司馬遼太郎の菜の花の沖に触発されて浄瑠璃本を読んでみたくなり、本書を購入しました。江戸時代の中後期の町人の娯楽であっただけでなく、彼らの教養と倫理観、そして志操をも高めたのが人形浄瑠璃であると書かれていました。菜の花の沖の主人公である高田屋嘉兵衛もロシアに拉致されたとき自分の船から浄瑠璃本を数冊持ち出し、常に側に置いていたということです。彼の勇気ある志を持った抑留中の態度は、司馬遼太郎のいうように浄瑠璃の主人公の「男を掛けた行き方」から導き出されたものだと本書の曽根崎心中を読んで感じました。常に「男を磨く」ことを念頭に置いた高田屋嘉兵衛の行き方は、まさしく曽根崎心中の徳兵衛の影響を芯まで受けているようです。最後にロシア船で帰国し、幽閉されたロシア人を解放するという約束を成し遂げた苦労も、高田屋嘉兵衛が曽根崎心中の徳兵衛の言葉があればこそのことでしょう。
菜の花の沖にも出てくる曽根崎心中の有名な言葉を直に原文で読んで、ああなるほどなと感動しました。
まだ曽根崎心中を一度しか読んでいませんが、江戸時代の市井の人々を惹きつけただけでなく、彼らの教養のみならず志をも育てあげた曽根崎心中を始めとする浄瑠璃本から心を打つ言葉を抜き書きしたいと心から感じています。小気味よく表現された原文ならではの言葉にいち早くより多く出逢いたいと思っています。
また、まだ見ぬ文楽を鑑賞し、人形の動きと三味線の音と太夫のうなり声を体感した上で再び本書の文章を頭だけではなく目と体と耳でも味わいたいと痛切に思っています。
菜の花の沖、そして本書との出逢いに感謝しています。
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曾根崎心中・冥途の飛脚 他五篇 (ワイド版岩波文庫) 単行本 – 1994/5/16
大坂は曽根崎の森で実際にあった心中事件に材を取った『曽根崎心中』,幾多の名文句でも知られる梅川,忠兵衛の『冥途の飛脚』のほか,『卯月紅葉』『堀川波鼓』『心中重井筒』『丹波与作待夜小室節』『心中万年草』と近松世話浄瑠璃の傑作七編を収める.いずれも舞台の動きが充分に理解できるよう脚注等で工夫がこらされている.
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1994/5/16
- ISBN-104000071351
- ISBN-13978-4000071352
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1994/5/16)
- 発売日 : 1994/5/16
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 384ページ
- ISBN-10 : 4000071351
- ISBN-13 : 978-4000071352
- Amazon 売れ筋ランキング: - 902,423位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 10位近松門左衛門
- - 213位ワイド版岩波文庫
- - 532位日本の戯曲・シナリオ
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年9月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年6月9日に日本でレビュー済み
岩波版の特徴として、注釈等は人形浄瑠璃の舞台上演に対する解説がメイン。語句や特異な言い回し
などに対する説明は皆無ですので、古典や江戸期文学に不案内ですと、読み進め辛い箇所が多々ある
かもしれません。慣れてきますと、掛詞を多用した江戸期独特の節回しに快感すら覚えてきますけど。
元々は戯曲なだけに、微に入り細を穿つような叙述ではないものの、啖呵・大見得、自害の決意、
死出の道行などの名場面の数々には見事なまでの迫力があります。
愛する男なればこそ、その命よりも名をこそ惜しみ、想う徳兵衛に先立つお初の心情には、背景となる
時代性と共に不朽の感動を覚えます。 『曾根崎心中』
(生命財産最優先の現代においては、いかような艱難辛苦であろうと生きてこそ。との価値観の相違もありそうですが)
収録作は世話物がメイン。「堀川波鼓」などの敵討話もあって、飽きさせない内容となっています。
岩波さんには「国性爺合戦」の方も復刊してほしいトコロ。
などに対する説明は皆無ですので、古典や江戸期文学に不案内ですと、読み進め辛い箇所が多々ある
かもしれません。慣れてきますと、掛詞を多用した江戸期独特の節回しに快感すら覚えてきますけど。
元々は戯曲なだけに、微に入り細を穿つような叙述ではないものの、啖呵・大見得、自害の決意、
死出の道行などの名場面の数々には見事なまでの迫力があります。
愛する男なればこそ、その命よりも名をこそ惜しみ、想う徳兵衛に先立つお初の心情には、背景となる
時代性と共に不朽の感動を覚えます。 『曾根崎心中』
(生命財産最優先の現代においては、いかような艱難辛苦であろうと生きてこそ。との価値観の相違もありそうですが)
収録作は世話物がメイン。「堀川波鼓」などの敵討話もあって、飽きさせない内容となっています。
岩波さんには「国性爺合戦」の方も復刊してほしいトコロ。
2005年9月1日に日本でレビュー済み
「曽根崎心中」は実際の事件と内容を変えて、九平次という悪者を設定して徳兵衛を抜き差しならない状況に追い込みます。
天満屋でお初が徳兵衛の死の決意を確認し、徳兵衛がお初の足首を持ってのどを切る仕草をする場面は圧巻です。
そして何よりすばらしいのは曽根崎道行の文。
「この世のなごり、夜もなごり、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足ごとに消えてゆく、夢の夢こそあわれなり。あれ数ふれば暁の、七つのときが六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め・・」と続く七五調の道行き文は読者を主人公と一緒に曽根崎の森へと誘います。
元は普通の心中事件ですが、この事件を聞いた近松門左衛門は、観客が喜ぶような心中物語に仕立てます。涙を流しながら人形浄瑠璃を町人達は見たことでしょう。
浄瑠璃作家近松門左衛門の腕が冴え渡っています。
天満屋でお初が徳兵衛の死の決意を確認し、徳兵衛がお初の足首を持ってのどを切る仕草をする場面は圧巻です。
そして何よりすばらしいのは曽根崎道行の文。
「この世のなごり、夜もなごり、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足ごとに消えてゆく、夢の夢こそあわれなり。あれ数ふれば暁の、七つのときが六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め・・」と続く七五調の道行き文は読者を主人公と一緒に曽根崎の森へと誘います。
元は普通の心中事件ですが、この事件を聞いた近松門左衛門は、観客が喜ぶような心中物語に仕立てます。涙を流しながら人形浄瑠璃を町人達は見たことでしょう。
浄瑠璃作家近松門左衛門の腕が冴え渡っています。
2005年8月24日に日本でレビュー済み
有名な「曽根崎心中」。縁の下に隠れた男に、足で心中を誘う女。悲しいけれど、比類のない妖艶さです。
「冥途の飛脚」。義理を立てるために、逃亡中の息子には会えないと言い張る父親に、目隠しをして親子の対面をさせる女。
人形浄瑠璃の台本だけあって、物語の筋だけではなく、視覚的に涙を誘うように書かれているように思います。どの作品も、登場人物(特に男性)は情けない。してはいけないような借金をして、首が回らなくなり、挙句は死に向かう。けれど、その情けなさゆえに悲しさがあるわけです。一度、実際の文楽を見て雰囲気を掴んでおけば、上演を見たことのない作品の台本だけでもかなり楽しめます。
「冥途の飛脚」。義理を立てるために、逃亡中の息子には会えないと言い張る父親に、目隠しをして親子の対面をさせる女。
人形浄瑠璃の台本だけあって、物語の筋だけではなく、視覚的に涙を誘うように書かれているように思います。どの作品も、登場人物(特に男性)は情けない。してはいけないような借金をして、首が回らなくなり、挙句は死に向かう。けれど、その情けなさゆえに悲しさがあるわけです。一度、実際の文楽を見て雰囲気を掴んでおけば、上演を見たことのない作品の台本だけでもかなり楽しめます。
2019年12月30日に日本でレビュー済み
○「日本人であるからには近松の名作は読んでおこう。そのうちに文楽の舞台も見に行こう」というくらいの気持ちで購入した。何とか読んだが、分からないところがたくさんある。他の本の現代語訳を見て「ああそうなのか」と納得したり、「なかなかいいじゃないか」と思ったりした。私には、もっと丁寧な注か現代語訳がないと十分に理解できなかった。
○それから、近松名作集ならば、心中天の網島も入れておいて欲しかった。
○そのような訳で星は2つですが、決して近松が面白くないというわけではありません。
○それから、近松名作集ならば、心中天の網島も入れておいて欲しかった。
○そのような訳で星は2つですが、決して近松が面白くないというわけではありません。
2019年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
思いの外読みづらく途中で断念。
現代訳版を買いなおしてしまいました。
現代訳版を買いなおしてしまいました。
2017年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ちゃんと勉強してる人用で、一般人には辛かったです。角田光代さんの現代版へ避難しました。