電波オデッセイ/永野のりこ/(ASIN:4756112692)

まず…
この作品を癒し系と評してる人がいましたが、それは違うなーと。
癒されてると思い込んでるだけで、癒すのは自分自身なんだよなーと。
 
えー、なんだかよくわからない書き出しですが、とりあえずレビューをば。
 
主人公・原スミ子は、様々な事情から生きる気力もなく2ヶ月以上登校拒否を続けている中学2年生。
「死んでしまいたい」、自分の家ではない「どこかへ帰りたい」と思いつづけている…
しかし、ある夜、「オデッセイ」と名乗る主人公にしか見えない何かが現れ、
「君は地球へやってきた“観光客”じゃないか」
「君のパスポートの有効期限はあと1年、持って帰れるおみやげは心1コ分」
「ここに観光に来れた君はラッキーなんだよ」
「おみやげ屋をはしごするみたいにあと1年“ここ”を楽しんでみたら?」
と告げられる。
主人公はそれを信じた。
自分がやりたい事をやり、見たい事を見て、“おみやげ”をたくさん持って帰ろうと…
 
えー、永野のり子さんには強力なシンパがたくさんいるみたいなんで、永野さんの作品はこれしか読んでいない私がレビューするのもなんですが…
 
この作品は、思春期に持っている劣等感(だけでもないけど)に対して、正面からぶつかっていっている作品です。
この作品に登場する様々な人たちの心の傷を隠すことなく表現し、読者である私にも強烈に痛みを訴えかけてきます。
 
片思いをしてる娘にいいところを見せようとして失敗し、自分に対してダメレッテルを貼り続けるスパイラルに陥ってしまうキタモリ
太っていることに劣等感を持ち、みんなが自分を悪く言ってるんではないかと思い込んでしまうトモちゃん。
字が汚いことに劣等感を持ち、普通の人と違う部分があり、がんばることで認められたいと思っている野川さん。
片思いをしているハセくんに馴れ馴れしく話しかける原さんをねたましく思い、仲間とつるんで次々と嫌がらせを始めるチカちゃん。
そして、主人公の原さんが抱える問題がやはり最後の物語として進んでいきます…
 
本当に、本当に心が痛くなります。
しかし、それぞれのキャラが追い詰められている問題に対して、永野さんは救済ともいえる解を示していきます。
 
もし今、心に何か重たいものを抱えてしまっている人がいるなら、この作品はそれを解決する方向に持っていってくれるかもしれません。
過去にそのような大きな悩みを抱えていた人がこの作品を読んだら、大きな衝撃を受けるかもしれません。
 
この作品は万人にお勧めしますが、読むには多少の覚悟が必要かも。
しかし、作者の人間愛があふれるこの作品、ぜひとも読んでいただきたいと思います。
 
えー、とりあえず、しゃべり場に出てるような少年少女達はいますぐこの漫画を読むように!
 
さて“おみやげ”もう少し増やしてみるか。