ゴミの生活(四代目)

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万国びっくり人間ショー ――冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』(ハヤカワ文庫JA)

(本文663文字)

マルドゥック・スクランブル』の前日譚。どんな武器にも変身できるネズミ=ウフコックと、相棒ボイルド。『スクランブル』では、ボイルドはウフコックを「濫用」し、パートナーは解消されていたが、本作では一人と一匹の信頼関係が構築され、崩壊(「濫用」事件)するまでが描かれる。

ボイルドやウフコックは特殊能力を持つ(持たされた)存在。隔離されていた研究施設から仲間と共に追い出され、マルドゥック市で証人保護に従事する。研究所で惨殺された仲間。拷問の果てに殺された刑事。街の有力者に、裏で支配するマフィア一家。事件の背後にいるのは誰なのか? 究極の拷問集団カトル・カールはどんなやつらで、だれの指示で動いているのか? ボイルドたち「09」のメンバーは能力をフル活用して捜査する。

この小説の本質は、万国人間びっくりショー並みの特集能力をもった人間(?)たちの戦闘にある。こっちの09も、あいてのカトル・カートも、出自は同じ。それにしてもキャラが際立つ。登場するたびに、特徴的な叫び声をあげてしまうあたり、際立ちすぎるという感じもしなくないが。ぐちゃぐちゃの乱戦模様。これだけの濃厚キャラクターは『スクランブル』ではほとんど登場していない。ということは、彼らの運命は…推して知るべし、か。

山田風太郎の忍法帳みたいなもんだろうか。(実は山田風太郎読んだことないので、今度、読んでみる。)文体もかなりぶっ飛んでいる。イコールとスラッシュを乱発することで、独特のリズム、スピード感を演出している。慣れるまでに時間かかる。登場人物も(いつものことだが?)多い。