ある米国民的人気キャスターＳの家族が南米テロリストに誘拐・監禁された。ＴＶ局は独自の捜査チームを組織して被害者であるＳを助け、また独占報道を目論む。アルバイト学生の調査結果が突破口となり、チームリーダーでＳのライバルでもあるＰが自ら、生命を賭けて救出に向かう・・・。世界中の耳目を集めるニュース報道番組はどのように作られるのか？ＴＶニュースの達人たちの仕事ぶりをみつめて、ヘイリーが筆を執る。
本作品では人物描写が実に徹底している。主人公のみならず、ＴＶ局のニュース番組製作者からその経営幹部達、誘拐犯人グループ・捜査警官・目撃者・調査に協力するア学生や他社の記者、果ては誘拐犯を載せたパイロットや小空港の税関職員までも。世の中の営みというものが、そ!こに生きる人と人との個性のぶつかり合い、摩擦によって作られていく様が、６４７項に亘って敢然と展開される。
本作品クライマックス場面の一つ。社長Ｃが既に救出活動中のＰを即刻解雇するよう迫られる。苦悩するＣの心中が描かれた582,3Pは、いろいろな意味で、この部分をコピーして自分の勤務先の机にでも貼っておきたくなるような文章だ。
いつもながら、ヘイリーの英語の良質さには感嘆する。物語自体はプロットが把握しやすいため、未知の語彙や構文があってもつい分かったつもりで読み流してしまいがちだが、それでは小判を手にした猫になってしまう。時間が許す限り辞書を引き、一文一文を読み解き、米国最高の知性を味わいたい。
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