妙に身につまされたが、流石小泉明郎の骨太作品だと感心。然しこの作品、ロケも嘸かし大変だったろうが、日本で公開出来るだろうか?

19:30 友人とダッシュで焼肉を食べた後、スティーヴン・フリアーズ監督作品「マダム・フローレンス!夢見るふたり」を観る。裕福な音痴の女性が、カーネギー・ホールでリサイタルを開くと云う実話をベースにしたコメディだが、メリル・ストリープは流石の演技で、ヒュー・グラントも相変わらず。英国映画なのにちょっと毒が足りない気がするが、本作では「献身的な夫で有れば、浮気をして居ても良いのか?」と云う問いの方が、重要な気もした。


12月19日(月)

11:00 古書店主3人と共に、オークション出品の可能性を探るミーティング。本屋業界も外国に販路を見出す時代だ。

19:00 毎年恒例、古美術商T氏&K君とやって居る「ジビエ忘年会」@六本木「M」。今回は、某私立美術館の女性学芸員2名をゲストに迎えて開催。「M」の親父さん自らが獲って来る金目鯛・鴨・猪・熊・鹿を、網焼きや鍋、そして塩・味噌で食す。此処で食べた後は、外に出ても全く寒くない位、パワー満点。

21:00 食後は皆で生演奏バーに移って一杯遣るが、其処では学芸員の先生方が各々弓道器械体操の選手だった事を聞かされ、驚く。で、それでも足らずにもう1軒行ったのだが、気が付けば日付は変わって居りました…今年もお疲れ様でした!


12月20日(火)

12:00 NYの同僚Zが来日して居るので、神田の弟の店「I」でランチをご馳走する。Zは父親中国人で母親が日本人、日中英、そして大阪弁の4ヶ国語を操る、元アーティストの才能豊かな女性。これから大阪上海に行くと云う…こう云う社員が居るのが、クリスティーズらしい。

14:00 Zを連れて、ジャパン・オフィスへ。オフィスが杉本博司のデザインと知り、Zは昂奮頻り。

15:00 顧客に頼まれ、伊勢丹で現代「茶箱」の組み合わせを手伝う。今の「茶箱」は既にセットされて居る中から、例えば茶碗を違う作家の作品に替えたり、袋のデザインを替えたり、茶杓の素材を替えたりして、自分好みの取り合わせにする「茶箱」が流行って居て、値段も変わるが中身も変えられる点が、一から集めるより便利。旅先ではこれで十分に相違無い。

17:00 某業界人から、今晩放送予定の「開運!何でも鑑定団」に出ると予告されて居る「曜変天目茶碗」の事を聞かれたが、ノー・アイディア。茶人やテレビ・ディレクターを含めて、これで5人目だ。番組史上最高の逸品で「番組最高額」が出たとの事だから、本物なのか?

19:00 アーティストと六本木「K」で中華を。今年最後の「K」では、相変わらず大好物の胡麻平麺等散々食べ捲り。Kさんご夫妻にも大変お世話になりました!

21:00 ダッシュで自宅に戻り、「開運!何でも鑑定団」を観る。この新発見「天目茶碗」のオーナーは、三好長慶の子孫宅の改築工事を請け負った大工の息子で有る所の、ラーメン店主らしい。画面で見た限りでは、現在分かって居る三碗、即ち静嘉堂文庫美術館徳川家光春日局ー淀藩稲葉家ー岩崎小彌太ー静嘉堂文庫)・藤田美術館水戸徳川家藤田平太郎ー藤田美術館)・龍光院(津田宗及?ー筑前黒田家ー大徳寺龍光院)、またMIHO MUSEUM(油滴天目説も有り:加賀前田家ー大佛次郎MIHO MUSEUM)の作品を含めての四碗と比べると、その質はかなり劣ると云うしか無いが、本物なのだろうか?また、2500万円と云う値段も中途半端過ぎるが…。クリスティーズはこの春、油滴天目を12億で売ったので、近い将来査定依頼が来るかも知れない。

22:00 新発見「曜変天目」のお陰で、「逃げ恥」の最終回を観る事が出来た!「恋ダンス」のガッキーが可愛過ぎて、エンディングだけはYoutubeでも何度も観て居たのだが、一話を最初から最後まで観たのはこれが初めて。然しガッキーも然る事ながら、石田ゆり子がその年齢だと信じられない位綺麗なのと、リアル藤井隆妻の乙葉が全く劣化して居ない事に驚く。さぁ、シューデザイナーT氏と「恋ダンス練習しなきゃ(笑)。


12月21日(水)

6:30 5時起床で新幹線に飛び乗り、京都へ…眠スグル。

9:30 京都国立近代美術館で開催中の、「茶碗の中の宇宙:楽家一子相伝の芸術」展を観る。何と云っても第1室に並ぶ16碗の長次郎が壮観で、当然「大黒」も「無一物」も、大好きな「白鷺」も素晴らしいのだが、「マロンちゃん」の異名を持つ僕が個人的に思い入れも思い出も有る、「茶碗界の『マロンチャワン』」こと「ムキ栗」との再会が一番嬉しかった。国に嫁ぐ前・重文に為る前の「ムキマロンちゃん」が懐かしい…。

12:00 大阪に住む20年来の顧客宅で、非常に状態の良い近世初期風俗画屏風一双を拝見する。その後半島からの陶工の茶碗で一服頂き、天満宮付近の鰻屋さんでランチ…関西風のカリッとした鰻を楽しむ。

19:00 中国古陶磁の老舗古美術店「繭山龍泉堂」の社長と為った、川島公之君の就任祝賀飲み会@神田「I」。川島君は僕と同い年、四半世紀前に僕がロンドンインターンをして居た時代からの付き合いで、若い頃は一緒に飲んだり京城に旅行に行ったりして、未だに気の置けない友人だ。そしてその彼が鑑賞陶磁器界の大御所の社長に為った事が、僕は我が事の様に嬉しくて、祝賀会の幹事を申し出たのだった。正直云って、昔の仲間が皆今でも仲が良い訳では無い…業者も成長すると商売敵にも為るし、摩擦も有るだろう。が、今回集まった今昔の友人達20名の中には、京城北京上海等への海外研修旅行(名目だけ:笑)仲間や、「Underbidders」と云う世にも素晴らしくウィットの効いた名前の草野球チーム仲間(僕はショートで、川島君はキャッチャー、或いは監督だった)も居たし、出席者の中には十何年ぶりに会う人同士も居たりして、それだけでもこの会をやった甲斐が有ったと云う物。さて僕が生まれて初めてキチンとした骨董品を買ったのは、繭山龍泉堂からだった。それは「幾ら外国のオークションハウスだからと云って、骨董を扱うからには自分で買ってみないと、モノ等決っして分からない」と云う事を龍泉堂さんに叩き込まれたからで、それは今と為っては金遣いの面で少々恨みもあるが(笑)、実際自分を真の顧客の立場に置くには、それしか方法は無いので有る…感謝してもし尽くせない。川島君は既に長老の風格を持ち(実際若い頃からだが…)、業者の会の会主を務めたり、メディアでも大活躍して居るが、これからも身体だけは大切にして、マイペースを守り、日本の古美術品業界の改革に務めて頂きたい。川島君、本当に御目出度う!


今年も後10日。


−お知らせ−

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、2017年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。

2016-12-15

「下見会」と「トーク」、そして「変態ピアニスト」的動向。

18:03

12月8日(木)

10:00 今日から、来年3月15日にNYで開催される「藤田美術館所蔵中国美術品セール」の東京下見会。来訪予定だった現在美術界のヒーロー的存在のコレクターX氏が急病の為来れず、代わりに彼の財団の人達が来る。目玉作品の解説をビデオで撮って帰ったが、その担当者が漏らした「Xは『藤田箱』為らぬ、『X箱』を作りたいんですよ」との言に心打たれる。今時何と奇特な…その日が来るのが待ち遠しい限り。「藤田箱」とは藤田家が収蔵品に特別に作った、漆を塗った細工の素晴らしい桐箱の事。市などに出て来ても、一目で藤田家の物だと判る逸品。

11:00 東京下見会がスタート。開場からかなりの人が詰め掛ける。30点強がオークションに掛かる中から選ばれた半数程の展示品の内の目玉作品は、清朝乾隆帝所持の画巻六巻の内の「六龍図」や、商時代「青銅羊型犠尊」等の大名品。この2点は各々、恐らく20億円は超えるのでは無いか?と下馬評も高い。業界の誰かさんがこの「羊」を偽物と云って廻って居るらしいが、科学的調査も類品調査も完璧…証拠も提出せずに、如何にしてディスれるのだろう(嘆)?

11:30 最近某高額日本美術作品の購入を決めた、公立美術館と地方自治体担当者が来社し、その美術館にピッタリの或る海外コレクションを勧める為の打ち合わせ。

18:00 下見会初日終了…160人強が観に来たらしい。下見会終了時には有力顧客が来社し、億単位の価値の有るプライヴェート・セール用の桃山期重要作品を見せられ、やらせて頂く事に。その後は一緒に銀座へ出向き、老舗洋食店でディナー。ディナーの後は某美術館長が加わり、今最も銀座で忙しいと云われて居るクラブ「F」へ…銀座での「打ち合わせ」は実りが多い(笑)。


12月9日(金)

11:00 下見会2日目がスタート。14日に岡本太郎記念館で対談するシューデザイナー氏が来社。

16:00 初めて会う友人の美しき彼女が来社し、ドキドキする。美術好きの女性は何時でも魅力的、と思うのは僕だけだろうか?

16:30 クラシックギタリストや、小説家の友人夫妻等の友人達が来社。違う分野のエキスパート達と最高の美術品を観る歓びは代え難い。

18:00 2日間の東京下見会終了。2日間で300名近い来場者が有り、東京オフィスでの下見会来場者数の新記録樹立らしい。「伝運慶作大日如来坐像」の時より多いのか?…吃驚だ。

19:30 某番組ディレクターと、東京オペラシティギャラリーで始まる山本耀司+朝倉優佳の展覧会「画と機」のオープニング・レセプションへ。嘗てそう呼ばれた「カラス族」が集結して居て、視界は真っ黒(笑)。朝倉優佳さんは友人「前のめり」夫人の娘さんで、未だ女子美大学院生…華奢な姿からは想像出来ない大作が並ぶ。再訪してきちんと観ねば。

20:30 銀座で飲んで居た重要クライアントに合流…嗚呼、銀座の夜は無情にも更けて行く。


12月10日(土)

12:30 久し振りに神保町「豚大学」で、豚丼を食べる。「共食い」と云われ様が何だろうが、構わない…嗚呼、何て美味いんだろう!早く「学位」を取らねば(笑)。

14:00 来週僕が主催する、老舗骨董店の社長に為った同い年のK氏の為の「祝賀飲み会」の為に、日本橋の老舗骨董店を訪ね、記念品の物色をする。この会には、今は皆一流の古美術商に為って居る、僕が駆け出しの頃一緒に「Underbidders」と云う草野球チームをやって居たメンバーや、京城上海北京等に研修旅行をした仲間達が久し振りに集まる、楽しみ過ぎる会だ。あれから20年…お互い色々有ったが、僕とK氏との友情は変わらない。心からお祝いをしたい。

15:00 直しに出して居たジャケットを、銀座のブランドショップ「T」に取りに行く。この店のメンズ担当にK君は、旅行好きな本当に親切な店員さんなのだが、この店舗はクローズして、来年6丁目に出来る「GINZA SIX」に入ると云う…それまで、暫しの別れだ。

19:00 サントリー・ホールに向かい、和菓子職人の友人とクラシックピアニスト、ポゴレリッチのリサイタルを聴く。ポゴレリッチは個人的には大好きな現存ピアニストの三指に入るのだが、云って仕舞うと彼は変態ピアニスト」(笑)で、何しろ独自過ぎるの解釈と遅い演奏が彼の個性。今回も最初に演奏したショパンの「バラ2」(バラード第2番 へ長調)等は、「この演奏を捧げられたら、シューマンは何と云うだろう?」クラスの「異曲」に為って居たが、それでも素晴らしい物は素晴らしい。そしてラフマニノフの「ピアノソナタ第2番」や、アンコールでのシベリウス「悲しきワルツ」は、もう涙無くしては聴けない位、素晴らしかった…変態、恐るべし(笑)。


12月11日(日)

7:00 明日の藤田美術館セール下見会の準備の為、新幹線大阪へと向かう。

10:00 大阪美術倶楽部にて、作品搬入の立ち会い、そしてセッティング開始。大阪藤田美術館の地元、そして大阪美術倶楽部は嘗て藤田家が売り立てをした場所だけに、緊張する…愈々だ!

12:00 在大阪某美術館館長や古美術商香港ディーラーが特別に下見に来る。

18:00 途中でヒューズ飛んで仕舞った為、ライティングに大苦労したりしたが、何とかセッティング終了…「こう云うシーンこそ、某番組は撮りたいのでは無いか」と某ディーラーに云われ、最もだと頷く(嘆)。暗目でシックな感じの展示と、受付の前に飾った「藤田箱」が雰囲気満点で満足する。然し今回のセールの青銅器と巻物の質は、何度観ても凄いなぁ。大阪美術倶楽部の皆様、ヤマト運輸の皆さん、有難うございました!


12月12日(月)

10:00 下見会スタート。16点の展示作品の内、矢張り人気は陳容「六龍図」と「鳳龍文羊型犠尊」だが、「六龍図」を含む六巻の巻物の「レシート」も話題に為って居て、「藤田箱」と共に「来歴の証明」の重要性を再認識させられる。これもオークションに出そうか…。

13:00 代々香雪美術館に出入りの古美術商から、今回出品されて居る「犠首饕餮文瓿」が香雪美術館蔵の物と同型で、然も同じ「藤田箱」との情報を得る。香雪美術館の図録で確認すると、この2つの瓿は藤田家に「対」で入った後、村山香雪家へと移ったとの事(香雪美術館の物の方が一回り小さい)古美術商に拠ると、彼の曽祖父が何と「自転車の後ろ」に積んで、藤田家から村山家へ運んだとの事…良い時代の良いコレクター同士の、良いエピソードでは無いか!

18:00 下見会終了と共に、レセプションへと移行…大阪美術倶楽部のT氏のご配慮に拠り、割烹「K」の素晴らしい料理と美味しいお酒で、50名程のゲストを迎える。

18:30 スピーチ・タイム。僕も一言と云う事で、コンサイナーや倶楽部への謝辞と共に「日本の美術館も、売買をしてもっと美術品を流通させるべきだ」「今回出品作品の数点でも日本に遺す様に、 ビッドして下さい」と話す…引かれちゃったかな?

20:30 レセプションも終わり、大阪下見会も無事終了。その後はT氏、当社スタッフと共に慰労食事会へ…Tさん、大変お世話になりました!


12月13日(火)

10:00 顧客の店を訪ね、近世風俗画屏風を観る。中々の出来だが、価格が…。最近人物画の人気が低く、花鳥山水の方が価格も人気も高い。個人的には残念。

11:30 市内某外資系ホテルにて、当社香港CEOと打ち合わせ。来年度の目標等を話す。然し中国の人は現実的且つ短期決戦志向だ。

13:00 大阪某区で美容院を営む、奇跡の経絡マッサージ師の元へ。この人はNYの友人のお母様なのだが、信じられない「神の手」を持って居て、最中何度も痛さに悲鳴を上げるも、それだけの価値は十二分に有って、悩み大だった僕の坐骨神経痛も全く出なく為った…たった1回のマッサージで、で有る!今日も痛さ満点だったが、これで安心して年が越せるだろう。多謝多謝で有る。

19:00 東京に戻り、根津の小料理屋で13年振りに会う新聞関係者と食事。彼からのお土産は、13年前に彼が書いた僕の写真付きの記事。写真の僕は当たり前だが若くて、痩せて居る…自分的には今の方が余程好きだが。新聞社の企画展覧会や映画の話等頻りだったが、村上春樹ボブ・ディランの話が心に残る。次回彼のスタッフへのレクチャーを約束する。


12月14日(水)

14:00 DIC川村記念美術館美術館に行き、開催中の展覧会「レオナール・フジタとモデルたち」を観る。中々素晴らしい展覧会で、藤田のモデル遍歴と恋愛遍歴を俯瞰できる。然し展示された藤田の若い頃の写真を見ると、ゲイにしか見えないが、実際の所如何だったのだろう?勿論4回も結婚した事は承知だが、このナルシスティックな風貌とフェミニンな雰囲気は一体…。作品は各時代其々出品されて居て、晩年の少女像等は気持ち悪く見るに耐えないが、1920-30年代の白の女性像の美しさは矢張り際立って居る。また驚いたのは、巨大正方形カンバス作品群の「ライオンのいる構図」「犬のいる構図」「争闘I」「争闘II」で、これでもかと云う筋肉表現の群像図は迫力満点。その後常設展を観るが、世界に誇る「ロスコー・ルーム」は国宝に指定したい程に素晴らしく、100億超で売って仕舞ったニューマンに代わって飾られたトゥンブリーの絵画と彫刻の部屋も、かなり良い。然しニューマン、何で売って仕舞ったのだろう…。

19:00 岡本太郎記念館にて、アーティスト舘鼻則孝氏とのトーク・イヴェントにて登壇。舘鼻氏の開催中の展覧会「呪術の美学」に関連して、伝統芸能伝統工芸古美術現代美術縄文等に就て話す。多くの方に来場頂き、会場は超満員…来場して頂いた皆様、有難うございました!来場出来なかった方はコチラ→http://playtaro.com/blog/2016/12/14/katsurayamaguchixnoritakatatehana/

21:00 舘鼻氏、チーム舘鼻の女性両Sさんと氏が所属するギャラリスト金近氏との計5人で、裏表参道(笑)のエスニック料理店「T」で、打ち上げ食事会。初めて行った「T」だが、何を食べても旨スグル…大成功のトーク後の楽しい食事会、満喫しました!


そうして明日は、ワタリウムで「山田寅次郎」研究会。宗徧流家元・民間トルコ親善大使・製紙会社社長・出版社社長等、多彩な面を持つ異端の茶道宗家を探求します。乞うご期待!


−お知らせ−

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷アップリンクにてリヴァイヴァル上映されます(→http://www.uplink.co.jp/event/2016/45014)。奮ってご来場下さい。、