徒然CURIOSISM

学びクリエイター朝森久弥とサークル「CURIOSIST」のブログです。

マイベストブック2023

この記事を書かずして私の2023年は終われない!ということで、毎年恒例の朝森久弥の「マイベストブック」です。この記事では、昨年2023年の1年間に読んだ本のうち、私の人生にとくに影響を及ぼした本を紹介します。
マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。

 

マンガ部門

トリリオンゲーム

shogakukan-comic.jp

最強バディが贈る仕事人賛歌!

『トリリオンゲーム』の原作担当である稲垣理一郎は、マイベストブック2018マンガ部門を受賞した『Dr.STONE』の原作者でもあります。バディものを描かせたら彼の右に出るものはいないですね!今作で言えば超ワガママなコミュ力お化けのハルと、一流ITエンジニアのガクの2人が、ファンタジックにして説得力のある友情パワーを発揮し、仲間を増やしつつビジネスの世界で成り上がっていくのが実に痛快です。少年マンガの王道ですね。とくにハルは自分の目的のためならブレーキが利かないところがあるんですが、大事な所で人情にあつく色々な人のピンチを救うのが主人公として分かっています。池上遼一の作画は正直、令和のトレンドの絵柄ではないのでしょうが、セリフ無しで感情を乗せる表情の描写が秀逸で、オノマトペのセンスも光っています。このマンガにとって、原作と作画もベストなバディだと言えるでしょう。

ただ、このマンガが最も秀逸な点は、一流の仕事人に対する解像度の高さにあります。生花店の社長、ゲームクリエイター、テレビ局の社員など、たくさんの仕事人が登場するんですが、一人ひとりの仕事に対するこだわりがキッチリ描かれているのです。彼ら彼女らは必ずしも「成功」を収めているわけではないけれども、こういう人にこそ報われてほしいと、読者は思わずにはいられないのですね。むしろ、こうした市井で働く人々にスポットライトを当てることこそが、ハルとガクのコンビが果たしている役割だと思うほどです。

ハルとガクが次はどのような手を打ってくるのだろう?というワクワク感が醍醐味ではありつつも、それぞれの役割の中で生き生きと仕事をするこのマンガの仕事人たちを見ると、私も自分の仕事をがんばろう!と前向きな気持ちになれるのです。

 

マンガ以外部門

進路アドバイザーのための基礎知識2023年度

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プロとして知識をアップデートするための一冊!

その名の通り、「進路アドバイザー検定」という検定のテキストです。主に高校生の進路に関してアドバイスをする人に向けた検定で、私は2013年にこの検定を受験して合格しました。しかし、進路指導に関する知識が時代の流れで大きく変わったことを痛感し、10年ぶりにこのテキストを買い直しました。

この10年間で、大学入試センター試験が大学入学共通テストに切り替わったり、大学入試で学校推薦型選抜や総合型選抜が盛んになったり、日本学生支援機構で日本の学生を対象にした給付型奨学金が始まったりしました。もちろんこうしたニュースは日頃から追っているのですが、体系だった知識を得る機会はなかなかないのが現状です。個々の制度を論じた本は世の中にたくさん出回っていますが、「進路指導に携わる者がこの程度のことは知っておいてほしい」という一通りの知識を明快にまとめているという点で、この本のユニークさは際立っています。統計データや法令の出典もきちんと書いてあるので、深掘りしたいときにすぐに調べられるのもポイントです。

私は理科の教員免許を所持していますが(免許更新制が無くなったので免許は生涯有効になりました)、実のところ一番興味がある専門分野は進路指導です。「指導」という言葉はちょっとキツいので「アドバイス」くらいにしておきたいのですが。私が教育データバンク活動を行っていく中で、進路アドバイスを求められることがしばしばあるのですが、こうした本で知識をアップデートしていかないと専門家として申し訳ないと思う限りです。

 

ノミネート作品

マイベストブック2023のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順は五十音順であり、順位ではありません)

 

【マンガ部門】

・あかね噺(集英社

・IDOL×IDOL STORY!(芳文社

・恋する(おとめ)の作り方(講談社

・トリリオンゲーム(小学館

・真夜中ハートチューン(講談社

 

【マンガ以外部門】

・救援ノート[新版] 逮捕される前に読んどく本(模索舎

・10代から知っておきたい あなたを閉じ込める「ずるい言葉」(WAVE出版)

・進路アドバイザーのための基礎知識2023年度(大学新聞社)

・世界のグルメ図鑑 116の国と地域の名物料理を食の雑学とともに解説 本場の味を日本で体験できるレストランガイド付き!(地球の歩き方

・日本化粧品検定 2級・3級対策テキスト コスメの教科書(主婦の友社

 

『あかね噺』は、主人公のあかねはもちろん、おじさんたちの生き様がカッコいい。私はとくに阿良川嘉一推しです。『IDOL×IDOL STORY!』はサバイバル型オーディションで育まれる友情が、JAXA宇宙飛行士候補者選抜を彷彿とさせました。

『救援ノート~』は公権力による弾圧と闘う団体の人向けに書かれた本ですが、たとえ心当たりがなくても逮捕されるのは日本で生きている以上あり得る話なので、誰もが読んでおいても損はないと思いました。『世界のグルメ図鑑~』は地球の歩き方シリーズの派生シリーズですが、世界中からよくこれだけ多くの美味な食事写真を集めてきましたよね。次の旅行先を決めるのに非常に役立つ一冊です。

 

今年も素晴らしい本に出会えますように。

2024年の抱負。/My resolution for 2024

こんにちは、朝森久弥です。

 

せめて去年よりは早くしようと1月中の投稿にこぎつけた、毎年恒例の「今年の抱負」です。まず去年の抱負を振り返ってから、今年の抱負を発表します。

 

2023年の抱負を振り返り。/Look back my resolution for 2023

全体スローガン:CURIOSISTブランドの国際化を果たす/I internationalize CURIOSIST

 

★CURIOSISTの各種サイト(公式サイト、YouTubeなど)の日英併記/Writing our websites in both Japanese and English

ほとんどできませんでした。YouTube「CURIOSIST Ch.」の概要欄だけ日英併記をしたものの、それ以外の作業を進められませんでした。

 

★『イチから学ぶ日本オタク文化』の日英併記/Writing "Japan's Otaku Culture for Beginners" in both Japanese and English

多少できました。動画タイトルと概要欄、さらに動画投稿告知ツイートを日本語・英語両方で投稿する、というのを相田知広氏にお願いして継続しました(原稿は私が書いています)。しかし、動画そのものは日本語のみであり、英語字幕はYouTubeの自動翻訳に頼りきりです。

 

★日本国内の学校教育事情を英語で発信/Providing Japan's educational information in English

わずかにできました。YouTubeで動画を2本、「How is Japan's preparatory school?/日本の「進学校」ってどういうもの?」と「How is University Entrance Examination in Japan?/日本の大学入試の実態」を投稿しました。しかし、4月以降は日本語での学校教育事情の発信に留まりました。

 

★日本国外の学校教育事情の発信/Providing educational information outside Japan

ある程度できました。YouTubeで動画を2本、韓国と中国の大学受験についてそれぞれ投稿しました。中国国内にも存在しないと思われる、省市別大学入試偏差値ランキングに着手できたことはよかったです。また、X(旧Twitter)では米国の大学受験についても語りました。ただ、2023年に取材旅行をしたベトナムやヨーロッパの学校教育事情を発信できなかったのが心残りです。

 

★言語圏を問わず楽しめるゲームの制作/Creating games can be played in any language

できませんでした。去年に引き続き「教育データバンク」活動と「オタク文化活動」にかかりきりになってしまいました。久しぶりのコミックマーケットへのサークル参加や、フルマラソンに向けてのトレーニングに想定以上に時間を費やし、ゲーム制作に着手する時間がありませんでした。

 

2024年の抱負!/My resolution for 2023!

学びクリエイターとして有名になる/Become famous as a learning creator

 

宇宙飛行士候補者選抜の経験に影響を受けたとはいえ、早速国際化に邁進したのは多少勇み足だったことを反省しなければなりません。と言うのも、まずは自分が何者であり、どこに向かうのかを考える時間が必要だったからです。2023年の1年をかけて考えた結果思い至ったのが、「学びクリエイター」でした。

私はこれまでにゲーム、本、クイズ、動画…色々なものを作って発表してきましたけれども、共通しているのは「誰かの学びになるもの」なのですよね。学校教育という巨大な学びの場を分析して見せたり、自分自身が新たな学びの場を作り出したりしている。そうした活動を20年間やってこられたのは、学びが私のライフワークであり、楽しみの源泉であるからに他なりません。2023年に関して言えば『共通テスト「オタク文化」』の公開が一番大きかったと思いますが、まさにどこにもない新たな学びの場を提供することで、あらゆる属性の(国籍すらも超えて)人の楽しみと役立ちを呼び起こすことができました。こういう営みを繰り返して生きていきたいのです。

現状、学びクリエイターと名乗っている人は日本に数人いるようですが、学びクリエイターと言えば朝森久弥と言われるくらいになりたいです。正解はひとつではないでしょうが、私にしか実現できない学びクリエイターの在り方があるはずです。その姿に近づくために、具体的には年間を通して次のような活動に取り組んでいきます。

 

★朝森久弥にしか作れない楽しく学べるゲームを作る/Create a new fun learning game that show my individuality

進学校以外も含めて日本のすべての高校・高校入試制度を語れるようになる/Be able to talk about all Japanese high schools and high school admissions systems, not just preparatory school

★動画授業やクイズなどの提供を通し、「オタク文化」の教科化に取り組む/Make Japan's otaku culture a subject through our video lectures and quizzes

★新しいこと(エスペラント語・美容・化粧品)を学ぶ/Learning new things: Esperanto, beauty, and cosmetics

 

気持ちとして一番大きいのはゲーム作りです。2年続けてできていないので、大変だろうけどなんとか今年やりたい。正直に言うと、進学校のことばかり喋っているのが最も“バズ効率”が高いのです。けれどもそれだけでは進歩が無いし、何より私のcuriosistyが満たされない。あと、学びクリエイターとして、自分が新しいことを学んで楽しんでいる姿を皆さんに見せつけたいですよね。

今まで積み重ねてきたことを活かしつつ、自分の殻を破って新しい自分になる1年にしていきたいと思います。

 

その他の個人的な目標としては、体力づくりも習慣化できるようがんばります…。

 

今年もよろしくお願いいたします。

コミックマーケット103&共通テスト「オタク文化」2023-2024の告知

こんにちは、朝森久弥です。

 

今月末に東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケット103にサークル参加しますので、その告知をします。

 

配置:2日目(12月31日)東ハ22b「CURIOSIST」

いわゆる「お誕生日席」です。

 

おしながきは、以下の通りです。

「CURIOSIST」C103おしながき

【新刊】共通テスト「オタク文化」2023プレ -受験者データから見るオタクのジェネレーションギャップー(500円)

【既刊】教科書 日本オタク文化 上巻(800円)

【既刊】教科書 日本オタク文化 下巻(1200円)

【既刊】進学校Map 三訂版 vol.1[中国・四国・九州編](1300円)

【既刊】進学校Map 三訂版 vol.2[中部・関西編](1400円)

【既刊】進学校Map 三訂版 vol.3[北海道・東北・北関東編](1400円)

 

頒布物はすべて同人誌です。今回は「評論・情報」ジャンルで申し込んでいるのと、同人誌を段ボールに詰め込んだらかなり重たくなってしまい、ゲームの頒布は見送ることにしました。ゲームのうち『キュードル!』シリーズはCURIOSIST BOOTH通販サイトでお買い求めください。

curiosist.booth.pmなお、コミケで頒布する本についてもBOOTHで通販しています。送料・手数料をいただいているので、通販価格はコミケでの頒布価格と異なります。コミケに持っていくためにBOOTHの在庫を一時的に減らしていますが、コミケが終わり次第、売れ残った分の在庫を戻します。

 

コミックマーケット103新刊のご紹介

今回の新刊は、共通テスト「オタク文化」2023プレの過去問と、受験者の正答率データを収録した本です。「はて、共通テストにそんな科目あったっけ?」と思われる方もいるかもしれませんが、朝森久弥が自作して公開しているWebテストです。なお、共通テストとは言ってますが、独立行政法人 大学入試センターが実施している「大学入学共通テスト」とは一切関係ありません(念のため)。

 

共通テスト「オタク文化」は、オタク文化に対するリテラシーを測定することを目的に制作しました。2023年8月12日(コミケ102当日)にプレテストをWebで公開したところ、X(旧Twitter)経由でそこそこバズって4万人以上の受験者が集まりました。

forms.gle

今回の新刊の前半分には、共通テスト「オタク文化」2023プレの過去問を収録しています。Webでも解けますが、紙にすると“本家”っぽさを実感していただけると思います。

共通テスト「オタク文化」2023プレ問題イメージ

後半分には、各問題の解答解説と年代別正答率データを掲載しています。正答率データを読み解くことで、どんなオタク文化コンテンツがどんな年代に認知されているのか、あるいは認知されていないのかがわかります。

共通テスト「オタク文化」2023プレ見本紙面

マンガ・アニメ・ゲームをはじめとするオタク文化に興味がある方(≒コミケに来るような方)には興味を持っていただける1冊になったかと思います。

 

共通テスト「オタク文化」本試験開催!

共通テスト「オタク文化」は、2023年12月31日夜に本試験「2023-2024」をWebで公開します。つまり、私がコミックマーケット103にサークル参加してから、帰宅した直後に公開するということです。できれば、紅白歌合戦が始まる7時までくらいには公開して、Xで告知したいと思っています。

共通テスト「オタク文化」2023-2024告知画像

共通テスト「オタク文化」2023-2024は、プレテスト(2023プレ)をブラッシュアップして、2023年のオタク文化のトレンドを振り返りつつ、オタク文化に対する広範なリテラシーを問う内容になっています。全30問ですべて択一式。現時点(2023年12月28日)にようやく問題ができて、いま大急ぎで校正や解説執筆をしています。

「2023-2024」の出題範囲は、2023年を中心とした近年のオタク文化のトレンドと、『教科書 日本オタク文化』(上巻・下巻)の掲載内容です。『教科書 日本オタク文化』はこれまた朝森久弥が執筆したオタク文化の教科書で、鳥獣戯画からVTuberまでオタク文化のハイライトを概説しています。直近の話題を除けば、この教科書をもとに問題を作成していますので、共通テストで高得点を目指す人はぜひ教科書を入手して読み込んでください。

 

共通テスト「オタク文化」2023-2024は、Webで無料で受験できます。プレテストと同様、解き終えた直後に自動採点して結果を知ることができます。

自動採点の結果表示時に簡易な解説を閲覧できますが、詳細な解説や問題制作時の裏話をまとめた公式解説集をCURIOSIST BOOTH通販サイトで500円でダウンロード販売します。公式解説集には問題も付属しています。

共通テスト「オタク文化」2023-2024公式解説集表紙イメージ

さらに『共通テスト「オタク文化」2023-2024 公式解説集』の購入者特典として、Webで共通テスト「オタク文化」2023-2024を受験して80点以上を獲得した人限定で、成績優秀賞として表彰状を授与します!1枚1枚に受験者のお名前を入れて発行します。

以下のサンプルにあるように、和服っ娘絵師・たまのち氏の天晴なイラストがあなたの優秀な成績を称えます。表彰状はPDFおよびPNG画像として発行しますので、出力して額縁に飾ったり、SNSで見せびらかしたりしてお楽しみください。

共通テスト「オタク文化」2023-2024成績優秀賞サンプル

表彰状の発行を希望する方は、BOOTHで『共通テスト「オタク文化」2023-2024 公式解説集』を購入した後、BOOTH内のメッセージ機能で以下の情報をお知らせください。

共通テスト「オタク文化」2023-2024の受験者名(表彰状に記載される名前になります)

共通テスト「オタク文化」2023-2024で獲得した点数(80点以上を獲得した場合に限り表彰状を発行します)

共通テスト「オタク文化」2023-2024で80点以上を獲得したときの日付と時間帯(時間帯は「○時ごろ」のように大体で構いません)

朝森久弥が把握している回答データと照合して確認が取れ次第、オンラインで表彰状を発行します。

受験回数は問いませんので、繰り返し受験して80点以上を獲得した場合でも表彰状を発行します。ただし、初回受験者限定の平均点を集計しているので、受験時に初回受験か2回目以降の受験なのかを申告するようお願いします。

 

この記事の要約

・2023年大晦日コミックマーケット103にお越しの方は、東ハ22b「CURIOSIST」で共通テスト「オタク文化」プレテスト過去問やテキストをお求めください。

・2023年大晦日の夜にWebで共通テスト「オタク文化」本試験を公開するので解いてみてください。80点以上を獲得した人はBOOTHで表彰状の発行手続きができます。

 

今回もどうぞよろしくお願いいたします。

朝森久弥へのご依頼を受付中です

朝森久弥は、個人・団体・企業を問わずさまざまなご依頼を受け付けています。朝森久弥の公式サイト「CURIOSIST」に設置したお問い合わせフォームから随時ご連絡いただけると幸いですが、私に具体的にどのようなことが依頼できるのかをこの記事でまとめておきます。

 

朝森久弥のコンテンツを商業メディアでご紹介

私は2004年からPC向けクイズゲームを制作し続けていて、発表したゲーム作品を度々雑誌やWebメディアで紹介いただきました。詳細は公式サイト「CURIOSIST」のゲーム制作ページの末尾に掲載していますが、主にパソコン雑誌やニュースサイトで取り上げていただいています。一人でも多くの人に楽しく学んでもらうことを目的に活動していますので、それが叶うコンテンツとして紹介していただけることはとてもうれしいです。

商業メディアで紹介いただく際は事前にご連絡が欲しいなと思っていますが、個人が趣味でやっているブログなどで紹介していただく分には連絡は要りません。私が勝手に検索して見つけて喜びます。

ただし、ご紹介時に朝森久弥のコンテンツに含まれる著作物(文章や画像、音源、クイズなど)を無断で利用しないでください。これはゲーム制作活動に限らず、オタク文化活動教育データバンク活動に係る作品についても同様です。ゲーム作品のキャプチャ画像を載せたり、文章を引用したりするのは、常識の範囲内であればOKです。

 

朝森久弥のコンテンツの二次利用

著作物を無断利用しないでとは言いましたが、事前にご相談いただければ二次利用を許可することがあります。ここでは二次利用の具体例を2つ紹介します。

事例1:「電ファミニコゲーマー」さんでのインタビュー記事にゲームクイズを付属

news.denfaminicogamer.jpこの記事ではゲーム作品の紹介と併せて、クイズクリエイターとしての朝森久弥についても紹介いただいたので、私が作ったゲームジャンルのクイズを約60問提供して、「電ファミニコゲーマー」さんのサイトで遊べるようにしていただきました。記事に書かれているように、私は活動の過程で四択クイズを数千問作ってきたので、あらゆるジャンルの四択クイズでも提供できます(とくにオタク文化ジャンルのクイズのストックが充実しています)。ただ、競技クイズで出題されるようなマニアックなクイズではなく、日本に住む人の一般常識を問うクイズがほとんどであることはご理解ください。

事例2:「野球太郎」さんでの記事に進学校Mapのデータを採用

makyu.yakyutaro.jp

野球雑誌「野球太郎」さんのNo.43(2022年6月発売)に「進学校は本当に強くなっているのか?」という記事が掲載されたのですが、この記事に、私が作った進学校Mapのデータを採用していただきました。この記事ではいわゆる進学校の男子硬式野球部が強くなっているのかを検証しているのですが、そのためにはそもそもどこを進学校とみなすのかを決めなければいけません。その基準に進学校Mapを採用いただいたのですね。実際、進学校の絶対的な基準はないのですが、どこの模試を基準としているのかも不明なサイトの「偏差値○○以上」の学校をスクリーニングするよりは、進学校Mapで進学校に選定している進学校をリストアップしていただいた方がよっぽど信頼性と納得感は高いと自負しています。もっとも、進学校Mapはその特性上、進学校リストとして使う上ではいくつかの注意点があり、それについては実際の使用時にご案内させていただいています。

 

朝森久弥のコンテンツの書籍化

私が書いた同人誌の書籍化企画を随時募集しています。同人誌も書籍と言えば書籍ですが、ここでいう書籍化とは出版社による商業出版のことです。

2023年8月現在、書籍化を希望しているのは『教科書 日本オタク文化』と『進学校Map』です。

『教科書 日本オタク文化

日本のマンガ・アニメ・ゲームの歴史と現状をイチから学べる教科書です。2020年に上巻・下巻を刊行し、メロンブックスで委託販売しました。2023年8月時点ではBOOTHでのみ通販中です。

curiosist.booth.pm

curiosist.booth.pm2冊合わせて184ページで、少し薄めの新書くらいのボリュームになっています。もともとは私が大学教員を目指していたとき「大学でオタク文化について講義をするならどんな教科書になるだろう」と考えたところから始まったので、週1コマ・半年間で行う大学の授業で使えることを念頭に置いています。あるいは、もし高校でオタク文化なる授業をするなら、週2コマで1年間で終わることを想定しています。

オタク文化に関わる研究者は日本にそこそこいるのですが、マンガ、アニメ、ゲームなど、それぞれでコミュニティが分断されがちなのですよね。現代のオタク文化はメディアミックスが前提なので、それを真正面から捉えて語り継いでいかないと、あと100年後くらいには文化が散逸してしまうという危機感があります。絵画にせよクラシック音楽にせよ、文化を文化として次世代に残すには体系化された歴史を紡ぐ必要があり、その仕事をオタク文化でやっているということです。私は一般的な研究者とは違って興味がいくつものジャンルに発散しがちなので、だからこそこの仕事に向いていると思います。

『教科書 日本オタク文化』の初版は2020年なので、2023年のいま読み返すと、とくに最近の時代については大いに更新が必要だと感じています。次に書くなら"改訂版"という形にしたいですね。

進学校Map』

日本の進学校事情を都道府県別に分析することで、教育環境の地域性を明らかにする企画です。2023年8月現在、三訂版をメロンブックスとBOOTHで通販しています。

curiosist.booth.pm

先ほど私は「興味が発散しがち」と言いましたが、進学校に限っては2012年から分析を始めているので、もう10年以上調べ続けていることになります。進学校という言葉を聞いたことがない日本人はほぼいない一方で、進学校について考えてきた時間であれば日本人のほぼ全ての人に負けない自信があります。

とは言え、進学校そのものに対する愛着はそこまでなく、進学校というキャッチ―な概念から、日本の学校教育に関する問題、もっと言うと地理的・経済的格差の問題に迫れるのが面白くて活動しています。ここが、いわゆる学歴界隈(正確には"学校歴界隈"と言うべきでしょうが)の他の論者と一線を画するところかなと思います。

教育産業は煽るからこそ儲かるみたいな側面があるので、冷静さを取り戻させる系の私の主張はあまり儲からなそうという気もするのですが、この点ご理解の上ご協力いただける方がいたらうれしいですね。

 

記事の寄稿

雑誌やWebメディアなどに掲載する記事を書きます。実を言うと他名義で執筆・編集・出版経験があるのですが、朝森久弥としては署名記事に限らせていただいています。

教育系

教育系は、私が一番得意なジャンルです。とくに進学校を中心とした高校受験事情であれば、どの都道府県であってもそこの地元の人だと勘違いされる程度には語れます。また、奨学金や大学院にも詳しいです。というのも、給付奨学金を得て大学院まで進学し、博士課程を満期退学して就職した経歴があるためです。一方、塾や通信教材の経験が一切ないので、そうしたサービスをヨイショするのは苦手です。逆に、そうしたサービスなしで公立小→公立中→公立高→国立大→国立院と歩んできた視点からの話はできます。教育系でどのような文章を書くかは、私のnote「朝森教育データバンク」をご覧いただくのが手っ取り早いと思います。

note.com

教育系以外

教育系以外だと、たとえばオタク文化や旅行の話ができます。オタク文化については『教科書 日本オタク文化』を書く程度に広く浅くです。マニアックな媒体には向かないですが、素人にエッセンスを語るのを得意としています。旅行については47都道府県と58ヵ国訪問の経験が活かせます。ちなみに、私が作るゲームには旅行で撮った写真をよく使うのですが、ゲームのプレイヤーから「制作者は乗り鉄だ」と言われたことがあります。

「CURIOSIST」のプロフィールページをご覧いただくと、朝森久弥がどんな経歴でどんな嗜好の人間か、そしてどんなことを書かせると面白いかが分かると思いますので、併せてご参照ください。

 

ご依頼はCURIOSISTのお問い合わせフォームから

朝森久弥に何らかのご依頼をしたい方は、公式サイト「CURIOSIST」に設置したお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。スパム対策でメールアドレスは公開していませんが、一度お問い合わせいただければメールでやり取りさせていただきます。

私はTwitter(X)もよく使っているので、連絡は比較的取りやすいかもしれませんが、イーロン・マスク買収後の情勢を考えると、お問い合わせフォームからの方が確実かなと思います。

twitter.comなお、私は「朝森久弥の進路相談室」という、個人向けのオンライン進路相談サービスを行っていますが、これに限っては「CURIOSIST」のお問い合わせフォームからではなく、CURIOSIST BOOTHサイトからお申し込みください。(※2024年1月20日を以てBOOTHでの受付は終了しました)

なお、私はnoteのメンバーシップ「朝森教育ラボラトリー」の「進路相談室プラン」にご加入いただいている方を対象に、オンライン進路相談サービスを行っています。詳細はnoteの記事をご参照ください。(2024年1月20日追記)

note.com

 

これからも朝森久弥をどうぞよろしくお願いいたします。

マイベストブック2022

年々発表が遅くなっていることに定評のある朝森久弥の「マイベストブック」です。この記事では、昨年2022年の1年間に読んだ本のうち、私の人生にとくに影響を及ぼした本を紹介します。
マンガ部門とマンガ以外部門に分けて発表します。

 

マンガ部門

【推しの子】

推す幸せを噛みしめて!

【推しの子】の原作担当である赤坂アカは、マイベストブック2017マンガ部門を受賞した『かぐや様は告らせたい』の著者でもあり、私にとってまさに推しのマンガ家です。【推しの子】の序盤の物語展開はすぐには打ち切られないことを前提にしたもので、『かぐ告』で培った地位を遺憾なく発揮しているなと感じました。作画担当の横槍メンゴは、ビターな純愛マンガ『クズの本懐』から追いかけてきましたが、なるほど赤坂アカと組ませるとは集英社の編集者も粋なことをするなぁと思ったものです。

そんな2人が組んだマンガなので物語が一筋縄ではいかないのは織り込み済みで、とくにヒロインのこじらせ具合が良くも悪くも注目される作品です。私は有馬かなの存在を知って全巻購入を決めました。はい、こってりしたオタですね。どんなキャラを出したら人気が取れるのか、すごく計算して描かれているはずです。

芸能界が舞台ということで、芸能界の裏事情が学べる風のマンガにもなっています。もちろんきちんと取材して描いているのは確かでしょうが、実はその信憑性はこの作品を推す上での重要ポイントではないんですよね。では何が推しポイントかというと、登場キャラひとりひとりのエゴです。アクアやルビーといったメインキャラクターだけでなく、サブキャラクター、一度きりのキャラにもスポットライトを当て、そのキャラなりのもがきを描いている。結果がいつもベストとは限らないけれど、みんな自分の置かれたポジションで最善を尽くしている。その姿が描かれているからこそ、新しいキャラが出てくるたびに「推せる!」となるのではないかと感じています。

私も30代半ばになったからか、全体として大人のキャラに共感することが多いのですが、高校生(初登場時)俳優の鳴嶋メルトの成長ぶりをほほえましく見ています。少年少女成長譚からしか摂取できない栄養がありますよね。再登場を期待しています。

 

マンガ以外部門

TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+

宇宙を目指す私の道標になった!

2022年に受験した、JAXA宇宙飛行士候補者選抜の英語試験対策として入手しました。『宇宙飛行士という仕事』(柳川孝二)によれば、2008年に実施された前回の選抜では、書類選抜と並行してTOEIC試験で英語力を測り、70%程度(990点満点で約700点)の得点を要求したという記述があったからです。TOEICは学部生のときに数回受けたきりで、短期間で得点力を高めるには模試を繰り返すのがベストだと考え、3回分の模試が入っているこの本を選びました。

2022年2月6日、英語試験の約3ヶ月前にこの本についている1回目の模試を解いところ、640点という低スコアを記録。このままでは不合格は必至です。私は危機感を募らせ、試験まで英語漬けの生活を送ることを決心しました。他にもいくつかの英語教材に取り組みましたが、結局一番時間を割いたのがこの本でした。著者のヒロ前田先生が提唱する「3回チャレンジ法プラス」を愚直に実践したところ、3回の模試を使いつぶすのに100時間はかかったからです。

正直なところ、この本を解いている最中は得点力アップをあまり自覚できていなかったのですが、英語試験の5日前に『公式TOEIC Listening&Reading問題集8』を解いたら、参考スコアの範囲は720-860点を記録。中央値では790点となりました。もっと高得点を取れる受験者も大勢いたでしょうが、この時初めて「英語試験を通過できるかも」という手ごたえを感じました。当日の英語試験ではSpeakingとWritingもあり、それはそれで大変でしたが、私の英語試験通過に最も寄与したのはこの本だったと確信しています。

TOEIC学習をある程度積み重ねると、英語のニュースや文献を読んだり聞いたりすることに抵抗感が薄れました。すると「英語から遠ざかってきたばかりに、これほどの有益な情報を知らずに過ごしてきたのか」という気持ちが募ってきたのです。今後は宇宙飛行士を目指すかどうかにかかわらず、英語での情報収集・発信に積極的に取り組みたい。そんな思いを起こさせてくれた本でもありました。

 

ノミネート作品

マイベストブック2022のノミネート作品は以下の通りでした。
(並び順は五十音順であり、順位ではありません)

 

【マンガ部門】

・ウィッチウォッチ(集英社

・【推しの子】(集英社

・ガクサン(講談社

・タコピーの原罪(集英社

・チ。―地球の運動について―(小学館

 

【マンガ以外部門】

・宇宙飛行士という仕事(中央公論新社

・「大学入試学」の誕生(金子書房)

TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+(アルク

・なんとな~く物理(永岡書店)

メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界(技術評論社

 

『ウィッチウォッチ』は真桑先生と嬉野さんのエピソードが解像度高すぎて、もはや同人活動史書としての価値があるとすら思います。『タコピーの原罪』はしずまりも良きですけど、個人的には東くんが救われたのがよかったです。

『「大学入試学」の誕生』は、昨今の大学入試改革(騒動)への対応で脚光を浴びた倉元先生らの本で、今後この分野が興隆してほしい、というか興隆させなければと強く思いました。『メタバース進化論』はバーチャル美少女ねむさんによるメタバース案内書、という体裁の思想書です。50年後くらいに高校の倫理の教科書に載るかもしれませんね。

 

今年も素晴らしい本に出会えますように。

2023年の抱負。/My resolution for 2023

こんにちは、朝森久弥です。

明けましておめでとうございます…とはさすがに言えない時期になってしまいましたが、毎年恒例の「今年の抱負」です。まず去年の抱負を振り返ってから、今年の抱負を発表します。

 

2022年の抱負を振り返り。/Look back my resolution for 2022

全体スローガン:“教育系”教育系VTuberの第一人者になる

 

「ゲーム制作」:教育系VTuberが出演するクイズゲームをリリース

できませんでした。宇宙飛行士候補者選抜に没頭していて、ゲーム制作にかける時間をほとんど取れませんでした。また、ゲームの主な発表先として考えていた「ゲームアツマール」のサービス終了が発表され、構想の変更を余儀なくされました。アイデアは思いつくたびに書き留めていますが、具体的な作業は進んでいません。

 

「日本オタク文化」:『イチから学ぶ日本オタク文化』の継続的公開

ある程度できました。朝森久弥がスライドを作って、相田知広に動画を作ってもらうスタイルで、年間に30本の動画を公開しました。ただ、11月以降は『進学校Map 三訂版』の作業にかかりきりで公開を一時停止していました。

 

「教育データバンク」:『進学校Map 三訂版』の全都道府県達成と、進学校Map以外の教育情報コンテンツの継続的公開

できました。当初の予定を少し過ぎたものの、2022年12月に『進学校Map 三訂版 vol.3[北海道・東北・関東編]』を刊行し、YouTubeの「進学校事情を語る」動画も全都道府県を網羅しました。また、進学校Map以外では、高校入試の直前対策動画や公立中高一貫校の解説配信、大学院生活を語る配信など、広範囲の成果物を形に残すことができました。

 

2023年の抱負!/My resolution for 2023!

CURIOSISTブランドの国際化を果たす/I internationalize CURIOSIST

 

2023年1月15日に、CURIOSISTの新しいブランドスローガンを掲げました。それが、

知識で世界をつなぐ/Connecting Worlds With Knowledge

です。

もっとも、これは私が随分前から心がけてきたモットーでもあります。単に知識をひけらかすのではなく、知識を届ける相手に「それは知らなかった!」と新しい世界の存在に気づかせたい。境遇や価値観が異なる人に前提知識を共有することで、互いの相互理解を促進したい。そう想いながら活動を続けてきました。

そんな時、ふと気づいたのです。私は日本国内という、ある程度同質的な集団だけを相手にしていて、境遇や価値観が異なる人にあまり目を向けてこなかったのではないか。もちろん、『進学校Map』で述べているように日本国内でも境遇や価値観は多様なのですが、CURIOSISTを名乗っている割には視野が狭いのではないかと思ったのです。私たちが作った『オタク年齢診断』などを、日本国外の人が遊んでいるのを見聞きしたにもかかわらず。

私は昨年、宇宙飛行士候補者選抜に取り組む中で、英語を集中的に学ぶ機会を得ました。その過程で日本国内では出会えなかった人と話したり、日本のメディアでは読めないニュースを読んだりして、英語を使えば視野が広がることを痛感しました。他の言語も使えば、さらに視野が広がることは間違いないでしょう。

CURIOSISTがこれまで作ってきたコンテンツはともかくとして、掲げている理想は日本国外にも通用すると信じています。CURIOSISTというブランドの、もっと言うと朝森久弥のファンを増やしていくためにも、日本国外に視野を広げていくことは必要不可欠であると考えました。

 

具体的には、年間を通して次のような活動に取り組んでいきます。

★CURIOSISTの各種サイト(公式サイト、YouTubeなど)の日英併記/Writing our websites in both Japanese and English

★『イチから学ぶ日本オタク文化』の日英併記/Writing "Japan's Otaku Culture for Beginners" in both Japanese and English

★日本国内の学校教育事情を英語で発信/Providing Japan's educational information in English

★日本国外の学校教育事情の発信/Providing educational information outside Japan

★言語圏を問わず楽しめるゲームの制作/Creating games can be played in any language

 

5大陸50ヵ国超に渡航した人間として、国際化=英語対応とは微塵も思っていないのですが、現実問題、英語から始めることが最も手軽かつ効果的なので、今年はまず英語にコミットしていきます。その上で他の言語圏にも手を広げていきたいです(個人的にはエスペラントに興味があります)。

 

あらゆる境遇・価値観の人々が、知識というツールでつながり、仲良くする世の中を目指して、私は今年もがんばります。そして、CURIOSIST20周年となる2024年を明るく迎えましょう!

VTuberで同人作家が宇宙飛行士選抜試験を受けた話

明けましておめでとうございます、朝森久弥です。

 

私は宇宙飛行士選抜試験、正確に言うと、JAXA宇宙航空研究開発機構)による2021年度宇宙飛行士候補者募集に応募し、2022年の約1年にわたり選抜試験を受験しました。

4127人の応募者の中から、第二次選抜に残った50人のうちの1人になったものの、第三次選抜(最終選考)に進むことはできませんでした。

 

VTuberにして同人作家という、一見すると宇宙飛行士とはかけ離れた存在である私が、なぜこの試験を受けたのか?この試験を受けてどんな想いを抱いたのか?

それらを、JAXAに迷惑がかからない程度に書き記しておこうと思います。

 

この世界のすべてを知りたい

昭和時代の末期に生まれた私は、幼いころから多方面に興味を示す人間でした。小2の自由研究のテーマはダム。小3でバトルえんぴつの自作、小4で地図づくり、小5で遊戯王ライクなカードゲームづくりに勤しんだら、小6では日本史にハマり、中1で魏志倭人伝を現代語訳していました。

スポーツはあまり得意ではなく、昼休みはだいたい学校の図書室で過ごしていました。通学路から見える景色の大半が田畑で占められる田舎で生まれ育った私にとって、本は刺激的な未知の世界への貴重な道標だったのです。

中学生のとき、近所に観覧車ができたというので乗りに行ったら、見えたのはふだんと同じ田園風景でした。

「この景色だけを見て一生を終えるなんてもったいない。もっともっと、いろんな世界を見てみたい」

そんな思いを強くしました。

私の父は高専卒のエンジニア、母は高卒の専業主婦で、2人から大学進学はとくに勧められませんでした。何なら、就職に有利だからと高専をよく勧められたほどです。地元を愛し地元のメーカーで働き、家族6人を養った父は尊敬していますが、私は何としてもこの田舎から出て、世界を股にかけて生きていきたいと決心しました。

 

隣町の公立進学校に進学した私は、学校主催の講演会で毛利衛宇宙飛行士と出会いました。講演会の前までは、宇宙という未知の世界に興味はあったものの、宇宙飛行士という職業に強い関心は持っていませんでした。というのも、小学生のときに読んだ某子ども百科事典に「目が悪いと宇宙飛行士になれない」と書いてあったからです。当時すでに視力0.1を切っていた私はお呼びでないと思い込んでいました。そこで私は、講演が終わった後の質疑応答タイムで、毛利さんにこのような質問をしました。

「私は目が悪いので宇宙飛行士になれないのですが……毛利さんには、月とか火星とかに行ってもらえないでしょうか?」

質問というかリクエストをしてしまったのですが、毛利さんはこのように答えました。

「これからは、目が悪くても宇宙飛行士になれますよ。自分でなって、行ってみるのもいい。がんばって」

そう言って毛利さんは、私と握手を交わしてくれました。

「目が悪くても宇宙飛行士になれる」

その事実を知らされて虚をつかれた私は、同時に、毛利さんの手から何か熱いものを受け取った気がしました。

それが、私の人生が始まった瞬間だったのです。

 

CURIOSISTとして生きる

この世界のあらゆるものを知りたいと願う私にとって、宇宙飛行士は魅力的な手段のひとつです。それを目指すことができるならば、目指さない理由はありません。ただ、私の興味は多方面に拡散していて、宇宙工学などの「いかにも」な分野に全力でコミットするのは違和感がありました。高校では一応理系クラスにいたものの、世界を股にかけて働く国連職員になるために国際関係学を学ぶことも視野に入れていたくらいです。それでも、理系学部を出た方が有利なことは確かなので、興味が移ってもつぶしが効きそうな理学部化学科を選びました。何より、毛利さんも理学部化学科卒ですから間違いないでしょう。

宇宙に行きたいのに、地球のことをまだろくに知らないと気づいた私は、手始めに世界一周旅行をすることにしました。まず大学1年の夏休みに青春18きっぷで日本一周一人旅をし、旅行経験値を高めてから、大学2年の夏休みに世界一周一人旅をしました。その次は南極大陸に行くためその手の大学院(国立極地研究所)に進学しようかと考えましたが、大学2年の冬にコミックマーケットに出会い、創作活動に興味を抱きました。人がなぜ、生きるのに必須ではない創作活動に没頭するのか、そこから生み出される創作物を愛するのかを知りたいと思い、大学院では認知科学を専攻することにしました。同時に、自らも創作活動に励み、同人ゲームや同人誌を作っては、コミックマーケットなどの同人誌即売会に数十回出展して頒布しました。

 

私はマンガやアニメ、ゲームといった日本オタク文化も大好きですが、創作活動においては、一人でも多くの人に「知る楽しさ」を届けたいという想いで活動しています。あらゆる分野の知識に興味を示し、自分の世界を拡げることに感じてきた喜びを、多くの人と分かち合いたいと考え、ガチ勢向けではないクイズゲームを多く作ってきました。また、世の中で起こる揉め事や不和の多くは共通認識の相違にあると考え、地域や世代で共通認識の相違が激しい教育分野で何冊かの本を書いてきました。さらに、多くの人に知識を楽しく、所属を明かすことなく伝える手段として、VTuberとして動画配信にも取り組んでいます。

大学院を出てから現在に至るまでの職業は明かしませんが、私の創作活動と同様、一人でも多くの人に「知る楽しさ」を届けたいという軸で選びました。宇宙飛行士を目指す人がふつう選ぶ職業ではないけれども、宇宙開発が進展すれば宇宙飛行士に必ず求められる能力が得られる確信がありました。

 

CURIOSISTは「好奇心旺盛な人」という意味で、私の造語であり、モットーです。人類の好奇心の極致・宇宙開発の先鋒である宇宙飛行士は、飛び切りのCURIOSISTであるに違いありません。

CURIOSISTとして自分を高めたその先に、宇宙飛行士というキャリアが見える。そう信じて日々を積み重ねてきたところに、今回の募集の報が入ったのです。

 

学びを活かす(書類選抜・第0次選抜)

2022年1月1日。宇宙飛行士選抜試験のマイページに登録を済ませた私は、試験が終わるまで断酒すると決めました。結果として2022年は酒を1滴も飲まずに過ごしました。

試験に応募するにはエントリーシートだけでなく、健康診断結果も提出しなければなりません。この健康診断が宇宙飛行士選抜仕様の特殊なもので、どこの病院でもやってもらえるものではありませんでした。健康診断を受けられる病院を探すところから選抜が始まっていたのです。私は、航空身体検査(パイロット用の健康診断)を手がけている病院ならやってもらえるのではと当たりを付けて、都内の病院で健康診断を受けました。

 

書類選抜の次にある0次選抜に英語とSTEM(理数系)の試験があることは分かっていたので、2月からはエントリーシート作成と並行して対策を始めました。当初は英語とSTEMを日替わりで対策しようと考えていましたが、2月頭にTOEICの参考書の模擬試験を解いたら640点(990点満点)しかなく、STEMよりも英語の方がボーダーを超えられない可能性が高かったので、まず英語対策に注力することにしました。

今回の宇宙飛行士選抜試験は、初期段階ではオンラインで行われました。このため選抜中に他の受験者と会う機会が少なく、もっぱらTwitterで動向を追うことにしました。他の受験者の英語力の高さをツイートで見せつけられたり、華やかな経歴の人が何人も応募していたりするのを目の当たりにし、戦々恐々とした日々を過ごしました。

 

4月22日に書類選抜の発表があり、Twitterの受験者クラスタに衝撃が走りました。応募資格と健康診断結果、健康状況申告のみを審査すると告知されていたにもかかわらず、4127人の応募者のうち、通過したのは2266人と半分強しかいなかったからです。健康診断の基準が想像以上に厳しく、誰が見ても華やかな経歴の人が何人も落ちていました。私よりも宇宙に対する思い入れが強い人も大勢いた中、運良く書類選抜を通過した私は彼らの分も頑張らなければという想いに駆られました。

 

5月8日にオンラインで英語試験を受け、通過できたか一抹の不安を抱きつつも、次のSTEM等の試験対策に取り組みました。理学部化学科を卒業しているので、化学はどうにかなると踏んで、公務員試験のテキストでひたすら数学と物理の問題演習をしました。

STEM以外にも人文科学・社会科学分野の知識も問われましたが、この点については、長年クイズゲームを作ってきた経験が役に立ちました。私のクイズゲームでは高校までで学ぶあらゆるジャンルの四択クイズを収録しており、このクイズを数千問、自分の手で作ってきたからです。

news.denfaminicogamer.jp

クイズガチ勢が解くようなマニアックなクイズは苦手ですが、公務員試験の教養試験で問われるような広範な教養クイズにはマッチしていました。

5月20日に英語試験の合格発表があり、約3ヶ月間の英語対策はひとまず報われました。

ただ、英語試験は1407人と受験者の約6割が通過したこと、通過者の中で決して上位の成績でないことが後で分かり、英語力のさらなる向上に励まずにはいられませんでした。

 

5月29日にオンラインで「一般教養試験等」を受験しました。ここでは前述のSTEMや人文科学・社会科学を含めた一般教養試験に加え、小論文や適性検査を行いました。1000人以上が同時刻に受験した影響か、サーバーがとても重たく、問題文のページを切り替えるのに1回につき10秒ほどかかったり、接続が途中で途切れてログインし直したりしました。「さすが宇宙飛行士選抜試験、とんでもないストレス耐性テストだな」と言い聞かせて問題を解きましたが、試験2日後にJAXAからお詫びのアナウンスがあり、通信トラブルに遭遇した受験者のうち希望者全員に追試験が設定されました。とは言え、朝から夕方まで丸一日かかる試験を2週続けて受ける余力はなく、一応解答データはすべて提出されていることが分かったので、運を天に任せて追試験はパスしました。

6月28日に「一般教養試験等」を含めた第0次選抜に通過しました。この時点で受験者は残り205人、当初の約20分の1に絞られたのです。

 

これまでの人生が試される(第一次選抜・第二次選抜)

第0次選抜の通過発表からすぐに、私はオンライン英会話を始めました。10月に予定されていた第二次選抜では英語面接があり、第一次選抜の合格発表が出てからでは間に合わないと考えたからです。コロナ禍で2年以上海外に行けていなかったとはいえ、ふだんから英会話に慣れておくべきだったと痛感しました。また、歯科に行ったところ奥歯1本の根元が割れている(歯根破折)疑惑が生じ、しばらく治療してもよくならなかったので、約50万円をかけて7月上旬にインプラントを入れることにしました。

 

第一次選抜は7月中旬から8月上旬にかけて行われ、以下の内容が課されました。

・一次医学検査

・医学特性検査

・プレゼンテーション試験

・資質特性検査

・運用技量試験

このうち一次医学検査は病院で他の受験者と対面する機会が少しありましたが、他は主にオンラインだったので、ほとんど個の闘いという印象でした。第一次選抜で問われた能力は幅広く、自信を持ってすべてをこなせた人はいなかったのではないでしょうか。個人的にはプレゼンテーション試験が面白く、VTuberとして活動してきたことも役に立ったのではないかと思います。

 

第一次選抜が終わってから1ヶ月経っても結果発表がなく、Twitterでも選抜試験が話題となることが少なくなってきました。同志を見つけるのが難しい中、とにかくオンライン英会話と体力づくり(ジョギング、腹筋、背筋、腕立て伏せ、ストレッチ)に打ち込みました。

9月30日にようやく第一次選抜の結果発表があり、合格通知を見たときは喜びでいっぱいになったと同時に、早めにインプラントを入れておいてよかったと思いました。

 

第二次選抜の受験前に帰省して、両親に初めて選抜試験のことを話しましたが、驚かれはしたものの、「これまで散々海外に行っているし、今度は宇宙か~」くらいのノリでした。大学2年で世界一周に行ってからも事あるごとに海外に行き、コロナ禍までに53ヵ国に行ったことで、もはやそういう人間だとみなされていました。もっとも、私に養う家族がいたら反応は違ったかもしれませんが。

 

第二次選抜は10月中旬から11月下旬にかけて行われ、以下の内容が課されました。

・二次医学検査

・医学特性検査

・面接試験(英語、資質特性、プレゼンテーション)

 

第二次選抜は、その多くが対面で行われました。50人の受験者はいくつかのグループに分かれ、同じグループの人とは数日かけて同じ場所で選抜に挑みました。驚いたのは、受験者のバックグラウンドが想像以上に多様だったことです。これまでのJAXA宇宙飛行士は、パイロット、科学者、エンジニア、医者のいずれかであり、前回(2008年)の選抜の最終選考でも全員がこのいずれかでしたが、今回はこれ以外の職業の人が大勢いました。商社やベンチャーキャピタルで働いている人、現職の市議会議員など……。JAXAが門戸を広げたのはアリバイではないことを実感しました。

第二次選抜の受験者は、ほとんどの場合周りに宇宙飛行士を目指す人がいない中で、黙々と対策を積んでここまでやってきた人々です。選抜の内容をうかつに外部に話すわけにもいかず、同じテンションで盛り上がれる人がいませんでした。そんな人々がついに対面で出会えたわけですから、積もる話が尽きません。選抜後の飲み会も大いに盛り上がりました。

自分という存在を丸裸にされた(二次医学検査は、ほぼ文字通り)第二次選抜において、自分を飾ることは不可能であり、ありのままの自分をぶつけるしかありませんでした。けれども、私にとってはむしろありがたいことでした。職場ではVTuber活動や同人活動の話は一切しないし、ここでは職場の話はしません。もちろんそれはメリットがあってそうしているのですが、どちらの自分もさらけ出すことができる機会は稀有なのです。JAXA宇宙飛行士の面接試験で、コミックマーケットという言葉が飛び交ったのはおそらく私が初めてでしょう。宇宙飛行士を目指す人の多様性をJAXAに見せつけることができたなら、それだけでも受験した甲斐があったのではないかと思います。

 

これからの話

結果として第二次選抜は通過できませんでしたが、私がこれまで歩んできた道のりは決して間違いではなかったと確信しています。今後も宇宙飛行士という職業を目指すのかについては、まず健康面がどうなのか次第なところがあるので何とも言えません。けれども、CURIOSISTである私の選択肢に「宇宙に行く」が入り続けるのは言うまでもないでしょう。

ひとまず、地球にいてもやれることはたくさんあるので、それらに打ち込んでいきたいです。とくに意識したいのは、朝森久弥というブランドのファンを増やすことです。日本の中の、日本オタク文化に親和性の高い人たちだけでなく、国境の壁を超えた、多方面に認知される存在になる。そうすることで「知る楽しさ」をより多くの人に届けていきたい。宇宙開発への関心が高い社会も、きっとその先にあるのではないでしょうか。

 

朝森久弥はCURIOSISTとして生きていきます。これまでも、これからも。