「粉青沙器」と「現代美術」の魅力:「Poetry in Clay」@メトロポリタン美術館。

今日は「イースター・ホリデー」の初日で、ニューヨークの街も人影疎ら。

そんな日は朝イチで、久々のメトロポリタン美術館へと足を運んだ。今回の目標は、今月からコリアン・ギャラリーで開催中の展覧会「Poetry in Clay: Korean Buncheong Ceramics from Leeum, Samsung Museum of Art」で、これは韓国ソウルに在る、財閥企業サムソン(三星)運営の「リーウム美術館」が所蔵する、「粉青沙器」の逸品を見る事の出来る展覧会である。

因みに「ソウル」と云えば、この件とは全く関係無いのだが、今東日本大震災で被災した海岸沿いの鉄道と駅の復旧作業を、自衛隊と米軍が共同でしており、その「作戦名」が何と「ソウル・トレイン作戦」と名付けられている由をTVで観たのだが、それ以来筆者の頭の中では「チャッ、チャッ、チャラララーン!チャッ、チャッ、チャラララーン!」と云う、MFSB&スリー・ディグリーズの「ソウル・トレインのテーマ」が鳴り続け、悲惨な被災地での活動だと云う事は重々承知の上だが、米軍兵達がオージェイズやフォー・トップスか何かを歌いながら、瓦礫を撤去しているイメージが脳裏を過ぎるのを止められないで居る(不謹慎でスミマセン)。

冗談はさて置き、METに着くと何はともあれ、その展覧会に行く前に何時もの如く、先ずは日本ギャラリーを訪ねる。

この時期のジャパン・ギャラリーは、「源氏物語」をテーマとした展示に為って居り、團家本宗達源氏物語図屏風断簡、源氏物語をテーマとした南北朝期の珍しい絵巻断簡や漆芸作品等が並ぶ。その他にも「多武峯曼荼羅」や筆者が扱った「親鸞上人絵伝」等の仏教美術等、久々に観るラインナップを楽しんだが、やはりMETの日本ギャラリーは、静かで落ち着く「アサイチ」に行くに限る。

そして日本ギャラリーを後にし、お待ちかねの「粉青沙器展」へ。

METが今回作品を借りて来ている、このリーウム美術館には何度か行った事が有って、初めて行った時はレム・コールハース、マリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェルの3人の建築家に拠る斬新な建築と、韓国古美術の粋と現代美術を融合させた素晴らしい美術館としての「在り方」に感動したのだが、前回行った時も世界最高峰の古美術コレクションを鑑賞した後、地下でマシュー・バーニーの展覧会を観て「流石!」と思った事を良く覚えている。

さて展覧会に出品されている作品は、李朝初期の粉青沙器が中心で、暦手の三島や掻落とし、粉引の壷や瓶、扁壷や碗等が並んで居るが、中には非常に珍しい作品も展示されて居り、眼を惹く。例えば「象」の形をして居る上に(筆者には「獏」にしか見えないのだが)、何とボディに「亀」が陰刻されている、酒を入れると思われる粉引の祭器、そしてこれも珍しい「犬」が描かれた三島の扁壷等で、これらは恐らく全く類品が存在しない作品で有ろう。

またこの展覧会には、これら李朝粉青沙器から影響を受けたと思われる、MET所蔵の唐津や京焼、辻村史朗等の現代陶芸を含む日本の焼物も一緒に展示されているが、これは正直少々弱い展示の様に思ったのだが、しかしより素晴らしかったのは、韓国現代美術の第一人者である李禹煥や金煥基の名品も一緒に展示されている事で、METの同じ部屋に古美術と現代美術が一緒に展示され、観覧者がその歴史的影響を見て取れる事を素晴らしいと感じた。東博なども積極的に現代美術との展示を行うべきであろう。

この展覧会は8月14日迄…日本人の心に響く「ソウルフル」な作品群の展覧会、必見である。