寄り道しながら、eにまつわる話を読み進めていくと、π(パイ:円周率)、φ(ファイ:黄金比)の書物と同じく、数学の歴史、数学者のチャレンジの歴史の再学習になりました。
寄り道の先の一つが”計算尺”。子供の頃の文具店の店頭のショーケースには高級計算尺が誇らしそうに飾られていました。しかし、私が使い方を知る前にあっという間に電卓に置き換えられていきました。17世紀に対数という概念が発見(?)されて間もなく対数目盛の定規を組み合わせて作られた計算尺が発明されたそうです。20世紀に今風の電子計算機が普及するまで4世紀にわたって科学/技術にとって不可欠のアナログ計算機として使われていたわけです。読み進める途中でたまらなく計算尺を実際に使ってみたくなり、ネットを使って探しましたが、もはや線形の計算尺は全て生産中止になっており、老舗文具店の店頭在庫も底をついてしまったあとでした。ようやく手にいれたのは、円形の計算尺。これはまだ細々と生産されているようです。いずれ、これも買う人が途絶え、思考テクニックの歴史の一つが消えていってしまうのでしょう。
さて、eの認知が”極限”という概念を生み、それが微積分を育て、複素関数論につながっていく物語は、人間の認知の拡大の歴史そのものです。この歴史的流れの中でものを考えると、学生時代には理解しづらかったことのいくつかが氷解するように直感に訴えてきました。
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不思議な数eの物語 単行本 – 1999/9/27
本書は不思議な数eを主題とした世界最初の本である.eを中心にして,eにまつわる数学上の話,数学史上の話を面白く,時にはすさまじく,一つの物語にまとめている.ネーピアの執念,ニュートンのひらめき,オイラーやライプニッツの簡潔さと美しさ,ベルヌーイ家の確執….これらは読者に無限の刺激を与えてくれるに違いない.
- 本の長さ308ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1999/9/27
- ISBN-104000059432
- ISBN-13978-4000059435
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
数学に頻繁に登場する不思議な数e。対数を発明したネーピアの執念、微積分をめぐるニュートンとライプニッツの先取権争い、ベルヌーイ家の天才達の確執…。eにまつわる数学上の話を面白く、一つの物語にまとめる。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1999/9/27)
- 発売日 : 1999/9/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 308ページ
- ISBN-10 : 4000059432
- ISBN-13 : 978-4000059435
- Amazon 売れ筋ランキング: - 656,017位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 807位代数・幾何
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は、ペートル・ペックマンの「πの歴史」を念頭において、本書を著したようです。つまり、「π」のように「e」を語った数学教養書は無かった…
しかし、結論から言って、本書はかなり数学的に難しいです。
もちろん、数式やグラフの部分を適当に読み飛ばしても、それなりに得るところはありますが、脂ののったおいしい身の部分はそのまんま、というもったいない感じがします。
各章の終わりに、囲み記事がありますが、バッハとベルヌーイの、歴史的には無かったと思われる仮構の会見が、(初心者には、数学的にはピンと来ない部分もありましたが)特に面白かったです。
事前に、微分積分、指数対数、三角関数などについて、それなりに勉強してから本書に当たったほうが、手ぶらでぶつかるよりも良いと感じました。
しかし、結論から言って、本書はかなり数学的に難しいです。
もちろん、数式やグラフの部分を適当に読み飛ばしても、それなりに得るところはありますが、脂ののったおいしい身の部分はそのまんま、というもったいない感じがします。
各章の終わりに、囲み記事がありますが、バッハとベルヌーイの、歴史的には無かったと思われる仮構の会見が、(初心者には、数学的にはピンと来ない部分もありましたが)特に面白かったです。
事前に、微分積分、指数対数、三角関数などについて、それなりに勉強してから本書に当たったほうが、手ぶらでぶつかるよりも良いと感じました。
2008年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
e(ネイピア数、自然対数の底)の歴史の周囲の数学の発展についての書である。πほど有名でないからか、それほど華やかではなく、まあ、毎日寝る前に淡々と読んだ。e は微分積分と分ちがたく結びついている。本書も微分積分の歴史、ニュートンとライプニッツの確執やら、ニュートン流とライプニッツ流の微分記号の話なども、大きな部分を占めている。エピソードとしてもベルヌーイというのが、数学一家であったとか、それなりに楽しめた。でも、どこと言って盛り上がりがあるわけでもなく、淡々と読んでおしまい。
2003年4月5日に日本でレビュー済み
円周率πについては小学生でも意味を理解できますが、もうひとつの無理数の代表格eについては、πのように簡単な図形に関連しているわけではないので、一般の人にはなかなかなじみのないものでしょう。
理数系の人にはeはよく理解されていますが、複利計算に出てくることを知れば、おカネの増え方に関連しますので、興味の沸く人もいるかも知れませんね。
これ以上神秘的なものはないと思える公式は、e、π、i、0、1、という5つの数を簡潔に結びつけたものですが、それ以外にも不思議な数eにまつわるエピソードが満載です。数学的記述が多いので、基礎がない人には読みづらいかも知れませんが、それを補って余りある歴史的な事柄を綴っており、歴史書としても十分読み応えのあるものと思います。
理数系の人にはeはよく理解されていますが、複利計算に出てくることを知れば、おカネの増え方に関連しますので、興味の沸く人もいるかも知れませんね。
これ以上神秘的なものはないと思える公式は、e、π、i、0、1、という5つの数を簡潔に結びつけたものですが、それ以外にも不思議な数eにまつわるエピソードが満載です。数学的記述が多いので、基礎がない人には読みづらいかも知れませんが、それを補って余りある歴史的な事柄を綴っており、歴史書としても十分読み応えのあるものと思います。
2016年12月6日に日本でレビュー済み
eのみに関する成書は他にほとんどないので貴重な一冊ともいえる。内容も丁寧に書かれているが、数式をもっと使用した方が、より解りやすい
のではなかろうか。
のではなかろうか。
2016年7月26日に日本でレビュー済み
原著は1994年。原題は「e: the story of a number」である。著者はシカゴのロヨラ大学で数学史を教える数学史家。
曰く・・・
ジョン・ネーピアは1614年に対数の概念を発表。この新概念は熱狂的に受け入れられた。
ニュートンとライプニッツは微積分の発案についてどちらが先か論争をしている。ニュートンは隠遁的だがライプニッツは社交的。二人とも結婚しなかった。
英国学士院の委員会は、ニュートンの微積分法はライプニッツよりも15年早かったと結論している。ただし、委員会はニュートン支持者が多かった。ライプニッツの死後、ニュートンは英国学士院の報告書第2版を監修し、ライプニッツの信用を密かに傷つける記載を追加している。ライプニッツは晩年はほとんど無視されて過ごしている。一方、ニュートンはこの論争のおかげで人気が高まり国民的英雄となり、最後は国葬されている。
レオンハルト・オイラーの業績は全部が出版されていないくらい膨大であり、まとめれば70巻を超えるともいわれる。彼が触れなかった数学領域はほとんどないと言われる。70歳で再婚したときには盲目となっていたが、仕事を続け、子どもや学生たちに口述筆記させている。記憶力抜群で50桁の暗算もできたという。集中力も桁外れで、子どもたちを膝の上に抱きながらむずかしい問題を考えることもあった。
非常に大きな素数の積を因数分解するにはそれらの素数を利用者が知らない限り難しい、という事実が公開鍵暗号の基礎になっている。
みたいな話。
曰く・・・
ジョン・ネーピアは1614年に対数の概念を発表。この新概念は熱狂的に受け入れられた。
ニュートンとライプニッツは微積分の発案についてどちらが先か論争をしている。ニュートンは隠遁的だがライプニッツは社交的。二人とも結婚しなかった。
英国学士院の委員会は、ニュートンの微積分法はライプニッツよりも15年早かったと結論している。ただし、委員会はニュートン支持者が多かった。ライプニッツの死後、ニュートンは英国学士院の報告書第2版を監修し、ライプニッツの信用を密かに傷つける記載を追加している。ライプニッツは晩年はほとんど無視されて過ごしている。一方、ニュートンはこの論争のおかげで人気が高まり国民的英雄となり、最後は国葬されている。
レオンハルト・オイラーの業績は全部が出版されていないくらい膨大であり、まとめれば70巻を超えるともいわれる。彼が触れなかった数学領域はほとんどないと言われる。70歳で再婚したときには盲目となっていたが、仕事を続け、子どもや学生たちに口述筆記させている。記憶力抜群で50桁の暗算もできたという。集中力も桁外れで、子どもたちを膝の上に抱きながらむずかしい問題を考えることもあった。
非常に大きな素数の積を因数分解するにはそれらの素数を利用者が知らない限り難しい、という事実が公開鍵暗号の基礎になっている。
みたいな話。
2003年6月13日に日本でレビュー済み
自然対数の底eをめぐるストーリーをたどることによって、対数、指数、多項式方程式、微積分、三角関数、複素数など、文系の人間にはとっつきにくい数学のアイテムの数々が、なぜ発明され、どのように必要なのかを、とても明快なレトリックで解説してくれる本。この1冊だけで数学的教養が深まったような感覚を味わえて気分がよい。読んで良かった。