本書は、第二部にあたり、1828年~1832年までの対話を収めている。上(第一部)の
レビューで、ゲーテはいつもエッカーマンを上機嫌で迎えていることに触れたが、本書
には、ゲーテがエッカーマンに対し批判的な態度を取ったエピソードが出てくる。
それは『色彩論』についてエッカーマンが疑問を呈したときのことである。ゲーテにと
ってよほど気に障ったのだろうとの推測される。ゲーテの偉人らしいエピソードだけで
なく、俗人っぽい一面についても記されていたことで、かえって本書の信憑性が増した。
また、本書には、晩年の小林秀雄を鼓舞したエピソードも含まれている。ある年の年末
年始に小林は本書を再読し、「エンテレヒー」(ゲーテ晩年の愛用語の1つで、一定方
向へとむかう活動的な生きた力)を見出し、エンテレヒーが創造的な活動の源泉である
という考えに心を動かされている。エンテレヒーについてゲーテは次のように言う。
私は、我々の永生については、疑いを差し挟まない。自然は、エンテレヒーなくして活
動できないからね。しかし、だからといって、我々誰も彼もが同じように不死というわ
けではないのだ。未来の自分が偉大なエンテレヒーとして現れるためには、現在もまた
エンテレヒーでなければならない。(1829年9月1日)(表記一部変更)
ゲーテによれば、エンテレヒーによって活動が生じ、活動の概念は霊魂不滅(不死)と
繋がっているという。次のように述べている。
私にとっては、我々の霊魂不滅の信念は、活動という概念から生まれてくるのだ。なぜ
なら、私が人生の終焉まで休むことなく活動して、私の精神が現在の生存の形式ではも
はや持ち堪えられないときには、自然は必ず私に別の生存の形式を与えてくれるはずだ
からね。(1829年2月4日)(表記一部変更)
小林秀雄もこの言葉を知って、エッカーマンと同じく胸が「驚嘆と敬愛の情に思わず高
鳴った」のかもしれない。小林秀雄は霊魂不滅を信じていたというから、ここでもゲー
テの思想と一致している。なお、石原慎太郎によれば、小林秀雄の母親には霊感があっ
たそうなので、その影響もあるかもしれない。
本書は、霊魂不滅、エンテレヒー、小林秀雄に関心がある人にオススメ。
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ゲーテとの対話 中 (ワイド版岩波文庫 192) 単行本 – 2001/9/14
J.P. エッカーマン
(著),
山下 肇
(翻訳)
- 本の長さ350ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2001/9/14
- ISBN-104000071920
- ISBN-13978-4000071925
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
滔々と流れ出る思想、明るく豊かな構想力。モーツァルト、自作、オペラ・演劇と話題は尽きるところがない。人生を貪欲に生き抜いたゲーテの、汲めども尽きぬ言葉の数々に満ちた貴重な対話の記録。81年刊のワイド版。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2001/9/14)
- 発売日 : 2001/9/14
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 350ページ
- ISBN-10 : 4000071920
- ISBN-13 : 978-4000071925
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,350,245位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 356位ワイド版岩波文庫
- - 1,701位ドイツ文学研究
- - 178,636位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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2023年11月13日に日本でレビュー済み
2010年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の人柄か、ゲーテの偉大さか、
本自体が穏やかでのんびりとしていて、読んでいて牧歌的にな気持ちになります。
芸術論が多い印象を受けました。
芸術にあまり興味のない人は、意味が分からないかもしれませんが、
物事はこう見るんだよ、というゲーテの言葉には叡智のきらめきがほとばしっています。
ずっと手元の置いて読み返したい本です。
本自体が穏やかでのんびりとしていて、読んでいて牧歌的にな気持ちになります。
芸術論が多い印象を受けました。
芸術にあまり興味のない人は、意味が分からないかもしれませんが、
物事はこう見るんだよ、というゲーテの言葉には叡智のきらめきがほとばしっています。
ずっと手元の置いて読み返したい本です。
2021年12月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エッカーマン・ゲーテとの対話。
いわゆる当時のドキュメンタリー文学となっている。
どこかの話では二人が組んで当時の世間に痛烈な風刺を行ったとされている。
上巻と下巻には格言のような資料が多く見られており。
中巻は雑談が多い印象を受ける。
個人的には当時の話題が面白くて。
エジプトに勤めていた。
ナポレオンの部隊が紅海の先端から潮を見計らって移動した際に。
途中で潮に追いつかれて後方の部隊は水に浸かって。
ファラオの末路の二の舞を演じる所だったという。
当時の話題は大いに興味深い。
その時代の世間の様子や雰囲気。
世界観がそのままの姿で語られており。
マニアックな人はセットで読んでみるといいかもしれない。
ドキュメンタリー文学集は容量が多く。
速読を持ってないと時間をたっぷり持っていかれるので。
片手にワインを持ちながら読書するという贅沢も思いつく。
教養のある人物がこぞって参加しているので。
風刺が好きであったり。
ゲーテ文学に影響を受けた人は相性が良いと思われる。
いわゆる当時のドキュメンタリー文学となっている。
どこかの話では二人が組んで当時の世間に痛烈な風刺を行ったとされている。
上巻と下巻には格言のような資料が多く見られており。
中巻は雑談が多い印象を受ける。
個人的には当時の話題が面白くて。
エジプトに勤めていた。
ナポレオンの部隊が紅海の先端から潮を見計らって移動した際に。
途中で潮に追いつかれて後方の部隊は水に浸かって。
ファラオの末路の二の舞を演じる所だったという。
当時の話題は大いに興味深い。
その時代の世間の様子や雰囲気。
世界観がそのままの姿で語られており。
マニアックな人はセットで読んでみるといいかもしれない。
ドキュメンタリー文学集は容量が多く。
速読を持ってないと時間をたっぷり持っていかれるので。
片手にワインを持ちながら読書するという贅沢も思いつく。
教養のある人物がこぞって参加しているので。
風刺が好きであったり。
ゲーテ文学に影響を受けた人は相性が良いと思われる。
2016年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
はじめは水木しげるのファンだったので1度読んでみようと購入。みるみるうちにゲーテの世界にハマりました。
2019年7月31日に日本でレビュー済み
詩人・作家であるヨハン・ペーター・エッカーマンがゲーテと共に過ごした日々をそのまま記録したノンフィクション。事実であるがゆえに、生身の人間のゲーテを見ることが出来る。エッカーマンは1792年生まれ、ゲーテは1749年生まれなので、年の離れた親子といった関係である。エッカーマンは詩人・作家だが、ゲーテにとっては批評家であり、年下の良き相談相手であり、友人であるといった風である。本文庫版は1968年初版だが、翻訳もこなれていてとても読みやすい。
中巻は、1928ー1932年までの記録である。ちょうど『ファウスト』第2部が書かれた時期と一致し、執筆の裏話も出てくる。この頃はゲーテとの対話を通じてエッカーマン自身が成熟する時期であると同時に、彼が単なるゲーテの信奉者のようになってしまった時期でもある。ゲーテにとっては最晩年で、老化に伴って精神的に衰えも出てきているように感じられる。上巻と比べるとゲーテの発言は少なく、たまの発言もあまり冴えない。また、エッカーマン自身の考えに多くの紙面が割かれている。そのためか、あまり感銘を受ける箇所がなく、つまらない話が延々と続く魅力に乏しい巻であった。
上巻ではゲーテの作家・詩人の好みがよく表れていたが、中巻でもそれは同じである。また、彼の思想にはパスカルの影響があるようにも思われたのは、興味深かった。
中巻は、1928ー1932年までの記録である。ちょうど『ファウスト』第2部が書かれた時期と一致し、執筆の裏話も出てくる。この頃はゲーテとの対話を通じてエッカーマン自身が成熟する時期であると同時に、彼が単なるゲーテの信奉者のようになってしまった時期でもある。ゲーテにとっては最晩年で、老化に伴って精神的に衰えも出てきているように感じられる。上巻と比べるとゲーテの発言は少なく、たまの発言もあまり冴えない。また、エッカーマン自身の考えに多くの紙面が割かれている。そのためか、あまり感銘を受ける箇所がなく、つまらない話が延々と続く魅力に乏しい巻であった。
上巻ではゲーテの作家・詩人の好みがよく表れていたが、中巻でもそれは同じである。また、彼の思想にはパスカルの影響があるようにも思われたのは、興味深かった。
2019年11月4日に日本でレビュー済み
著者のエッカーマンはゲーテに弟子入りし、ゲーテの詩の仕事の手伝いをしながら
ゲーテから聞いた話や、ゲーテと議論した内容について日記形式でまとめた本です。
上巻と比べ、ゲーテとエッカーマンにそれぞれ変化があります。
上巻ではゲーテの言葉に対してエッカーマンが感銘を受ける、という展開が主でしたが、
中巻でエッカーマンは感銘を受けるだけに留まらず、時にはゲーテの「色彩論」に異を唱えたり、
これまでゲーテと対話した内容を本として纏めることを決意するなど、
エッカーマンの行動面での変化が見られます。
ゲーテにも変化があります。
ゲーテはエッカーマンに反論されるとふてくされ、機嫌を損ねてしまします。
それだけエッカーマンが非常に思い切った行動をとった、ということなのかもしれません。
しかしエッカーマンはゲーテの機嫌を損ねないよう、十分に注意して言葉を選んでいたようですし、
ふてくされるというのは今までのゲーテらしからぬ行動だと思いました。
また、「先立つものは金だ」などと、それまでのゲーテと比較して俗っぽいことを言い出すなど、
あまりゲーテらしくない言動が見られます。
ゲーテのこういった行動の変化は、成長というよりも、
高齢による精神の衰え、という印象を受けます。
ゲーテは、詩に限らず自然科学や芸術など様々な分野で
「過去のものはすばらしかった。現在はさらに進化し、もっと良くなっている」
という価値観を根源に持っている印象を受けました。
「この分野に関して、過去のものはすばらしかったが、現在は過去より劣ってしまっている。もっと過去を見習うべきだ」
というようなことはおそらくほとんど言っていないと思います。
物事を常に複雑にとらえ、単純に良い悪いでは語れないというゲーテの価値観と深さを表しているような気がしました。
後半は、エッカーマンのイタリア旅行、ゲーテの息子の死、
著書「ゲーテとの対話」の編纂活動、そしてゲーテの死、といったことが起こり、
ゲーテとの対話の機会はかなり少なくなってしまったようです。
ゲーテから聞いた話や、ゲーテと議論した内容について日記形式でまとめた本です。
上巻と比べ、ゲーテとエッカーマンにそれぞれ変化があります。
上巻ではゲーテの言葉に対してエッカーマンが感銘を受ける、という展開が主でしたが、
中巻でエッカーマンは感銘を受けるだけに留まらず、時にはゲーテの「色彩論」に異を唱えたり、
これまでゲーテと対話した内容を本として纏めることを決意するなど、
エッカーマンの行動面での変化が見られます。
ゲーテにも変化があります。
ゲーテはエッカーマンに反論されるとふてくされ、機嫌を損ねてしまします。
それだけエッカーマンが非常に思い切った行動をとった、ということなのかもしれません。
しかしエッカーマンはゲーテの機嫌を損ねないよう、十分に注意して言葉を選んでいたようですし、
ふてくされるというのは今までのゲーテらしからぬ行動だと思いました。
また、「先立つものは金だ」などと、それまでのゲーテと比較して俗っぽいことを言い出すなど、
あまりゲーテらしくない言動が見られます。
ゲーテのこういった行動の変化は、成長というよりも、
高齢による精神の衰え、という印象を受けます。
ゲーテは、詩に限らず自然科学や芸術など様々な分野で
「過去のものはすばらしかった。現在はさらに進化し、もっと良くなっている」
という価値観を根源に持っている印象を受けました。
「この分野に関して、過去のものはすばらしかったが、現在は過去より劣ってしまっている。もっと過去を見習うべきだ」
というようなことはおそらくほとんど言っていないと思います。
物事を常に複雑にとらえ、単純に良い悪いでは語れないというゲーテの価値観と深さを表しているような気がしました。
後半は、エッカーマンのイタリア旅行、ゲーテの息子の死、
著書「ゲーテとの対話」の編纂活動、そしてゲーテの死、といったことが起こり、
ゲーテとの対話の機会はかなり少なくなってしまったようです。
2015年2月7日に日本でレビュー済み
文豪ゲーテの晩年に約10年身近で過ごした若き詩人エッカーマンが、ゲーテとの談話や対話を日記のように書き綴った手記。1828年6月〜1832年3月を収めた、三分冊の中巻。そのテーマは、文学、芸術、科学から人生の過ごし方に及び、優れた上達論として読むことができる。
「ひとかどのものを作るためには、自分もひとかどのものになることが必要だ。ダンテは偉大な人物だと思われている。しかし彼は、数百年の文化を背後に背負っているのだよ。・・・こういうことには、どれ一つとっても、人が想像するよりももっと深い根があるものだ」
「ことにナポレオンが偉大だった点は、いつでも同じ人間であったということだよ。戦闘の前だろうと、戦闘のさなかだろうと、勝利の後だろうと、敗北の後だろうと、彼はつねに断固としてたじろがず、つねに、何をすべきかをはっきりとわきまえていて・・・」
「人間は、・・・さまざまな段階を経ねばならないものだ。そしてどの段階にもそれ独特の美点と欠点があるが、それらもその由来する時期においてはまったく自然なことで、ある程度までは正しいのだよ。次の段階ではまた変わってしまい、以前の美点と欠点は跡方もなくなってしまうが、こんどは別の長所や短所がとってかわることになる」等
200年前に生きた巨人ゲーテの言葉が生き生きと伝わってくる。
「ひとかどのものを作るためには、自分もひとかどのものになることが必要だ。ダンテは偉大な人物だと思われている。しかし彼は、数百年の文化を背後に背負っているのだよ。・・・こういうことには、どれ一つとっても、人が想像するよりももっと深い根があるものだ」
「ことにナポレオンが偉大だった点は、いつでも同じ人間であったということだよ。戦闘の前だろうと、戦闘のさなかだろうと、勝利の後だろうと、敗北の後だろうと、彼はつねに断固としてたじろがず、つねに、何をすべきかをはっきりとわきまえていて・・・」
「人間は、・・・さまざまな段階を経ねばならないものだ。そしてどの段階にもそれ独特の美点と欠点があるが、それらもその由来する時期においてはまったく自然なことで、ある程度までは正しいのだよ。次の段階ではまた変わってしまい、以前の美点と欠点は跡方もなくなってしまうが、こんどは別の長所や短所がとってかわることになる」等
200年前に生きた巨人ゲーテの言葉が生き生きと伝わってくる。
2013年12月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
このシリーズは上、中、下とありますが、ゲーテの言葉を中心に読んでいくと意外と早く読了できました。内容は素晴らしい。特に、モーツァルト、バイロン、ナポレオン、そしてターナーに対するゲーテの評価が興味深かった。