さいかい

asaibomb2010-12-06

あずまきよひこよつばと!』10巻発売。今回もじんわりイイ。気球とかお祭りとか大きなイベントなくても成立してるのが真骨頂って感じ。ホットケーキは食べたくなるねー。
ところで後から知ったんだけど10巻てTSUTAYAとかジュンク堂とか紀伊国屋なんかで買うとソレゾレ柄違いのブックカバー付いたみたいね。あんまりよつばと!で(オタク向けの)オマケとか意識したことなかったけど、取り扱いショップのセレクトに(供給側の意図する)客層の傾向が伺える。

よつばと! 10 (電撃コミックス)

よつばと! 10 (電撃コミックス)

話は変わって、最近読んでる漫画。庄司陽子生徒諸君!』。

ナッキーには「ハツラツ」という表現がよく似合う。でも巻を追う毎にどんどんシリアスな内容に踏み込んでいっててイイ意味で裏切られた。あと大した部分ではないのだが「ん」ていうセリフ(相槌)がよく見られて気になった。言葉にする程ではない感情の発露を表現といったところか。
ちなみに歴史に名を残すレベルの名作と呼ばれる作品を含めアホほど買い込んだまま放置されていた漫画にいいかげん手を付けてみよう、と思い立ってなんとなく読み始めたのが今回のキッカケだったのだった。
そしてそれとリンクしているわけではなく単なる思い付きなのだが、今になって急に家のモノを狂ったように処分している。元々オタクの性としてモノが捨てられず溜め込んでしまう質ゆえに、古本屋に売るって行為を最後にしたのは少なくとも学生時代まで遡る気がするのだが、勢いタガが外れたように、自分でもビックリするくらい執着が無くなってしまった。別に金に困ってとか女房を質に入れてでもとかいう話ではないのだが。寧ろ部屋から物がズビズバ無くなっていく快感を覚える気配。そうして全て失って身一つで海の中へでも消えて逝ければ……とか考える始末。これが最期のチャンス……自爆しよう……的な。

大江健三郎『われらの時代』『戦いの今日』『人間の羊』

『われらの時代』

おれたちは自殺が唯一の行為だと知っている、そしておれたちを自殺からとどめるものは何ひとつない。しかしおれたちは自殺のために跳びこむ勇気をふるいおこすことができない。そこでおれたちは生きてゆく、愛したり憎んだり性交したり政治運動をしたり、同性愛にふけったり殺したり、名誉をえたりする。そしてふと覚醒しては、自殺の機会が眼のまえにあり決断さえすれば充分なのだと気づく。しかしたいていは自殺する勇気をふるいおこせない、そこで偏在する自殺の機会に見張られながらおれたちは生きてゆくのだ、これがおれたちの時代だ。

『戦いの今日』

何というむなしいばか騒ぎ、とかれは上機嫌で考えた。死ぬほど思いつめて、歯をくいしばっての空騒ぎ。ほんとうにおれたちの日常には何も異常な事件はおこらないのだ。おれたちは切実な限界状況からまったく隔絶されている。おれたちは安全な保育設備のなかで育つ赤ちゃん同然、どちらへころんでもかすり傷ひとつおわない。その考えはつねにかれを苦しめ、かりたてる苦い考えだったが、今は幸福な虚脱感と一緒にそれがやって来ていた。かれは立ちどまり、激しい陽の光を吸収するためのようにそこへ開いている暗渠の露出部を見おろした。暗い溝から流れ出た野菜屑をふくむ汚水がごくゆるやかな速度で別の穴へ流れこんでいた。かれは内ポケットから汗に濡れて柔らかく重くなったパンフレットをとり出し暗渠へ投げこんだ。あわてふためいたドブ鼠が濡れた鼻に水玉をきらめかして跳びだし、また跳びこんで行った。かれは喉をほてらして笑い、しばらくのあいだそこに立ったままでいた。

『人間の羊』

警官の眼が硬くひきしまり僕の躰じゅうをすばやく見まわした。僕は彼が、打撲傷や切傷を僕の皮膚の上に探そうとしているのがわかったが、それらはむしろ僕の皮膚の下にとどこおおっているのだ。そしてそれらを僕は他人の指でかきまわされたくなかった。