桂屋孫一のトウキョウ・アート・ダイアリー

2010-02-21

ガチムチでシットリとした「夜咄」。

14:46

昨日は時差ボケの為、朝4時に起床。

何時もの様に神田明神に参拝した後は、近所に在る行き付けの「ロイヤル・タッチ」(競走馬の名前)で、マッサージ。しかし院長のO氏から、5月に「柏」に移転してしまうとの衝撃の告白…非常に残念である。しかし、このO氏のマッサージは超素晴らしいので、柏近辺の人は要チェック…お薦めです!

さて時差ボケ、マッサージと来れば、後はこれしか無かろう…「茶事」である(笑)。夕方からは、茶人千宗屋氏に拠る、「夜咄の茶事」に御呼ばれで有った。

恐らく、「世界最大の露地燈籠」(笑)を借景に持つ氏の茶室は、其処が六本木からほんの徒歩数分の場所で有る事を、客に簡単に忘れさせる「サンクチュアリ」。集まった昨晩の連客は、正客となる実業家T氏の他、有名写真家U氏、古美術商T氏、懐石料理店経営・数寄者Nさん、現在Y美術館でソロ・ショウが開催されている現代美術家Tさん、「外人枠」の筆者、そして或る意味最も重要な「お詰め」は、ライターで千氏のお弟子さんでも有るH女史が担当…本当に助かりました(笑)。

「待合」に、客が三々五々来室し、挨拶をする。今回のメンバーには初対面の方が数人居らしたが、これは恐らく他の客に取っても同じだと思うが、例えその人が著名な方でも「茶室」では唯「一個人」、どんな人なのだろうと云う期待、不安と緊張感、そしてこれから始まる「夜咄」での室礼、道具、料理、趣向への期待感が会話にも顕れる。

燭台のみの暗い茶室に入ると、室町禅僧の「梅枝自画賛」軸が客を迎え、「炭手前」が始まる。客が顔と体を寄せ合い拝見、此処で亭主と客、客同士に「親和力」が生まれる、重要な一時。

灯りが点き、懐石が出される。此れがマジ美味かった!来日2日目の時差ボケも、一瞬でぶっ飛ぶ。主菓子の「黄身餡きんとん」も死ぬ程旨い…ビバ・ジャパンである(笑)。

中立後、濃茶席へ。軸は外され、水を打たれた床には、「鶴首」に花一輪。松籟も時を告げ、そろそろと茶が始まった。

千氏が道具と共に入室し、「今日の趣向」が見え始める。濃茶が慎重に練られ、黒楽らしき茶碗に映える。正客から回された「黒い茶碗」は、過去の死者達に大切にされ、生き延びて来た「長い歳月」を語るかの様に、そして、まるで年老いては居るが、決して風格を失わない古武士の様に、堂々とその「ガチムチ」な姿を筆者の前に現した。

そして手に取ると「シットリ」と手に馴染む…スゴイ茶碗だ。手燭のみの暗闇の中での、黒と黒が織り成す「マットな」質感・グラデーションの美しさは、筆舌に尽くし難い。

満たされた胃に「濃茶」が流れ込み、その美味な事…再びビバ・ジャパンである(笑)。静寂の中、手燭と共に「茶」は進み、無事終了。灯りが灯され、道具拝見となり、趣向が明らかにされた。

黒の茶碗、黒の棗、黒の水指、そしてその「師」の茶杓と「弟子」の蓋置…そう、「利休」である。普通の茶人がやると、「お腹一杯」に為りがちな趣向も、利休直系の千氏の手に掛かると、一味も二味も違う…流石の一言であった。

その後は場所を移し、千氏考案の立礼卓「天遊卓」を使っての薄茶高麗、織部、現代陶芸が続々登場し、和気藹々に終了。客、亭主、道具、そして「茶の心」の全てに感謝、一座建立の素晴らしさを実感し、散会となった。

肌寒い夜の街に出た後も、心の暖かさは消えなかった。


お知らせ:

来る3月21日(日)14:00-16:00、クリスティーズニューヨークに於いて、千宗屋氏に拠る「現代の茶」のデモンストレーション・レクチャーと、コーヒー・レセプションが開催されます。席が限られておりますので、ご興味の有る方は、212-636-2160(日本・韓国美術部)迄ご予約下さい。