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調査報告学力低下の実態 (岩波ブックレット NO. 578) 単行本 – 2002/10/18
苅谷 剛彦
(著)
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子どもの学力は実際に低下しているのか.何についての,誰の学力が低下しているのか.89年と2001年の比較調査から浮かび上がったのは,小中学生の基礎学力の全般的な低下と,学力の階層差という大きな問題であった.大きな反響をよんだ気鋭の研究者グループによる報告に詳細な注釈・解説を加えた決定版.
- ISBN-104000092782
- ISBN-13978-4000092784
- 出版社岩波書店
- 発売日2002/10/18
- 言語日本語
- 本の長さ71ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2002/10/18)
- 発売日 : 2002/10/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 71ページ
- ISBN-10 : 4000092782
- ISBN-13 : 978-4000092784
- Amazon 売れ筋ランキング: - 618,257位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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オックスフォード大学社会学科及びニッサン現代日本研究所教授。教育社会学、現代日本社会論(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『教員評価の社会学』(ISBN-10:4000225766)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マスコミや世間で騒がれる学力低下について、よく分かりました。これくらいのブックレットが読みやすくかつ説得力のある認識をいただけます。
2007年4月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小中学生を調査対象とした学力・学習実態に関する調査報告書。大学の先生の書いた、わずか70ページの小冊子。
本書の目玉は2つ。2部構成の前半のテーマは「学力低下」。いわゆる「ゆとり教育」以前(1989年)と以後(2001年)で、子供たちの学力・学習状況はどのように変わったのか、その実態を正確に把握しようとする。単にテストの成績を比較するだけでなく、通塾者と非通塾者間の比較、家庭における学習状況の変化、等も視野に入れている。
著者らの行った比較調査の結果によると、テストの成績で示される「旧学力」はこの12年間で全体的に低下しただけでなく、「できない子」の層がより厚くなっている。学力の低下は非通塾者でより顕著で、学力低下が通塾の効果によって見えづらくなっていることが暴かれている。
後半のテーマは「社会階層の影響」。子供の学力・学習状況に関する社会階層間の格差の存在を指摘し、学校教育のあり方によってはその格差を縮小することもできる可能性を示す。
調査結果によると、テスト成績、学校での主体的な学習への取り組み、家庭での学習状況、等にも、子供の家庭の社会階層による明確な差が認められるという。学力低下を通塾によって補うこともできず取り残された子供たちは、学校の授業にもついていけなくなってしまう。「全ての子供が学ぶ意欲を等しく持っているはず」という前提にもとづいた子供中心主義の導入が社会階層による学力格差の拡大という結果となってあらわれた、欧米社会と同じ傾向に日本もあるようだ。
「学力低下」問題に関してはこれまで全く興味を感じたことがなく、このテの本を読んだのはこれが初めてだったが、1冊目としては良い本を引き当てたと思う。調査結果の解釈において疑問に思う点もないわけではなかったが、まずデータを示すことの重要性を改めて感じた。
本書の目玉は2つ。2部構成の前半のテーマは「学力低下」。いわゆる「ゆとり教育」以前(1989年)と以後(2001年)で、子供たちの学力・学習状況はどのように変わったのか、その実態を正確に把握しようとする。単にテストの成績を比較するだけでなく、通塾者と非通塾者間の比較、家庭における学習状況の変化、等も視野に入れている。
著者らの行った比較調査の結果によると、テストの成績で示される「旧学力」はこの12年間で全体的に低下しただけでなく、「できない子」の層がより厚くなっている。学力の低下は非通塾者でより顕著で、学力低下が通塾の効果によって見えづらくなっていることが暴かれている。
後半のテーマは「社会階層の影響」。子供の学力・学習状況に関する社会階層間の格差の存在を指摘し、学校教育のあり方によってはその格差を縮小することもできる可能性を示す。
調査結果によると、テスト成績、学校での主体的な学習への取り組み、家庭での学習状況、等にも、子供の家庭の社会階層による明確な差が認められるという。学力低下を通塾によって補うこともできず取り残された子供たちは、学校の授業にもついていけなくなってしまう。「全ての子供が学ぶ意欲を等しく持っているはず」という前提にもとづいた子供中心主義の導入が社会階層による学力格差の拡大という結果となってあらわれた、欧米社会と同じ傾向に日本もあるようだ。
「学力低下」問題に関してはこれまで全く興味を感じたことがなく、このテの本を読んだのはこれが初めてだったが、1冊目としては良い本を引き当てたと思う。調査結果の解釈において疑問に思う点もないわけではなかったが、まずデータを示すことの重要性を改めて感じた。
2010年12月11日に日本でレビュー済み
本書は、1989年に大阪大学のグループが実施した「学力・生活総合実態
調査」と、著者たちの研究グループが2001年に実勢した学力に関する
調査を比較し、学力低下が本当に起こっているのか、また起こっている
としたらその背後に読みとれるものは何なのかについて、データを示す
ことで分析を加えたものである。
本書で示されているデータは、89年と01年の小学中学の算数(数学)お
よび国語の成績が中心ではあるが、それらデータを、「塾に通っているか」
「家でどのような生活を送っているか」「家でどのような勉強をしているか」
「新学力観的な授業経験がどれだけあるのか」「自己イメージの変化」等々
の様々な視点から分析することで、「公立小中学校の教育効果による学力
低下」が見られるのかどうかを分析している。
とかく、学力調査の点数のみの表面的な比較のみに終始して、塾での学力
補強の面や家庭環境の点を考慮に入れていないデータ提示が多い中、本書
が示すデータは、学習指導要領の改訂による「学力低下」の側面をなるべく
他の要素を交えず取り出している点で秀逸であるし、教育関係者は必読
であるといえる。
それにしても、本書の提示されたデータを読み進めるほど、新学力観に
基づく「授業の影響を大きく受けた子どもほど、中学での国語や数学の
基礎学力が低くなる」(p. 55)様子が示され、愕然としてしまう。
当時の文部省はじめ、行政の責任は非常に大きいと言わざるを得ない。
とかく主観論に終始し空中戦になりがちな「学力低下論争」を「地に足が
ついた」ものにするためには必読の書である。このようなデータが今後も
多く提示され、「実態を踏まえた真の教育改革」がなされることを望む。
調査」と、著者たちの研究グループが2001年に実勢した学力に関する
調査を比較し、学力低下が本当に起こっているのか、また起こっている
としたらその背後に読みとれるものは何なのかについて、データを示す
ことで分析を加えたものである。
本書で示されているデータは、89年と01年の小学中学の算数(数学)お
よび国語の成績が中心ではあるが、それらデータを、「塾に通っているか」
「家でどのような生活を送っているか」「家でどのような勉強をしているか」
「新学力観的な授業経験がどれだけあるのか」「自己イメージの変化」等々
の様々な視点から分析することで、「公立小中学校の教育効果による学力
低下」が見られるのかどうかを分析している。
とかく、学力調査の点数のみの表面的な比較のみに終始して、塾での学力
補強の面や家庭環境の点を考慮に入れていないデータ提示が多い中、本書
が示すデータは、学習指導要領の改訂による「学力低下」の側面をなるべく
他の要素を交えず取り出している点で秀逸であるし、教育関係者は必読
であるといえる。
それにしても、本書の提示されたデータを読み進めるほど、新学力観に
基づく「授業の影響を大きく受けた子どもほど、中学での国語や数学の
基礎学力が低くなる」(p. 55)様子が示され、愕然としてしまう。
当時の文部省はじめ、行政の責任は非常に大きいと言わざるを得ない。
とかく主観論に終始し空中戦になりがちな「学力低下論争」を「地に足が
ついた」ものにするためには必読の書である。このようなデータが今後も
多く提示され、「実態を踏まえた真の教育改革」がなされることを望む。
2008年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1989年と2001年に行われた学力試験のデータを比較検討し、ゆとりを求める学習指導要領の変化によって、小中学生の学力にどのような変化が起こったか、また同じ時期の学童においても、学校の指導方針や通塾の有無といった背景因子の差による学力の差についても検討をおこない紹介した書。約70ページであり、数時間あれば誰でも読破可能。
『教育』をテーマにした書は無数に存在し、多くの著者が持論を展開しているが、主観に基づいた夢とそれを正当化する論理を後付けしているだけの書が氾濫していると思う。それらにおいてはデータの一部分だけをもちだして根拠としているものも多く、そういった所謂識者には政府の諮問委員会に属している者も存在する。結果的に、現在においてもゆとり教育の失敗を認めない者さえいる。これに対して本書では、多くの調査結果に基づいて、可能な範囲で客観的解釈を行い、それらを簡潔に述べている点で評価されるべき内容と思う。大まかな要旨としては、基礎学力は低下していること、家庭環境や通塾などの背景因子によって学力が階層化されていること、ただしこれについては学校の対応によって改善が可能であることなどが挙げられている。本書の主張で目を惹くのは、『学力の結果は本人の自己責任というのであれば、責任を担えるだけの教育は担保すべき』という点である。
本書の問題点としては、調査を行った時期における学習要領などの背景因子をもう少し比較検討しやすいように紹介し、因果関係を踏み込んで検証してもいいと思ったこと、複数のデータをもとに解釈したい場合に表などの構成がやや見づらい点。
全体的には良書で、教育者や政策立案にかかわる者は全員が理解していなければならないと思う。マスコミでの討論を見ていても、本書のような基本的なデータを知らないと思われる政治家なども存在すること自体が問題で、レベルの低い政治家をみても根本的な初等教育がいかに重要かを再認識させられる。あくまで調査報告であることが明記されていて、主観的判断は省略したいという意図がよくわかるが、このような書こそさらに踏み込んで、もっと強い主張を提示してもよいと感じた。それらについては本書の著者が他の著作で述べられているが、本書自体は星4つの評価。
『教育』をテーマにした書は無数に存在し、多くの著者が持論を展開しているが、主観に基づいた夢とそれを正当化する論理を後付けしているだけの書が氾濫していると思う。それらにおいてはデータの一部分だけをもちだして根拠としているものも多く、そういった所謂識者には政府の諮問委員会に属している者も存在する。結果的に、現在においてもゆとり教育の失敗を認めない者さえいる。これに対して本書では、多くの調査結果に基づいて、可能な範囲で客観的解釈を行い、それらを簡潔に述べている点で評価されるべき内容と思う。大まかな要旨としては、基礎学力は低下していること、家庭環境や通塾などの背景因子によって学力が階層化されていること、ただしこれについては学校の対応によって改善が可能であることなどが挙げられている。本書の主張で目を惹くのは、『学力の結果は本人の自己責任というのであれば、責任を担えるだけの教育は担保すべき』という点である。
本書の問題点としては、調査を行った時期における学習要領などの背景因子をもう少し比較検討しやすいように紹介し、因果関係を踏み込んで検証してもいいと思ったこと、複数のデータをもとに解釈したい場合に表などの構成がやや見づらい点。
全体的には良書で、教育者や政策立案にかかわる者は全員が理解していなければならないと思う。マスコミでの討論を見ていても、本書のような基本的なデータを知らないと思われる政治家なども存在すること自体が問題で、レベルの低い政治家をみても根本的な初等教育がいかに重要かを再認識させられる。あくまで調査報告であることが明記されていて、主観的判断は省略したいという意図がよくわかるが、このような書こそさらに踏み込んで、もっと強い主張を提示してもよいと感じた。それらについては本書の著者が他の著作で述べられているが、本書自体は星4つの評価。
2004年7月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本の小中学生の基礎学力低下の実態を、1989年と2001年に実施した学力テストと家庭環境についての調査により分析している。それによると、小中学校とも明らかに「基礎学力が低下している」。さらに、例えば小学校の算数では、少数の計算、分数の概念に関する学力の低下が大きいという分析がされており、問題点を具体化させており、とても興味深い。
これらの結果は、1989年の学習指導要領の改定「新しい学力観」は、教育における公立学校の大きな役割の一つである「学力の下支え」において、明らかに失敗したことを示している。
「新しい学力観」で提唱されている学力(能力)の重要性を否定するつもりは全く無いが、この学力を有効に活用するためには、当然「基礎学力」がベースになると思う。本書の調査でも、小学校での授業が、先生が板書したり、ドリルをやらせる「伝統的な授業」を経験している方が、中学校時の学力が高いという結果が得られている。
スポーツや音楽などで、基本動作が身に付くまで反復練習をやったり、身に付けた技を有効に活用するために、筋肉トレーニングなどを行う事は常識である。これは、学力においても同じ関係であると思う。計算ドリルや漢字ドリルなどはトレーニングである。このトレーニングが1989年の学習指導要領下では軽視されてきたように思う。
また、文科省などの「公」が存在を認めたがらない、家庭の文化的環境の「階層差」が子供の学力に影響を与えている現実を初めて明らかにしており、興味深い。カエルの子はカエル、という諺が指しているものは、家庭の文化的環境の階層差が学力に及ぼす影響のことかも知れない、と思った。
これらの結果は、1989年の学習指導要領の改定「新しい学力観」は、教育における公立学校の大きな役割の一つである「学力の下支え」において、明らかに失敗したことを示している。
「新しい学力観」で提唱されている学力(能力)の重要性を否定するつもりは全く無いが、この学力を有効に活用するためには、当然「基礎学力」がベースになると思う。本書の調査でも、小学校での授業が、先生が板書したり、ドリルをやらせる「伝統的な授業」を経験している方が、中学校時の学力が高いという結果が得られている。
スポーツや音楽などで、基本動作が身に付くまで反復練習をやったり、身に付けた技を有効に活用するために、筋肉トレーニングなどを行う事は常識である。これは、学力においても同じ関係であると思う。計算ドリルや漢字ドリルなどはトレーニングである。このトレーニングが1989年の学習指導要領下では軽視されてきたように思う。
また、文科省などの「公」が存在を認めたがらない、家庭の文化的環境の「階層差」が子供の学力に影響を与えている現実を初めて明らかにしており、興味深い。カエルの子はカエル、という諺が指しているものは、家庭の文化的環境の階層差が学力に及ぼす影響のことかも知れない、と思った。
2005年10月23日に日本でレビュー済み
データのネタは,阪大『学力・生活総合実態調査』(01年,小学5年生2100余人と中学2年生2700余人)。政策変更の直前直後での変化を見るのに好都合という理由で選ばれたらしい(11頁)。
「実態」というほど統計データがあるわけではないが,「50円切手4まいと70円切手3まいをかいました。いくらはらえばいいですか。式を書いてときなさい」という算数の問題に,89年時点で81.2%が正答したのに,02年時点では62.7%しか正答できなかったということはわかる(21頁)。確かに,これでは御使いもできず,生活に支障が出るだろう。通塾の有無での格差は大きいが,それでも学力は落ちている。
“通塾すれば問題なし”という視角ではなく,旧来型日本社会から変化しつつある社会(競争社会)への準備課程としての公教育の問題として捉えるべきと著者は力説している。
「実態」というほど統計データがあるわけではないが,「50円切手4まいと70円切手3まいをかいました。いくらはらえばいいですか。式を書いてときなさい」という算数の問題に,89年時点で81.2%が正答したのに,02年時点では62.7%しか正答できなかったということはわかる(21頁)。確かに,これでは御使いもできず,生活に支障が出るだろう。通塾の有無での格差は大きいが,それでも学力は落ちている。
“通塾すれば問題なし”という視角ではなく,旧来型日本社会から変化しつつある社会(競争社会)への準備課程としての公教育の問題として捉えるべきと著者は力説している。
2004年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今となっては一段落ついた感がある「学力低下」論。本書は、当時激しく論じられていた「日本の子供の学力はゆとり学習のせいで落ちている」という仮説を、実地にサンプルを採って学力試験を行い検証し、その結果を評価したものです。
当時の議論は、「東大京大」だの「一流私大」だの「中高生」だの、いくつかあるサンプルをかき混ぜて、とにかく学力低下しているのだからなんとかしなきゃ、ゆとり教育のせいだからやめちまえ、というような極めて短絡的でアジテーション的なものに思えましたが(いわゆる「仕掛人」の立場からすれば、世の興味を引くためには仕方ない手法なのかもしれませんが…)本書の立場はもう少し冷静で「じゃ、誰のどの学力が、どのような授業により上がってるの?下がってるの?」ということを検証しています。その冷静さは、あの華やかな議論から1年有余を経て、その価値を増していると思います。
本書の主著者は「教育における階層差」を一つのテーマに研究を進めている人です。そうした視点から本書が学力低下を検証するとき、ゆとり教育で欠けた部分を塾で補うという傾向が階層差を広げる可能性があることを明らかにしています。その中で公教育はどのような役割を果たすべきか、果たせるのか、実例を踏まえて論じる本書は、冊子は薄いけれど中身の濃い分析を行っている良書であると思います。無論、著者たちの視点が絶対だというつもりは全くないですが、少なくともなんでもかき混ぜて学力低下というナイーブな論から、より分析的に「ではどこにどのような問題があるのか」と進めていかないと、「では何をすべきか」という答えは出てこないと思います。
特に2年前に学力低下学力低下と大騒ぎして、今になったらもう忘れている憂国のオジサンたち(笑)にはとてもお勧めの本です。問題はたぶん、あなた方が思っているところとは別のところにあったのかもしれませんよ。
当時の議論は、「東大京大」だの「一流私大」だの「中高生」だの、いくつかあるサンプルをかき混ぜて、とにかく学力低下しているのだからなんとかしなきゃ、ゆとり教育のせいだからやめちまえ、というような極めて短絡的でアジテーション的なものに思えましたが(いわゆる「仕掛人」の立場からすれば、世の興味を引くためには仕方ない手法なのかもしれませんが…)本書の立場はもう少し冷静で「じゃ、誰のどの学力が、どのような授業により上がってるの?下がってるの?」ということを検証しています。その冷静さは、あの華やかな議論から1年有余を経て、その価値を増していると思います。
本書の主著者は「教育における階層差」を一つのテーマに研究を進めている人です。そうした視点から本書が学力低下を検証するとき、ゆとり教育で欠けた部分を塾で補うという傾向が階層差を広げる可能性があることを明らかにしています。その中で公教育はどのような役割を果たすべきか、果たせるのか、実例を踏まえて論じる本書は、冊子は薄いけれど中身の濃い分析を行っている良書であると思います。無論、著者たちの視点が絶対だというつもりは全くないですが、少なくともなんでもかき混ぜて学力低下というナイーブな論から、より分析的に「ではどこにどのような問題があるのか」と進めていかないと、「では何をすべきか」という答えは出てこないと思います。
特に2年前に学力低下学力低下と大騒ぎして、今になったらもう忘れている憂国のオジサンたち(笑)にはとてもお勧めの本です。問題はたぶん、あなた方が思っているところとは別のところにあったのかもしれませんよ。
2016年12月26日に日本でレビュー済み
ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました。