旭亭だより

2006-10-12 【江刺寄席】本寸法の落語

三遊亭王楽

三遊亭好楽・王楽親子落語会と銘打たれた【江刺寄席】、一人目の主役の登場です。

お父さんに似ず細面でほっそりとした三遊亭王楽さんが高座に上がります。さきほどの桂花丸さんと同じ28歳、白緑(びゃくろく)の着物に納戸色の羽織が似合っています。

テレビで見る王楽さんは、ほかの若い落語家に比べて線が細く感じられました。目立つことを言って笑いをとるタイプではないようです。さて、どんな落語を聞かせてくれるのでしょうか。


王楽さんは落語家になったいきさつを語り「二代目星の王子様」ですと自己紹介をしました。初代はもちろん師匠の円楽さんです。王楽さんは好楽師匠の息子ですが、円楽さんの最後の弟子でもあります。好楽師匠は先代林家正蔵に弟子入りし、その没後円楽一門に移籍していますから、王楽さんの兄弟子となります。


口跡がよく、高座姿にも華があります。枕にはさほど時間をかけず噺に入りました。王楽さんは昨年このホールで「片棒」という比較的地味な噺を演っていますので、今日の演目も楽しみです。

なんと「宮戸川」が始まりました。大丈夫かい。

将棋に夢中になって夜遅く帰り、家を閉め出された質屋の若旦那半七。将棋は大好きだけれど、世のことには疎い若者の姿が王楽さんと重なります。いい半七です。

「こんなときはいつもの通り霊岸島の叔父さんのところに泊めてもらおう」と半七が夜道を歩き出しますと、若い娘から声をかけられました。かるた取りで遅くなり、これも締め出しをくった船宿の娘お花です。二人は隣同士の幼なじみです。おきゃんだけれど可愛らしい下町娘を、王楽さんはくっきりと描き出します。

叔父さんの早とちりで笑わせ、噺はかなりきわどいところで終わりました。「こんな落語を子供に聞かせていいんですか」と苦情がこないか少し心配です。


これは本寸法の落語です。二ツ目になってまだ二年を過ぎたばかりの落語家の噺とはとても思えません。

私たちは未来の志ん朝か小朝を聞いたのかも知れません。


中入です。


春日部市からわざわざ【江刺寄席】に来てくれた友人のO君が「小朝に似ていますね」と話しかけてきました。打ち上げ会でそのことを王楽さんに話すと「あの噺、小朝師匠に習ったんです」と驚いていました。

王楽さんは来月7日の両国寄席に「三枚起請(さんまいきしょう)」をかけるそうです。恐るべし。