2009-01-12
■[妄想]降るよ。
「お疲れ様でーす」
店を出たのは3時過ぎ。酒が入ってるから寒くはないけど風が吹く度に耳がピリッと痛くなる。週末だけの夜のバイトをはじめて1か月。くだらない会話を聞くのもお触りももう慣れた。慣れた自分に慣れないだけだ。
あたしは今日店であった出来事を思い出さないように無心で自転車をこぐ。そうしないと頭が冴えたままなので帰ってからも寝付けないから。どうしても考えてしまいそうな時は星を見ながら走ることにしている。車すらほとんど通らない時間帯だからできる技。
今日も寒いだけあって星がキレイだわ…そういえば空から女の子が降ってくる話を考えようってあったなぁ。降ってこられても困るし全くもっておいしくないし。何かに追われてる金城武みたいなのが降ってきたら喜んでかくまうけど。いや、違うな。あたしが今一番会いたいのは金城武じゃない。
あたしだってもう現実が見えに見えちゃってるお年頃だから「あの人も今頃同じ星をどこかで眺めてるのかしら☆」なんて思ったりはしない。普通に寝てるんだろうなって思うよ。でも。でも。もしかしたら。
じゃあメールでもしてみる?「起きてる?星がキレイだよ」アホか。朝起きた時にそんなメール読まれると思ったら恥ずかしさで死ねる。じゃあ電話?夜中に電話って迷惑過ぎるだろ。じゃあ…「来ちゃった♪」却下。それができる距離じゃないから困ってるんじゃないか。仮に近くてもできないけど。コートのポケットの中で携帯が震えた。チッ、客かよ…いや、店用の携帯はもう電源切ってるし。
『今日は仕事だったのかな?もう寝てるかもだけどお疲れ様』
…きた。念が通じたって思ってしまうのはスピリチュアル過ぎ?でも少しぐらい調子にのってもいいよね?どうしよう、思わず全力でペダルをこぐ。どうしよう、どうしよう、スグに返信したいけど家に着いて落ち着いて文面考えた方がいいかな。そうしたら寝ちゃうかも。でもちょっと時間あけないとメール待ってました!みたいに思われちゃうかな。つーかなんて返事すればいいの?「星を見て」って?そこまであの人に星を見てもらいたいって思ってないだろあたし。考えれば考えるほど自転車の速度は増して行く。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、会いたい。
あ、あたしはあの人に会いたいんだ…うん、会いたい。今すぐ顔が見たい。会った瞬間に「好き」て言っちゃうかもしれないし何もしゃべれないかもしれない。でも会いたいんだ。
その瞬間、前輪がフワリと浮いた。
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