本書は、哲学分野の研究者たちが「心の哲学」特に「心身問題」について概観したものである。心の哲学とは、哲学の一分科で、心、心的出来事、心の働き、心の性質、意識、およびそれらと物理的なものとの関係を研究する学問である。心の哲学では様々なテーマが議論されるが、最も基本的なテーマは心身問題、すなわち心と体の関係についての問題である(Wikipediaによる)。
本書では、まず「展望」において心身問題を概観してから、第Ⅰ部「心身問題の起源と展開」では、心身問題が最初に議論されたギリシヤ哲学から、それが深められたデカルト、そして現代哲学による最近のアプローチが解説される。第Ⅱ部「心身問題の諸相」では、感覚、言語、感情、脳機能イメージングの立場から心身問題の議論が深められる。最後の「探求 心/脳の哲学の未来」では、生態学的観点という立場から心身問題の発展的な理論が解説される。巻末には「概念と方法」という用語集や、心身問題の主要著書の解説があり、初学者に便利である。
評者にとって意外だったのは、心身問題については日本の哲学者たちも戦後、本格的に検討を行っていることである。本書では大森荘蔵『物と心』、および廣松渉『心身問題』が紹介されている。いずれも本書の著者たちによれば、西欧発の心の哲学に対抗しうる、独創的な内容とのことである。これらの著作が英語でも発表されていたら、と残念である。
評者自身は、柴田正良氏「機能する感情・幻想する感情」、および染谷昌義氏「探求:心/脳の哲学の未来-生態学的観点から」に興味を持った。柴田氏の論考は、理性的な判断に及ぼす感情の重要性を論じている。染谷氏の論考は、大森荘蔵による「脳産教理」(唯脳論)批判を発展的に議論しながら、生態学的アプローチへと展開させている。そのキーポイントは染谷氏の「心のはたらきは意味に満ちた環境の中から意味を発見する生態学的な活動であるという信仰」の可能性を議論している。この考え方の更なる展開が期待される。
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岩波講座 哲学〈5〉 心/脳の哲学 単行本 – 2008/5/9
村田 純一
(編さん)
心/脳の哲学
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2008/5/9
- ISBN-104000112651
- ISBN-13978-4000112659
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2008/5/9)
- 発売日 : 2008/5/9
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 296ページ
- ISBN-10 : 4000112651
- ISBN-13 : 978-4000112659
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,008,833位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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