ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

あらゆる人類進化SFを連想しながら読んでしまう奇怪な作品――草野原々『最後にして最初のアイドル』(早川書房)

最後にして最初のアイドル【短篇版】

最後にして最初のアイドル【短篇版】

(578文字)

第四回ハヤカワSFコンテストの審査委員特別賞。中編なので? あるいは特別賞だから? 電子書籍Kindle)で発売。これを読みたいがために初めてKindleをインストールした。売上如何によって今後の展開が変わる…らしいのだが、バカ売れしたようで、今度でる『伊藤計劃トリビュート2』に再録される模様。

地球でアイドル活動をしていた主人公は、追い詰められて自死を選ぶ。彼女を熱烈に応援していた女友達は、アイドルの脳を保存。テクノロジーで蘇生させる。時前後して、地球に天変地異が起こり、人類は滅亡のふちに。蘇生したアイドルは、いわゆる人間的な姿かたちはしていないのだが、心はアイドル。とにかく「アイドル活動」をしようと、奮闘する。やがて彼女は第二世代アイドル、第三世代アイドルと、進化していく。

最初だけちょっとアイドル(活動)。死んで蘇生されるあたりからホラーテイストの描写が入り、「あれ?」という雰囲気になったと思いきや、一気にスピードを上げ、見たこともないような異様なアイドルが生み出される。物語の中心にはつねにアイドルが位置しているのだが、「アイドルが何か?」という問いは空転し続ける。…最後の、突然の宣言まで。どう収拾するのかと思ったら、そう来たか。

圧倒されるのはアイドルが世代を超えて進化していく描写。あらゆる人類進化SFを連想させてしまう。振り切った。とにかく、振り切ったぞ!