『イップ・マン 序章』

DVDで鑑賞。


イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック


【ストーリー】
永春拳の達人イップ・マンが、日本軍の三浦将軍をぶちのめす。
第一幕:オープニング〜カムとの戦いまで
第二幕:日本軍の佛山占領〜ユンが兄の死を知るまで
第三幕:工場が日本軍に襲われる〜ラストまで


【見所】
中国人誇らしい、佐藤汚ない描写。
本当にこのシリーズは「中国人誇らしい、○○汚ない」描写が上手いので、日本人が見ても「この日本人は汚ないな〜」と思ってしまう。ま、佐藤だけなんだけれどね、汚ないのは。


【感想】
イップ・マン 葉問』では「中国人誇らしい、イギリス人汚ない」描写がどんどん蓄積される構造になっていたので、それよりも面白いという噂の『イップ・マン 序章』では、どれだけ「中国人誇らしい、日本人汚ない」描写が重なるのかなぁと思ったけれど、実際のところは「中国人誇らしい、佐藤汚ない」映画になっていた。


まず、『イップ・マン 葉問』ではイップ・マンが貧乏生活をしていたのに、この作品ではいきなり超リッチな生活をしていることに驚く。でも、時代が変わって日本軍が占領してしまうと、途端に極貧になって『葉問』っぽい感じになるので安心する。ドニー・イェンが金持ちというのは、ちょっと似合わないと思うんだよね。時計を売ったり、石炭工場で働くイップ・マンの姿に共感してしまう。


そこから盗賊となったカムと、三浦将軍率いる日本軍の両方と戦う展開になる。カムは『葉問』では良い奴になっていたけれど、片耳が聞こえないという話がここが原因だったのか、と思ったり。日本軍のほうは中国にとって(今でも)不倶戴天の敵なので、ちゃんとステレオタイプな描かれ方をしている。でも、三浦将軍はそこまで傍若無人なキャラではないのが良かった。ちゃんと部下を叱責するし、イップ・マンを武術家として認めている描写もあって、そんなに見てて「嫌だな〜」と思うことはないと思う。


で、「日本人汚ない」描写は三浦将軍の副官の佐藤が一身に背負っているわけで、こちらは最低描写がひたすら続いて「こんな奴は日本人の面汚しだ!」と思っちゃうのよね。三浦将軍はラムについては素直に負けを認めていれば殴り殺さなかっただろうし、リュウ師匠については射殺した佐藤を怒鳴りつけているので、ちゃんと胸を割って話せばイップ・マンとも分かり合えるような気がするのだけれど、あの食事を運ぶシーンでそれをイップ・マンのほうが拒否しちゃう。


これはたぶん、「あの日本軍にイップ・マンが一矢報いた」描写なのだと思うのだけれど、そこはもう少し別の描き方があったのではないかなぁと思った。でも、『ドラゴン怒りの鉄拳』のようにちょっとどうかと思う怒りの描写とは別のアプローチになっていて、そこは良かったと思う。最後の三浦将軍との試合は、三浦将軍が池内博之なので武術的な格差がありすぎで、『葉問』のツイスターでさえイップ・マンをボコボコにしてたのだから一方的な展開はどうかなぁと。


あと、空手が空手っぽくないとか、第二次世界大戦のときは空手は一般的ではなく、柔術か柔道じゃないかなぁとか日本側の武術の描写は全体的に残念。池内博之は柔道が得意なのだから、「柔道家」ということにしてイップ・マンの骨を寝技でボキボキ折るようなバトルにしてほしかった。たぶん、この勝負は圧倒的にイップ・マンが勝利したほうが、中国人の感情的にも良いと判断したのだろう。


個人的には『葉問』のほうが好きだった。だけど、やはり二本一緒に観るのがオススメ。